« 2010年11月 | トップページ | 2011年1月 »

2010年12月

2010年12月25日 (土)

メラビアンの法則⑤ 「声から感情を読み取る研究」(1)

今回は、『メラビアンの法則』の問題提起に関する、実験の妥当性①(単語を聞き分けるだけの実験で相手の発する声から言葉よりも5~6倍〈38%÷7%≒5.4倍〉も感情が読めるのか?)について、コロンビア大学のジョエル・R・ダヴィッツとその妻ロイス=ジーンが行った実験から見てみましょう。
出典は、マジョリー・F・ヴァーガス著『非言語コミュニケーション』(マレービアン氏の本のタイトルとまったく同一ながら別の本)1987年/新潮社刊です。なお、硬い話ばかりでは恐縮ですので、最後に「発声法」にまつわるサッチャー英国元首相の取り組み姿勢を、参考資料として付けておきました。

各被験者はアルファベットを毎回別の感情を表現して10回唱えた
実験内容は以下の通り(本文103頁より)。「英語を母国語として話すアメリカ人8人が被験者として、また彼らの音声表示を評価するために30人が判定者として集められた。各被験者はアルファベットを10回唱えただけなのだが、毎回別の感情を表現することを求められた。望み通りの感情表現を容易ならしめるため、10種類の感情を盛り込んだ状況を記述したカードを用意しておいて、被験者がアルファベットを唱える前に、それを1枚ずつ読ませたのである。」

まぐれなら確率10%のはずが、発声者は23~54%の表現力を示した
「判定者たちの識別結果を分析したところ、それは人間の感情が、意味内容のない音声によっても、かなり確実に伝達いできるという学説を裏付けるものであった。しかし望みどおりの感情を伝える能力には、その的中率に23%から54%までの個人差が認められた。もしこの結果がまったくのまぐれだったら、的中率は10%になったはずなのだ。」

「声」から感情を読み取る判断者の最高的中率は49%、最低は2%だった。
「表現された10種類の感情と、それを正確に識別した比率は次の通りであった。〈怒り〉65%、〈不安〉54%、〈悲しみ〉49%、〈幸福〉43%、〈同情〉38%、〈満足〉31%、〈愛情〉〈恐怖〉〈嫉妬〉がいずれも25%、そして〈誇り〉21%。この場合も、まぐれ当たりの確率は10%のはずである。よく混同されたのは〈恐怖〉と〈不安〉、〈恐怖〉と〈悲しみ〉、〈悲しみ〉と〈愛嬢〉、〈愛情〉と〈同情〉、〈誇り〉と〈満足〉であった。
判定者側にも、表現された感情を正確に識別する能力の個人差が認められた。最もよく当てた者の的中率は49%、最低はわずかに2%だった。」

●『メラビアンの法則』に対する問題提起の一つに、「単語を表現しただけで、本当に感情が読めるのか?」があります。上記ジョエル・R・ダヴィッツとその妻ロイス=ジーンの「アルファベットの発声だけでもある程度感情が読みとれる」とした研究成果は、そうした問題提起への「単語だけでも感情判断はある程度できる」との回答になるのではないでしょうか。さらに、この実験結果を裏付けるような研究もその後なされていますので、次に紹介いたします。

「悲しみ・怒り・嫌悪・恐怖・興味・驚き・幸福」の感情は聞き分けられる!
V・P・リッチモンド&J・C・マクロスキー著の『非言語行動の心理学 対人関係とコミュニケーションの理解のために』には、シェアラーとオシンスキーの音声手がかりとそれに関連する感情状態を記述した「音声行動と感情」の研究(1977)が書かれています。これらの音声手がかりは、メッセージ内容ではなく、他人が本当に意味すること(感情)を教えてくれます。また、両氏以外の多くの研究者たちも、特定の音声的感情状態と関連する手がかりが存在することを示唆しているそうです。

悲しみ:遅いテンポ、低ピッチ、少しの調波、平板、少しの活発性、穏やか、無色
怒り:速いテンポ、高いピッチレベル、音が大きい、多くの調波、不快、耳障りな
嫌悪:遅いテンポ、多くの調波、平板、硬い音、少しの抑揚、ひどく不快な
恐怖:ピッチ曲線の上昇、速いテンポ、甲高い、調和しない、不協和音、つんざく
興味:等ピッチ、適度なテンポ、適度な調波、活気のある、機敏
驚き:速いテンポ、高ピッチ、ピッチの上下、多くの調波、ハッとして、あ然として
幸福:速いテンポ、より高いピッチ変動、活動的、活気のある、生き生きとした、陽気な

