2024年5月21日 (火)

抗菌力など、人を癒す「木の7つの力」

人類(とくに日本人)は木材を利用してきた。日用品や住宅資材など生活の中でありとあらゆるものに木材を利用し、「森と木の文化」を育んできた。なかでも日本には豊かな森林に恵まれ、最も身近なものとして木材があった。そして、豊富な樹種に恵まれたことから木の特性を理解して上手に使い分け、無駄なく利用し、何度も再利用してきた。

 

調湿性・呼吸している木(抗菌性に優れる)

住環境の快適さを左右する要素は温度、風速、湿度の3つといわれる。住宅の内装材に木材を用いた場合とビニールクロスを用いた場合とを比較すると、後者の住宅では1日周期で大きな湿度変化を繰り返す。対して木材の住宅では湿度が50%前後で一定する。これは木材が室内の湿度調節(高ければ湿気を吸い、低ければ吐き出す)を行っているから。

湿度は人間の衛生面とも深い関係がある。病因となる細菌類、カビ類、ダニ類といった微生物は、彼らに都合のよい湿度のときにほこりなどを栄養源として繁殖していく。調査によると、空気中のほこり1グラム当たりに一般の細菌数が64千個、大腸菌が4800個、黄色ブドウ球菌が2700個、セレウス菌が2800個、緑膿菌が210個も発見されたという。

これら浮遊菌は、湿度が高いときや湿度が低い状態では長い間生き続けることができるが、湿度が50%前後では短時間で大半が死滅してしまう。同じようにカビ類は、湿度が80%以上にならなければ増殖を防ぐことが可能となり、ダニ類は湿度が70%以下になるとほとんどいなくなる。壁などの内装に木材を使えば、健康的な生活が保証されるようだ。

 

断熱性・熱が伝わりにくい木

人間の皮膚の表面温度は、環境によって敏感に反応する。コンクリート、塩化ビニールタイル、木材の3種類の材料の床に立った際の足の甲側の皮膚温の変化を測定すると、皮膚温の低下はコンクリートが最も大きく、木材が最も小さくなる。長時間立って作業する台所などでは、足の冷えを防ぐため木材の床が最適といえる。

 

吸音性・人間の耳に優しい木

室内で発生する音は、住宅の内装材で吸収することができる。木材や畳は音を適度に吸収してくれるが、コンクリートでできた部屋では、音が吸収されずに、いつまでも室内に残ってしまう。このように室内の吸音力が小さいと、反射音が大きく、音が響きすぎて耳障りに感じてしまう。反対に吸音力が大きすぎても音が聞きづらく不快感を与えてしまう。

 

緩衛性・衝撃を和らげる木

ただ歩くだけでも、足の裏は膝、腰などに衝撃を受けており、その程度は床の材料によってかなり違ってくる。割れやすいガラスの玉に砂を詰めて落下させ、どのくらいの高さから落としたときにガラス玉が割れるかを調べた実験がある。木材の上に落とした場合は3540㎝だったが、プラスチックの場合は20㎝、大理石では15㎝で割れてしまった。

 

視覚特性・目に優しい木

光の感じ方には、色相、明度、彩度といった要素が関係している。木材の色は種類によってそれぞれだが、一般に黄赤系の暖色と呼ばれる色が多く、暖かいイメージがある。明度は物の重量感が影響するが、黄色っぽい木材は一般に明度が高く軽快ですっきりしたイメージ。赤っぽい木材は明度の低いものが多いことから重厚で深みのあるイメージになる。

 

触感性・歩きやすい木の床

摩擦の度合いを表す数字には、静摩擦係数(止まっている物体が動き出すとき)と、動摩擦係数(滑っているとき)がある。これらが大きすぎると疲労が増え、少なすぎると滑りやすくなり、両係数の差が小さいほど歩きやすく感じる。ヒノキやカエデの床では、摩擦係数が適度に大きく(両係数ともほぼ同じ)が、塩化ビニールタイルの床では差が大きい。

 

芳香性・快適さを感じる香しい木

木材の成分を抽出したものが精油。一つの木には50以上もの種類の成分が含まれる。ヒノキやヒバ、トドマツの精油は、アンモニアでは90%以上、亜硫酸ガスでは100%の脱臭率を示す。脱臭に加え、樹木成分には、殺ダニ効果にあり、屋久杉の精油は3日後までに90%以上を、桜の成分のクマリンは1日で全滅させる効果がある。

※参考文献:『恵みの森 癒しの木』(矢部三雄著/講談社刊)

|

2024年5月13日 (月)

詩歌に詠みこまれた「母の日」の記憶

『角川 現代短歌集成 第2巻 人生詠』20091130日初版発行 角川学芸出版刊より

◆家族 「母」 327341頁 329首中 「母の日」が詠み込まれている短歌は6

八十五の翁となれど母おもへば

ただになつかし今日は母の日  窪田空穂『木草と共に』(64年)

「なまみづ」や「なまきず」という音感と

ゆらゆら棲みぬ母の日きのう  米川千嘉子『たましひに着る服なくて』(98年)

 

母の日も母の姿は常のごと

茄子畑の草這うやうに引く  今野金哉『究竟頂』(00年)

母の日のバラの花首萎えたれば

五月の風に吊るしておくなり  黒沼春代『ゆりかごのうた』(03年)

 

母の日に母なかりしよ一木に

添いてゆうらり草の風鐸  百々登美子『風鐸』(05年)

ははの日を祝う母無しふらここの

夕べ緑の風に軋みぬ  吉濱みち子『春灯』(09年)

 

『秀句350 34 「母」』 伊藤敬子編 199441日初版 蝸牛社刊より

「Ⅰ 春」より「母(はは)の日」の登場する12句及び「母(はは)」の登場する6句

母の日や母亡く母と呼ぶ子なく 山下直子

母の日や息子が造る手巻き寿司 皆川貞子

母の日の母連れて来ぬ百花園 北澤瑞史

母の日の母を饒舌たらしめむ 佐久間慧子

母の日の島を遠目に足浸す 吉田鴻司

母の日や何もせずとも母とゐて 大橋敦子

 

母の日や大きな星がやや下位に 中村草田男

母の日や紡ぐごとくにハープ弾く 赤松蕙子 

母の日に亡き母と聞くほととぎす 広瀬釣仙

母の日や大方の母けふも疲れ 及川 貞

母の日や何もせずとも母とゐて 大橋敦子

母の日に提げてごくらくいろの花 長谷川双魚

 

春著着し母の外出に目ざとき子 稲畑汀子

もう誰もははを叱らず桐の花 菅原鬨也

やや派手を母にすすめて花衣 中村明子

手のひらに母の温もり蓬餅 内藤 豊

傷舐めて母は全能桃の花 茨木和生

立春や母の小包日の匂ひ 柴田左田男

 

2024512日にXに投稿&stand.fm(vol.94)の 葉 祥明作『母親というものは』学習研究社刊より3

嬉しいことがあった時 一番先に 知って欲しいのは 母さん

悲しいことがあった時 一番初めに 知って欲しいのも 母さん

 

大きかった 母さんが 小さくなり 小さかった 私が 大きくなった

でも

こころの中の 母さんは今でも大きくて 私は 小さな子どものままです

 

母さんが いなくなったら 故郷(こきょう)に帰る 理由がなくなりました 

母さんの いない故郷になんか 帰る気がしません

「故郷」って 母さんのことでした!

