2023年6月 5日 (月)

梨園に嫁した藤原紀香さんの相手に合わせた手紙術

藤原さんは2016年に歌舞伎役者の六代目片岡愛之助さんと結婚し、女優業をおこないながら夫を支える充実した日々を送っています。その梨園での奥様業のひとつに、後援者など日頃お世話になって方々からのお礼状や挨拶状へ、返信をしたためるお役目があるそうです。そのご様子が『趣味の文具箱Vol.45』に紹介されていました。

プロフィールの趣味の筆頭に「書」とあり、昔から書を習う藤原さんは、毛筆の使い手でもあるそうです。そして細やかな心くばりは、「手紙の返信を書くときは、相手からいただいた手紙の筆跡に近い筆記具を選びます。そして、墨でくださった方には毛筆で、インクでくださった方には万年筆で、という風に使い分けているとのこと。

さらに驚かされるのは、その筆記具に合った線を描ける紙を選ぶのだそうです。お礼状や挨拶状には、くださった方の思いがこもっているとの考え方から、お相手の選んだものに合わせて用紙にまで気くばりする。なかなかできない配慮ですが、ご返信をいただいた方々は、人気女優さんのそうした心のこもった返信を嬉しく思わないはずはありません。

兵庫で生まれ育った藤原さんは神戸への想いもひとしおで、神戸の印刷会社・大和出版印刷が展開するステーショナリーブランド・神戸派計画のダイアリーやノートを長年愛用しているとのこと。「グラフィーロの紙質が素晴らしくて。万年筆でぬらぬらと快適に書けますし、インクの色も綺麗に出るところが嬉しいです」と。

本稿の最後は、「SNSの時代にあえて『手紙』の話」のTwitterシリーズ②で書いたことを簡単に取り上げます。①は向田邦子さんの「どんなにみっともない悪筆悪文の手紙でも、書かないよりはいい」でした。向田さんは書かなくてはいけない時に書かないのは、目に見えない大きな借金を作っているのと同じなのである」と書かれています。

②はタピオ(店名は靴下屋)の創業者・越智直正氏が修行時代の苦難を訴えた手紙に、お兄様が返した不思議な手紙につてです。その手紙には、たった二行「山より大きな猪はいない 海より大きな鯨はいない」と。越智氏は、当初、兄は何か勘違いをしたのでは…と思いますが、それが兄から弟への、愛情のこもった戒め(いましめ)であることに気がつきます。

いくらガタガタ泣き言を書き連ねても、実際はお前が言うほどのことはない。黙って自分に与えられた職務をまっとうしなさい。そうすれば、いずれ自分の道を切り開くことができるだろう。それまで頑張りなさい、とお兄さんが諭してくれていることに気付いたのでした。この兄にしてこの弟ありですね。豊富な品揃え、リーズナブルな靴下にも感謝です。

参考文献:『趣味の文具箱Vol.45』(枻出版社刊)

11話 読めば心が熱くなる 365人の 仕事の教科書』(致知出版社刊)

『折れない言葉Ⅱ』(五木寛之著/毎日新聞社刊)『少しぐらいの嘘は大目に――向田邦子の言葉』より

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2023年5月29日 (月)

新書『「みんな違って、みんないい」のか?』より

この本の著者(*)は、「正しさは人それぞれ」といって他人との関係を切り捨てるのでもなく、「真実は一つ」といって自分と異なる考えを否定するのでもなく――考え方の異なるもの同士が共に生きていくために、「正しさ」とは何か。それはどのようにして作られものなのかを、さまざまな学問を概観し考える、と表紙カバーに記しています。

526日からのTwitterシリーズのタイトルは「みんな違って、みんないい」で、第1回はアドラー心理学から「世の中に絶対的に正しい価値観は存在せず、何を大切にしたいかは個人の自由だ。そして、みんな違って、みんないい。誰に強いられることなく、自分の大切にしたいものを大切にする。だからこそみんな幸せに生きられる」を紹介。

そして第2回で金子みすゞ作「わたしと小鳥とすずと」を取り上げました。 私が両手をひろげても/お空はちっとも飛べないが/飛べる小鳥は私のやうに/地面を速くは走れない 私がからだをゆすっても/きれいな音は出ないけど/あの鳴る鈴は私のやうに/たくさんな唄は知らないよ 鈴と、小鳥と、それから私/みんなちがって、みんないい

この詩には私(速く走れる)と、小鳥(空を飛べる)と、鈴(きれいな音を出せる)が登場。それぞれに得意なこととできないこと――その違いが説明され、最後に「みんなちがって、みんないい」と結ばれます。この詩が詠まれてから100年近く経ちますが(19303月没、享年26歳)、そのみずみずしさと多様性を先取りした内容には敬服です。                               

アドラー心理学からの当該部分と、金子みすゞ作「わたしと小鳥とすずと」は、いずれも「みんな違って、それでいい」の肯定ですが、冒頭の書籍『「みんな違って、みんないい」のか?』は「人や文化によって価値観が異なり、それぞれの価値観には優劣がつけられない」という考え方を相対主義とし、別の考え方があることを提示しています。

それは普遍主義で、さまざまな問題について「客観的に正しい答えがある」という立場をとるものです。この場合のよくある答えは、「科学的に判断すべきだ」ということです。科学は「客観的に正しい答え」を教えてくれると多くの人は考えています。探偵マンガの主人公風に言えば、「真実は一つ!」という考え方といってもよいかもしれません。