●これだけ明確に「音声行動と感情」が仕分けされると、専門知識がなくても音声から相手の感情を読み取ることができそうな気がします。なお、この項目に「喜び」が抜けているのを不思議に思う方もいらっしゃるでしょうが、実は、アメリカの心理学者E・E・レヴィットに、①表情、②声、③表情と声、の3つの場合について相手に感情をどれだけ伝えられるかを調べた実験があるそうで、これによると、電話(声)では、相手に「恐れ」の感情を伝えることはできるが、「喜び」や「不快」の感情を伝えるのは難しいことが分かったそうです。
さて、今回の参考資料は、〝声の質〟が与える影響について、2つの文献からのピックアップです。鉄の女などとも称されましたが、いまだに広く尊敬を集める英国のサッチャー元首相が最後に登場しますので、ぜひお目通し下さい。

【参考資料1】「女は低い声を使った方が知的で、権威があって、信頼できる印象を与える」『話を聞かない男、地図が読めない女』より
「ちなみにビジネスの現場では、女は低い声を使った方が知的で、権威があって、信頼できる印象を与える。あごを下げて大げさな抑揚をつけずにゆっくり話す練習をしておこう。声を高くすれば威信を示せると誤解する女は多いが、それでは攻撃的な印象を受けるだけだ。別の興味深い見解もある。普通、ブリッ子声は好きな男に守ってもらうために出すものだが、太り過ぎの女に限っては、大きな身体がかもしだす威圧感を打ち消すためだというのだ。」

【参考資料2】サッチャー元首相の声の変化と使い分け 『「声」の秘密』より
「彼女の側近たちは、そのままの声(若い頃の声は、後年に比べると実に軽く魅力的だった)ではきっと失敗すると早くから考えていた。側近の一人、ディム・ベルは、広告代理店の経営者からサッチャーの顧問に抜擢され、保守党の選挙宣伝キャンペーンを担当した。彼は次のように振り返る。
彼女の声には物理的な問題があった。胸のいちばん上から話し……咽頭に少し力が入っていて、せきが出やすく風邪も引きやすい。疲れていると、締めつけられたような声になる。しかも、声が体のどの部分よりも早く疲れた。……野党の党首になったとき、彼女の声は厳格な女教師のようであり、少し偉そうで少し横柄な感じだった。はるか昔の1950年代の声である。(中略)
1978年、サッチャーがイギリスの首相に就任する前に、ベルとリースは俳優のローレンス・オリヴィエのもとに彼女を連れていき、声についての助言をもらった。(中略)
彼はサッチャーに、どうすれば声が通るかを30分間アドバイスした。胸の上のほうではなく腹の下のほうから声を出すことや、会場のいちばん後ろにいる人に向かって話しかければ声が通る、といった内容である。(中略)ベルは、テレビやラジオの放送の際には、話す内容に応じてサッチャーに声を変えさせた。
彼女が党の政治的な放送をするときは、単純な方法を使った。2種類の飲み物を用意しておくのである。氷水と、温かい蜂蜜レモン水だ。……繊細で思いやりのある声を出させたいときには、彼女に蜂蜜レモン水を渡して声を和らげ、リラックスさせる。力強い声を出させたいときには氷水を渡す。
サッチャーがボイス・トレーニングを受けたという噂は、政界でまことしやかに囁かれてきた。だが、ベルはこれを否定している。サッチャーとリースとも密に協力して仕事をしてきたが、そんな話はどちらからも聞いたことがないというのだ。

ホームページ https://www.leafwrapping.com/

※本ブログ内容とは別に、お問い合わせ・ご質問等ございましたら、【プロフィール】(画面左顔写真下)の〈メール送信〉からお願いいたします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年12月18日 (土)