 

※参考文献:『角川 現代短歌集成 第2巻 人生詠』(角川学芸出版刊)

『秀句350 34 「母」』(伊藤敬子編/蝸牛社刊)

『母親というものは』(葉 祥明作/学習研究社刊)

Leaf Wrapping 山本志のぶ ホームページはこちらです

研修講師のチョットいい話/stand.fm

|

2024年5月 2日 (木)

運命の本に出合うための図書館の活用法  探している本に出合うのは難しい⁉

100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』(福井県図書館(講談社)という本があります。これはネットで話題になった図書館関係者の「覚え違いタイトル」の実例を集めたもの。たとえば、タイトルにある「100万回死んだねこ」ですが、正しい本のタイトルは『100万回生きたねこ』。ロングセラーとして有名な絵本です。

近年、タイトルの長い本の出版が増えていますが、その典型といえるかもしれない例が同書籍に紹介されています。それは「『年だから解雇よ』みたいな本…」ありますか?」です。これだけの情報をもとに図書館司書が行き当たったのは、『トシ、1週間であなたの医療英単語を100倍にしなさい。できなければ解雇よ。』だったとのこと。実に奥深い。

検索は「全文ひらがな」と「助詞抜き」がオススメ  福井県立図書館の場合、司書が検索するとき、タイトルならば基本的に全文ひらがなで入力するとのこと。図書館の検索システムはGoogleなどの検索エンジンとは仕様が違うため、正しくはひらがな表記のところを漢字にしてしまうとヒットしないらしい。ところが、ややこしいことに、著者名は逆に漢字で検索したほうが見つかりやすくなることがあると。

たとえば福井県立図書館の蔵書検索で開高健の著作を探すときに間違って「かいこうけん」と入力しても見つかるが、図書館によっては正しく「かいこうたけし」で検索しないとヒットしない場合があるとのこと。このあたりは導入している検索システムによって異なるので、レファレンスカウンダ―でその図書館のシステムの確認はしておきたい。

それからもうひとつ〝助詞の罠〟にも注意。『NHK出版から出ている、「感性と哲学」はないですか?」の問い合わせに、福井県立図書館では、「かんせい てつがく」と間にスペースを入れて検索する。検索システムが「てにをは」を間違っているとヒットしないためで、助詞を抜き、複数のキーワードから探すと正しい『感性の哲学』に到達する。

なおGoogleで調べる場合、検索対象が多く、「かんせい てつがく」ではなかなか書籍情報にたどり着けないらしい。対して、図書館の蔵書検索は基本的に書籍しか登録されてないため、こうしたやり方が合理的とのこと。Google検索をよく使う人ほど勝手の違いから戸惑いは大きいようだが、図書館検索術を身に付けるとヒット率は格段に向上すると。

上記以外の勘違い問い合わせ例  「手術はしたけど首から下が動きません」という本を探しているんだけれど…このようなケースでの図書館司書の利用者へのレファレンス・インタビューは「どんな話ですか?」「どこで本の存在を知りましたか?」「日本の本ですか?」「新しい本か古めの本か、わかりますか?」。レファレンスにおいてはこの過程がとても大事だとか。

このケースでは、「そういえば、以前この図書館の闘病記コーナーに置いてあった」との情報を手掛かりに、「手術はしたけど首から下が動きません 闘病」をGoogleでも検索。その結果『命の授業 30万人が泣いた奇跡の実話』に行き着いたそう。なお、この本の帯に「手術はしたけど首から下が動きません」と似た文言の記述があったとのこと。

※参考文献:『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』(福井県図書館編/講談社刊)

Leaf Wrapping 山本志のぶ ホームページはこちらです

研修講師のチョットいい話/stand.fm

|

2024年4月23日 (火)

「聴」の語源と営業面で「聴く」の効用

『字通』『字訓』『字統』の著者であり、漢字研究の第一人者・白川静博士の説は、三千年前の中国で「耳」という字や「徳」という字の一部などが組み合わされて生まれた複雑な旧字体が、時代とともに変化して「聴く」になった。そこからこの字には本来、「神の声を聴くことのできる聡明さ、人徳」という意味が含まれているというのです。

『こころの声を「聴く力」』という本によると、「聞く」という字は「門」に「耳」と書く通り、門のところへ訪ねて聞く、「問う」という意味になるそうです。一方、「聴く」という字は、カウンセリングの世界などでは耳偏に十四の心、そう書くと見立てて、十四歳の頃の繊細で柔らかな感受性で相手の言葉を受け止めることだという解釈があります。

売り上げを上げている人ほど、「聴く、聴く、聴く」 ベテラン店長の「優秀な販売スタッフ」の3つの条件は ①ただひたすらに聴く ②途中で話の腰を折らないで聴く ③話のすべてを聴く(もちろん時間無制限)

会話における「聴くことの重要性」について、近代臨床心理学者の一人、カール・ロジャーズは次のように説いている。「人は話すことにより、心が癒される」と。

会話のバランス「80対20の法則」 お客様にお話ししていただく時間を80%、スタッフが話をする時間を20%の配分で会話するというもの。場合によっては、お客様が80%でも物足りないかもしれないと。

そして、会話における「8020の法則」には、もう一つの意味があるとのこと。それは、スタッフの話を「世間話80%、商売20%」にするというものだそうです。

生命保険会社の10名の優秀社員の中の4名の吃音者 B氏はD生命保険会社での優秀保険セールスマンの表彰式に招待されていた。そして驚いた光景に出くわした。表彰された10名のトップセールスマンのうち、4名が吃音気味の人であったというのである。B氏はその後N社の研修に出席することになっており、その場で、この貴重な話題を提供したところ、次のような結論を得たという。

吃音症の人は、一般の人に比べて、当然のことながらぺらぺらしゃべる能力は劣る。すなわち語る技術は不得手である。したがって、①いやでも相手の話をじっと聞くほうに回らなければならない。②どうしても話す必要のあるときのみ、十分頭の中で空稽古して練られた短い言葉を発する。③言葉を十分使えない分、販売ツールを念入りに準備している。

