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2010年5月29日 (土)

ゆとり世代とほめ言葉について③

私は、伊藤忠商事の元社長で、現在は政府関係のお仕事でも活躍されている
丹羽宇一郎さんのファンで、木の葉ブログの第13回コミュニケーション(3)でも取り上げさせていただきました。最近このうるさ型の〝オジサマ〟が『負けてたまるか! 若者のための仕事術』(2010年4月/朝日新書)を上梓なさいましたので、本屋さんでちょっと立ち読みしました(**書店さんご免なさい)。

その中に、「私は最近、入社したての若者を『伝書バト』と呼んでいます。上司に言われたことを相手に伝えるだけで戻ってくる。何か問題が起きても、自分の頭で考えることをしない。これまで、箸の上げ下ろしから全部、親が面倒を見てくれ、快適な生活を与えられてきたから、言われた以上のことをやる必要がなかったのだと思います。そして、『最後には、誰かが助けてくれる』といった甘えがどこかにあるのではないでしょうか。」の厳しいご指摘がありました。

「ゆとり世代」といわれる彼らには〝ゆとり教育〟の弊害?からか、たしかに丹羽さんがご指摘通りの要素が多分にあると思います。特に、コミュニケーション・スキルについては、多くの人が課題を抱えているように見受けられます。そのために、前の世代にも見劣りしない〝しっかりとした仕事に対する認識や価値観〟が見落されてしまっている(研修を担当しての実感です。詳しくは後述)気もいたします。
下記は、『若者のトリセツ』(岩間夏樹著/生産性出版刊)にある、「新入社員の現在――生活意識と就労意識 2009年度の新人研修の場での調査」からの引用です。随所に、思いのほか〝高い意識〟が出ており、私も認識を改めさせられましたので、ボリュームがありますが、このシリーズの締めくくりとして紹介させていただきます。

※この調査は、日本生産性本部が1969年以来「新社会人研修村」として、新入社員の研修を加盟企業から請け負い、その参加者に対して研修の一環として実施しているもの。2001年に質問項目の見直しがされ、「生活価値観」「就業意識に関係する質問」等が追加された。なお、文字数の関係で2~3の項目は質問内容を短くしたものがあります。

新入社員の現在―生活意識と就労意識(2009年度の新人研修の場での調査)
Q.生活価値観(数値は「そう思う」と「ややそう思う」の肯定的反応の合計)
①人間関係では、先輩と後輩など上下のけじめは大切なことだ      88・8%
②明るい気持ちで積極的に行動すれば、大抵のことは達成できる     85・7%
③将来の幸福のために、今は我慢が必要だ               84・6%
④他人にどう思われようとも、自分らしく生きたい           82・3%
⑤自分はいい時代に生まれたと思う                  77・7%
⑥少し無理だと思うくらいの目標を立てたほうが頑張れる        76・4%
⑦あまり収入が良くなくても、やり甲斐のある仕事がしたい       65・7%
⑧企業は経済的な利益よりも、環境保全を優先すべきだ         62・5%
⑨例え経済的に恵まれなくても、気ままに楽しく暮らした方がいい    59・0%
⑩冒険をして大きく失敗するよりも、堅実な生き方をする方がいい    58・2%
⑪世の中、何はともあれ目立った方が得だ               52・0%
⑫リーダーになって苦労するよりは、気楽なほうがいい         49・4%
⑬自分と意見のあわない人とは、あまりつきあいたくない        47・7%
⑭世の中は、いろいろな面で今よりもよくなっていくだろう       47・6%
⑮世の中は、いろいろな面で、今よりも昔の方がよかった        47・5%
⑯周囲の人と違うことはあまりしたくない               37・4%

●本調査の質問項目見直しがあった2001年から、調査分析及びとりまとめを担当している著者・岩間夏樹氏は、①の「人間関係では、先輩と後輩など上下のけじめをつけるのは大切なことだ 88・8%」ついて、「この支持率は、最近の若者に似つかわしくないイメージだが、この調査が新入社員の研修の場で実施されていることを考えれば、新しい環境に飛び込んだ瞬間の思いとして、このくらいの謙虚さはことさら不自然ではないだろう。」と解説されています。

Q.仕事についてのあなたの考えや希望についてお聞きします(数値は同上)
①仕事を通じて人間関係を広げていきたい               95・4%
②社会や人から感謝される仕事がしたい                94・1%
③どこでも通用する専門技術を身につけたい              92・8%
④これからの時代は終身雇用ではなく会社に甘える生活はできない    84・4%
⑤高い役職につくために、少々の苦労はしても頑張る          80・8%
⑥仕事を生きがいとしたい                      75・7%
⑦仕事をしていく上で人間関係に不安を感じる             66・0%
⑧面白い仕事であれば、収入が少なくても構わない           56・9%
⑨いずれリストラされるのではないかと不安だ             46・1%
⑩職場の上司、同僚が残業していても自分の仕事が終わったら帰る    33・2%
⑪仕事はお金を稼ぐための手段であって、面白いものではない      32・1%
⑫いずれ会社が倒産したり破たんしたりするのではないかと不安だ    27・7%
⑬職場の同僚、上司、部下等とは勤務時間以外は付き合いたくない    21・9%

●著者の解説によると、①には、「新しい環境での人間関係に期待すると同時に、人脈を広げることで自分の仕事力を高めようとする意向も感じられる。」   ③にも、「会社に依存するのではなく、自分の力でサバイバルできる資格を持ちたいという意向の反映だろう。」とのこと。なお、⑨と⑫の数値は、就職氷河期の2002年に匹敵する水準になっているそうです。

●上記2つの回答内容を見ると、立派な青年像が浮かび上がってくるのは、私だけでしょうか。ちなみに、著者の岩間氏によれば、調査開始以来8年を通して、若干の順位の入れ替わりがある程度で、傾向に大きな変化は見られないとのことです。これは、前記した私の研修時に受ける「前の世代と、就業意識はそれほど変わらない」の認識に重なるものがあります。

●いまの20代は、「子どもたちには極力、ストレスをかけないように」という〝ゆとり教育〟で育ってきています。極端な例では、「宿題を忘れても教師に叱られなかった」とか、「授業中に騒いでも注意された経験がない」のだそうです。〝危険だから〟 勝ち負けがつくと〝かわいそうだから〟との理由で、運動会が行われなくなったりし、競争する機会が失われたことで、ストレス耐性が極めて弱くなっているようです。

●少し上司に怒鳴られただけで「翌日には辞表を持ってくる」「出社拒否になる」事態が、あちこちで起きていることも事実ですが、前出の丹羽さんのご本の中の「教養」に関する記述の最後に「人は、人によっても磨かれるのです。」とありました。新入社員教育の一端を担うものの一人として、重く受け止め、彼らのよさを引き出せる研修を、さらに一層心がけていこうと思います。

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