前出著者は、最近、「正しさは人それぞれ」と並んで、「どんなことでも感じ方しだい」とか、「心を傷つけてはいけない」といった感情尊重の風潮も広まっています。しかし、学び成長するとは、今の自分を否定して、今の自分ではないものになるということです。これは大変に苦しい、ときに心の傷つく作業です、と語っておられます。

参考文献:新書『「みんな違って、みんないい」のか?』(*山口裕之〈徳島大学総合科学部教授〉著/筑摩書房刊/

『「コーチング脳」のつくり方』(宮越大樹著/ぱる出版刊)

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2023年5月21日 (日)

「変わりたいのに変われない」のジレンマに向き合う

「ニ―バーの祈り」は、アメリカの神学者「ラインホールド・ニーバー」が1943年にマサチューセッツ州西部の山村の小さな教会でのお説教したときの祈りとされています。「平静の祈り」、「静穏の祈り」とも呼ばれ、第二次世界大戦中に兵士たちに広まり、その後、世界中で広く知られるようになりました。その全貌(大木英夫氏訳)は以下の通りです。

 

神よ、変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。

変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。

そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、

識別する知恵を与えたまえ。

 

「変えることのできるものを変える勇気」とは

「他人と過去は変えられない」との考えに沿えば、「自分と未来」は変えられる可能性があるでしょう。しかし、アナトール・フランスによれば「変化はそれが周囲から祝福される性格のものであっても苦痛を伴う」ようですから、変えるのには勇気がいるのですね。 

                

「変えられないものを受けいれる冷静さ」とは

「風水盆に返らず」の故事もありますが、世の中には自分の力や努力だけでは変えられないものもあります。そうした事柄にいつまでも執着しない冷静さが大事なのでしょう。

 

「変えることのできるものとできないものを識別する知恵」とは

キルケゴールの著作に『あれかこれか』がありますが、単純な二者択一も哲学者のテーマになるのですね。識別する知恵を身につけるのが人生の目的のひとつなのかも。

 

さて、Twitterにシリーズで「変わりたいのに変われない」をツイートしましたが、その1回目に変える勇気の好事例として、数年前の世界的ベストセラー『嫌われる勇気』を取り上げました。この本は、企画書上では『なぜ、あなたは変わりたいのに変われないのか』がタイトル案だったそうです。それが出版直前で『嫌われる勇気』となりました。

「嫌われる」と「勇気」という普通、組み合わされることのない単語を組み合わせることで、化学反応が生み出されている素晴らしいタイトルですが、決定までには「嫌われる」が刺激的過ぎて曲折があったとのこと。候補に上がったのは、『無意味な人生に意味を与えよ』『自己を啓発せよ』『劇薬の人生論』『普通であることの勇気』などだったそうです。

最後はシリーズ2回目の「守破離」です。世阿弥の『風姿花伝』出典説もありますが、ここでは千利休『茶の湯の心得』を取り上げました。守(維持):教えを守り、基本を身につけるため「型」を手本とし反復模倣。破(小変化):基本を応用し、試行錯誤しながら個性や特性の発揮を目指す。離(大変化):新しい独自の「型づくり」に取組み「新境地」を拓く。

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2023年5月14日 (日)

「楽観」と「悲観」が人生に及ぼす影響について

心理学者のマーティン・セリグマンは、2年間にわたりメットライフ生命保険に採用された15千人以上の新人外交員の営業成績を追跡調査した。楽観度と実際の販売実績を比較したところ、楽観度の高い外交員の売上は、悲観的と判定された外交員の売上を37%上回っていた。さらに、楽観と悲観の上位10%の比較では楽観派が88%も上回った。

セリグマンの別の研究によると、説明スタンスを悲観的なものから楽観的なものに変えるだけで、気分が楽になり、グリッド(やり抜く力)が増すという。このことは個人ばかりでなく、集団にも当てはまる。彼はメジャーリーグの野球チームに関する新聞記事を分析し、ある年の監督の談話(楽観と悲観の比)から、翌年のチーム成績を予測できたと。

では、私たちが日常接する人がどちらのタイプかを見極めるにはどうすればよいでしょうか? 私が研修で実演するのは、水の入ったペットボトルとコップを用意し、演壇の上でコップに半分水を注ぎます。そして、受講生に尋ねるのです。このコップには「半分しか水が入っていない」と思うか、それとも「まだ半分残っている」と思いますかと。

実は、これは劇作家のバーナード・ショーの受け売りです。彼は、ある討論会で次のように発言しました。「さて、二人の前に、ウィスキーが半分入ったボトルを置くとしましょう。楽観主義者は『なんて嬉しいんだろう! まだ半分も入っている』と喜びの声をあげますが、悲観論者のほうは『残念だなあ! もう半分しか残っていないよ』とつぶやくと。

最後は京セラ創業者・稲盛和夫氏の言葉から。氏は「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」という姿勢を示していらっしゃいます。新しいことを成し遂げるには、まず「こうありたい」という夢と希望をもって、超楽観的に目標を設定することが何より大切です。そして、「必ずできる」と自らに言い聞かせ、自らを奮い立たせるのです」と。

「しかし、計画の段階では、『何としてもやり遂げなければならない』という強い意志をもって悲観的に構想を見つめ直し、起こりうるすべての問題を想定して対応策を慎重に考え尽くさなければなりません。そうして実行段階においては、『必ずできる』という自信をもって、楽観的に明るく堂々と実行して行くのです」と。

「昨日よりは今日、今日よりは明日、と次から次へと新しいことを考えていく。つまり、常に創造的なことを考えるということが、私(稲盛和夫氏)の習い性になっています。そのおかげで、私は新しい技術を次々と生み出してこられたのだと思いますし、京セラも今日のような大企業に成長してこられたのだと信じています」と。