「聞く」「聴く」「訊く」の3段階レベルアップ法 相手の話に対して、興味を持っている姿勢を示すために、話をぼんやりと「聞く」ことから次第に「聴く」姿勢に改める。すると、相手にあなたの熱意が自然と伝わる。「私の話を熱心に聴いてくれているな」と感じれば、相手も「こいつにはもっといろいろな話を聞かせてやろう」という気持ちになる。その次に、タイミングを計って「訊く(質問)」こと。

※参考文献:「心の声を「聴く力」」(山根元伊代著/  潮出版社刊)

『図解 相手の気持ちをきちんと〈聞く〉技術』(平木典子著/PHP研究所刊)

『商品よりも「あと味」を先に売りなさい』(大なぎ勝著/日本実業出版社刊)

『セールスセンスを磨く プレゼンテーション技術』(森田琢夫著/井上書院刊)

『苦手な人との会話はこう切り出しなさい!』(蟹瀬誠一/角川マガジンズ刊)

Leaf Wrapping 山本志のぶ ホームページはこちらです

研修講師のチョットいい話/stand.fm

|

2024年4月18日 (木)

椅子の良し悪しで人生が左右されるかも

テレワークをはじめた人の多くが悩むのが、長時間作業による腰や肩、首などへの負担。背板や座面が固い椅子を利用している場合はなおさら。そこで有力な選択肢となるのが、オフィス家具メーカーの椅子。オーソドックスなオフィス向けのほか、長時間の利用を想定し通気性に優れた素材にこだわった製品、著名なデザイナーによる高級製品もある。

その設計には通気性のある素材の採用、エルゴノミクス(人間工学)に基づいたデザインなどの工夫が施されている。機種によっては、マッサージ機能を備えたものや、休憩や仮眠時には背もたれを倒してほぼフラットになるもの、オットマンやフットレストがついたものなどがある。長時間作業をしたままでも疲れにくいと、テレワーカーの間でも評判。

フロイト椅子へのこだわり  ナチスから逃れるための逃避行時に携行が許されたのはひと家族でスーツケース一つ分の必需品だった。しかし、このときのフロイトの持ち物は椅子だった。彼の娘マティルデによると、フロイトはいつもの姿勢、つまり「両足を片方の肘掛からだらりと垂らし、上体を後ろに傾けて本を上に掲げて」座っているときに、最もくつろいで見えたそうだ。

彼は、背もたれと同じように肘掛けも二重構造にした特別な椅子を、職人につくらせていた。超現代的な見た目の椅子だ。人間は一人ひとりが特異であり万人が使えるものなどない、というフロイトの思想がよく表れたエピソード。当時、精神病患者には標準化された治療が一律に施されたが、彼は患者の病歴、生活環境、性格を考慮に入れた治療を用意した。

椅子の座り方(非言語情報)だけで自在に感情表現  タモリさんの「いいとも!」を思い出すと、彼はゲストを紹介し、ゲストの着座後、プロフィールを質問してみたり、現状について質問したりします。入り方のパターンは多彩ですが、ほぼ共通しているのは(相手との面識が薄いときは特に)、柔らかい口調で、ゆっくり話すこと。また、椅子にもたれてゆったり座ることが多かった。これは、自分がリラックスしていることを示し、相手にも緊張せずに話してもらいたいから。

そして、話が展開していくうちに、「ここだ!」という場面では、斜めにのけぞったり背筋を伸ばしたりしながら、高く強い口調で興味を示す。柔らかく平静な状態から変化を見せるので、相手はハッと集中する。ただ、必要以上にハイテンション表現を続けない。

そのため、視聴者には大げさではない自然なやりとりに観える。さらに盛り上がって大きく笑う時は、相手側に前のめりになってから大きくのけぞって笑ったり、体をまわしながら観客席を見て笑ったり。客席を見るのは、みんなを笑いの共感に巻き込みたいから。若手芸人のようにバタバタとは動かないが、ポイントとなる場面で大きく体を動かす。

また、必要に応じて手の動きも入れ、立ち上がって動作をマネたりも。様々なパターンがあり飽きさせない。このように、ごく自然に雑談を交わしながら、相手を乗せて視聴者まで楽しませる。そのために、いろんなノンバーバル(非言語)テクニックが取りこまれている。それがごく自然なので、あまり気づかれない。これが、タモリさんのすごさ。

※参考文献:『テレワーク大全』(小林暢子著/日経BP刊)

『天才はしつこい』(ロッド・シャドキンス著/CCCメディアハウス刊)

『タモリさんに学ぶ雑談の技術』(難波義行著/こう書房刊)

Leaf Wrapping 山本志のぶ ホームページはこちらです

研修講師のチョットいい話/stand.fm

|

2024年4月11日 (木)

さまざまな美術館(展)とその楽しみ方

《パックマン》はなぜMOMAに所蔵されているのか

このゲームは、1980年に現バンダイナムコエンターテインメントから発売されたアーケードゲームです。プレーヤーは、迷路のなかでパックマンを操作し、「ゴースト」を躱わしながら「クッキー」を食べ尽していきます。世界中で一大ブームを巻き起こし、発売から7年間も増産されるなど、最も成功した業務用ゲーム機の1つとして知られています。

美術館はこのゲーム全体、つまり「コード」を所蔵しており、ある展示では、このゲームが実際にプレイできる状態で展示されていました。1920年に野心溢れる3人の女性たちを中心に設立されたMOMANY近代美術館)は、近現代美術専門の美術館だが、この作品の収蔵にはイギリス、アメリカの有名ジャーナリズムから批判があったという。

これに対し、このゲームの所蔵に携わったキャリア25年の学芸員は、「率直なところ、私はビデオゲームや椅子がアートかどうかという議論にはまったく興味がありません」と切り返し、さらに「デザインというものは、人間の創造的表現の中で最高の形式の一つだと考えています。偉大なデザインを有するものならそれで十分すぎることなのです」と。

モネの《睡蓮》にカエルが描かれているか?

岡山県にある大原美術館(倉敷の実業家大原孫三郎による日本で最初の西洋・近代美術館として1930年に開館)で、4歳の男の子がモネの《睡蓮》を指差して、「カエルがいる」といいました。さて、この絵にカエルは描かれているか。描かれてはいません。それどころか、モネの作品群である《睡蓮》には、「カエル」が描かれたものは1枚もないのです。

では、男の子はどこにカエルを見たのでしょうか? たまたまその場にいて、カエルが描かれていないことを知っている学芸員が、「えっ、どこにいるの」と聞き返したところ、その男の子は「いま水にもぐっている」とこたえました。これもひとつのアート鑑賞のあり方との解説が『13歳からのアート思考』という本に紹介されています。

世界的建築家のベースとなった栃木の2つの美術館

広重美術館が2000年に海外で話題作となりました。設計を担当した建築家の隈研吾氏は、地元の職人と一緒に作ると決めて、和紙は、地元の和紙職人が手漉し、石は、地元の石切り場で採れるグレーの地味な石を使いました。木はもちろん裏山のスギです。屋根もすべて地元産のスギを使い、徹底的に地元を大事にすることで完成したのが広重美術館です。

