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2010年7月31日 (土)

病院のホスピタリティ⑤

思いやりを発揮しようと思ってはいても、恒常的に超過密なスケジュールをこなすのが精一杯で、難しいという医療現場の実態があることも確かのようです。このような状況への対処法をノンフィクション作家で評論家でもある柳田邦男氏が、ある医科大学で「患者に寄り添う医師のあり方」を医学生向けに講演した際、一学生からの質問への回答として語られた内容が大変参考になると思いますので、紹介いたします。

「サービス」では補えないが、「ホスピタリティ」なら
学生の質問:「医師になったら、専門の勉強と診療に追われて、とても患者とゆっくり会話を交わす時間的な余裕がないのではないか。患者に寄り添うといっても、現実にはできそうもない」
柳田邦男の回答:「初めから出来ないと思ってしまうと、何も変わらないけれど、〝できたらいいな〟と日ごろから思っていると、患者への接し方も心の持ち方も必ずやどこかで変わってくるに違いないと思います」。文中〝〟は山本記入。
『こころに響いた、あのひと言』(「いい人に会う」編集部編/岩波書店刊)より

●柳田さんの、この〝できたらいいな〟の精神は、患者を深く理解し、決して傷つけない精神科の女医さんから学んだ姿勢と書いていらっしゃいます。今できないから〝やれない〟だと、自分の心さえ傷つけかねません。だとしたら、やれないのではなく、やれないけれど〝できたらいいな〟と考えることで、少しは患者さんと寄り添えるのではないかとのアドバイスなのでしょう。「サービス」さえ提供できない日常であっても、「ホスピタリティ」の精神を忘れてはならない、との教えと私は受け止めました。

●さて、病院シリーズの最後は、やはりホスピタリティの権化ともいえそうな諏訪中央病院の鎌田實先生にまつわるお話で締めてもらいましょう。前出の医大の学生さんと同じような心境のある看護師さんからのお手紙が鎌田先生のもとに届いたそうです。そして、その結末は・・・、これがまたまた感動ものなのです。(前出『超ホスピタリティ』より)

都会の大学病院に就職して半年の看護師さんから届いた手紙
「人の命を、ものを扱うがごとく軽く見ている医者。医師自身の保身のためだけに行われている一方的な患者への説明。患者さんに申し訳ない気持ちでいっぱいです。この病院で働くことが恥ずかしい」といった内容でしたが、彼女は鎌田先生の著書を読み、講演を聴いた結果、次に届いた手紙の内容が大きく変わりました。
                 
「自分がどんな環境で働いていたとしても、患者さんの話を聞き、その人の言葉、一語一語を丁寧に受け止めていこう。システムが悪いからといって、責任を転嫁しないようにしよう。患者さんは精一杯生きているのに、私があきらめてはダメだ。」
彼女は自分の気持ちを一つひとつ確かめ、自分の行動を見直し、どのような看護師になりたいかを改めて考えてくれたのです――鎌田先生解説。そして、
「今は患者さんの笑顔から逆にパワーをもらっています。こんな素敵な仕事はないですね。これからも長い道を多くの人たちとの出会いを大切にしながら、ゆっくり歩いてきたい」、手紙はそう結ばれていたそうです。

●5回にわたり、「病院のホスピタリティ」を書いてまいりました。患者側の不安が大きければ大きいほど、病院側に対する期待度は増しますが、就業環境が障害となり、生したギャップが相互不信に変容しかねません。このシリーズの1回目(第78回)で紹介した「看護はアート」の中に、医療従事者と患者の〝相互理解に至るコミュニケーション〟という日野原先生・小松先生のお話がありました。

●コーチングの勉強をしていたときのこと、医療現場のロールプレイングを通してわかったこととして、以下の解説があり、救われた気がしたことがあります。
「たった2分間でも傾聴されれば、人は満足することがわかってきた。つまり、2分の会話でも患者さんに満足してもらえるコーチングはできる」というものでした。何とか医療現場に患者さんあたり2分のゆとりが捻出できるようになり、〝相互理解に至るコミュニケーション〟が図れるようになることを願いつつ、この稿を終わることにいたします。

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