参考文献:『プレッシャーなんてこわくない』(ヘンリー・ウェイジンガー&J・P・ポーリウ=フライ共著/早川書房刊)

『あなたは人にどう見られているか』(松本聡子著/文藝春秋社刊)

『京セラフィロソフィ』(稲森和夫著/サンマーク出版刊)

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2023年4月30日 (日)

象集団のように賢ければリーダーは務まるらしい

『ドラッカー思考法大全』によると、「「データ」に意味を加えたものが「情報」であり、その情報を「成果をあげる能力」に転換したものが「知識」になると。象は年齢が一番高いメスがリーダーとなるのは、成熟オスが群れを離れることと無関係ではないにしろ、渇水期にどう進めば水源に到るかの知恵(経験)を最優先した合理的な判断なのでしょう。

またドラッカーは、「知っていることとできることは違う」として、こんな事例を挙げています。「ある地域を空爆するかどうかは司令官の判断である。しかし、その司令官も1気象予報官の判断を無視して飛行機を飛ばすことはできない」と。それは気象予報官だけでなく、市場調査担当者やマーケティング担当者などについても同じことがいえると。

ところで、一見理にかなった象の集団のような考え方が、はたして今日のビジネス社会で通用するでしょうか。これについては、「1匹の羊に率いられた100頭のライオンと、1頭のライオンに率いられた100匹の羊が戦ったら」という喩え話がよく語られますが、アレクサンダー大王もナポレオンも強者のパワフルリーダーシップの支持派です。

しかし、強者が率いれば弱卒も力を発揮するとの考え方に異を唱えた経営者がいました。それは、すでに過去の人との見方(最近は再評価されてきた感あり)もあるようですが、30年も前からスタートアップ企業家養成所のようだとして早くから注目を集め、そのトレンドが今日まで脈々と引き継がれているリクルート創業者・江副浩正氏がその人です。

江副さんのリーダーシップは年長のメス象のそれに似ているのではないでしょうか。

戦略の古典として知られる『孫子の兵法』の「計略(第一)」に「将とは、智・信・仁・勇・厳なり」があります。白川静博士の『字通』によると、「智」とは知恵のあること、「信」はまこと、「仁」はいつくしむこと、「勇」は勇ましいこと、「厳」はおごそかなこと。

孫子の「将とは、智・信・仁・勇・厳なり」を、白川博士の『字通』の解説に沿って理解を進めると、前段の「智・信・仁」と後段の「勇・厳」の意味するところは大きくわかれます。前者は年長のメス象の穏やかなサーバント・リーダーシップを思わせ、後者は1頭のライオンの100匹の羊の集団への支配型リーダーシップが当てはまりそうです。

なお、『孫子に経営を読む』の著者は、マキャベリの『君主論』から「君主は、たとえ愛されなくてもいいが、人から恨みを受けることがなく、しかも怖れられる存在でなければならない」を引用し、『孫子』の「信や仁という人から敬愛される徳目」よりも、「勇や厳という恐れられる特性」を重視するマキャベリの姿勢に疑問符を投げかけていらっしゃいます。

参考文献:『ドラッカー思考法大全』(藤屋伸二著/KADOKAWA刊)

『孫子に経営を読む』(伊丹敬之著/日経BP&日本経済新聞出版本部)

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2023年4月25日 (火)

「作業」「雑用」といった誤った認識について

稲盛氏は、「現場にはヒントがたくさん」あるとして、ある先輩社員とのエピソードを『京セラフィロソフィ』に書かれています。その先輩社員は大変真面目な方で、黙々と仕事をされていたと。あるとき、セラミックの原料となる粉を混ぜあわせる際、先輩が洗い場に座り込んで、一生懸命にボールミル(陶器製容器)をたわしで洗っていました。

中に入っているボールには欠けてくぼんでいるものもあり、そのくぼみに実験で使った粉がこびりついていたりするので、彼はそれをヘラでほじくって、きれいに水洗いをしていたのです(一見要領悪そうに)。実験を始めた当初の稲盛氏は、「この原料とこの原料をボールミルに入れて混ぜる」と学校で習ったとおり、何の気なしに混ぜていました。

ところが、いい加減に洗っている稲盛氏は、なかなかよい実験結果が得られない。そこで頭をガーンと殴られたような気がしたそうです。簡単に洗っていたのでは、前の実験で使った粉が少し残ってしまう。そのわずかな異物の混入がセラミックスの性質が変えてしまったのです。そのことから「現場主義」を尊重する京セライズムが確立されました。

次は「雑用」について。著書に『置かれた場所で咲きなさい』がある元ノートルダム清心学園理事長・渡辺和子さんの「雑用」という文章が『忘れないでおくこと』という本にあります。渡辺さんは、家庭の事情もあり30歳近くまで働いてから修道院に入り、英語堪能者だったことから、たった一人の日本人修練女として、ボストンの修練院に派遣された。

修練院は朝5時起床、夜9時就寝の間の時間は、ほとんどが命ぜられ単純労働。そんなある夏の昼下がり、渡辺さんは夕飯の配膳をしていた。一つひとつのパイプ椅子の前のテーブルに皿、コップ、フォーク等を並べるのである。いつの間にか背後に修練長が来ていて、彼女に「シスター、あなたは何を考えながら仕事をしているのですか」と尋ねた。

とっさのことでもあり、「別に何も」と答えた渡辺さんに、修練長は「あなたは、時間を無駄にしています」と叱責するのでした。命じられた仕事をしているのに「なぜ」といぶかる渡辺さんに、修練長は穏やかに言いました。「同じ並べるのなら、夕食を摂る一人ひとりのために、祈りながら置いていきなさい」と。それ時までの渡辺さんは…

