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2010年7月24日 (土)

病院のホスピタリティ④

医療の現場を語る上で、ぜひ紹介しておきたいのが1996年12月の日本看護協会創立50周年式典で、来賓として美智子皇后が直接語られた「おことば」です。

「出生、病及び死に際し、また、人生の節々の段階に訪れる心身の変化に際し、人は何を経験し、どのような反応を示すのか、――看護の仕事には、人間体験への深い洞察とともに、人を不安や孤独に至らしめぬための、様々な心遣いが求められているように思われます。身心に痛みや傷をもつ人々、老齢により弱まった人々が、自分が置かれている状態を受け入れ、それを乗り越え、または苦痛と共に一生を生き切ろうとするとき、(中略)患者に寄り添い、患者の中に潜む生きようとする力を引き出す看護者の力が、これまでどれだけ多くの人々を支え、助けてきたことでしょう。」
『文芸春秋2009年5月号《ドキュメント 美智子妃誕生」』より

看護者への思い遣り溢れる「おことば」ですが、そのご期待に添うような感動的なお話を『医療・介護の現場で働く人の接遇教科書(雨宮惠美著/中経出版刊より)』紹介いたします。「ホスピタリティ研修」などでこのお話をさせていただくとき、私・山本は講師としては誠にお恥ずかしいことですが、毎回目頭が熱くなり、ときに涙があふれてしまうことがあります。

「ごめんなさい。私が使い方をよく教えなかったから・・・」
・・・採尿器をうまく使えず、粗相をしてしまったと恐縮する患者のSさん(私の記憶が間違っていなければSさんも看護師さん)が・・・
「ナースコールを押した結果、看護師さんが急いでやってきました。Sさんは恥ずかしさを忍んで事態を説明しようと思っていたのですが、看護師さんはSさんの説明を聞く前に事態を察知したようでした。
Sさんが生涯忘れない感動を得たのは、そのときです。
Sさんの脳裏に残り続けるひと言を、その看護師さんが言ってくれたのです。
『ごめんなさい。私が使い方をよく教えなかったから、うまくできなかったのですね。申し訳ありませんでした』」

● こんなに思い遣りのある言葉を、とっさの場面で、自然に発せられる人は、本当に心の美しい人なのでしょうね。来院する患者さんは、老いに打ちのめされたり、手術の恐怖にさいなまれている人も多いことでしょう。そうした人たちが看護師さんの温かい言葉にどれだけ救われてきたかわかりません。その一端を、昔読んだ本の中から二つご紹介いたします。

街の医院で老人が・・・、手術前に働き盛りのビジネスマンが・・・
『励まし、励まされ』(高橋信太郎著/パルス出版刊)の中で著者は、かかりつけの開業医の看護師さんの素晴らしさを簡潔に述べています。
「使っている杖(つえ)がはずみで倒れても、『不注意でごめんなさいね』といって、恐縮して杖を手渡してくれる。」「『長い間お待たせして済みませんね』と優しく声をかけ、『申し訳ありませんがあと何分ぐらい待っていただくようになりますので…』と教えてくれる。」「薬を渡しながら、『お大事に』と励ます。」

『プロの質問力』(清水祐三著/PHP刊)の著者が二週間の入院を伴った手術を受けるとき、「『寒くないですか』と看護師が話しかけてくれた。『慣れてないので、少々緊張…。でも、やるべきことを早く済ませてしまいたい』と答えると、『そうですよね。これっきりにしたいですよね。大丈夫、先生はうまいから。いい先生ですから、安心して下さい。これから麻酔を打ちますが…頸椎麻酔は打ったことないでしょうけど、大丈夫ですよ』。そして『心配することは何もありませんよ』と励ますかのように、私の背中をポンと叩いてくれた。」

●このような温かい声をかけていただいたら総合満足度は無条件で【5】ですね。でも、患者さんの期待が大きい看護師さんたちが医療現場の厳しい状況の中で、時間に追われ「満足な対応が出来ない」との悲痛な叫びをあげているのも現実です。「病院のホスピタリティ」最終回となる次回は、この問題にスポットを当てたいと思います。

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