メラビアンの法則④ 海外著名作家作品に登場する過剰解釈例

前回の補足資料の最後は、「二番目の、さらに一般的な等式は、言葉と音声表現と表情を組み合わせるためにのみ作成されたものである。この結果から推定すれば、次のような、安全度のかなり高い一般化を行うことが可能である。もし、言葉以外の行動が、言葉と矛盾する時、メッセージ全体のインパクトを決定するのは前者である場合が多い。言い換えれば、表情と音声表現、および接触、位置(距離、前かがみ、または視線)、姿勢、身振りなどは、すべて言葉より重要であり、メッセージが全体として与える感じを決定してしまうのである。」でした。

●上記文章の太字部分、特に〝安全度の高い一般化を行うことが可能である〟との解説に続く動作を含めたノンバーバルコミュニケーションへの言及が、『メラビアンの法則』の「顔の表情」を「ボディランゲージ」に過剰解釈させる引き金になっているように思われます。
このシリーズの初回(第34回)で、私自身の過剰解釈の一端となった『4分間交渉術』の当該箇所を記しましたが、2000年以降に国内で刊行された翻訳本に同様な事例を2つ確認しています。いずれもベストセラー作品の著者の手になるものであり、名前をご存知の方も多いと思いますので、参考までに以下に紹介します。

『話を聞かない男、地図が読めない女』『嘘つき男と泣き虫女』の著者作品から
上記〝意味深タイトル〟の2冊はアラン・ピーズ&バーバラ・ピーズ夫妻の作品ですが、彼らが米国で2004年、日本で2006年に刊行した『本音は顔に書いてある(原題はThe Definitive Book Of Body Language)』の中に、『メラビアンの法則』の過剰解釈があります。

「20世紀に入ると、顔の表情やボディランゲージが本格的に研究されるようになる。1950年代に活躍したアルバート・メラービアンは、ボディランゲージ研究の先駆者的存在である。彼によると、情報を伝える時に言葉が果たす役割は、全体のわずか7%にすぎないという。これに対して、声の調子やイントネーション、声以外の音が38%言語以外の表情や態度が55%もの割合を占めている。」

『愛する二人別れる二人―結婚生活を成功させる七つの原則』の著者作品から
「私が夫婦の会話を聞いていて、離婚を予測できるのは、リペア・アテンプト(修復努力)の不成功が不幸な未来へ夫婦を確実に誘導するからである。4つの危険要因(①非難、②侮辱、③自己弁護、④逃避)だけが存在する夫婦の場合、82%の正確さで離婚が予測できる。それにリペア・アテンプトが成功しない夫婦の場合、正確度は90%台になる。」

●こんな怖い研究をしているジョン・M・ゴットマン氏が心理学、健康、家庭問題を専門とするフリーライターのジョアン・デクレアとの共著で出したのが『「感情のシグナル」がわかる心理学』(米国2001年刊/日本2004年刊)ですが、その中にも『メラビアンの法則』の過剰解釈があります。

「実験によって、人は言葉よりも、表情など非言語的なサインを信用することもわかっています。わざと表情や声のトーンと矛盾する言葉を言うと、相手はどう受け止めるか――たとえば「楽しくお過ごしください」というセリフを、しかめっ面で、どなるように言ったり、人なつこい笑顔を浮かべて「地獄へ行け」というなどです。
ある研究によると、私たちが相手の感情を知るのに、ことばに頼っている割合は7%にすぎず、38%は声の調子やしゃべる速さなどで55%が表情やしぐさという結果が出ています。」
「現実の生活でもそうです。相手の言っていることと、表情などが矛盾する場合、私たちはほぼ100%、言葉を信じないで、表情のほうを信じます。

●この2例を見ると、欧米では日本以上に『メラビアンの法則』の過剰解釈が一般化しているように思われます。とはいえ、大学やその他の研究機関に属する研究者が著した書物に取り上げられる場合は、近年発刊されたものでも、日米とも、きちんと「顔の表情」が55%と書かれている例が多いようですが・・・。

竹内一郎著『人は見た目が9割』にも過剰解釈例が
●日本で、その絶妙なタイトルも手伝ってベストセラーとなった『人は見た目が9割』(竹内一郎著/2005年/新潮社刊)にも、『メラビアンの法則』の過剰解釈があります。その記述内容は以下の通り。
「アメリカの心理学者アルバート・マレービアン博士は人が他人から受けとる情報の割合について次のような研究結果を発表している。
○見た目・身だしなみ、仕草・表情 55% ○声の質(高低)、大きさ、テンポ 38% ○話す言葉の内容 7%」