仕事はすればいい(doing)と考えていたが、仕事は意味あるものとする(being)ことが大切なのだ。時間の使い方は、そのままいのちの使い方になるのだと。そして、この世の中に雑用はない、用をぞんざいにした時に雑用になるのだというように考えを改めました。雑用を雑用とすることなく、平凡な暮らしを、非凡な日々にして過ごしていこうと。

参考文献:『京セラフィロソフィ』(稲森和夫著/サンマーク出版刊)

『忘れないでおくこと』(暮しの手帖編集部編/同社刊)

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2023年4月17日 (月)

言葉の「言葉遣い」「言い換え」「文字表現」

最初は「言い回し」です。結婚披露宴のスピーチでは、離婚を想像させる「(縁が)切れる」「別れる」などは、忌み言葉として使ってはいけません。何度も結婚することを想像させる重ね言葉、「皆々様には…」「ますます…」もNGです。では、結婚披露宴などで、以下のような意味のことを話そうとするとき、どのように言い換えればいいでしょうか。

*「本日はお忙しい中…」→「本日は、ご多用中の中…」(「忙」の字の「りっしんべん」は「心」を表わします。「忙しい」は「心を亡くす」の意味になるので。

*短い時間ではありますが→つかの間ではございますが/*冷めないうちにどうぞ→温かいうちにどうぞ!/*ケーキをカットします→ゲーキに入刀します

*スタートを切ることになります→スタートラインに立ちます/*実家を離れてから→一人暮らしを始めてから/*試合に負けたとき→試合に勝てなかったとき/*受験に落ちてしまい→受験がうまくいかず/*忘れないでください→お心にとどめていただけますよう/*くれぐれもよろしくお願いいたします→今後ともよろしくお願いいたします。

次は「言い換え」です。「ご苦労さまです」と「お疲れさまです」について、『president2023414日号に言語学者の金田一秀穂先生の「日本一わかりやすい『日本語』の取扱説明書」中にこれに言及する箇所がありました。その内容は、これまでの研修講師としてマナー教育で語ってきたことに、修正を加える必要を感じさせるものでもありました。

該当箇所は以下の通り。「実際によくある敬語の間違いを紹介しましょう。たとえば目上の人に対して『ご苦労さまでした』というのは厳禁です。『ご苦労さま』が失礼だとわかる人が『お疲れさまでした』と使うケースもありますが、それも不適当です。目上の人に対して、労ったり慰めたりすること自体が敬意を欠いています」。

最後は、日常で使用頻度の高い「ください」の仮名表記と漢字交じり表記の違いにつてです。この二通りの書き方に大きな違いがあることを教えてくれる好事例があります。たぶん昭和生まれの方には馴染のある、飴の専門店・榮太樓本舗での実話です。このお店は新商品の認知度を高めるためにSNSも活用したキャンペーンに取り組みました。

そんな折、Twitterに書き込みがありました。それはカタログやSNSに「是非ご賞味下さい、と漢字で『下さい』と書くのは、お客様に対して上から目線の書き方だ。江戸の老舗菓子店が使う言葉ではない」というものでした。榮太樓本舗では、このご指摘を真摯に受け止め、即座にカタログをはじめすべての媒体表現を「ください」に変更しました。

公益社団法人日本広報協会によると、漢字を使う場合は、「飲み物をクダさい」といった実質動詞(「くれ」の尊敬・丁寧表現)の場合は、「下さい」と漢字書きにします。仮名書きにする場合は、「お飲みクダさい」といった補助動詞(何かをお願いするときや、敬意を表す尊敬・丁寧表現)の場合は、「ください」と仮名書きにします。

参考文献:『相手のことを思いやる ちょっとした心くばり』(岩下宣子著/三笠書房刊)

『愛されるマーケ嫌われるマーケ』(日経クロストレンド編/日経BP刊)(1336字)

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2023年4月10日 (月)

心理的安全性にまつわる4つの不安と4つの思考

心理的安全性を阻害する4つの不安

「無知への不安」:こんな単純なこともわからないと思われそう  

「無能への不安」:こんな簡単なこともできないのかと思われそう  

「否定への不安」:反対して、人間関係や自己評価に傷をつけたくない  

「邪魔への不安」:自分だけ悪目立ちして、仲間はずれになりたくない

 

心理的安全性を壊す4つの思考 

「完璧主義」:他者のすべての行動に完璧を求めたい  

「コントロール欲求」:他者の思考や行動を自分の統制下におきたい  

「過度の所属欲求」:同じ価値観や意見を持ち、一体感ある仲間でいたい  

「犯人探しの本能」:悪いことが起きると、犯人を探して非難したい

 

グーグルが発見したチーム成功要因5要素の1番目は「心理的安全性」

グーグルは、大半が同じメンバーで構成されている2つのチームの活動成果から、興味深いデーターを検出した(集団的知性〈Collective Intelligence〉の発見)。両チームには共通してハイパフォーマーなメンバーが多く含まれており、個人能力の総和に大きな違いはない。にもかかわらず、チームの生産性には大きな差が発生していた。

これらの実験結果の考察から、個人生産性の合計とチームの生産性は相関関係が少なく、チームの生産性の向上のためには「集団的知性がいかに生まれるか」という視点が重要であることがわかった。この研究の成果は、研究結果である「心理的安全性の重要性」とともに、ビジネス界に世界に大きな影響を与えることになった。

