2012年5月20日 (日)

〝まちづくり〟と生き物たちの関係①

『舟を編む』を読んでからの山本は、図書館や書店では辞書コーナーに足が向きます。「イヌも歩けば棒に当たる」で、『口辞苑(広辞苑ではありません)※』と出会いました。サブタイトルが~商業・まちづくり~で、日本中の街づくりにかかわってこられた大学教授が、その体験にもとづいて街づくりに関係深い用語を集めたものです。

項目ごとに本音と建前の2部構成(紹介文中【1】建前、【2】が本音)でまとめられています。その中から、今回は生き物に関する項目をピックアップしてご紹介いたします(解説が長いので、ポイント部分を抜粋。最初の太字一行は山本による)。なお、生き物には当然人間も入りますので、まずは「アホとバカ」から。

「アホ」は賢者よりもずっといい。断じて愚か者なんかではない
アホとバカ 【1】国語辞書的には、愚かなこと、または愚かな人のことで、社会常識に欠ける人を指し、「アホ」と「バカ」は同義語とされる。社会を変えるような革新を起こす人は、どこか常識にとらわれない側面を持ち、周りから変人扱いされ、しばしばこう呼ばれる。ただし、「アホ」と「バカ」は関西と関東では意味が逆転するという。関西で「アホ」と言えばどこか愛嬌があり許せるが、「バカ」と言えば全面的な否定を意味するとされる。しかし、近年ではその区別は曖昧になりつつある。

【2】アホ/バカを題材にしたことわざに事欠かない。「アホにつける薬はない」「バカは死ななきゃ治らない」「アホとハサミは使いよう」など。極めつけは阿波踊りの囃子(はやし)である。「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」。ノリの軽さとのめりこんだときのしつこさが取り柄だ。広島市の並木通りで街づくりに取り組んだ加藤新の名言。「狂者が引っ張って、馬鹿が付いていく。それを見て賢者があざけり、愚者が足を引っ張る。」アホは賢者よりもずっといい。断じて愚か者なんかではない。

●著者が~商業・まちづくり~『口辞苑』に「アホとバカ」の項目を取り上げた理由は書かれておりません。山本の推測としてはのは、東西の人が住む地域でのまちづくり議論の場で、「アホ」「バカ」が飛び交い、関係者がご苦労されれることが多かったからではないかと・・・。これ以降は、なじみのある生き物たちの登場です。

大型店の出店候補地は「狐と狸」が棲む所から「どぶネズミ」居住地に変わった
「狐と狸」 【1】「狐と狸の出るところで高速道路のインターチェンジがあればそこが出店候補地だ」と語ったのはさる大手流通業のトップである。それ以来、人里離れた郊外を言い表す代名詞となった。1970年代後半以降の大型店の郊外進出を示す典型的な言葉であるが、これに同調した企業は多い。
【2】ただ、近年特にバブルが崩壊して中心部の地価が大幅に下落するようになって、大型店の都心回帰がはじまり、出店候補地探しのキーワードは「狐と狸」から「どぶネズミ」に変わったという。

※『口辞苑(こうじえん)』(石原武政著/碩学舎)

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2012年5月17日 (木)

方言に代表される言語表現の東西比較③

電話応対者を対象にした研修では、〝苦手なタイプ〟への対処法を質問されることがよくあります。確か3月に『プレジデント』誌がエリア別の相性を特集しており、山本得意の立ち読みで得た知識によると、兵庫と東京の人とは恋愛もビジネスも総体的に相性が良く、大阪と京都の人は東京の人とはイマイチのようでした。

関西出身の主婦が発する「じゃまくさい!」で、東京人の夫は傷ついていた(※1)
大阪府出身で神奈川県平塚市に住む主婦(39)の口癖は「じゃまくさい」だったそうです。ちなみにこの方は、26歳で結婚するまで関西から離れたことがありませんでした。「じゃまくさい」は、近畿圏ではごく普通に口にされる言葉なので、頭から共通語と信じていらっしゃったそうです。

●あるとき、東京出身の夫が「おれって、そんなに邪魔なの?」と真顔で尋ねてきて、初めて方言と気づいたそうです。彼女は、そうとは知らず「義父母の前でもしょっちゅう使っていました」と、後悔しきりだったとか。なお、「じゃまくさい」は「煩わしい」「面倒だ」を意味する関西弁で、共通語の「面倒くさい」にあたります。

●意味をダイレクトに受け止め、長年夫人の「じゃまくさい」発言に耐えてこられたご主人は立派ですね。そのご両親も、お嫁さんに優しい人格者だったのでしょう。寛大なご家族に囲まれて彼女は幸せでした。でも、その片方で東京弁がきつく聞こえることもあるようなのです。

きつく聞こえる東京弁、「その切れ味はカミソリのようだ」と芥川賞作家も
大津市の繊維関係の会社に勤める女性(43)は東京ご出身。彼女が、ちょっと強い言い方をすると、関西生まれの夫だけでなく、長女(9歳)からも「怒らんでもええやん」と言われるそうです。「東京弁て、そんなにきつく聞こえるの?」と、彼女は首をかしげているそうですが、東京弁をカミソリに喩えた作家もいらっしゃいます。

●中高年層に絶大な人気のあった開高健氏(大阪市出身。『裸の王様』で第38回芥川賞受賞)は、「東京弁だと直球しか投げられないが、関西弁だとカーブも、ドロップ(おおきく落ちる球:山本注)もかけられる。東京弁の鋭さを剃刀(カミソリ)だとすると、関西弁のそれは斧(オノ)」と語られていたそうです。(※2)

※1:『新聞社も知りたい日本語の謎』(橋本五郎&読売新聞/KKベストセラーズ)
※2:『ビジネスの心理法則』(多湖輝著/ごま書房)