非常にアクセスの悪いこの美術館をCNNが取り上げ、世界中に放映されました。もう一つは石の美術館(ほとんど無報酬で、御歳70歳の二人の石の職人さんと五年をかけて竣工)。この石の美術館は、イタリアの「石の建築賞」を2001年に受賞。こうした予想外なことが重なり、隈氏は海外からコンペやコミッションなど多くの依頼を受けるように。

名画にこの過激とも思えるコピーはありか 

美術展でゴヤの「二人のマハ」が展示されたときの、着衣のマハの絵に、きわめつきのこのコピー「私をこのまま帰す気?」が。マハの目線で訴えたわけ。確かに、寝そべる美女にそう言われては、黙っているわけにはいかなくなる。要件をしっかりアピールし、ちょっとセクシーで、クスッと笑いも起きる。これぞプロのコピーというものだろう。

※参考文献:『13歳からのアート思考』(末永幸歩著/ ダイヤモンド社刊)

『隈研吾という身体』(大津若果著/ NTT出版刊)

『日本語の技法 読む・書く・話す・聞く―4つの力』(斎藤孝著/東洋経済新報社刊)

Leaf Wrapping 山本志のぶ ホームページはこちらです

研修講師のチョットいい話/stand.fm

|

2024年3月27日 (水)

身近にある店員さん達のホスピタリティ

ホスピタリティは高級ホテル・高級品取扱店舗・医療機関などの専売特許ではありません。今回紹介するのは、行きずりの客が、たまたま訪れた「空港の和食店」、「街のお蕎麦屋さん」、「病院近くのファストフード店」で受けたステキな対応についてです。どれも心温まるお話で、日本人が本来持っていた接客のスタンスが色濃く表れた例だと思います。

高知空港施設内の和食店での「弔いのホスピタリティ」

妻を亡くした元校長から高知の日本料理店へ感謝状が届きました。彼は四国巡礼を終え、高知空港で待ち時間にそのお店に入り、ビール1本と高知名物のかますの姿鮨一人前を注文しました。加えて「申し訳ありませんがグラス2つで」と。注文を受けた若いウエイトレスは、どうしてグラスが2つ必要なのだろうと不思議に思いながら指示に従います。

まずビールとグラスを2つ出しましたが、グラスのことがどうしても気になったので席に目を向けます。すると客は、女性の写真をテーブルの中央に置き、その前のグラスにビールを注ぎました。続いて手にしていたグラスにビールを入れ、乾杯をしました。そこで彼女は

お鮨が出来上がって運ぶときに箸と箸置きを二組、小皿を二枚持って行きました。

元校長の手紙には、次のように書かれていました。「四国への旅は、家内の写真と一緒に出かけ、食事には一緒にビールを飲みました。しかし、お箸と小皿を2人分出して頂いたのは、            おたくの店が初めてでした。驚きました。感動で体が震えました。帰りの飛行機の中では、涙が止まりませんでした。ほんとうにありがとうございました」と。

たかが、お水。されど、お水。心憎い気遣いに脱帽

持病があって、旅先でも薬が手放せない人が、東京の神楽坂に友人を訪ねた時のことです。夕食に、「おいしそうなそば屋さんがある」と連れていかれました。食後、いつものように薬袋を取り出します。お水をお願いするのも面倒なので、今日はお茶で飲もうか、それともそば湯で・・・などと考えつつ錠剤を1回分手にした瞬間のことでした。

目の前にコップが置かれたのです。多分、お店の経営者の奥様なのでしょう、彼女は私の様子を見ていて、頼んでもいなのに気を利かせてくれたのでした。うれしいことに、氷が入っていません。「ありがとう!」と言いました。そして、口に含んでから、さらに驚きました。ほんのり温かいではありませんか! なんと、それは「白湯(さゆ)」だったのです。

若い女店員の心憎いばかりの思い遣り

店には、女性の店員が一人でした。朝のメニューにはテリヤキバーガーがないので躊躇していると、彼女は注文を聞き、「少しお時間をいただければ…」と言ってすぐに準備を始めました。その時、入院中の子供に持っていくことを話しました。このような店には、マニュアルとおざなりの対応しかないものと思っていたので、彼女の対応がとても驚きでした。

注文の品を受け取り、店を出ようとする客に、彼女は、「おだいじに」と声をかけてくれそうで、客は年甲斐もなく、ジーンとしてしまったそうです。そして、さらに驚いたのは、病院で子息の前で袋を開けてみると、中にはメッセージカードが入っており、「早くよくなってくださいね」と書かれてありました。

※参考文献:『ザ・お客様相談室 売上高貢献率120億円!』(岸正則著/文芸社刊)

『あなたが創る顧客満足』(佐藤知恭著/日経ビジネス刊)

『毎日が楽しくなる 17の物語』(志賀内泰弘著/PHP研究所刊)

『お客様からの感謝状』(佐藤寛著/ 実務教育出版刊)

Leaf Wrapping 山本志のぶ ホームページはこちらです

研修講師のチョットいい話/stand.fm

| | コメント (0)

2024年3月20日 (水)

ただ眠るのでなく、いかによく眠るか

「ひらめき」と「思いつき」は違います 睡眠中には、起きているときに解けなかった問題が解ける「ひらめき」の機能があります。知識を詰め込んで詰め込んで考えが詰まったときに、関係ない分野のヒントで、すべての知識がつながって解決するのが、ひらめきです。睡眠は、脳の中の資源をフル活用して、記憶を質的にも変化させているのです。

睡眠中の情報処理によって、前日の経験は「使える記憶」に作り替えられます。ところが、睡眠の質が悪いと、記憶を整理するために必要な神経の活動が見られなくなってしまいます。ただ眠ればよいというわけではないのです。では、睡眠の質を高める方法とは? 