これらを総合的に考察して、グーグルは「心理的安全性がチームの生産性を高める」と結論づけた。ここでいう「心理的安全性」とは、「チームメイトなどまわりの評価に怯えることなく、自分の意見や想いを発信するために必要となる要素」のことで、メンバーからの評価や人間関係のリスクを感じないチームこそ生産性が高いのだと。

 

グーグルの実験結果から、5つの「チーム成功因子」

①心理的安全性:メンバーは「他のメンバーに対して対人関係の不安」を感じない。自分の過ちを認めたり、質問したり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと確信できる。

②相互信頼:メンバーは「クオリティの高い仕事を時間内に仕上げる」という相互の信頼関係を持っており、問題が起きた時にも責任を転嫁しない。

③構造と明確さ:仕事で要求されていること、その要求を満たすためのプロセス、メンバーの行動がもたらす成果について、すべてのメンバーが理解している。

④仕事の意味:仕事そのもの、またはその成果に対して目的意識を持てる。仕事の意味は属人的なものであり、経済的な安定を得るなど、人によってさまざまであるから。

⑤インパクト:自分の仕事には、組織において、社会において意義があるとメンバーが主観的に思える。個人の仕事がどのようなインパクトをもたらしているのかを可視化する。

参考文献:『だから僕たちは、組織を変えていける』

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2023年4月 3日 (月)

活躍中の日本大学理事長・林真理子さんの近著から

ご馳走してもらう時のワイン選び方 「山梨のワイン大使をやっているので、山梨のワインをお願いします」と言うように。山梨ワインなら高くても一万円台で済み、ちゃんと故郷の山梨も立てられるから。もし山梨のワインを置いてないお店なら、「ナパバレーのワイナリーに行ってからはまっているので、カリフォルニアワイン(外国産ワインでも安い方)でお願します」とリクエスト。

宮尾登美子さんの気遣い 1983年(昭和58年)の『NHK紅白歌合戦』の審査委員を務めた時のこと。当日、審査員控室でやはり審査委員だった宮尾先生にご挨拶をしました。紫色の着物をお召しになっておられましたが、審査委員の一人だった女優さんも同じく紫色の着物であることに気づくと、宮尾先生はスーッと姿を消されました。

しばらくすると、何事もなかったかのように違う色の着物に着替えていらっしゃったそうです。色がかぶってしまう事態に備えて着物を二枚用意していらしたのです。その気配りと立ち居振る舞いを見て、「わぁ、なんて素敵なんだろう」と、若き日の林真理子理事長は、いっそう憧れの気持ちを強くしたそうです(交友関係はその後長く続く)。

WBC栗山監督の全選手との3時間の個人面談 「気遣い」につての話に触れたところで日本中、いや世界中の野球ファンの心を揺さぶった、侍ジャパンの栗山監督のことに触れておきたいと思います。一人ひとりと3時間の個人面談といっても、代表選手は30人で、故障による交代の2人を加えると32人。時間にすると面談時間だけで96時間となります。

面談は自分の都合だけで成立するものではありませんし、ときとしては海外にも足を運ばれたはず。国内でも長距離の移動もあり、どう少なく見積もっても96時間の3倍。300時間は最低でも必要だったと思われます。1日の稼働時間を10時間とすると、休みなしで丸1月を個人面談にだけ費やしたことに。想像を絶する取り組みだったはずです。

そして、研修講師として最も驚嘆させられたのは、その面談3時間のほとんどを栗山監督は聴くことに徹したことでした。今回の侍ジャパンのメンバーは若手が多く、良い成果を出すためにはチームコンセプトの共有を優先し、自らの考えを伝えることに重点が置かれてしかるべきところを、選手を知るために、自分のことを話してもらったそうです。

秋元康氏の「なぜ嫌いか」で自分が見える 【閑話休題】さて、秋元氏によると、俯瞰力は、人を謙虚にさせてくれたり、時に励ましてくれたり、物事を長い目で考えさせてくれると。そして自己愛は、バッシングされたり落ち込んだりした時に、たとえ根拠のない自信であっても自分を力づけてくれるのだと。

ちなみに秋元氏の場合、誰かからバッシングされると「なぜ、この人は自分のことを叩きたいのだろうか」と考えると、いろいろなことが見えてくる。また、氏は年に一回、自分が凄く嫌っている人とわざわざ食事をするのだと。すると、自分という人間が見えてくるそうです。その人を嫌いなのは、自分と似たところがあるせいだと気づかせてくれると。

参考文献:『成熟スイッチ』(林真理子著/講談社刊)

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2023年3月27日 (月)

好意は先に伝える、そして言葉は短めを心掛ける

照れくさい気持ちもあるかもしれませんが、やはり好意は後出しではなく、先に伝えておく。先に自己開示しておくことで、30分なり、1時間なり同じ時間を一緒に過ごすにしても、ゼロからスタートしてひとつずつギアを入れていくステップを踏まずに、三段飛ばしでよい印象を持ってもらえることもあります。

「そもそも人は飽きやすい。その興味をそそり、持続させるのはなかなか大変」。どんな状況でも、最初に耳に飛び込んでくる一文が長すぎると、人は「わかりにくい話」と判断し、理解することをやめてしまう。SNSなど、気軽に触れられる「短い尺のもの」が好まれている中、私たちは「長尺の何か」に対してどんどん耐えきれなくなっています。

短い一文で始めれば、「これからこんな話をしますよ」という全体像を相手に掴んでもらいやすくなります。相手も「そんな話をするんだな」と聞く準備ができて、続く話の内容を受け取りやすくなります。しかも一文一文が短い話であれば、「まあ、あと少し聞いてもしんどくないか」と「聞く耳」を持ってもらえるのです。

