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2010年12月 4日 (土)

メラビアンの法則② 出典と法則誕生の時代背景

区切りの100回で『メラビアンの法則』に関し、ショッキングなことを書きましたので、多方面から反響がありました。それだけ関心が深いのだと思い、さらに力を入れてこのテーマに取り組むことにいたします。『メラビアンの法則』が前回書いたような〝都市伝説〟であるのかの検証的な意味合いもありますので、これ以降、引用箇所(原書をひもとく語学力がないので対象は日本語訳本)が多くなり、ブログ全体がやや硬くなってしまいますが、懲りずにお付き合いください。まずは、理解を深める意味合いから、出典の目次、著者による同書の定義、そして時代背景を見てみましょう。

「メラビアンの法則」の出典、マレービアン著『非言語コミュニケーション』目次
第1章 理論的フレームワーク
第2章 好意と接近
第3章 感情の察知
第4章 支配
第5章 諸刃(もろは)のメッセージ
矛盾したメッセージの分析(『メラビアンの法則』に関する数値が示されている)/矛盾するメッセージの一般的機能/矛盾したメッセージと社会的影響/矛盾したメッセージと精神障害/要約/推薦図書
第6章 社交スタイル
第7章 環境と社会的相互作用
第8章 言語内の言語
第9章 現実社会への応用
※『メラビアンの法則』が取り上げられている第5章は項目まで記載。

本書の理論は、表に現れない「暗示的なコミュニケーション」が主体
(本文1頁より)本書は、人々が意思を伝える際の言語などの明確な手段ではなく、意味が表に現れない暗示的なコミュニケーションのさまざまな側面について述べたものである。(中略)暗示的なコミュニケーションは、ノンバーバルの文献で扱われている「言語」対「非言語」という捉え方よりも、意思伝達の暗示的な一側面と捉えたほうがよい。

なぜこのような研究がなされたのか? その時代的背景
著者は、「原著まえがき」の冒頭に、「伝統的に言葉を重視するアメリカ文化が、意志伝達のプロセスに重要な意味を持ちながら無視されていた、非言語(ノンバーバル)の役割に気づき始めた。言葉と異なり、人間の行為や行動は感情から切り離せないという点で、非言語の役割はとくに重要である。なぜならば、人は意識する、しないに関係なく、非言語の情報で物事を判断してしまうからである。」

「毎日の生活や友だちづきあい、仕事の上での人間関係などがうまくいっているかどうかなどは、言葉よりもノンバーバルで判断することが多い。その時の気分や顔の表情、姿勢、動作、ジェスチャーなどは言葉以上の意味を持つことがある。発せられた言葉と、ノンバーバルが一致しない場合、人は往々にして言葉を信用しない。むしろ行動を判断の基準とする。」

●原著の冒頭に書かれた「伝統的に言葉を重視するアメリカ文化が、意志伝達のプロセスに重要な意味を持ちながら無視されていた」は、コミュニケーションの手段として言葉(バーバル)に重点を置く言語学者に対し、コミュニケーションを深めるためには非言語(ノンバーバル)の理解が必要とする、心理学者からの問題提起がなされ始めた頃の研究であることを物語っているでしょう。

●この学者の立場の違いが、『メラビアンの法則』や前回『4分間交渉術』に名前だけ登場したバード・ウィステルの研究「2者間の対話では、言葉によって伝えられるメッセージ(コミュニケーション内容)は、全体の35パーセントにすぎず、残りの65パーセントは、話しぶり、動作、ジェスチャー、相手との間のとり方など、言葉以外の手段によって伝えられる」を、後の研究者が自身の研究に都合よく解釈し、応用した結果との認識が多く専門家にあります(そのうちの1例を補足資料として最後に付記します)。こうした時代背景を理解することで、『メラビアンの法則』の過剰解釈の発生原因に少しは迫れるかもしれません。

●今回の最後は、マレービアンが「原著のまえがき」に記し、前述の佐藤綾子氏の著書でも繰り返し紹介している(中には本の冒頭に登場するケースも)、〝ノンバーバルの重要性〟についてです。

「意思伝達におけるノンバーバルの重要性を理解している人は、社会において成功するだろう。人の上に立つ人は言うに及ばず、演技を必要とする職業、説得を必要とする職業には特に大切である」

【補足資料】『メラビアンの法則』の過剰解釈について
『非言語行動の心理学 対人関係とコミュニケーションの理解のために』V・P・リッチモンド&J・C・マクロスキー著/2006年・北大路書房刊/巻頭頁より
「非言語的要素は、ヒューマンコミュニケーションの研究史において、ずっと無視されてきた。コミュニケーションのこの側面へ向けられる注目が増加するにつれ、いくつかの俗説が生まれ、かなりの混乱を導きだしている。これらの俗説のいくつかを検討してみよう。
1.「非言語コミュニケーションは無意味である。すべてのコミュニケーションは言語を必要とする。ゆえに、すべてのコミュニケーションは言語によるものである」。
これは主として、言語に注意を集中し、言語とコミュニケーションという用語が、実質的に交換可能であると考える人々がいだく伝統的な俗説である。しかしながら、口頭での相互作用の場合には、コミュニケーションに影響する可能性のある非言語行動が常に存在している。われわれはメッセージに非言語的要素を持ち込まなければ、電話で話すことすらできない。われわれの声の音は、たしかに存在し、そして2人の声は同一ではない。ゆえに、同一の単語を発話したとしても、2人は同じメッセージを送っているわけではない。彼らの声がメッセージに違いを生じさせる。もちろん、実際の相互作用では、より多くの非言語メッセージが存在する。非言語コミュニケーションは無意味ではない。非言語行動はすべて口頭によるコミュニケーション状況に影響意を及ぼすのである。
2.「非言語行動は人間の相互作用におけるほとんどのコミュニケーションを明らかにする」。この俗説は、俗説1の虚偽に対する過剰反応のひとつである。実験室環境とフィールド環境の両方で実施された、非言語コミュニケーションに関する初期の研究は、伝達される意味が変わるかどうかは言語メッセージではなく、大部分、非言語メッセージの働きによることを示した。最終的に、この研究は伝統的俗説が誤りであることを示すが、後に多くの研究者たちがこれを過剰解釈した。伝達されるすべての意味の65~93%(バード・ウィステルとマレービアン他の研究を指す:山本注)が非言語的要素に起因すると結論づけるために、著作者たちの多くが共通して、この初期の研究を引用している。これらの結果は、引用された研究の実際の実例である。しかしながら、これら初期の研究は俗説1が正確ではないと証明するために、特別に計画されたものであり、研究された相互作用が人間のすべての相互作用の典型だと仮定できないということが、一般的に無視されている。だから、すべての非言語行動の影響について、続けて一般化することには正当な根拠がないのである。非言語要素は多くの環境でコミュニケーションを決定づけるが、一方で、非言語要素がほとんど意味ある効果を持たないことがある。だから、ほとんどの人間の相互作用においては、言語要素と非言語要素の両方がとても重要であり、通常、伝えられる意味とはどちらか一方の要素だけではなく、2つの要素の相互作用に依存するのである。」

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