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2010年12月25日 (土)

メラビアンの法則⑤ 「声から感情を読み取る研究」(1)

今回は、『メラビアンの法則』の問題提起に関する、実験の妥当性①(単語を聞き分けるだけの実験で相手の発する声から言葉よりも5~6倍〈38%÷7%≒5.4倍〉も感情が読めるのか?)について、コロンビア大学のジョエル・R・ダヴィッツとその妻ロイス=ジーンが行った実験から見てみましょう。
出典は、マジョリー・F・ヴァーガス著『非言語コミュニケーション』(マレービアン氏の本のタイトルとまったく同一ながら別の本)1987年/新潮社刊です。なお、硬い話ばかりでは恐縮ですので、最後に「発声法」にまつわるサッチャー英国元首相の取り組み姿勢を、参考資料として付けておきました。

各被験者はアルファベットを毎回別の感情を表現して10回唱えた
実験内容は以下の通り(本文103頁より)。「英語を母国語として話すアメリカ人8人が被験者として、また彼らの音声表示を評価するために30人が判定者として集められた。各被験者はアルファベットを10回唱えただけなのだが、毎回別の感情を表現することを求められた。望み通りの感情表現を容易ならしめるため、10種類の感情を盛り込んだ状況を記述したカードを用意しておいて、被験者がアルファベットを唱える前に、それを1枚ずつ読ませたのである。」

まぐれなら確率10%のはずが、発声者は23~54%の表現力を示した
「判定者たちの識別結果を分析したところ、それは人間の感情が、意味内容のない音声によっても、かなり確実に伝達いできるという学説を裏付けるものであった。しかし望みどおりの感情を伝える能力には、その的中率に23%から54%までの個人差が認められた。もしこの結果がまったくのまぐれだったら、的中率は10%になったはずなのだ。」

「声」から感情を読み取る判断者の最高的中率は49%、最低は2%だった。
「表現された10種類の感情と、それを正確に識別した比率は次の通りであった。〈怒り〉65%、〈不安〉54%、〈悲しみ〉49%、〈幸福〉43%、〈同情〉38%、〈満足〉31%、〈愛情〉〈恐怖〉〈嫉妬〉がいずれも25%、そして〈誇り〉21%。この場合も、まぐれ当たりの確率は10%のはずである。よく混同されたのは〈恐怖〉と〈不安〉、〈恐怖〉と〈悲しみ〉、〈悲しみ〉と〈愛嬢〉、〈愛情〉と〈同情〉、〈誇り〉と〈満足〉であった。
判定者側にも、表現された感情を正確に識別する能力の個人差が認められた。最もよく当てた者の的中率は49%、最低はわずかに2%だった。」

●『メラビアンの法則』に対する問題提起の一つに、「単語を表現しただけで、本当に感情が読めるのか?」があります。上記ジョエル・R・ダヴィッツとその妻ロイス=ジーンの「アルファベットの発声だけでもある程度感情が読みとれる」とした研究成果は、そうした問題提起への「単語だけでも感情判断はある程度できる」との回答になるのではないでしょうか。さらに、この実験結果を裏付けるような研究もその後なされていますので、次に紹介いたします。

「悲しみ・怒り・嫌悪・恐怖・興味・驚き・幸福」の感情は聞き分けられる!
V・P・リッチモンド&J・C・マクロスキー著の『非言語行動の心理学 対人関係とコミュニケーションの理解のために』には、シェアラーとオシンスキーの音声手がかりとそれに関連する感情状態を記述した「音声行動と感情」の研究(1977)が書かれています。これらの音声手がかりは、メッセージ内容ではなく、他人が本当に意味すること(感情)を教えてくれます。また、両氏以外の多くの研究者たちも、特定の音声的感情状態と関連する手がかりが存在することを示唆しているそうです。