オンライン会議では、話している人の邪魔にならないように自分の声を「ミュート」するのがマナーですが、話し手としてみれば、まったく聞き手のリアクションが返ってこない状況は不安になります。そこで、声で「なるほど」とあいづちを打ちたくなったポイントで大きく頷いたり、相手の話に合わせて自然と湧いた感情を素直に表情に出してみます。

ゼロから意識的に「顔を作ろう」とすると、わざとらしくなって逆効果ですが、相手の話で引き出された感情を5割増しぐらいで上乗せすると、画面越しでもしっかり相手に伝わりますし、不安にさせません。こうして視覚的な〝あいづち〟を重ねていくと、話している相手はそれが後押しになり、自信を持って自分のペースで話を進めてくれます。

生活の中で意識的に声を使い分けてみると、職場や家族の関係にもうれしい効果があります。相手が疲れている様子なら、頃合いを見ながら落ち着いたときに、いつもの自分の声より少し低めの声でゆったりとしたテンポで話しかけます。「そういえば…」と先ず前置きしましょう。ワンクッション作ることで相手の受け入れ態勢も変わってきます。

途中のプロセスにおいて、「?」と思ったときこそ、言葉にして確認する。あらゆるトラブルにおいて「言った」「言わない」は永遠の問題ですが、結局お互いの思い込みが食い違いの「火種」となります。指示を受ける側も、「つまり…」「だったら、このように…」と前向きに提案しながら、自分と相手の頭の中のイメージを言葉で形にしていきましょう。

出典:『なぜか聴きたくなる人の話し方』(秀島史香著/朝日新聞出版刊)

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2023年3月20日 (月)

第一印象を裏切ると、評価は逆転する

二つのジューサーを比べた面白い実験があります。「薄っぺらい」ジューサー(比較的小さくて、単純な丸みを帯びた形状で、白と透明のプラスチックでできている)と「頑丈な」ジューサー(背が高くて、垂直な形状をしていて、なめらかな曲線の形状で、シルバーメタリックと黒の組合せ)の動作中の動画を被験者に見せました。

「薄っぺらい」ジューサーから頑丈なしっかりした音が出ると誰もが驚きます。見た目が安っぽいので、「チープな音しか出ないだろう」と思っているのですが、実際にはしっかり動くので、「なかなかいいね」と納得します。一方、これもまた驚くのですが、「頑丈な」ジューサーから安っぽい音が出ると、こちらは落胆します。「見かけによらない」と。

つまり、私たちはまず見た目でどんな音が出るかを予測し、その予想がいい方に裏切られると高い評価をし、悪くなると低い評価になります。その予想を裏切られた感覚が製品そのものの評価に転嫁するのです。このような消費者の反応は「丈夫」な掃除機と「かわいい」掃除機を比較した実験でも同じような結果が得られています。

印象によって行動が影響を受けるのは見た目だけではありません。BGMのテンポがゆっくりだと、顧客の店内移動をゆったりとさせ、売上高を増加させることができます。しかし、レストランでは滞在時間が長くなってしまいます。同じように食べているときに聴いている音によって味覚が変わることを、航空会社の機内食の例で見てみましょう。

食べているときに聴いている音によって、味覚が変わります。「ソニックシーズニング」、これは、食べているときに聴く音楽によって味覚に影響を受ける現象です。有名なのはイギリスの航空会社であるブリティッシュ・エアウェイズ(BA)の取り組みです。気圧は味覚に影響を及ぼし、気圧の低い上空では塩味と甘味がわかりにくくなるのです。

地上では食欲をそそる料理も機内では味気ないものになってしまうため、航空会社は調味料を変えたり、味を濃くしたりなどの工夫を凝らしています。BAでは、そうした取り組みに加えて、ファーストクラスでは食事の際に料理に合わせてBGMを変えています。ソニックシーズニングでは、低温は苦みを、高音は甘味を強く感じるとされています。

辛口のシャンパンを提供するときには低音で、かつ炭酸を感じる音を流すと効果的とか。「ほかの航空会社」よりもBAの機内食はおいしい」という調査結果もあるほど。「元々の料理がおいしいのでは」と思われる方もおられるでしょうが、実はBAJALも機内食の製造元は同じです。環境によって人間の感覚が変わる一例といえるでしょう。

出典:『SENSE インターネットの世界は「感覚」に働きかける』(堀内進之介&吉岡直樹著/日経BP刊)

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2023年3月13日 (月)

ユーモアは人間心理と行動に重大な影響を及ぼす

米国の世論調査で、「最近の出来事」の記憶とその情報源を調べると、新聞やお堅いニュース番組より、バラエティ―番組のような「ニュース番組」との回答が多かった。また、「ストーリーにデータを効果的に盛り込む方法」という講義を笑いながら受講した学生のほうがコンセプトをその後の授業にも応用し、8週間経っても内容を確り覚えていた。

真面目さと陽気さは相反しない。近年のユーモア研究者たちの発見は、それこそ至るところで、「真面目さと陽気さは相反する」という誤った思い込みを覆し、陽気でいきいきとした生活がもたらす大きなメリットを明らかにしています。そうした研究成果が解き明かしたことがあるとすれば、深刻な事態に対処するために、自分自身が深刻になる必要はないということなのです。

ユーモアのセンスは筋肉に似ている。身体と同じように、ユーモアのセンスも定期的に使わないと衰えます。このことは、学生やエグゼクティブ対象の講座で「最近、あなたが腹の底から笑ったのはいつですか?」と質問すると、ほとんどの人が思い出せないことからも裏付けられます。ユーモアは遺伝信号によって決まるのではなく、トレーニングと実践によって強化されるスキルなのです。