●さて、今回の【参考資料】は上記2番目のゴットマン氏の研究内容についてです。以前紹介したことのあるマルコム・グラッドウェル氏が『第1感「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』の中で同氏の研究を詳しく取り上げています。老若男女を問わず、大変興味深い内容!? でしょうから転載し、今回も最後まで読んでいただいたありがたい読者へ、少し早いクリスマスプレゼントといたします。

【参考資料】 『第1感「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』より
「1980年代から始めて、ゴットマンは3000組以上の夫婦を大学の近くに設けた「愛情ラボ」に招き、その会話の様子をビデオに収め、自ら考案した「感情分析(SPAFT=specific affect)に基づいて分析した。夫婦の会話中に現れそうな感情を20種類に分け、それぞれに番号を振ったものだ。嫌悪感は1、軽蔑は2、怒りは7、防御は10、愚痴は11、悲しみは12、拒絶は13、ニュートラル(無感情)は14といった具合だ。

スタッフには被験者の表情から微妙なニュアンスを読みとる方法を教え、ありきたりの会話に潜む意味を的確に解釈するテクニックを伝授した。そして夫婦それぞれのビデオを再生しながら、1秒ごとにSPAFFコードを割り振らせる。すると15分(900秒)一本勝負の夫婦げんかが1800の数列に変換される。「7,7,14,10,11,11」なら、その6秒間に夫(あるいは妻)がちょっと怒りだし、気を鎮め(ニュートラルになり)、一瞬防衛的になったかと思うと愚痴っぽくなったことを意味する。身につけてもらった電極とセンサーからは、いつ心拍数が上がり、いつ汗をかいたか、いつ尻をもぞもぞ動かしたかのデータが抽出される。それを、複雑な方程式で1800の数列と合体させる。

気の遠くなるような作業だが、結果は出た。夫婦の会話1時間分を解析すれば、ゴットマンはなんと、95%の確率でその夫婦の15年後を予測できたのである。わずか15分のビデオでも、確率は90%前後、共同研究者のシビル・カレール教授によれば、「たった3分」のビデオだけでもかなりの精度で夫婦の未来を言い当てられたという。結婚の真実は、私たちが思っていたよりずっと短時間で理解できるものらしい。」

ホームページ https://www.leafwrapping.com/

※本ブログ内容とは別に、お問い合わせ・ご質問等ございましたら、【プロフィール】(画面左顔写真下)の〈メール送信〉からお願いいたします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年12月11日 (土)

メラビアンの法則③ 法則に至るプロセス

前回の最後は、マレービアンのノンバーバル(非言語)の重要性に関する記述
「意思伝達におけるノンバーバルの重要性を理解している人は、社会において成功するだろう。人の上に立つ人は言うに及ばず、演技を必要とする職業、説得を必要とする職業には特に大切である」でした。
研究そのものは1967~72年の間に行われたようですから、40年近く前に今日のコミュニケーションの在りようを予見していたように思われます。そう考えると凄いですね。さて、今回は、『メラビアンの法則』の核心部分に踏み込みます。

そもそもの研究は、矛盾するメッセージを見抜く方法の模索から
(本文95頁より)「人が喋っている時、話しかけられた時、そして誰かに話しかける時、諸刃(もろは)のメッセージに注目してみよう。言葉のメッセージと、声の調子、顔の表情、姿勢、身振りとが矛盾する頻度はどの程度だろうか。矛盾するメッセージは、特定の状況において使用される傾向があるだろうか。好意を表す発言と矛盾する行動を見抜くことができるであろか。その方法は何か?」

実験から導かれた「好感」を測る公式
(本文96頁より)「矛盾するメッセージ全体の一般的意味ないしインパクトを分析する系統だった、そして一貫したアプローチは存在するのかということである。その答えは、「然(しか)り」である。われわれが行った実験から、次のような結果が出たのである。
好感の総計=言葉による好意表現+声による好意表現+顔による好意表現
100%           7%           38%          55%

