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2011年1月 8日 (土)

メラビアンの法則⑦ 「表情」から感情を読み取る研究(1)ポール・エクマン

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コール(コンタクト・カスタマー)センターをはじめ、電話対応がコミュニケーション手段のすべてともいえる職場でお仕事をなさっている方々には、「〝声〟から感情を読み取る研究」は、大いに参考になったと思います。さて、今回から「〝表情〟から感情を読み取る研究」に入ります。マレービアン博士55%の影響力を示しているように、この分野の研究は豊富です。その中から、『メラビアンの法則』に関わりの深いものをいくつか選んで紹介します。

●表情の研究では、顔の研究の第一人者であるポール・エクマンの著書『顔は口ほどに嘘をつく』の中から、いくつかピックアップいたしました。エクマンについての解説は、著書『顔は口ほどに嘘をつく』の翻訳者・菅靖彦氏による「訳者あとがき」から引用させていただきます。

「現在、エクマンは感情研究の世界的権威とみなされているが、彼の研究が飛躍的な発展を遂げたのは、同僚のウォリー・フリーセンとともに、顔面の筋肉の動きを測定するツール(表現記述法)を開発したことによるものだった。このツールは今、さまざまな分野に応用され、画期的な成果をもたらしているようだ。中でも、夫婦喧嘩をする夫婦の姿をビデオに収録し、このツールを使って二人の顔の表情を解析することによって、15年後の夫婦の未来を予測する、ワシントン大学のジョン・ゴットマンの研究(第37回で紹介)は有名。」

ポール・エクマンを世界的権威に押しあげた〝表情〟に関する研究とは
これについては、何回も登場しているマルコム・グラッドウェル氏がポール・エクマン氏を訪ね、この研究に対してインタビューしたものが同氏の『第1感』にありますので、そちらに解説をゆだねます。なお、『顔は口ほどに嘘をつく』に書かれた当該箇所は、参考資料として最後に転載いたしますので、興味のある方はご覧ください。

感情は顔の表情から始まる 「エクマンによれば、顔に現れる情報は心の中で起きていることを示すただの合図ではなく、ある意味で、心の中で起きていることそのものでもある。エクマンがそう考えるようになったのは、フリーセンと向かい合い、怒りや苦悩の表情を作り始めた頃のことだ。『何週間も経った頃、1日中いろんな表情を作っていると後でいやな気分になることを、どちらかがやっと認めたんだ』とフリーセンは言う。『するともう一人も、やはり気分がすぐれないことに気づいた。そこで私たちはそれまでの記録をたどってみた』。」

「彼らは過去に遡り、特定の表情を作っている間の身体の様子を観察し始めた。例えば眉の内側を上げて、頬を上げて、唇の下を下げる。エクマンはそう言って3つの表情をして見せた。『私たちが発見したのは、こうやって表情を作るだけで、自律神経系に目立った変化が現れるということだった。最初にそのことに気づいた時は驚いた。まったく予期しなかったからね。二人とも経験したんだ。ひどい気分だったよ。私たちは悲しみや苦悩の感情を生み出していたんだ。眉を上げて、上瞼を上げ、瞼を細め、唇をぎゅっと結ぶと、怒りの感情が生まれる。心拍数が10は上がる。両手が熱くなる。感情を切り離して表情だけを作ることはできないんだ。実に不愉快な話だ』。」

●この不愉快な体験に関してエクマンは、『顔は口ほどに嘘をつく』で触れています。
「故意に表情をつくることによって、感情を湧き出させるのは、あまり一般的な方法ではないだろう。けれども、わたしたちは案外ひんぱんにそのようなことをやっているのかもしれない。エドガー・アラン・ポーは『盗まれた手紙』のなかでこんなふうに書いている。
誰かがいかに賢いか、いかに愚かか、いかに善良か、いかに意地悪か、あるいは、その瞬間、何を考えているかを見出したいと思ったら、私は相手の顔の表情にできるだけ近い表情を自分で作り、心にどんな考えや気持ちが浮かんでくるかを待つ。」

●さすがに推理小説の生みの親とも称され、ボードレールにも評価されたという多彩な文豪は、19世紀前半にしてエクマンの研究を先取りしたようなことをすでに書かれているのですね。本当に敬服いたします。さて次は、エクマンの感情の変化と表情の関係をわかりやすく一覧にしたものです。その後が参考資料です。

エクマンらの研究で、基本的な感情の変化と表情の関係がわかった
出典は深田博己著『コミュニケーション心理学』の「表情の分類と判断」です。
「エクマンら(1975)は、表情から感情を判断する時、顔のどの部分の変化が判断の手がかりになるかを、基本的な感情について調べているが、次のようなことがわかった。 
①幸福:唇の上端があがってうしろに引かれ、頬があがる。
②驚き:眉が上がり、目を大きく見開く。顎が下がる。
③恐怖:眉があがり、眉と眉の間が狭い。額の横にしわができる。
④嫌悪:上唇があがり、鼻にしわが寄って、下まぶたが上に押しあげられる。
⑤怒り:眉の間にたてじわができ、目がふくらんで見える。口は強く閉じられるか、四角状に開けられる。
⑥悲しみ:唇の両端が下がり、視線も下がり気味になる。

【参考資料】 『顔は口ほどに嘘をつく』(P.86より)
「顔面の筋肉の動きから表情を解読する。ここに感情が生まれ得る最後の道がある。新しい予期せぬ道だ。わたしがそれを発見したのは、同僚のウォリー・フリーセンと一緒に、顔の動きを測定するテクニックを開発している最中だった。顔の筋肉がどのようにして顔の表情を変えるのかを知るために、わたしたちは、自分自身で体系的に顔の筋肉を動かして、それをビデオテープに収めた。

最初は1つの筋肉を動かすことから始め、6つの異なる筋肉を同時に動かして組み合わせるというところまでいった。いくつもの筋肉を同時に動かすのは、かならずしも簡単ではなかったが、何カ月もの訓練の末にその方法を会得し、1万もの異なった顔面の筋肉活動の組合せを記録した。このビデオテープを後で調べてみることによって、一つ一つの顔の表情から、どの筋肉がそれを生み出しているかを学んだ(この知識が、「FACSという測定システム=表現記述法:山本注」の基盤となった)。

私は特定の表情を作ったとき、強い感情に満たされることを発見した。どんな表情でもそうかというと、そうではなかった。万人にとって普遍的であることが確認された表情だけだった。フリーセンもそうしたことが起こるかどうか尋ねてみたところ、彼もまた、ある表情をしたときにある感情を覚えると報告した。そして、しばしばとても不快に感じたと言った。(中略)

それからの10年以上にわたって、私たちは4つの実験を行った。その中には、西洋文化に属していない西スマトラ島に住むミナンカバウ族との実験も含まれていた。私たちは特定の筋肉を動かすよう人々に指示した。すると、指示に従って顔の筋肉を動かした人たちは、生理的な変化を示し、たいていは感情を覚えると報告した。どんな顔の表情でもどのような変化を生み出したわけではなかった。私たちの初期の研究で、顔の普遍的な表現であることが見出された筋肉の動きを作りだす必要があったのだ。

脳と感情のつながりを研究している心理学者のリチャード・デベビットソンと共同で行った微笑みに焦点を当てた別の研究では、頬笑みをつくることが、楽しいときに起こる脳内変化の多くを生み出すことを発見した。どんな微笑みでもいいわけではなかった。初期の研究で発見された、心の底からの楽しみが生み出す微笑みである必要があったのだ。」

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