質の良い睡眠に重要なのは、実は夜ではなく、昼間の過ごし方なのだそうです。

「隠された規則」が「ひらめく」と非常に楽に解ける数学の問題を3グループで実験

第一のグループ…まず朝に問題を考え、8時間ほかのことをして、夜に再度考える。

第二のグループ…夜に問題を考え、8時間睡眠をとってから、朝また考える。

第三のグループ…夜に考えて、そのまま徹夜して、朝また考える

その結果、第一のグルーブと第三のグループでは、「隠された規則」に気付く割合は、大差ありませんでした。しかし、第二のグループだけ、「規則に気づいた人の割合」がほぼ2倍に跳ね上がったのです。この結果から、「規則に気づく(ひらめき)」のに睡眠が役立ったのは、単に「寝不足を解消したから」ではなかったことが分かりました。

ぐっすり深く眠れる波の音のゆらぎパワー 揺らぎとは、完全な規則性と完全な不規則性のちょうど中間にあると考えられています。このゆらぎは、脳の視床下部に作用し自律神経のバランスを整えます。自然の中で波の音に耳を傾け、そよ風を頬で感じていると、心は落ち着き癒されます。その原因の一つが、波やそよ風が持つ1/fのゆらぎなのです。

1/fのゆらぎとは、波のそれぞれの周波数成分(パワースペクトル)が、周波数の逆数、つまり1/fに比例するという性質です。導体に電気を流す実験を行なったところ、抵抗値が一定ではなく不安定にゆらいでいることから発見されました。その後、さざ波や風など、自然界の音の中の様々な現象に1/fのゆらぎが認められることも判明しました。

睡眠中の人の心拍数は70前後 バッハの『G線上のアリア』は60拍で、これを聴くと次第に気持ちが落ち着き、心拍数も下がり、脳波中のα波が増え、やがてθ波も増加して眠気を催します。これが「心が休まる状態」。反対に、120拍以上のダンスミュージックのようなテンポの曲は、活発な精神状態を優位にするβ波が脳波中に増えてしまいます。

神経の緊張を緩める4000Hz(ヘルツ) モーツアルトには、この高周波音周辺を多く含む楽曲が多いことで知られています。2つの関連サイトを検索したところ、各推薦10曲の中で共通して登場したのは、『ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467 2楽章』

『ディヴェルティメント第15番 変ロ長調 K.287 4楽章』の2曲でした。   

※参考文献:『あなたの人生を変える睡眠の法則』(菅原洋平著/自由国民社刊)

『「脳力」を伸ばす快適睡眠術』(吉田たかよし著/PHP研究所刊)

『あの人の声はなぜ魅力的なのか』(鈴木松美著/技術評論社刊)

『仕事脳を強化する記憶HACKS』(佐々木正悟著/技能評論社刊)

Leaf Wrapping 山本志のぶ ホームページはこちらです

研修講師のチョットいい話/stand.fm

| | コメント (0)

2024年3月14日 (木)

「お財布」に纏わる3つの興味深い物語

大岡越前守の「三方一両損」:ある正直ものが、道で三両入った財布を拾った。男は律儀に落とし主を探し、カネを返そうとした。ところが落とし主は、財布は受け取ったが、三両は拾った男にやると言い張った。どちらが受け取るかで大喧嘩になり、決着がつかず奉行所へ持ち込まれた。このときの南町奉行所の奉行は大岡越前守だったが、果たして…。

桜吹雪のお奉行の裁定は、「それぞれの申し出、天晴である」と評したうえで、奉行が二人に提示したのは「拾い主に、三両の中から一両を奉行に差し出しなさい。そして、落とし主からも一両回収。この裁定だと計四両が必要となり、一両不足するが、その一両はわしが負担しよう。そうすると裁定にかかわった3名それぞれに一両損になる」がどうかと。

財布を落としたときの守り神:ハートフォードシャレー大学の心理学者リチャード・ワイズマンはスコットランドのエジンバラで写真の入った財布をたくさん落とした。落とされた各40個の財布で一番持ち主に戻ったのは「笑う赤ちゃん」の写真で88%、次が「かわいい子犬」で53%、「家族」は48%、「年寄り夫婦」は28%だった。

財布を忘れたときの守り神:ある調査で「誠にすみませんが、家に財布を忘れて出まして、75セントないと家に帰れないのですが…」。これをネクタイなしのスーツのみで1時間、ネクタイ着用で1時間したところ、最初の1時間は7ドル23セントもらい、ネクタイ着用後の1時間では26ドル稼ぎ、中には新聞を買うお金まで都合してくれる人もいた。

財布のトリックから身を守る方法:昔、一人のロンドンの商人が、ある金貸しから莫大な借金をして困っていた。もし借金が返済できない時は、監獄に放り込まれるという時代である。年老いた醜い金貸しは、その商人の美しいティーンエージャーの娘に目をつけて、ある取引を提案した。もし娘をくれるなら、借金を帳消しにしてやろうというのである。

途方にくれる商人と娘を前に、善人を装った金貸しは、運を天に任せようと言って、財布に中に黒白二つの小石を入れるから、娘にその一つをつかみ出せと言った。もし娘が白い石を選んだ時は、借金を帳消しにしてやろうというのである。拒めば、父親は監獄送りになり、娘はたちまち食べていけなくなってしまうので、商人は仕方なしにこれに同意した。

そこで金貸しは、商人の庭の小石を敷きつめた小道から、二つの小石を拾って財布に入れた。ところが、娘は金貸しが財布に入れた石が二つとも黒石だったのを、目敏く見つける。さあ石を選べといって容赦なく迫る金貸しに対し、もしあなたが不運な娘だったとしたら、どうするだろうか? と『水平思考』の考案者エドワード・デボノ博士は問いかけます。

博士のアドバイスは、娘さんが財布から石を取り出した瞬間「アッ!」と叫んで石を落としてしまえばよいと。金貸しが石を拾った小道には白黒の石が入り混じっており、落とした石が白か黒かの判断はつかない。そこで娘さんが「申し訳ありません」と詫び、袋に残った石の色で自分が取り出した石の色が判断できますよね!」と切り返せばよいと。

※参考文献:『瞬間説得 その気にさせる究極の方法』(ケヴィン・ダット著/NHK出版刊)

『ビジネスマン 成功のための服装学』(ジョン・T・モロイ著/ジャテック出版刊)

『問題解決の思考技術』(飯久保廣嗣著/日経ビジネス社刊)

『水平思考の世界』(エドワード・デボノ著/きこ書房刊)

Leaf Wrapping 山本志のぶ ホームページはこちらです

研修講師のチョットいい話/stand.fm

| | コメント (0)

2024年3月 6日 (水)

出番少なくもハートに響くコインの物語

マー君の「大きな十円玉」

生まれながらの障害をもっていたマー君は不登校でしたが、四年生に上がる頃、両親が話し合い中学生になるまで全寮制の養護学校に預ける事に。先生が一対一で主要教科を一年生にまで遡り丁寧に教えると、マー君は。その日習った事を、毎日毎日母親に電話で報告していました。覚えた漢字も沢山になると、少し難しい本も読めるようになりました。

 

マー君をずっと教えていた先生が、ある日お金の問題を出します。『ここに、五百円玉、百円玉、十円玉があります。どのお金が、一番大きなお金ですか?』。すると彼は「十円玉」と答えます。先生が「五百円なのよ」と、教え直しても答えは変わりません。そこで理由を聞くと「十円玉は、電話が出来るお金。電話をするとお母さんの声が聞ける」からと。

 