つまり、顔の表情のイ ンパクトが最大で、次が声の調子(音声表現)、最後が言葉となっている。もし表情と言葉が矛盾する場合は、表情によって伝えられる好意の方が優先して、それによってメッセージ全体のインパクトが決まってくる。他方、録音テープのメッセージや電話の会話において、声の調子と言葉が矛盾することがあれば、前者が全体のインパクトを決定することになる。これは、次の場合にも当てはまる。1.言葉は肯定的で、声の調子が否定的な場合は、全体として皮肉なメッセージとなり、否定的なものとなる。 2.言葉は否定的であるが、声の調子が肯定的な場合は、全体として肯定的になる。」

「好意の公式」→「感情の公式」→「メラビアンの法則」(応用範囲に制約)
「一般化すれば、言葉より、行動という伝達手段の方が、他人に感情や態度を伝えることと、密接な関連を持っている。そこで、前述の等式を、どの感情にもあてはめられるように書き換えてみよう。
感情の総計=言葉による感情表現+声による感情表現+顔による感情表現
 100%         7%           38%          55%

この等式中の数値は近似値にしか過ぎないが、言葉、声の調子、そして表情の三者間における重要性の順位は、今後の実験においても変わることはないであろう。この等式を利用する時は、一度に一つの次元の分析に限る必要がある。その次元とは、好意-嫌悪、快-不快、支配-服従、覚醒-無覚醒などであり、また、喜び、心配、苦痛、怒り、憂うつ、好奇心などの特定の感情でもよい。」

視覚と音声に極端な食い違いがあると『メラビアンの法則』は信憑性を失う
(本文99頁より)「声と視覚(顔と体)によるキュー(合図)を用いた、快-不快、支配-服従を示す矛盾したメッセージを総合的に研究した結果、次のことが判明した。余り大きくない矛盾を含むメッセージの全体的な意味を決めるに際しては、視覚的なキューの方が、声のそれよりも影響力は大きい。この視覚的なキューの方が、視覚のそれより重要となる。この逆転は、次のように説明されている。視覚と音声のキューの間に極端な食い違いが生じる場合、つまり欺瞞が感じられる時は、視覚的なキュー(後者に比べ、偽装は容易)は、信憑性をうしなう傾向がある。」

●今回で『メラビアンの法則』の成立過程が少し見えてきました。この法則に対する問題提起の1つは過剰解釈。いま1つは、その根拠への疑問符だったと思います。しかし、等式利用時の制約が明記されていたことで、後者に対する問題提起には解答が得られた(「顔の表情」の「ボディーランゲージ」への過剰解釈を容認しているわけではありません)と思います。

●なお、実験方法(本文中の当該部分を補足資料として、最後に付記します。さらに詳しく知りたい方は「天使と悪魔のビジネス用語辞典」というサイトが詳しいので、そちらをご覧ください)の妥当性に対する問題提起については、後日、他の研究者による研究成果をご紹介して、私なりの意見を述べさせていただきます。

【補足資料】実験方法についての記述(本文99頁より)
「実験室において、まず言葉のメッセージを発している被験者をビデオに撮り、それから数人の者が、個々にそのメッセージが受け手に与える印象という観点から、コミュニケーションの種々の面を、-3から+3まである尺度を用いて評価する。この手順は、もちろん人為的であり、このまま実験室の外で応用できるものではない。しかし、これによって、体系化されていない直感に基づいたデータを客観的なものにすることができるのである。例えば、被験者が伝えた幸福感を見積もる時は、ビデオテープを音なしで再生し、数人の審判が、その画像を見て、顔の表情を、-3(極端に不幸)から+3(極端に幸福)まである尺度を用いて評点をつける。次にタイプしたメッセージ(紙に書いた文字のみで、音も映像もない)も、同じ尺度を用いて評点がつけられる。最後に、録音した音声を、電子装置を使って音声表現の特徴を残しながら、話の内容は理解できないようにする。この濾過(ろか)した音響メッセージに同じ尺度を用いて評点をつけるのである。
この例において、表情は-2、言葉は+2、音声表現は-2の点数を得たとしよう。この数値を等式にあてはめれば、被験者が伝えた幸福感は-1.72(-2×38%+2×7%-2×55%=-0.76+0.14-1.10=-1.72:山本注)という総合得点が得られる。この場合、音声表現と表情は、双方とも不幸である(-2)と判定されたので、メッセージ全体としては、この両者のインパクトと非常に近くなっている。言葉は、この場合、相当の幸福感(+2)を示しているのだが、全体の点数にはあまり影響を与えていない。
二番目の、さらに一般的な等式は、言葉と音声表現と表情を組み合わせるためにのみ作成されたものである。この結果から推定すれば、次のような、安全度のかなり高い一般化を行うことが可能である。もし、言葉以外の行動が、言葉と矛盾する時、メッセージ全体のインパクトを決定するのは前者である場合が多い。言い換えれば、表情を音声表現、および接触、位置(距離、前かがみ、または視線)、姿勢、身振りなどは、すべて言葉より重要であり、メッセージが全体として与える感じを決定してしまうのである。」