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2012年5月12日 (土)

方言に代表される言語表現の東西比較②

今回は予告通り「バカ」と「アホ」についてです。だいぶ古いお話で恐縮ですが、1991年度のテレビ界の名だたるタイトル(日本民間放送連盟賞・テレビ娯楽番組最優秀賞、ギャラクシー賞選奨、全日本テレビ制作者連盟賞グランプリ等々)を総ナメにした番組があります。それは、いまも続く長寿番組『探偵! ナイトスクープ』でした。

放送直後から高視聴率を獲得した〝深夜のお化け番組〟が果たした役割
視聴者からの依頼にもとづき「この世のあらゆる謎や疑問を徹底的に究明する」ことをモットーとした娯楽番組は、1988年3月放送開始時は上岡龍太郎探偵局長と、秘書役(松原千明→岡部まり)により軽妙に進行されました。第1回メニューには、阪神優勝時に話題となった「道頓堀に沈んだカーネルサンダースを救え!」がありました。

1990年に東京出身の新郎から「アホ・バカ調査」依頼が寄せられて…(※1)
朝日放送がエリアとする関西地方だけのローカル番組(金曜日の夜、11時25分から55分間)としてスタートしましたが、人気とともにネット局も増え、北海道から九州・鹿児島にいたる全国26のテレビ局で放送されたこの番組に、新婚サラリーマンからの「アホ・バカ調査」依頼が舞い込みました。

「私は大阪生まれ、妻は東京出身です。二人で言い争うとき、私は『アホ』といい、妻は『バカ』と言います。耳慣れない言葉で、お互いに大変傷つきます。ふと東京と大阪の間に『アホ』と『バカ』の境界線があるのではないか? と気づきました。東京からどこまでが『バカ』で、どこからが『アホ』なのか、調べてください」と。

「バカ」のほうが古く、「アホ」はこの類の言葉ではいちばん新しい
これまで一般的には、「アホ」と「バカ」は、日本の東と西に対立している言葉と考えられることが少なくなくありませんでした。また一方で、文献だけを根拠に、「アホ」の方が古い時代に広まり(鴨長明『方丈記』に登場)、「バカ」がずっとのちなって広まったとも考えられてきました。しかし、この調査の結果新たな解釈が…。

全国的に使われる「バカ」は、何と、京(京都)言葉の古語だった!?
「バカ」は、京都から半径およそ二百キロ以遠にのみ、濃厚に分布しているそうです。京(京都)発の「バカ」が全国に行き渡ったかなり後に、京都で新しく「アホ(ウ)」という同義語が生まれ、二百キロ圏まで広がっていった(馴染みやすい新しい言葉が伝わると、古い言葉は上書きされ消えてしまう)のだとか。

京都から遠く離れた地域ほど、古い時代の京(京都)の言葉を使っている
著者によると東京語・標準語(1993年出版で共通語にはなっていない:山本注)にしても、おそらくは京(京都)の古語の宝庫であるに違いとのことです。そうなると、もし現在の京都人が「バカだね!」と東京弁をしゃべったとしたら、それは京(京都)の古語が数百年の歳月を経て、故郷に里帰りしたことになるんですね。

千年前の京都は世界的に見て最高レベルの文化を持ち最大規模の都市だった
平安から室町にかけて、最高50万人前後の人口を擁した京都は、世界的に見ても最高水準の都市だったそうです(当時ロンドンやパリの人口は数万から十数万)。江戸中期に、江戸が上方に対抗する文化の新たな発信基地として台頭するまで、京都が輝ける花の都であったことを「全国アホ・バカ分布図」が改めて教えてくれるとか。

マクドナルドに関する略称「マック」「マクド」の追加情報(※2)
読売新聞が各都道府県の県庁所在地などで、身近な食べ物やファストフード店の呼称を調べた(調査日記載なし、出典の出版は2005年)ことがあるそうです。これによると東日本、中国、四国、九州のほとんどで「マック」。近畿の6府県と徳島県では「マクド」。新潟、兵庫、広島、宮崎の4県が「マック」「マクド」の混在だったとのこと。

専修大学教授(社会言語学)永瀬治郎氏の継続的「マック」「マクド」調査から
専修大学の調査では、93年に「マクド」は大阪など近畿4府県と石川、鳥取、島根の他、香川を除く四国3県。これが97年には関東地方などでもマクド派が現れました(関西出身の学生が持ち込んだらしい)。「マクド」のアクセントは93、97年調査では、「ク」強調派が多数でしたが、2005年になると強調は「マ」と半々になったそうです。

「同じマクドでも、先頭の『マ』を強めるのは関東系の言い方」と永瀬さん。例えば「雨」でも、京阪地域では「め」を強めるが、東京では「あ」が強い。「当初は近畿圏の省略法だった『マクド』が関西系のアクセントで広まり、その後、関東進出に伴って関東式のアクセントが取り入れられたのではないでしょうか」との分析です。

●上記専修大学調査では、近年「マクド」派が減って「マック」派が勢いづいているとのこと。なお、マクドナルドによると、創業当時から「ビックマック」「マックフライポテト」などの商品を扱ってはいても、社名のキャンペーンなどで「マック」の呼称を使ったことはなく、また社員や店の従業員は略称を使わないそうです。

※1:『全国アホ・バカ分布考 はるかなる言葉の旅路』(松本修著/太田出版) 
※2:『新聞社も知りたい日本語の謎』(橋本五郎監修/KKベストセラーズ)

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2012年5月 7日 (月)