大震災の命綱となった「コイン」

元日の能登半島地震から思い起こされるのは29年前の阪神淡路大震災。能登半島地震はこれから「ご馳走」を楽しもうという1640分頃に激しい揺れに襲われたが、阪神淡路大震災は127日の未明、546分だった。このため、ほとんどの被災者は寝床で激しい揺れに襲われ、家屋の倒壊直前に、着の身着のまま家を飛び出した。

 

命拾いはしたものの、能登半島ほどではないにせよ、真冬の夜明け前は寒さも応える。そして能登と同じように電気も水道も使用不可。そのような悲惨な状況の中で、ドリンク自販機が横倒しになっても利用可能なものがあったという。これで飲み物が…と思いきや、群がった人の中にコイン保持者は皆無。眼前にドリンクがあるのに眺めているだけ。

 

中には、腹立ち任せに自販機を蹴とばす人も出る惨状を、たまたま視察中の日銀神戸支店長(遠藤勝裕氏)が目撃する。彼はその瞬間「このままでは暴動も」との危機意識から急遽銀行に戻り、銀行協会と調整の末、百円玉9枚と十円玉10枚を入れた千円の袋を4千個用意。この袋を抱え避難所に出向き「銀行協会からの義援金です」と渡して歩いた。

 

こうしたきめ細やかな被災者支援の傍ら、遠藤氏は生活者&企業支援にも乗り出す。支店長判断で、通帳や判子がなくても身分証、免許証を提示したらお金が借りられる、半焼けの紙幣は普通の紙幣と交換する、といった金融特例措置を独断で、震災当日に実行。加えて、遠藤氏は、損壊を免れた日銀神戸支店内に、各金融機関の窓口開説の便宜を図った。

 

戦後を象徴するコイン「五円玉」

五円玉の表面のデザインは、左から右に、穂をたれている稲穂で農業を、穴の周りの歯車で工業を、「五円」の文字の背景の線は水・波を表し漁業(水産業)の、戦後の産業を表している。裏には、日本の神木のヒノキの双葉がデザインされている。双葉は「新生」「再生」「復興」を意味し、表と裏のデザインで、戦後の荒廃からの復興を願ったとのこと。

 

明治政府は1869年(明治234日)に金銀銅の円形貨幣を鋳造する円貨の制度を定めたが、五円玉はこの範疇を超えた黄銅貨で、銅が6070%、亜鉛が3040%で、重量は3.75g、直径2.2㎝となっている。その理由が今日ではとても意味深で、五円玉は戦後使われなくなった砲弾や薬きょうを溶かし、平和を願ってつくられた硬貨なのです。

 

※参考文献:『心に残るとっておきの話〈第1集〉』(潮文社編集部編/潮文社刊)

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(藤尾秀明監修/致知出版社刊)

『社会科教師のための「言語力」研究』(片上宗二著/ 風間書房刊)(1431字)

Leaf Wrapping 山本志のぶ ホームページはこちらです

研修講師のチョットいい話/stand.fm

 

| | コメント (0)

2024年2月29日 (木)

日清食品「カップヌードル」の販売戦略

20世紀は世界中が物質的繁栄を求めてモーゼンと走り続けた世紀である。で、そのレースに見事、わが日本は上位入賞を果たした。が、食べ残しのゴミの山に埋まって暮らす僕らに、カップヌードルのCMは、あえて「hungry?」と問いかける。そう、ハラは一杯でも、ぼくらは実はすごくhungryなのかもしれない。『天野祐吉のCM天気図傑作選』より

1992年スタートの「カップヌードル」テレビCMhungry?」シリーズは、単純で明るいユーモアが大評判になり、ヨーロッパ、香港、ブラジルでもオンエアされ、人気を博した。そして93年、広告業界で世界最高のコンクールといわれるカンヌ国際広告映画祭 (40) において、同シリーズの「シンテトケラス篇」と「モア篇」がグランプリを獲得。

オズボーンの9つのチェックリストと「日清食品」「カップヌードル」

転用(Put to other uses):高槻工場が線路沿いにあったことから、工場の屋根の上に「魔法のラーメン」などと書いた大きな看板を取りつけた。

応用(Adapt):てんぷら料理にヒントを得て、油を使った乾燥処理の方法を講じることにした。

変更(Modify):カップヌードルは発売当初売れなかった。経団連に持ち込み試食会をして感想を求めたところ「カップの中にめんを入れるなんて邪道だ。日本の今までの食生活を冒涜している」とか<麺をフォークで食べるとは、それも歩きながらとは行儀が悪い」、「せいぜい災害時の非常食かレジャー用で、たくさん売れるものではない」といった具合に酷評される。問屋筋でも「百円とは高いのと違いますか」と熱心に売ってくれそうもない雰囲気。そこで安藤は問屋ルートへ流すよりも、消費者に直接ぶつけ、反応を見てから市場へ流す作戦をとる。

拡大(Magnify):チキンラーメンの競合商品の乱立で苦労した経験から、カップ麺は創業者利潤をしっかり確保できるように、茨城県藤代町に31千平方mの土地を確保し、30億円かけてカップヌードル専用の関東工場を完成させていた。模倣を常とする業界で、スタートから大きく引き離す作戦だった。

縮小(Minify):ラーメンの屋台に並ぶ時間を節約できないか。

代用(Substitute):機内食のトレイの中に素晴らしいものを見つけた。直径45センチ、高さ2センチほどのアルミ容器である。マカデミアナッツを入れ、紙にアルミ箔をコーディングした蓋できっちり密閉してある。いまではジャムやママレードの一回使用分が詰められたりする、あの容器である。当時、日本では見かけないものだった。

置換(Rearrange):学校の給食をパンからめんに置き換えられないか

逆転(Reverse):めんを容器の中に入れようとするから進まないのだ。中身を下に置いて、逆に容器を上からかぶせたらどうだろう。面の塊の上にカップをかぶせる。くるっと一回転して落ち着かせると、めんは見事に中間保持されていた(『奇想天外の発想』)

結合(Combine):オロナミンCの命名は、大塚製薬の「オロナイン軟膏」と武田薬品の「アリナミン」の頭とおしりを結合したものと、大塚正士と語っている。

※参考文献 『天野祐吉のCM天気図傑作選』(天野祐吉著/朝日新聞出版刊)

『わかりやすいマーケティング戦略』(沼上幹著/有斐閣アルマ刊)

『安藤百福の【一日一得】』(石山順也著/KKロングセラーズ刊)

Leaf Wrapping 山本志のぶ ホームページはこちらです

研修講師のチョットいい話/stand.fm

| | コメント (0)

2024年2月22日 (木)