ホームページ https://www.leafwrapping.com/

※本ブログ内容とは別に、お問い合わせ・ご質問等ございましたら、【プロフィール】(画面左顔写真下)の〈メール送信〉からお願いいたします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年12月 4日 (土)

メラビアンの法則② 出典と法則誕生の時代背景

区切りの100回で『メラビアンの法則』に関し、ショッキングなことを書きましたので、多方面から反響がありました。それだけ関心が深いのだと思い、さらに力を入れてこのテーマに取り組むことにいたします。『メラビアンの法則』が前回書いたような〝都市伝説〟であるのかの検証的な意味合いもありますので、これ以降、引用箇所(原書をひもとく語学力がないので対象は日本語訳本)が多くなり、ブログ全体がやや硬くなってしまいますが、懲りずにお付き合いください。まずは、理解を深める意味合いから、出典の目次、著者による同書の定義、そして時代背景を見てみましょう。

「メラビアンの法則」の出典、マレービアン著『非言語コミュニケーション』目次
第1章 理論的フレームワーク
第2章 好意と接近
第3章 感情の察知
第4章 支配
第5章 諸刃(もろは)のメッセージ
矛盾したメッセージの分析(『メラビアンの法則』に関する数値が示されている)/矛盾するメッセージの一般的機能/矛盾したメッセージと社会的影響/矛盾したメッセージと精神障害/要約/推薦図書
第6章 社交スタイル
第7章 環境と社会的相互作用
第8章 言語内の言語
第9章 現実社会への応用
※『メラビアンの法則』が取り上げられている第5章は項目まで記載。

本書の理論は、表に現れない「暗示的なコミュニケーション」が主体
(本文1頁より)本書は、人々が意思を伝える際の言語などの明確な手段ではなく、意味が表に現れない暗示的なコミュニケーションのさまざまな側面について述べたものである。(中略)暗示的なコミュニケーションは、ノンバーバルの文献で扱われている「言語」対「非言語」という捉え方よりも、意思伝達の暗示的な一側面と捉えたほうがよい。

なぜこのような研究がなされたのか? その時代的背景
著者は、「原著まえがき」の冒頭に、「伝統的に言葉を重視するアメリカ文化が、意志伝達のプロセスに重要な意味を持ちながら無視されていた、非言語(ノンバーバル)の役割に気づき始めた。言葉と異なり、人間の行為や行動は感情から切り離せないという点で、非言語の役割はとくに重要である。なぜならば、人は意識する、しないに関係なく、非言語の情報で物事を判断してしまうからである。」

「毎日の生活や友だちづきあい、仕事の上での人間関係などがうまくいっているかどうかなどは、言葉よりもノンバーバルで判断することが多い。その時の気分や顔の表情、姿勢、動作、ジェスチャーなどは言葉以上の意味を持つことがある。発せられた言葉と、ノンバーバルが一致しない場合、人は往々にして言葉を信用しない。むしろ行動を判断の基準とする。」

●原著の冒頭に書かれた「伝統的に言葉を重視するアメリカ文化が、意志伝達のプロセスに重要な意味を持ちながら無視されていた」は、コミュニケーションの手段として言葉(バーバル)に重点を置く言語学者に対し、コミュニケーションを深めるためには非言語(ノンバーバル)の理解が必要とする、心理学者からの問題提起がなされ始めた頃の研究であることを物語っているでしょう。