方言に代表される言語表現の東西比較①

先日、研修会場向かう途中、マクドナルドのスタッフから「ただ今、無料でコーヒーをお配りしております。どうぞ」と歩行中の私にカップを渡してくれましたので、ご好意に甘えさせていただきました。その直後、「マックはコーヒーで攻勢を仕掛けるらしいよ!」「ホンマ、マクドのイメージ壊れるうんとちゃうん…」と前を歩く若い二人連れの興味深い会話が耳に入りました。たちまち、近じかコールセンターの「方言矯正研修」を担当する予定のある山本は、聞き耳兎に変身したのでした。

マクドナルドの正しい略称は「マック」それとも「マクド」?
以前から言われていましたが、この議論が活発となったのは2010年ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会に出場した本田圭佑選手の発言だそうです。決勝トーナメントのパラグアイ戦の直前インタビューに、「試合で緊張したことはない。むしろ海外でマクドに行って注文する方が緊張する」と、彼はコメントしました。参考までに記しますと本田選手は石川県の星陵高校からJリーグの名古屋グランパスに入団。08年1月に渡欧(オランダ→ロシア)しましたが、出身は大阪府で、中学時代はガンバ大阪のジュニアユースに所属していました。

全国的には英語省略の「マック」、関西のみ頭3文字による「マクド」
吉本興業のタレントさんの活躍で、関西発の新語・造語は数が多いですね。古くは「ホルモン焼き(関西弁の「放るもの」から訛ったとする説が有力)」。最近では、2011年の流行語大賞のベストテン入りした「どや顔(「《「どや」は「どうだ」の意の関西方言》得意顔のこと。自らの功を誇り「どうだ」と自慢している顔。大辞泉より)」などが有名です。

●うまい語呂合わせや絶妙な省略に、センスが発揮されているのではないでしょうか。とはいえ、マクドに関しては、単に頭の3字を取っただけの省略(ケンタッキーの略称ケンタも同じ)ですので、それほど評価に値しないかも・・・。
各地の言葉に詳しい奈良大学の真田信治教授に「もともと関西の人は3拍で真ん中の音にアクセントを置く言葉を好みます。省略語にはなじみ深く安心できるこの音節がよく使われます」の指摘があるそうですが、「マクド」正にこの通りですね。

●実は、今回テーマに取り上げた東西比較は 、2010年4月3日からの『冠婚葬祭マナー研修』で、「東西(主に東京と大阪)の違いを考える」として4回連載しています。
(1)司馬遼太郎氏と山口瞳氏の東西文化論談義他
(2)大阪のおばちゃんにまつわる面白話あれこれ
(3)大阪の常識 東京の非常識、大阪・東京ゼニカネ文化論他
(4)東西によるクレーム応対の違いを具体事例・数値で解説 
以上の内容でした。もし、ご関心のある方がございましたら、ぜひご覧ください。

今回のブログは、その後、研修の準備を進める中で、新たにピックアップした面白事例(この分野は材料が不足気味ながら、限られた素材にたどり着くと、面白いものが多いのです)を、今回から3回で紹介いたします。

3日後の約束に姿を現さないことがある関東出身のビジネスマン!?(※1)
さて、皆さんは「あさっての翌日」を何といいますか。西日本のほとんどは「シアサッテ」で、これが全国共通語(注)になっていますが、東日本では「ヤノアサッテ(ヤナサッテ)」で、「あさっての翌々日」が「シアサッテ」となります。このため、出身地が東西に異なる場合、日にちを特定せず「アサッテ」の言葉だけで面談を設定すると、関東出身の人が当日現れない(1日行き違う)ことがたまにあるそうです。
(注):かつてNHKの国内番組基準には「標準語」と明記されていました。しかし、「標準語」には強制的な印象を覚える人もいることから、「共通語」になりました。

●この春、社会人になったビジネスマンには、ぜひ知っておいていただきたい、東西の言語ギャップですね。ただし、関東でも東京だけは「アサッテ、シアサッテ、ヤノアサッテの順」になっていますから、さらに複雑ですね。参考までに、もう一つ東西の時間の感覚の違いを、お店までの時間(距離)の問い合わせ例でみてみましょう。

同じ距離でも、店側が応える時間は東京10分、関西20分の不思議!?(※2)
お店に予約を入れ、ある場所からの車での時間を聞くと、東京では最短の10分くらい(タクシー代にして2千円前後)と答えるところを、関西では同じ2千円前後の距離でもMAXの20分(東京の人は4千円前後の距離と錯覚する)と答えるそうです。その理由は、もし、それ以上かかると、入店時に難癖をつけられることがあるからとの、予防策とか。この辺りに文化の違いが色濃く出ているように思います。

●最後に人気の『謎解きはディナーのあとで』から東西の微妙な表現例を紹介しましょう。「殺人現場では靴をお脱ぎください」の中に次のような会話シーンがあります。
執事:「いえ、私はけっしてお嬢様を馬鹿にしたつもりは・・・」
麗子:「確かにあなたはあたしを馬鹿にしなかった。だって、あなたはあたしをアホと呼んだんですもの! 馬鹿じゃなくてアホと――だからクビよ!・・・」。
この「バカ」と「アホ」のニュアンスの違いを、次回、権威筋に語っていただきます。

※1:『ことばのとびら』(都染直也著/神戸新聞総合出版センター)
※2:『「はい」と言わない大阪人」(わかぎゑふ著/KKベストセラー)

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2012年4月28日 (土)

車内・機内アナウンス

昨晩、研修と打ち合わせの帰宅途上の電車の中で、こんなアナウンスがありました。
「日暮里と鶯谷の間で関係のない人が立ち入り・・・」
すると車内でクスクス、「関係ない人って」の声がどこからともなく聞こえてきました。
山本も同様に、「〝関係ない人〟…? トラブルになっているのですから、関係者でないことは明白で、単に〝人〟でいいのではないかと」、車中からFacebookに突っ込みを入れ、一日の疲れを癒やしたのでした。
おかげさまで、電車は15分後復旧、無事帰宅いたしました。

