なるべく使いたくない否定・非難・批判語(1)
おかげさまで、研修講師として独立半年後(2008年12月)から始めた“山本志のぶ「木の葉ブログ」”が、今回で50回目となりました。この間の研修講師としての活動を振り返りながら、私にとっては記念碑的なこの回を、少し趣向を変えて書きたいと思います。よろしくお付き合いください。
コーチングの観点から否定・非難・批判を考える
最近、官庁の役職者を対象にしたコーチングの研修を担当させていただきました。その際、部下指導時のコミュニケーションの場面で語った、「対立のコミュニケーション」と今回のテーマが共通するように思いますので、少し解説してみます。
たとえば、相手の言っていることに〈賛成か、反対か〉の意思を示すシーンを考えてみましょう。どちらの立場をとるにせよ、その行為そのものが自身の判断を下していることになります。
この場合、賛成であれば問題はなさそうですが、それでも独自に判断(相手を評価)したことで対立の構図は生まれてしまいます。ましてや、反対の立場でアドバイスするとなると、その根拠を示さなければならず、それは相手の立場を否定するメッセージとなります。自分が信じられていないと感知した瞬間、相手の心は閉ざされてしまいますので、その後は、思うようなコミュニケーションをとることができなくなってしまうのです。
専門家の言葉を借りれば「私たちは〈自分と違う選択や考え〉を、無意識で〈間違っている〉〈悪い〉〈不十分〉と傷つけようとします。そんなとき自分の内側の〈発信〉に意識が向かいがちになり、対立のコミュニケーションをするのです。」
この「対立のコミュニケーション」の結果を、相手は自分が〈否定された〉〈非難された〉〈批判された〉と受け止めます。電話応対の基本は、お客様の申し出を伺う立場です。コーチングにあてはめれば、いささか大仰な物言いになりますが、応対者側がお客様のホンネを引き出すコーチの役割となります。となれば、努めて「対立のコミュニケーション」は避けなければなりません。そうならないためには、傾聴のスキルを身につける必要があります。
カウンセリングの観点から否定・非難・批判を考える
伸び盛りの中堅企業の風土調査の依頼があった時のことです。職場が暗いことの原因が、どうも上下間のコミュニケーション不足と判断し、直属の上司に部下の評価を確認してみました。ところが、驚いたことに、まったく部下を評価していなかったのです(一般的には、仕事のできる方、ご自身に自信のある方に多い傾向)。
そこで、再評価のために個人面談をお願いし、その際、留意いただきたいことは ①部下の立場を尊重し対等の立場で(受容)、 ②部下の話を途中で遮らず全部聞く(傾聴)、 ③ただ聞くのではなく、部下の〈立場・気持ち〉になって聴く(共感)。 そして、④意見やアドバイスは必ずその3つを実践してからにする。の4点でした。
実は、①~③はC・Rロジャースのカウンセリング手法からの応用です。彼は、
カウンセリングの3原則を【受容】【共感】【自己一致】としています。概略は以下。
【受容】相手の言うことを批判的な態度ではなく、先入観にとらわれずに受け入れること
【共感】あたかも相手の立場になって自分が感じるように相手の感情や苦しみを感じること
【自己一致】あるべき自分と現在の自分の差がない状態にあろうとすること
上記3原則以外に、C・R・ロジャースの著書によく出てくる言葉に【傾聴】があります。3原則の最初の二つ【受容】【共感】と、【傾聴】、このカウンセリングのキーワドを並べてみて思いつくのは、電話応対、特にクレーム応対時に求められる応対者の基本姿勢と全く同じだということです。
前の「コーチングの観点から否定・非難・批判を考える」で、電話応対者は“コーチする側の立場”に近いと書きましたが、クレーム応対時の応対者には“カウンセラーとしての立場”が求められている、ということになりそうですね。
| 固定リンク
「電話応対研修」カテゴリの記事
- 電話応対の原点 “素敵な声づくり” (1)(2009.04.04)
- 電話応対の原点“素敵な声づくり”(2)(2009.04.11)
- 【電話応対の心構え①】電話応対に必要な力とは(2009.04.18)
- 【電話応対の心構え②】出会いの創造(2009.04.25)
- 電話応対の基本(1)(2009.05.02)
コメント