仕事上のユーモア、4つの効果(行動科学の研究より)仕事上のユーモア効果は、①パワー:地位が高く知性が優れている人という印象を与え、相手の行動や意思決定に影響を及ぼす。②つながり:知り合ったばかりでも信頼感が生まれ、打ち解けることができる。③創造力:それまで見落としていた関連性に気づきやすくなる。④レジリエンス:ストレスが緩和され、挫折から立ち直りやすくなる。

あるユーモア実験の感想評価から。参加者はいくつかの項目において評価を求められた。すると、ユーモアのある感想を述べた人たちのほうが、「有能である」印象を与えた割合が5%高く、「自信がある」印象を与えた割合が11%高く、「地位が高い」印象を与えた割合が37%高いことがわかりました。コメントの後半のふざけたフレーズによって、評価が大きく分かれたとのこと。

オバマ大統領のユーモアに満ちた2011年の一般教書。大統領は、政府の効率性を向上させるべき分野として次の例を挙げました。「サケが淡水にいるときは内務省の管轄です。しかし、サケが海水にいるときには商務省の管轄になります」。そして、ひと呼吸置いて「問題がさらにややこしくなるのは、スモークされたときです」で会場は爆笑に包まれ、聴取者にはサケに関するスピーチが記憶されました。

『マネー・ボール』著者(マイケル・ルイス)と娘さんのトレーニング体験。8歳の娘を2日間の子ども向けユーモアレッスンに通わせ、彼も大人向けのレッスンを受講した。午前中3時間のレッスン後、昼休みに外に出たとき父親は、もう汗びっしょり。ところが、教室から出てきた娘は満面の笑みを浮かべて、こう言った。「すっごく楽しかった! めちゃくちゃ簡単だった!」と。これが子どもと大人の違いなのかと彼は思った。

出典:『ユーモアは最強の武器である』(ジェニファー・アーカー&ナオミ・バグドナス著/東洋経済新報社刊)

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2023年3月 6日 (月)

3人の大物タレントが制作現場で発揮する人間力

202210月のTwitterツイートから。「朝、上司が『おはよう』と声がけしても無視する部下。考えた末に、上司が『○○君おはよう』と名前を添えてみたところ、その日を境に挨拶を返すようになった」というお話でした。今回は、よい人間関係を築くために、制作現場で見事なパフォーマンスを発揮している3人の大物タレントを紹介します。

一人目は、お笑い・司会者・俳優・映画監督として活躍中のコンビ「ウッチャンナンチャン」のウッチャンこと内村光良さん。関係者の間では有名なエピソードではあるらしいのですが、内村さんは現場で関わる様々なスタッフの「名前」を覚えて呼びます。一見些細なことのようですが、これが実はチームモチベーションにとって効果覿面なのだと。

テレビ収録や舞台で関わるスタッフは数十人からときに100人を超え、全員の名前を記憶することは容易ではありません。その点、内村さんは番組ディレクターなどはもちろんのこと、アシスタントや照明スタッフに至るまで、それぞれのメンバーの名前を覚え、「○○さん、おはよう」「〇〇さん、これってどうですか?」というように話しかける。

リーダーが働く仲間、チームメイトを名前で呼ぶことは、相手の尊厳を尊重する行為とみなされる。そもそも人にとって「名前」とは、あなたがあなたであることを認められる〝アイデンティティ〟の根幹。だからこそ、リーダーがメンバーの「名前」を覚えて呼ぶことは「他の誰でもないあなた」を特定することになり、親愛や敬意の表明に繋がります。

次は、昨年のNHK大河『鎌倉殿の十三人』で主役を演じた小栗旬さん。鈴木奈穂子アナが番組公式インスタグラムで、《100人以上いるスタッフの顔と名前を覚えるなど『どの現場でもいつも通り。自分ができることをしている』とサラッとおっしゃっていたのが頼もしくて。小栗さんのようなリーダー、職場に1人いてほしい!》と興奮気味に投稿。

その一方で、小栗さんは「毎日、出演者やスタッフに配るマスク(小栗さんの遊び心)にひと言メッセージを書いていたそうです。“今日は何が書かれているのかな?”と楽しみにしている人も多かったとか。小栗さんのこのようなスタッフへの気遣いは、ご自身がまだ20代前半のとき、『人の名前はちゃんと覚えなさい』との父親の教えに基づくそう。

最後はこのところ存在感を高めている吉高由里子さん。2023224日(金)の『朝日新聞』朝刊「撮影5分前」に「恋され愛される座長」(番組プロデューサーのコラム記事より)が掲載されました。そのまま引用すると、「現場が恋する人がいる――。ドラマ『星降る夜に』で産婦人科医・雪宮鈴を演じる我らが座長・吉高由里子のことだ。」

「彼女はすべてのスタッフの名前を記憶している。撮影初日からスタッフ表を片手に読みがなを確認する姿に、驚かされた。極寒の過酷なロケで緊迫した時も、あえておどけて現場を笑いに包んでくれる。自分の疲れを見せることはなく、誰かの疲れは見逃さない。それでいてカチンコが鳴った瞬間に涙を流し、息をのむような芝居を見せる。」

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2023年2月28日 (火)

節目となる30代、50代、70代の健康管理について

この稿は『PRESIDENT』の23日号の、「最新ビッグデータで判明 体調不良を感じやすい病気と予防策2023」から、主に30代、50代、70代に関する記述をピックアップしてまとめています。本誌の当該特集の冒頭に、「各年代によって注意すべき「厄」が変わる! とあり、本厄を男女別に下記のように定義しています。