さて帰宅後、一段落してFacebookを開いて見ると、このお気楽な「突っ込み」に短時間で多くの「いいね!」と「労わりの言葉」をいただいており、驚きもし、また、感激いたしました。そこで、今回のブログは連載を急遽1回中断し、山本が研修で取り上げる、アナウンスに関するエピソードを紹介することにいたします。

その1 「この電車は回送となりますので、ご乗車できません」は正しい?(※1)
文化庁が、「この電車は回送となりますので、ご乗車できません」という表現を聞いてどのように感じるか、調査したことがあります。結果は、「敬語が正しく使われている」と答えた人が63%、「気になる」と答えた人が31%でした。正しいと思った人が多かったのですが、実はこの表現は適切ではありません。

「お(ご)○○できる」というのは、謙譲語表現である「お(ご)○○する」の可能を表す形です。謙譲語表現というのは、自分の動作をへりくだって表現し、相手に敬意を表します。この場合、乗車するのは、敬意を表すべき乗客です。その相手に謙譲表現を使ってはいけないのです。立てるべき相手の動作は、尊敬語にしなければなりません。
尊敬表現の可能形は「お(ご)○○になれる」です。したがって、このアナウンスはその否定形ですから、
「この列車は回送となりますので、ご乗車になれません」が適当な表現ということになります。

その2 フライト中のあいさつに対するANAのある機長のこだわり(※2)
ANAでは、お客様へのCS活動の一環として機長からのアナウンスを奨励していますが、アナウンスの有無は個人に任せているそうです。
英語ではユーモアを交えても、日本語ではあくまでもノーマルで特別なことを一切言わないある機長にその理由をチーフパーサーが尋ねたところ、「機長の声に慣れさせるため、驚かせないようにするためのアナウンスだから」との返事でした。

機長の本来の使命は、安全に、定刻に快適なフライトでお客様を目的地まで届けること。だから、操縦に集中したい。しかし、万が一、緊急事態に陥らないとも限らない。緊急脱出することになったら、「脱出」と機長が指示を出すことになるため、お客様にはあらかじめ機長の声を知っておいてもらった方がよい、とのご判断だそうです。

●緊急事態ともなると、人は皆、冷静ではいられません。それが飛行中の機内となればなおさらです。キャビンアテンダントの声(つまり女性の声ばかり)を聞いて過ごしていたところに、聞き慣れない声、それも男性の声が突然流れてくると、余計にただ事ではないと慌ててしまいかねません。でも、一度でも耳にしていれば、「機長の声だ」とわかってもらえます。そのためにアナウンスしているのだとの深慮からでした。
どうせ搭乗するなら、このような機長の飛行機に乗せてもらいたいものですね。

その3 拍手が起きたキャビンアテンダントのユニークな機内放送(※3)
「しばしお聞き下さい。ぜひ皆様に、安全のご案内をしたいと思います。1965年以降、自動車に乗ったことがないというお客様、シートベルトを正しく締めるには、平らな金具をバックルの中にスライドさて下さい。外すときは、バックルを持ち上げれば外れます。

また、歌にもありますように、恋人と分かれる方法は50通りもありますが、この飛行機から脱出する方法は6つしかありません。前方に出口が2つ、左右の翼の上に非常用脱出口が2つ、そして後方に出口が2つです。それぞれ出口の位置は、頭上の案内板と、通路沿いに設置された赤と白のディスコ調の照明で示されております。」

●本当に素晴らしい、パチパチパチ! ですね。ところで、このようなアナウンスを無視するお客さまもいらっしゃいます。かの有名なモハメド・アリもその一人でした。
キャビンアテンダント「離陸前ですのでシートベルトをお締めください」
アリ「私はスーパーマンだ。スーパーマンはシートベルトなど必要ないんだ!」
キャビンアテンダント「スーパーマンは飛行機なんか必要ないんですよね!」(※4)
このとっさの応対も凄いですね。以上、アナウンス特集でした。

※1:『プロアナウンサーに学ぶ 話す技術』(梅津正樹著/創元社)
※2:『空の上で本当にあった心温まる物語』(三枝理枝子著/あさ出版)
※3:『アイデアのちから』(チップ・ハース&ダン・ハース著/日経BP社)
※4:『瞬間説得 その気にさせる究極の方法』(ケヴィン・ダットン著/NHK出版)

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2012年4月21日 (土)

山本志のぶ「木の葉」ブログ
研修シリーズ
第90回〈ノンバーバル(非言語)コミュニケーション〉
「9つの非言語メディア」(28)
動作(人体の姿勢や動きで表現されるもの)④

前回、アカデミー賞5冠に輝いた『アーティスト』に関して書きながら、山本は手塚治虫さんのアイデア発想法のことを思い出しました。亡くなられて24年経たちますが、代表作の鉄腕アトムはいまだにテレビ画面を元気に飛び回っています。アトムが初めて登場したのは1952年のことだったそうですが、60年後の目覚しい科学の進歩に追い越されもせず、世界中で愛され続けているのは、本当にすごいことですね。

音を消したテレビの前に座り続けた手塚治虫氏が、そこに見ようとしたものは
手塚治虫さんは、マンガのアイデアを考えるとき、音のないテレビの前で、長い時間座り続けたそうです。「手や足の動きや、表情の変化を追っていくと、人間の深い意識の中に入り込んで、日常はうかがい知れない心のアヤを発見し、斬新なアイデアが浮かぶきっかけが、与えられるのではないだろうか」と、『ビジネスの心理法則』の中で著者の多湖輝氏は分析されていました。

●言葉のない状況で意思や感情を伝える表現(あるいは読み取る)は、本ブログが現在テーマにしている〝9つのメディア〟を駆使した非言語コミュニケーションの領域です。手塚治虫さんのような深い洞察力を身につけるのは大変ですが、非言語コミュニケーションは勉強すればある程度は理解できるようになります。まずは入門編として2つの例を紹介しましょう。