大きく転化しつつある「歌舞伎ことば」

『知識ゼロからの歌舞伎』(松本幸四郎監修/幻冬舎2022年刊)より

「黒幕」

現代:自分は表に出ず、人を操って影響力を行使する人。

歌舞伎:背景幕として夜を表す幕のこと。また、歌舞伎では「黒は見えない」という約束事があるため、不必要なものを隠す幕のこと。「消し幕」も黒幕の一種。

※歌舞伎の「黒」は見えないという記号。この「見えない」が「怖い」から「悪」と変換され、「腹黒い人物」というマイナス面の意味を持つようになった。

「差金」

現代:陰で人を操ること。

歌舞伎:黒く塗った竹の棒の先に針金をつけ、蝶や鳥などを操る小道具のこと。

「大向こうを唸らせる」

現代:優れた技巧で、多くの人から人気を得ること。

歌舞伎:劇場の後ろのほうの値段が安い席に何度も足を運ぶ芝居通や向う桟敷(2階席)の通を感嘆させること。

『歌舞伎ことばの辞典※』(服部幸雄監修/赤坂治續執筆/講談社刊)より

「捨てぜりふ」

一般に、「別れ際にいう、相手を脅迫・軽蔑する言葉」をいう。

本来は、歌舞伎の用語で、台本に書いてないせりふを臨機応変にいうことで、現代演劇のアドリブである。歌舞伎の捨てぜりふは、退場の時にいうとは限らないし、脅迫的・軽蔑的な言葉を吐くとも限らないが、「捨て」は「言い捨てる」の意で、一方的にいうことから、「立ち去るときにいう言葉」という意に転じた。

「肚(はら)藝」

一般に「言葉や態度を表に出さないで、腹で何かを企むこと」「言動によらないで、物事を処理すること」をいう。

藝能用語の「肚(腹)藝」は3つある。①歌舞伎の用語で、「派手な科(しな)や音楽的な台詞術を用いずに、扮している人物の肚(役の性根=胸中)を表現する技術」、②仰向けに寝た人の腹の上で演じる曲藝」、③腹に顔などの絵を描いて演じる藝」

肚藝の①は、明治の九代目市川團十郎が活歴(動きの多い出し物)で用いた演技で、心理描写を重んじる一種の写実的な演技のこと。抑制して地味に演じたことから、「態度を表に現わさないこと」を意味する一般語になった。

上記2冊とは別に、『歌舞伎を楽しむ本』(主婦と生活社刊)に「御馳走」が紹介されている。

歌舞伎で「御馳走」となればな、幕間に楽しむ「幕の内弁当(俵の形をしたおにぎりに数種類のおかずが付いたお弁当)」を想起しがちだが、豈図らんや、歌舞伎の「御馳走」は、「格の高い役者が、本来はやらないような端役を演じ、観客を喜ばせること」

この「御馳走」と、上段の「大向こうを唸らせる」は、いずれも観客を喜ばせるサービス精神の発露といえそう。その反面、ネガティブ・ワードに転化した例も少なくない。「世に盗人の種は尽きまじ」は『白波五人男』、「月も朧に白魚の」は『三人吉三』、「しらざぁ言って聞かせやしょう」は『弁天小僧』。これら人気の裏家業の出し物が影響したかも…。

ネガティブ・ワードの代表格は「黒幕」であり、「捨てぜりふ」か。

「黒幕」は、舞台の不必要な部分を隠す幕のことで「見えない」の意味合いが、一般語になったときに、「怖い」から「悪い」に転化され、「腹黒い人物」の意味を持つように。

また、「捨てぜりふ」は、役者が台本にない台詞を、場の雰囲気を生かすために咄嗟にいうアドリブ的なものが、別れ際に相手を脅迫・軽蔑する言葉になってしまった。

Leaf Wrapping 山本志のぶ ホームページはこちらです

研修講師のチョットいい話/stand.fm

|

2024年2月15日 (木)

ダーウィンの偉業と面白エピソード2つ

ダーウィンの最も有名な言葉は、「最も強いものが生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である」といえるだろう。彼は1831年にイギリスのケンブリッジ大学を卒業すると、その年の末にイギリス海軍の測量船ビーグル号に乗船した。乗船期間は当初3年だったが、帰国までには5年を要した。

後にダーウィンは自伝で、この航海で印象に残ったことを三つ書き残している。①南米沿岸を移動すると、生物が少しずつ近縁と思われる種に置き換えられていく様子に気づいたこと。②南米で今は生き残っていない大型の哺乳類化石を発見したこと。③ガラパゴス諸島の生物の多くが南米由来と考えざるを得ないほど南米のものに似ていることだった。

ダーウィンは、南半球各地の動物相や植物相の違いから、種が独立して創られたものではないと考え始めた。そして航海中に読んだ、ライエルの『地質学原理』から、地層がわずかな作用を長い時間累積させて変化するように、動植物にも長い時間の変化の蓄積があるのではないか、大陸の変化に生物が適応しうるのではないかという思想に至った。

また、マルサスの『人口論』から、「食料生産は算術級数的にしか増えないのに人口は等比級数で増えるため、人口増加は食糧増産の限界の問題からかならず頭打ちになる」との予言から、食料供給の限界が常に動物においても発生する以上、環境に適応して変化することが種の存続において重要であるという仮説を得たという。

ダーウィンの『種の起源』は、当初、宗教倫理の観点から批判の対象とされたが、測量船ビーグル号での5年の調査旅行で集積したデータが後ろ盾となり徐々に評価対象に。もう一つ忘れてならないのは、既成概念に捉われない彼の柔軟な発想法があったこと。それを裏付けるような格好の逸話が若年期、老境期にあるので、最後に紹介します。

少年期編:彼は、子どもの頃カブトムシに熱中した。ある日、自宅近くの森を歩き回っていると、コレクションにない種類のカブトムシに出会う。さっそく捕まえようとしたとき、更に大きくて光沢のあるカブトムシを2匹見つけた。どちらもとても大きく片手に1匹ずつしか持てない。どうする? 次の瞬間、彼は3匹目を口に咥え、走って家に帰った。

老齢期編:仕事中毒だった彼は、仕事部屋の中をできるだけ楽に動き回って標本を確認したかった。そこで、ごく普通の椅子の足を切り落として、ベッドのキャスター付きの足を代わりに付け、室内をすばやく動き回れるようにした。ダーウィンはオフィスチェアの概念を変え、のちにデザイナーが彼に倣って、調節しやすく移動しやすいものに進化させた。

※参考資料&文献:Wikipedia

『「変える」は会社の毎日のお仕事』(村尾隆介&森川綵著/朝日新聞出版刊)

『合理的なのに愚かな戦略』(ルーディー和子著/日本実業出版社刊)

『ニュータイプの時代』(山口周著/ ダイヤモンド社刊)

『ジグザグに考えよう』:(キース・ソーヤー著/YAMAHA刊)

『天才はしつこい』(ロッド・シャドキンス著/CCCメディアハウス刊)

Leaf Wrapping 山本志のぶ ホームページはこちらです

研修講師のチョットいい話/stand.fm

| | コメント (0)

2024年2月 8日 (木)