男性 不摂生の厄:平成11年生まれの24歳、ストレスの厄:昭和61年生まれの37歳、肥満の厄:昭和48年生まれの50歳、更年期の厄:昭和35年生まれの63歳。

女性 不摂生の厄:平成10年生まれの25歳、婦人病の厄:昭和59年生まれの39歳、更年期の厄:昭和46年生まれの52歳、ロコモの厄:昭和35年生まれの63

上記を踏まえると、男性は37歳が「ストレスの厄」に該当しますので、ここでは男性の30代を取り上げます。「30代で血圧や血糖値、肝機能の検査値に異常が見られる方は、5060代に大きな病気になるリスクが高くなります。この段階でしっかり体のケアをするかどうかで、その後の人生大きく左右するといっても過言ではありません」とあります。

次は、50代です。この年代で多く見られるのは糖尿病ですが、この病気は一般的に食べ過ぎと運動不足が要因といわれます。糖尿病は20歳ぐらいから発症率が緩やかに上がって、50歳から急上昇する傾向があるそうです。そして、一度発症すると食事制限などが大変なので、50歳で改めて生活習慣の見直しを専門医がお勧めしています。

また、50代男性が注意すべき病気のもうひとつが脳血管疾病です。脳梗塞や脳失血などの総称が脳血管疾病ということになります。この病気は40代から少しずつ発症リスクが高くなり、50代に入ると加速度的に上昇するそうです。同じように、心筋梗塞など虚血性心疾患が発症するのも50代です。

一方、女性は55歳を境に動脈硬化が加速すると言われています。女性の厄年はこれまで数えで19歳、33歳、37歳、61歳とされてきましたが、本誌の解釈は上記の通り。こうした考え方によると、従来の37歳の本厄が今は52歳に当たるので、この年代に動脈硬化に対する予防を心がけるべきと専門家がアドバイスしています。

70代以降に発症することが多いアルツハイマー型などの認知症も、50代前後から若年性発祥のリスクがあるそうなので、気をつけたいですね。50代は「もう若くない」との後ろ向きの心が病気に表れるそうです。前向きな生き方や心の持ちようが病気の予防に役立つようですから、多少不調を感じても決して後ろ向きにならないようにしましょう。

最後に70代。ハーバード大学が75歳に30年前の仕事に戻ったと仮定し、当時の映像や新聞の中で1週間暮す実験をしました。すると、全員の体力や認知機能が改善され、見た目も若返り、行き「車いす」帰り「歩き」まで起きたそうです。若返り策の好例は同窓会だとか。なるほど、高校の同窓会に行くと、たしかに18歳のときの気持ちに戻ります!

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2023年2月20日 (月)

「成績優秀者」は社会で必ずしも成功しないのか?

学業がキャリアの成功を予測する判断材料にならないことは、あらゆる業界調査で明らかになっている。偉業を成し遂げた建築家たちを調査したところ、もっとも独創的な建築家は平均してB評価の成績で学校を卒業していたという。かたや全教科でAを取った建築家たちの多くが、正しさにこだわり、保守的な考え方や慣行を再考したがらなかった。

同様のパターンは、大学を首席で卒業した学生を対象にした調査でも見られたという。「卒業生総代が将来、先見の明がある人物になる可能性は低い」と教育学研究者のカレン・アーノルドは述べている。「そのような人たちは通常、既成システムの一部になり、それを改革することはない」と。IQよりはEQ(心の知能指数)が大事らしい。

学校で優秀な成績を収めるには、たいてい古い思考方法をマスターする必要がある。一方で、素晴らしいキャリアを築くには、常に新しい考え方不可欠だ。ダニエル・ゴールマンは、ビジネスのパフォーマンスを上げるためには、EQが知能指数(IQ)よりも重要であり、経営幹部陣が成功をおさめる要因の「ほぼ90%」をEQが占めると主張している。

ただ聴いてもらうだけで人は安心して素直になれる。親身に、公平な態度でじっと耳を傾ける人と対話することで、人々の不安は軽減され、自己防衛が緩和されることが、複数の実験で明らかになっている。人々は思考の矛盾を避けようとするプレッシャーをあまり感じなくなり、それにより自分の意見を熟考し、心の内のニュアンスに気づき、思ったことを率直に述べられるようになったという。

このような傾聴法の利点は、11の対話に限られるわけではない。グループの議論でも有用とのこと。政府機関、テクノロジー企業、そして学校を対象に、スティックを持つ人だけに発言権が与えられ、他の人は傾聴するというルールでグループの議論を実施する実験を行ったところ、人々の考え方はより多面的になり以前ほど偏ることがなくなった。

心理学者は、気持ちや扱い方を理解するのに困難を感じることがある相手と膝を交えて話し合う時などに、このスキルを使ってみることを勧めている。それは、発言者の主張を正しく理解するように努め、発言者の主張に興味を持ち、そして発言者の主張を遮ることなく数分間、黙って聞くために、それらがきわめて有効だから。

多くの人は話をする時、自分を賢く見せようとします。それに対し、優れた傾聴者が賢く見せようとするのは、自分自身ではなく対話の相手です。優れた傾聴者は、相手が自身の考えを謙虚さ、疑念、そして好奇心を持って掘り下げるように手助けします。そうすると、相手は自分の考えを表現する機会を得た時、新しい発見を見出すことが多いのだと。

※参考文献:『THINK AGAIN 発想を変える 思い込みを手放す』(アダム・グラント著/三笠書房刊)

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