飲食店に入って座る席の位置で、その人の性格や気持ちがわかってしまう!?(※)
ひとりで喫茶店や飲食店に入ったとき、(選択の幅が広い場合)どの席を選びますか。
① 入口近くの席に座る人は、せっかちな性格:手近かな席に座り、オーダーも早く済ませてしまいたいという気持ちの表れ

②店の真ん中あたりの席に座る人は、自己顕示欲が強い性格:普通は周囲がオープンになっている席は落ち着かないもの。そんな席を選ぶ人は、自己顕示欲が強く、他人にはあまり関心を示さないタイプで、待ち合わせのときも同じような席を選び、相手が店に入ってくるのが見えると立ち上がって、他の客の視線なども気にせずに「おおい! ここ、ここ」と大声で呼んだりする。リーダーとしては頼りがいはあるが、どちらかといえば細やかな気遣いは苦手な人。

③店の奥の席に座る人は、協調的な性格:このタイプには決断力が欠ける面も指摘されるが、奥の席を好む人は、全体を見渡せることによって安心感を得るタイプでもある。常に人の動向を気にして、全体の調和や場の雰囲気を重んじる性格といえる。

④店の壁際の席に座る人は、内向的な性格:「他人にあまり構ってほしくない」という意識が働いている。壁に向かい側の席で、壁側を向いて座る人は、特にその意識の強い内向的な性格の人。反対に、壁を背にして座る人は外交的ともいえるが、自分から積極的に相手にかかわろうとするよりも、人が動くのを見ていたいというヤジ馬的好奇心の要素が強い人で、スポーツなども「やる」よりも「見る」のが好き。

何と! 寝相でも、性格や心理状態がわかってしまうとは・・・
①胎児のように丸まって眠る人は、強いストレスを感じている:性格的には、自分の殻に閉じこもりがちで、いつも誰かに保護されたいと望んでいる。元々はそうでないのに、最近そういう寝相になっている人は、悩み事や不安があって、強いストレスを感じている可能性がある。

②片腕を枕にして横向きに眠る人は、バランスのとれた人柄:必要以上にストレスをためこまず、問題をうまく処理している。

③うつ伏せに眠る人は、自己中心の几帳面な性格:常に周囲に細心の注意を払う几帳面なところがあり、身の回りに起こる出来事を自分が中心になって処理しないと気がすまないタイプ。しかし、それが過ぎると、すべてを自分の中にため込みすぎてストレスになってしまうこともある。

④仰向けに眠る人は、おおらかで柔軟な心の持ち主:おおらかな性格で、自信が強く、オープンで、柔軟な精神の持ち主。子どものとき、親の愛情や関心を一身に集めて育った人に多い。

⑤両方の手や足をからめて眠る人は、不安や悩みを抱えている:寝ている間にくるぶしをからめるのは、不安や悩み事を感じていることを示すといわれている。仕事やプライベートで強いストレスを感じている可能性が強い。

⑥ひざまずいて眠る人は、やりたいことが多すぎる:子どもには珍しくない寝相。これは、眠りを拒否しており、眠りの浅い人や眠れない人に多い。目が覚めている世界でやりたいことや、やらなければならないことが多く、早く昼の世界に戻りたいと望んでいる。

※『得するしぐさダメなしぐさ』(渋谷昌三著/新講社)

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2012年4月14日 (土)

山本志のぶ「木の葉」ブログ
研修シリーズ
第89回〈(非言語)コミュニケーション〉
「9つの非言語メディア」(27)
動作(人体の姿勢や動きで表現されるもの)③

先日、『鉄の女の涙』でアカデミー主演女優賞を獲得したメリル・ストリーブのことに触れましたが、今回は、作品賞・監督賞・主演男優賞・衣装デザイン賞・作曲賞の5冠に輝き、日本でも上映の始まった『アーティスト』について少し書きます。フランスに初めてアカデミー賞の作品賞をもたらしたミシェル・アザナヴィシウス監督のこの作品はモノクロのサイレント映画(90年前の手法)です。

言葉がなければ観客は自分で言葉をつくる。サイレントは世界共通語!?
アザナヴィシウス監督によると、色も言葉もないサイレント映画の構想は10年ほど前からあり、この間1920~30年のサイレント作品を350本ほども観て、研究を重ねたとのこと。作品に関して監督自らが語ったところを2012年4月9日付けの『アエラ』から転載させていただくと、
「言葉がなければ観客は自分で言葉をつくる。感情的に映画に入り込めるので、映画との距離が近くなる。その効果を狙った。サイレントは世界共通語だしね」

●アザナヴィシウス監督の発言を否定するつもりはありませんが、誤解のないように補足します。ダーウィンの研究以降、笑顔は世界共通に限りなく近いとされますが、表情となると事情は変わります(この点については、本ブログの2011年1月22日と2月19日に「表情から感情を読み取る研究(国際比較)」に詳しく書いていますので、ここでは省きます)。
これが身振り手振りとなると、国や地域や民族によって全く別の受け止め方をすることもあります。したがって、アザナヴィシウス監督の発言にあるサイレントを非言語コミュニケーションと解釈しますと、必ずしも世界共通語とは言えなくなります。ごく身近な事例として、「手輪っか」でその違いを見てみましょう。

手輪っか(HAND RING)でもアメリカとアラブ諸国は相容れない関係!?(※1)
意味①:
オーケー、よい
動作:片手の親指と人差し指の先を合わせて、垂直に輪を作る 
地域:北アメリカとヨーロッパ各地
背景:紀元1世紀から、この輪のジェスチャーは承諾のサインとして知られてきた。起源は、話し手が会話中に詳細な点に言及するとき、無意識に何か小さなものをつまむように親指と人差し指の先を合わせることに由来する。こうすると輪の形ができ、意識的に使うジェスチャーも生まれました。