F・ベドガーとD・カーネギーの笑顔

遡ること87年前の1937年に初版(同年に日本でも発刊)が出たデール・カーネギーの『人を動かす』がビジネス書の永遠のベストセラーだとすると、セールス本のベストセラーはフランク・ベドガーの『私はどうして販売外交に成功したか』といわれる。この本の冒頭に1917年来の知己というカーネギー氏が「発刊に寄せて」を書いている。

「本書こそ、私が今日までに読んだ販売術に関する著書のうちで、最も有益で、最も示唆に富んだ労作である。本書は保険の外交員だけでなく、すべてのセールスマンに益するところはなはだ大で、フランク・ベドガーの死後も末長く不滅の貢献をなすであろう。私は本書を1ページごとに精読した。そして、私は情熱を傾けて本書を推薦する」

ベドガー氏は、セールスの秘訣を「見込客の事務所に入る直前、立ち止まり、人生で一番嬉しかった事柄を思い浮かべ、心から溢れ出る笑顔を作る(毎朝30分この練習)。その笑顔が消えかけた瞬間に入室する。そうすればいつでも愉快そうに笑うことができ、そして部屋の中で会う人からも、これと同じような意味の笑を誘い出すことができる、と。

『人を動かす』の第二章「笑顔を忘れない」に紹介された「広告」より

「クリスマスの笑顔」

元手がいらない。しかも利益は莫大。

与えても減らず、与えられた者は豊かになる。

一瞬のあいだ見せれば、その記憶は永遠に続く。

どんな金持ちもこれなしでは暮らせない。また、どんな貧乏人もこれによって豊かになる。

家庭に幸福を、商売に善意をもたらす。

友情の合言葉。

疲れた者にとっては休養、失意の人にとっては明るい兆し(光明)、悲しむ人にとっては太陽、悩める者にとっては自然の解毒剤となる。

買うことも、強要することも、借りることも、盗むこともできない。無償で与えて初めて値打ちが出る。

この広告は、上記コピーの後に、「クリスマスセールで疲れ切った店員のうちに、これをお見せしない者がございました節は、恐れ入りますが、お客様の分をお見せ願いたいと存じます。笑顔お使い切った人間ほど、笑顔を必要とするものはございません」で結ばれている。

近年は、共稼ぎ世帯が多く、忙しさゆえに家庭内の会話が乏しくなっている感があるが、カーネギーは、そうした家庭事情も「笑顔」で問題解決可能と指摘している。殺伐とした世相を反映してクレーマーの存在が問題視される世相についても、お客様との最初の接点で「笑顔」があれば違った結果になるのではとの示唆も。

友情をはじめ、人間関係がぎくしゃくして、ストレスをためる人も多い世の中になりつつあるが、これについてカーネギーは「笑顔」での問題解決を説く。疲れた者にとっては休養、失意の人にとっては光明、悲しむ人にとっては太陽、悩める者にとっては自然の解毒剤となる、と。これらは現代にもピタリとあてはまるのではないだろうか。

本稿の最後はウィリアム・ジェームズ。彼は「動作は感情に従って起きるように見えるが、実際は、動作と感情は並行する。動作は意志によって直接統制することができるが、感情はそうはできない。ところが、感情は、動作を調整することによって、間接に調整することができる」と。意図的な「笑顔」が感情にプラスの影響を与えるとの見解だ。

※参考文献:『人を動かす』:デール・カーネギー著/創元社刊

『私はどうして販売外交に成功したか』:フランク・ベドガー著/ダイヤモンド社刊

Leaf Wrapping 山本志のぶ ホームページはこちらです

研修講師のチョットいい話/stand.fm

|

2024年1月28日 (日)

クレーム対応のフィードバック手法、その他

☆事実フィードバックと感情フィードバックと要約フィードバック

【事実フィードバック】は相手の話している事実をとらえ、その事実を相手の言葉通りに返していくことです。事実を確認し、相手の話を促進する役目を持ちます。

【感情フィードバック】は、相手が話しているときに生じている感情をとらえ、その感情を自分の言葉で返していくことです。相手の気持ちを理解していることを伝える役割やお互いの心の絆を強める役割をします。

【要約フィードバック】は相手との会話内容を自分の頭の中で要約し、これを事実・感情のフィードバックの後に、会話のまとめとして相手に伝えることです。要約することでそのことで内部を修正する回路が形成され、外部に対してより正確な状況把握ができるようになります。

 

☆クレームに対する3つのフィードバック事例

  • 「お宅を信用して今まで商品を買ってきたのに!」

【事実フィードバック】

「私どもを信用してくださっていただいておりましたのに…」

【感情フィードバック】

「△△様のご期待を裏切ってしまい、誠に申し訳ございません」

【要約フィードバック】

「長年、私どもを御贔屓いただいてきたにもかかわらず、この度は△△様のご期待に沿えませず、誠に申し訳ございませんでした。つきましては・・・」

 

 ☆クレーム対応に有効な「オープン質問(左)」と功罪半ばの「クローズ質問(右)」

「どのようなことがあったのでしょうか?」⇔「荷物が届いていないのですか?」

「状況を教えていただけますか?」⇔「商品にひびが入っていたのですか?」

「いかがなさいますか?」⇔「「AとBのどちらにしましょうか?」

「どのようにさせていただきましょうか?」⇔「今からお伺いしてもよろしいですか?」

オープン質問は相手に自由な回答を促す質問。答える幅が大きく、多くの情報を収集することが可能なため、何らかの新たな話題のきっかけを探すことに向いている。一方、クローズ質問は確認のために使用する質問で、誘導性が高く、時間短縮や引っ込み思案なタイプの人との会話には向いている。しかし、使いすぎると会話が不完全燃焼の危惧も。

 

☆会話を「ドッチボール」ではなく「キャッチボール」に

会話はキャッチボールによくたとえられます。相手の話をよく聞き、相手の質問に的確に答えながら、自分の話をするのがキャッチボールです。双方向のコミュニケーションを成立させるということです。これに対して、一方的に自分の意見、要求をぶつける(対抗戦で、相手チームメンバーをコートから除外するために投げる)のがドッチボール。

「送ってもらった商品が不良品だ」のクレームに「その商品を送ってください。新しいものに交換します」はドッチボールのボールのぶつけ合いに近い。しかし、「申し訳ございません。お手数ですが、商品をこちらまで、送っていただけますでしょうか。到着を確認次第、すぐに新しいものをお送りさせていただきます」となると、キャッチボールが成立。

※参考文献:『クレーム応対 聞く技術 断る技術』(玉本美砂子著/ぱる出版刊)

『頭がよくなる! 要約力』(斎藤孝著/筑摩書房刊)

Leaf Wrapping 山本志のぶ ホームページはこちらです

研修講師のチョットいい話/stand.fm

|

«海軍カレーの都市伝説とカツカレー物語