質問:「苦情対応で大事なことは?」を、トヨタ自動車の不具合対応を絡めて考える その1
実は、先月担当した「クレーム対応研修」の最後に、「クレーム(苦情)対応でいちばん大事なことは、なんですか?」との質問を受けました。その折、個々にいろいろな考えがあるでしょうが、私としては「誠意をもって対応する姿勢」だと思います、とお答えしました。
それから数日も経たないうちに、トヨタ自動車の不具合対応に関して、さまざまな媒体に「誠意」の文字が踊ったのは、みなさんご承知の通りです。米議会公聴会での世界企業トヨタの対応についてですから、次元は違いますが、クレーム(苦情)対応の姿勢を示していることは共通します。そこで、改めて「誠意」とは何なのかについて、自分なりの考えを整理してみました。
今回は「プロとして、ハートで語る」の続編予定でしたが、記憶が冷めやらないうちにと思い、変更させていただきます。
トヨタの手札は「誠意」、米公聴会に社長出席へ
これは、2010年2月20日の『朝日新聞』朝刊の記事のタイトルです。そして、文中に「豊田社長は今のところ、トップ自らが説明するという『誠意』だけが先行し、具体策を提示できない状況だ」とあります。
また、3月12日号『週刊ポスト』誌は(新聞広告でしか見てないのですが)特集の見出しとして、「トヨタ、日本流『誠意』が米国人の怒りを増幅させる」とありました。いずれも、トヨタ自動車の今回の問題に対する取り組み姿勢が「誠意をもって」であることを伝えています。
クレーム(苦情)対応で「誠意」は通じるのか?
『週刊ポスト』誌が報じるように、このトヨタ自動車の「誠意」を前面に出した日本流対処法は、果たして米国で通用するのでしょうか。その判断にはもう少し時間がかかりそうですが、わが国で発生するクレーム対応でいえば、「誠意」は有効な対処法であるといえそうです。
『日本苦情白書』(2009年の7月刊。『となりのクレーマー』などの著書がある関根眞一さんの監修に、以下の調査結果(同氏の講演会参加者を対象に5,059人のアンケートを集計)があります。
苦情対応の際、納得できるときはどんな場合ですか
誠意がある、態度が良い・・・64・2%
説明がわかる・・・・・・・・・・・・32・1%
サービス品を頂いた・・・・・・・・ 1・8%
次回 の優遇約束・・・・・・・・ 1・1%
その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 0・8%
圧倒的に、「誠意がある、態度が良いと」なっていることがわかります。日本人の〝論理ではなく感情面を評価する傾向〟がはっきり出ている感じですね。
ところで、わかっているようで、実はそうではないかもしれない「誠意」とは、の本当の意味はなんなのかを、山本流に調べ直してみました。
日本語と英語ではだいぶニュアンスが異なる
日本語で「誠意」の意味は、
『広辞苑』 私欲を離れ、曲がったところのない心で物事に対する気持ち。まごころ。
『大辞林』 うそいつわりのない心。私利・私欲のない心。まごころ。
代表的な二つの辞典では、その内容は大同小異といえますが、これが英語になると趣を変えます。
研究社の『新和英大辞典』によれば、誠意は【sincerity】です。
これをさらに、研究社の新英和大辞典で牽き直すと
【sincerity】1 誠実,誠意,正直(honesty);表裏のないこと 2 誠意のある言葉,誠実な行動;純粋な気持ち
でした。
これで、「誠意」に関する理解はできました。さて次回は、その「誠意とは」がクレーム(苦情)対応の場では、意外な受け止め方をされている事実を、上記紹介の調査結果の続編としてご紹介いたします。
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