話と一緒に使うばかりでなく、意図的なシグナルとして使いだすと完全で、すばらしく、賛同できるものは何でも表すようになりました。
現代では一般的に「アメリカのOKサイン」といわれ、北アメリカを拠点として、社会的影響がある地球上のあらゆるところへ普及しています。しかし、多くのアラブ諸国では、脅しと猥褻(わいせつ)という2つの異なるかたちが存在するため、普及が妨げられています。

意味②:ゼロ
動作:片手の親指と人差し指の先を合わせて、垂直に輪を作る 
地域:ベルギー、フランス、チュニジア
背景:一般的な「アメリカのOKサイン」とは正反対の意味であり、この2つが一緒になる地域では誤解を招くことがあります。

意味③:お金
動作:片手の親指と人差し指の先を合わせて、垂直に輪を作る 
地域:日本
背景:硬貨を象徴している。通常はお金を要求するときに使うが、何かの値段が高いというときにも使います。

他に、輪を横向きにすると「性的侮辱」
輪を水平に構え1・2回縦に短く引いて強調すると「完全(南アメリカ)」
輪を逆さにした形(輪そのものは縦になるが、手のひらは上向きにし、自分と相手の間で数回短く前後させる)と「何を言っているのか?(イタリア)」、
輪を下向きにすると「公正(イタリア)」など。

●アメリカの「OK」のサインが、多くのアラブ諸国では、NOに通じる「ゼロ」なのですから、手輪っかのサインだけで交渉を終えたら、大変なことになりますね。対人コミュニケーションでは大きな役割を担う非言語コミュニケーションですが、契約などの場合では、行き違いをなくすためのことば(書面)が不可欠となります。

このように、言葉は責任を明確にするのに対して、非言語の方は形に残らない分だけ責任をまぬかれやすい傾向があることも確かです。ことばと非言語は、お互いに支え合ってメッセージを形づくりますが、いつもこのような関係であるとは限らないと、『しぐさと表情の心理分析』の著者は書かれていますので、気をつけたいですね。

※1:『ボディートーク』(デズモンド・モリス著/三省堂)

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2012年4月 7日 (土)

山本志のぶ「木の葉」ブログ
研修シリーズ
第88回〈ノンバーバル(非言語)コミュニケーション〉
「9つの非言語メディア」(26)
動作(人体の姿勢や動きで表現されるもの)②

今回は、男女のかかわりの中で女性が見せる足(脚)組の意味合いを探ることがメインテーマになります。テーブル席の場合は、ほとんどブラインド状態ですが、殿方ならずとも、ちょっと覗いて見たくなるほど、好奇心を駆り立てられる奥深い世界のようです。まずは、女性から男性に送る〝好き〟のサインから。

女性が目を大きく見開いて足を組み、全身を揺り動かしたら・・・(※1)
アメリカの心理学者クローらの調査によると、女性が目を大きく見開いて男性を見るのは、その人に対して強い興味を抱いているサインだそうですよ。また、「女性が男性に対して『好き』を伝えるサインを送るとき、足を組んだり下脚部をぴったり重ね合わせたりする。さらに、腕を胴体近くに置き、全身を揺り動かすなどする」のだそうです。多くの男性方は、この貴重なサインを見落としていませんか。

●上記をみると、女性の愛情表現を観察する上で手足(脚)の動きがポイントになっていることがよくわかりました。今回、女性の足(脚)について他に2例紹介しますが、その前に、「相手のウソは手足(脚)の動きで見破れる」との日本の研究者による実験結果がありますので、そちらを先に見ていただき、いかに手足(脚)が正直に感情に反応するかを検証したいと思います。

欺瞞(ぎまん)の特徴を見つけ出す手掛かりは手足(脚)の動きに(※2)
日本の非言語コミュニケーション研究の権威である大坊郁夫氏に、参加者にVTRで人が嘘を発言するところを見せ、その人が欺瞞者だという判断の根拠となった手掛かりは何かについて答えてもらった実験があります。実験参加者がウソを見破るときの最大の手掛かりとしたのは、「発言内容」と「話し方」でしたが、これらの発言にかかわる要素は、ウソを見破る手掛かりとしてはそれほど有効ではありませんでした。

ウソを見破ることに貢献したのは「手の動き(複数回答による正解率90%)」と「足の動き(同83%)」だということが明らかとなりました。ちなみに「発言内容(同59%)」、「話し方(同58%)」はこの程度でした。実験から、人が本心と異なることを話す時には、意識が及びにくい手や足の動きなどに、それが漏れ出してしまうということがわかったそうです。
欺瞞動作のチェック項目(正解率の大きい順に) 
手の動き(正解率90%)、足(脚)の動き(同83%)、視線(同60%)、発言内容(同59%)、話し方(同58%)、胴体の動作(同56%)、顔の表情(同50%)、発言時間(同40%)     

ボディー・ランゲージの読み取りには足と脚のメッセージが最重要(※3)
「ボディー・ランゲージを読み取ろうとするとき、相手の顔から観察をはじめ、上から下へと焦点を移動させていく人が多い。ところが、虚勢を張って本心を隠すために一番よく利用されるのが顔だ。だから私のアプローチは全く逆になる。FBIで無数の事情聴取をこなしてきた私は、最初に容疑者の足と脚に注目しそこから少しずつ観察の対象を上に移していって、最後に顔の表情を読み取ることを覚えた。正直さという点についていうなら、足から頭に移るにつれて誠実さは薄れていく。」