●この学者の立場の違いが、『メラビアンの法則』や前回『4分間交渉術』に名前だけ登場したバード・ウィステルの研究「2者間の対話では、言葉によって伝えられるメッセージ(コミュニケーション内容)は、全体の35パーセントにすぎず、残りの65パーセントは、話しぶり、動作、ジェスチャー、相手との間のとり方など、言葉以外の手段によって伝えられる」を、後の研究者が自身の研究に都合よく解釈し、応用した結果との認識が多く専門家にあります(そのうちの1例を補足資料として最後に付記します)。こうした時代背景を理解することで、『メラビアンの法則』の過剰解釈の発生原因に少しは迫れるかもしれません。

●今回の最後は、マレービアンが「原著のまえがき」に記し、前述の佐藤綾子氏の著書でも繰り返し紹介している(中には本の冒頭に登場するケースも)、〝ノンバーバルの重要性〟についてです。

「意思伝達におけるノンバーバルの重要性を理解している人は、社会において成功するだろう。人の上に立つ人は言うに及ばず、演技を必要とする職業、説得を必要とする職業には特に大切である」

【補足資料】『メラビアンの法則』の過剰解釈について
『非言語行動の心理学 対人関係とコミュニケーションの理解のために』V・P・リッチモンド&J・C・マクロスキー著/2006年・北大路書房刊/巻頭頁より
「非言語的要素は、ヒューマンコミュニケーションの研究史において、ずっと無視されてきた。コミュニケーションのこの側面へ向けられる注目が増加するにつれ、いくつかの俗説が生まれ、かなりの混乱を導きだしている。これらの俗説のいくつかを検討してみよう。
1.「非言語コミュニケーションは無意味である。すべてのコミュニケーションは言語を必要とする。ゆえに、すべてのコミュニケーションは言語によるものである」。
これは主として、言語に注意を集中し、言語とコミュニケーションという用語が、実質的に交換可能であると考える人々がいだく伝統的な俗説である。しかしながら、口頭での相互作用の場合には、コミュニケーションに影響する可能性のある非言語行動が常に存在している。われわれはメッセージに非言語的要素を持ち込まなければ、電話で話すことすらできない。われわれの声の音は、たしかに存在し、そして2人の声は同一ではない。ゆえに、同一の単語を発話したとしても、2人は同じメッセージを送っているわけではない。彼らの声がメッセージに違いを生じさせる。もちろん、実際の相互作用では、より多くの非言語メッセージが存在する。非言語コミュニケーションは無意味ではない。非言語行動はすべて口頭によるコミュニケーション状況に影響意を及ぼすのである。
2.「非言語行動は人間の相互作用におけるほとんどのコミュニケーションを明らかにする」。この俗説は、俗説1の虚偽に対する過剰反応のひとつである。実験室環境とフィールド環境の両方で実施された、非言語コミュニケーションに関する初期の研究は、伝達される意味が変わるかどうかは言語メッセージではなく、大部分、非言語メッセージの働きによることを示した。最終的に、この研究は伝統的俗説が誤りであることを示すが、後に多くの研究者たちがこれを過剰解釈した。伝達されるすべての意味の65~93%(バード・ウィステルとマレービアン他の研究を指す:山本注)が非言語的要素に起因すると結論づけるために、著作者たちの多くが共通して、この初期の研究を引用している。これらの結果は、引用された研究の実際の実例である。しかしながら、これら初期の研究は俗説1が正確ではないと証明するために、特別に計画されたものであり、研究された相互作用が人間のすべての相互作用の典型だと仮定できないということが、一般的に無視されている。だから、すべての非言語行動の影響について、続けて一般化することには正当な根拠がないのである。非言語要素は多くの環境でコミュニケーションを決定づけるが、一方で、非言語要素がほとんど意味ある効果を持たないことがある。だから、ほとんどの人間の相互作用においては、言語要素と非言語要素の両方がとても重要であり、通常、伝えられる意味とはどちらか一方の要素だけではなく、2つの要素の相互作用に依存するのである。」

ホームページ https://www.leafwrapping.com/

※本ブログ内容とは別に、お問い合わせ・ご質問等ございましたら、【プロフィール】(画面左顔写真下)の〈メール送信〉からお願いいたします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2010年11月 | トップページ | 2011年1月 »