悲しみ:遅いテンポ、低ピッチ、少しの調波、平板、少しの活発性、穏やか、無色
怒り:速いテンポ、高いピッチレベル、音が大きい、多くの調波、不快、耳障りな
嫌悪:遅いテンポ、多くの調波、平板、硬い音、少しの抑揚、ひどく不快な
恐怖:ピッチ曲線の上昇、速いテンポ、甲高い、調和しない、不協和音、つんざく
興味:等ピッチ、適度なテンポ、適度な調波、活気のある、機敏
驚き:速いテンポ、高ピッチ、ピッチの上下、多くの調波、ハッとして、あ然として
幸福:速いテンポ、より高いピッチ変動、活動的、活気のある、生き生きとした、陽気な

●これだけ明確に「音声行動と感情」が仕分けされると、専門知識がなくても音声から相手の感情を読み取ることができそうな気がします。なお、この項目に「喜び」が抜けているのを不思議に思う方もいらっしゃるでしょうが、実は、アメリカの心理学者E・E・レヴィットに、①表情、②声、③表情と声、の3つの場合について相手に感情をどれだけ伝えられるかを調べた実験があるそうで、これによると、電話(声)では、相手に「恐れ」の感情を伝えることはできるが、「喜び」や「不快」の感情を伝えるのは難しいことが分かったそうです。
さて、今回の参考資料は、〝声の質〟が与える影響について、2つの文献からのピックアップです。鉄の女などとも称されましたが、いまだに広く尊敬を集める英国のサッチャー元首相が最後に登場しますので、ぜひお目通し下さい。

【参考資料1】「女は低い声を使った方が知的で、権威があって、信頼できる印象を与える」『話を聞かない男、地図が読めない女』より
「ちなみにビジネスの現場では、女は低い声を使った方が知的で、権威があって、信頼できる印象を与える。あごを下げて大げさな抑揚をつけずにゆっくり話す練習をしておこう。声を高くすれば威信を示せると誤解する女は多いが、それでは攻撃的な印象を受けるだけだ。別の興味深い見解もある。普通、ブリッ子声は好きな男に守ってもらうために出すものだが、太り過ぎの女に限っては、大きな身体がかもしだす威圧感を打ち消すためだというのだ。」

【参考資料2】サッチャー元首相の声の変化と使い分け 『「声」の秘密』より
「彼女の側近たちは、そのままの声(若い頃の声は、後年に比べると実に軽く魅力的だった)ではきっと失敗すると早くから考えていた。側近の一人、ディム・ベルは、広告代理店の経営者からサッチャーの顧問に抜擢され、保守党の選挙宣伝キャンペーンを担当した。彼は次のように振り返る。
彼女の声には物理的な問題があった。胸のいちばん上から話し……咽頭に少し力が入っていて、せきが出やすく風邪も引きやすい。疲れていると、締めつけられたような声になる。しかも、声が体のどの部分よりも早く疲れた。……野党の党首になったとき、彼女の声は厳格な女教師のようであり、少し偉そうで少し横柄な感じだった。はるか昔の1950年代の声である。(中略)
1978年、サッチャーがイギリスの首相に就任する前に、ベルとリースは俳優のローレンス・オリヴィエのもとに彼女を連れていき、声についての助言をもらった。(中略)
彼はサッチャーに、どうすれば声が通るかを30分間アドバイスした。胸の上のほうではなく腹の下のほうから声を出すことや、会場のいちばん後ろにいる人に向かって話しかければ声が通る、といった内容である。(中略)ベルは、テレビやラジオの放送の際には、話す内容に応じてサッチャーに声を変えさせた。
彼女が党の政治的な放送をするときは、単純な方法を使った。2種類の飲み物を用意しておくのである。氷水と、温かい蜂蜜レモン水だ。……繊細で思いやりのある声を出させたいときには、彼女に蜂蜜レモン水を渡して声を和らげ、リラックスさせる。力強い声を出させたいときには氷水を渡す。
サッチャーがボイス・トレーニングを受けたという噂は、政界でまことしやかに囁かれてきた。だが、ベルはこれを否定している。サッチャーとリースとも密に協力して仕事をしてきたが、そんな話はどちらからも聞いたことがないというのだ。

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