●このようにみてくると、足(脚)を組む所作は女性にとっての素直な感情表出なのだということがほんの少しですがわかってきました。以下に二つ、女性の足(脚)組の出てくる男女関係を占う面白い例(カップルの幸せ度の尺度と、夫婦の力関係のバロメーター)を取り上げ、その心理に迫ってみましょう。

カップルが幸せかどうかを知る「非言語」の手がかりとは(※4)
幸せそうなカップル 
(1)お互い接近して座る。 (2)お互いの目を頻繁に見る。 (3)自分の身体に触る以上に、相手の身体にタッチする。
不幸せに見えるカップル
(1)自分の腕や脚を組んでいる。 (2)お互いに相手の目を見ることが少ない。 (3)相手の身体に触れるより、自分の身体にタッチすることが多い。

脚の組かえを先にするほうが、夫婦間では優位に立っている!?(※5)
脚を組むという動作には、人間関係の特徴が出ることがあるそうです。たとえば、セールスマンは、日曜の家庭訪問のときには、相手の夫婦の足の組方に注目するとのこと。人は、組んでいる足をときどき組かえますが、夫と妻のどちらが先に組かえるかに、家庭の中の優先順位・劣位が表われることが多いからだそうです。まず妻が組み換え夫がそれに従うときは、妻優位と思って、妻に対してアタックすると90%は成功するというのですが、これって本当でしょうか。

※1:「人を見る目」の心理分析
※2:対人関係の心理学入門
※3:FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学
※4:しぐさと表情の心理分析
※5:ビジネスの心理法則

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2012年3月31日 (土)

山本志のぶ「木の葉」ブログ
研修シリーズ
第87回〈ノンバーバル(非言語)コミュニケーション〉
「9つの非言語メディア」(25)
動作(人体の姿勢や動きで表現されるもの)①

前回で9つの非言語メディアの「目」を終え、今回から「動作(ボディ・ランゲージ)」に入ります。ついては、『ハーバード・ビジネススキル講座 対話力(※1)』に「魅力を引き出す10の態度」が書かれており、その第1項目が「アイ・コンタクト」、続く4項目が「動作」であることから、本ブログが「目」から「動作」に移行するに際し(非言語コミュニケーションをご理解いただく上でも)、格好の素材と思い取り上げることにいたします。

「魅力を引き出す10の態度」 非言語メディアの「目(1)」「動作(2~5)」
1.アイ・コンタクト:多いほどよい。視線がわずらわしく感じられない程度に。
2.顔の表情:生き生きとした表情。微笑みを絶やさない。興味深げに見えるように。
3.頭の動き:うなずいて興味を示す。常にあごを上げる。
4.身振り:表情豊かにオープンに。過剰にならないこと。
5.姿勢:背筋を伸ばす。身を乗り出して興味を示す。打ち解けた印象を与えるために後ろにもたれる。

非言語メディア「対人的空間」「身体接触」(6・7)、「色彩」「人体」(8)・・・
6.接近度と位置:圧迫感を与えない範囲で、相手にできるだけ近づく。
7.身体的な接触:相手に不快感を与えない範囲で、できるだけ頻繁に相手に触れる。
8.身なりと体形:服装には色を取り入れる。適度な体形。
9.タイミングと同調:それ以上アップすると効率が悪くなるところまで、行動のスピードを上げる
10.スピーチの言語以外の要素:話すことと聞くことの必要性をバランスさせることに努める。

●『ハーバード・ビジネススキル講座 対話力』が取り上げた「魅力を引き出す10の態度」は、そのうち2、3項目を実行するだけでも魅力が高まり始めるので、一度にすべてを実行しようとする必要はない、とのことです。上段2つのタイトルに「」書きで列記したように、9つの非言語メディアが10の態度にすべて網羅されていることに納得させられます。

●なお、「3.頭の動き:うなずいて興味を示す。常にあごを上げる。」について、誤解があるといけませんので補足しておきます。上げるあごの角度は20度までにしてください。いろいろな角度を試した結果20度でイキイキとした快活な表情になるそうです。また、男性を一番強く見せるのも20度だとか。しかし、これが30度近くになると〝強そう〟を通り越して、尊大で威張った顔になってしまいます。広告のモデルが写真に写るとき、あごを20度上げているのはこのためなのです。(※2)

マイナスのイメージを与える6つの損する態度 「目」「動作」「時間」(※3)
1.手や指で鼻や口にさわる――話している人がこのしぐさをしているとき、その人は本当のことを言っていない場合が多い。説得の場面では、自分の手は顔に近づけたりしないこと。
2.腕を組む ――これは何かを防御するときの姿勢だ。相手にネガティブな印象を与える。
3.アイコンタクト――相手からの核心をついてきた質問に応える場合には、自分の目を相手からそらさないこと。話しているときに目をそらすと、まるで嘘を言っているように見られがち。
4.歩き方――部屋に一人で入っていくときには、歩幅や歩くペースはいつもと変わりなくすること。背筋を伸ばし、肩を張り、手は握ったままで前を見て歩く。下を向いたり天井を見上げたりしてはだめ。あまりゆっくり歩いていると、なにも行くあてや目的がないのだと思われてしまう。逆に早足だと、会社の中であまり重要な存在ではなく、責任のある仕事を任されていないと思われる場合が多い。

9つの非言語メディアに限りなく近い意味を持つ「服装・装飾品・携行品」
5.装飾品――カフスやタイピン、時計、指輪などのシンプルなものなら問題はない。男性の場合、ネックレスやイヤリングは御法度。
6.ブリーフケース――ブリーフケースは薄いものにすること、辞書が2冊も入るようなものはぶ厚すぎる。

●『非言語コミュニケーション』の著者マジョリー・ヴァーカスは、9つの非言語メディアの解説の後に、かなりのスペースを割いて「服装(装飾品・携行品を含め)」「匂い」について触れており、これらは現代における非言語コミュニケーションにとっては欠くことのできない大変重要な要素であると書いています。この2項目については、山本も鋭意材料を集めておりますので、本シリーズが今回始まった「動作」→「人体(次回シリーズ予定)」で終了の暁には、上記2項目を取り上げたいと思います。

※1:『ハーバード・ビジネススキル講座 対話力』
※2:『人は「暗示で」9割動く!』
※3:『「できる人」の話し方、その見逃せない法則』

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2012年3月24日 (土)

山本志のぶ「木の葉」ブログ
研修シリーズ
第86回〈ノンバーバル(非言語)コミュニケーション〉
「9つの非言語メディア」(24)
目(「視線の交差(アイ・コンタクト)」と目つき)④

今回の「目」シリーズを書いていて気づいたことがあります。山本は「新入社員教育」から経営者の方々への「面接指南」まで幅広く研修を担当させていただいておりますが、そうした研修の場で「目」に関する話題を取り上げることが結構多かったと。やはり「目」が対人コミュニケーションの重要な位置を占めるとの認識があってのことと思いますが、「目」シリーズの最終回に当たり、前3回で紹介できなかった話題をいくつか紹介させていただきます。

人間は結構正直な生き物を証明してくれたクリントン元大統領のまばたき(※1)
まばたきが発生するのはストレスフルな状態、そして、アイコンタクトが弱くなるのは自信のないとき、触れてほしくない話題などのときに相手の目を見ていられなくなるそうです。クリントン氏が来日時関西テレビに出演したときのビデオ映像分析によると、話題がモニカ・ルインスキーのことになり、「そのことを奥さんに何と説明しましたか」と問われたとたん、ぱちぱちとまばたきが頻発しました。

●世界のビップには、なんとも痛ましい光景ですが、私にはウソのつけな人なんだ!と、何かホッとした記憶があります。彼が奥様のヒラリーさんにお詫びしている様を創造すると気の毒ですが、多分、彼女の心を動かす独特の目線が用意されていたように思います。次は、〝江戸しぐさ〟から、その目線について。

「おあいそ目つき」と「おあいにく目つき」(※2)
目線については、江戸の昔から伝わる「江戸しぐさ」に、今も参考になることがいくつか伝えられています。たとえば、客へのお礼は言葉だけではなく、目つきにも感謝の気持ちをこめるものです。これが「おあいそ目つき」。
また、買い物客が何らかの理由で買い物ができなくて帰る場合があります。そのような客に対しても、言葉だけでなく「あいにく用意していなくて申し訳ありません」というお詫びの態度や、目つきも表すことができれば、より確かに、相手に誠意が届くと伝えられています。これが「おあいにく目つき」。

●商売は関西の方がうわ手との見方もありますが、このような〝江戸しぐさ〟に触れますと、さすが将軍様のお膝元ですね。別れ際のちょっとしたしぐさを、お客はしっかりと受け止めており、大いにCS向上に役立っていたのでしょう。次は、お客がどのように目を意識しているかの、ちょっと怖い、そして身につまされるお話です。

しかめた眼(目)をアブストラクトした絵を描いて店頭に掲げると(※3)
これは建築家のジェームズ・レノンという人実験でわかったことです。
彼は、大きな透明のパネルに、しかめた眼をアブストラクトにした絵を描いて、いくつかの店の店頭に掲げました。彼の仮説で、「これで万引きが減る」だったのですが、案の定、絵をかけた期間中は、万引きの発生率が激減したそうです。

●目をふさぐ行動の起源はとても古く、脳に組み込まれてしまっているそうです。子宮の中にいる赤ちゃんでさえ、大きな音が聞こえると目を閉じる力を備えているとのこと。さらに驚くことは、生まれつき盲目の子どもが、悪いニュースを聞くと目を覆うという事実があるのだそうです(※4)。人間の感情表現は、目とは切り離せない関係にあるのでしょうか。2002年に発表されたナップとホールのこの研究成果には大変興味深いもありますね。
次は、柳生十兵衛が幼少時片目を失うきっかけと、その後独眼のハンディを乗り越え剣豪としての成功を暗示するようなシーンから。

兄の石つぶてで片目が潰れた時、幼い十兵衛は無傷の方の目をかばった(※5)
柳生十兵衛は子どもの頃、兄が投げた石が当たって片目が潰れて失明した。そのとき十兵衛の行動は、普通であれば石の当たった目を押さえるところ、無傷の目のほうを手でかばったといいます。幼くして、無傷の目までつぶされてはかなわないとのとっさの判断には、その後、剣豪として大成する資質が現れていたように思われます。

●ディズニーランドは衰えを知らない盛況を続けていますが、そのコンセプトの原点に「体の感覚受容器官の70%は目にあり、視覚はセットを伝達する最大の感覚である」があるそうです。このためディズニーでは、ゲストが目にするところはすべて、明るく楽しい気持ちを呼び起こすようにデザインされています。
色はパーク全体で統一され、施設内や周辺の公共道路で紫と赤という珍しい標識が使われているのは、ゲスト(来園者)調査の結果、紫と赤という組み合わせが一番覚えやすい色だということが分かったからだそうです。やはり、ディズニーはすごい。

※1:『プレゼンに勝つ! 魅せ方の技術』(佐藤綾子著/ダイヤモンド社)
※2:『もてなしの習慣 みんなで観光まちづくり』(福留強著/悠雲社)
※3:『ビジネスの心理法則』(多湖輝著/ごま書房)
※4:『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』(ジョー・ナヴァロ他著/河出書房新社)
※5:『クヨクヨするな! どんな悩みも自分で解決できる』黒川康正著/PHP)
※6:『お客さまを感動させる最高の方法』(ディズニー・インスティチュート/日本経済新聞)

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目(「視線の交差(アイ・コンタクト)」と目つき)③