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2011年1月22日 (土)

メラビアンの法則⑨ 「表情」から感情を読み取る研究(3)国際(民族)比較

「木の葉ブログ」通算100回目(研修シリーズ第34回)から『メラビアンの法則』に取り組み、自分なりに勉強を進める中で、さまざまな書籍と出会い、その中で多くの言葉に啓発されました。そのうちの一つが樺旦純(かんばわたる)著『「人を見る目」の心理分析』(三笠書房)に出てきた、ドイツの詩人リルケ『書簡』よりの引用です。
「人間も多いが、顔はもっと多い。なぜなら、各々の人がまたいくつかの顔を持っているから」
前回、ダーウィンによる調査の結果、笑顔などの表現は万国共通。この仮説は、ポール・エクマン他2名の研究者によって1970年代に実証されたと書きましたが、今回は、民族により、文化の違いにより異なる「表情の情動」研究を紹介します。

映画鑑賞時、環境により日本人が3つの顔を持っていることが分かった研究
出典は福井康之著『感情の心理学』(川島書店)で、イクマンたちの各国の表情研究から。
「早稲田大学の学生とカリフォルニア大学バークレー校の学生、それぞれ25人に、ストレスを生じさせる映画と中立的な映画を見せて、ひそかにビデオカメラで顔面を映写しておき、比較したものがある。
面白いことに、被験者が1人で映画を見ているときは、日本人もアメリカ人も同じ表情をする。しかし、他人と一緒に見ているときは、日本人は、不愉快な顔は抑制され、愉快なときには誇張されるというふうに、アメリカ人との差が見られた。イクマンたちは、文化による表出の差異が、後天的な学習によって、どのようにコントロールされるのかを知るために、共通した表情との差を調べるとよくわかるといっている。」

民族間の違いと、同一民族でも居住地域で微妙な差があることを見出した研究
出典はペーター・E・ヴァル著『姿勢としぐさの心理学』(北大路書房)で、グレアム、ビティ、アガィールの研究(1975年)から。
「顔による判断が正確であるという主張は、グレアム、ビティ、アガィールによって行われた研究によって、おおむね支持されている。この研究で、イギリス、北イタリア、南イタリアの学生は、ある情動を役割演技するように求められ、彼らの演技がビデオに録画された。同じ文化圏からの他の学生群は、顔だけ、体だけ、あるいは全身のビデオ・テープからポーズをとった情動の表出を同定するように求められた。」

「結果は、特定の情動と快-不快の情動次元に関しては、顔だけによる判断は、体のみによる判断よりも有意に正確であった。一方、顔だけからの判断と、全身による判断の間には、有意差はなかった(正確度は、符号化するものが意図して演じた情動に関して得点化された)。
しかし、有意な交互作用は、これらの結果に若干の例外を示している。怒りの判断は、イギリス人に対しては、顔よりも体から判断した方が正確であり、南イタリア人では、恐れの判断は、顔よりも体から判断されたときのほうが正確であった。イギリス人の悲しみの判断は、顔あるいは体の、いずれかだけよりも、全身によって行われたときの方が正確であるという結果であった。」

表情から感情を読み取るセンスは、知的能力とは関係ないとの研究結果が・・・
出典はダニエル・ゴールマン著『EQ~こころの知能指数』(講談社)で、ハーバード大学の心理学者ロバート・ローゼンタールが行ったPONS(非言語的感受性プロフィール)というテストより。
「ローゼンタールは共感能力を調べるために、嫌悪から母性愛までさまざまな感情を表現している若い女性の表情をビデオに収録してPONS(非言語的感受性プロフィール)というテストを作った。収録されたシーンは、嫉妬して怒っている場面から許しを乞う場面へ、あるいは感謝を表している場面から相手を誘惑する場面へ、といったように連続的に変化する内容だった。」

「それぞれの描写シーンは編集され、1種類またはそれ以上の非言語的コミュニケーション手段が意図的に削除されている。例えば、あるシーンでは音を消したうえに表情以外のすべてのヒントを削ってしまい、また別のシーンでは体の動きだけが見える、というようにして、被験者がある特定の非言語的情報を手がかりにモデルの感情を推測しなければならないように作られている。このテストの結果、EQの他の要素と同じように、PONSの結果とSAT(大学進学適性試験)や知能テストとの間には明確な関連性はなかった。」

共感能力は女性が優れ、共感能力はロマンチックな人生にも役立つ!との研究
これも同じく『EQ~こころの知能指数』から。「アメリカ合衆国を含む18カ国・7千人以上を対象にテストを実施した結果、非言語的ヒントから感情を読みとる能力の高い人はそうでない人より情緒的に落ち着いており、他人から好かれ、外交的で、(あたりまえだが)感受性の強いことがわかった。全般的に、共感能力においては男性より女性の方が優れている。また、45分間テストの間に成績がだんだん向上していった人は――共感の天分に恵まれていることを示している――異性との関係もうまくいっていることがわかった。共感能力は、ロマンチックな人生にも役立つようだ。」

●研修シリーズ第38回の「声」の研究で、「判定者側にも、表現された感情を正確に識別する能力の個人差が認められた。最もよく当てた者の的中率は49%、最低はわずかに2%だった。」との指摘がありました。この識別能力を「声」と「表情」について語る場合は「共感力」に置き換えるのが妥当かもしれませんね。この「共感力」が男性より女性の方が優れているというのは他の研究でも一致した見解のようですが、このコミュニケーションの基本要素が、知的能力とはまったく関係ないという研究は興味深いものがあります。

●賢いとされるお医者様の研修シリーズ第39回のコミュニケーション能力不足の露呈例や、言葉の通じない弁護士先生に振り回された経験を友人知人から聞かされてきた私としては、「共感力」と知的レベルが合致しないということに、大いに納得がいった次第です。さて、今回は、国や民族、あるいは同一民族であっても居住地域により感情表出に違いがあることを取り上げましたが、テーマである『メラビアンの法則』の解釈から逸脱してもいけませんので、エクマンらが指摘した6つの基本感情について、各国共かなり高い確率で表情が読めるという調査結果を参考資料といたします。

【参考資料】 10カ国の大学生を対象にした感情識別調査
出典はランドルフ・R ・コーネリアス著『感情の科学』(誠信書房)で、「それぞれの文化で、あらかじめ示された感情を正しく識別したエクマンらの被験者のパーセント値調査」(1987年)より。単位は%。
国/地域     幸福  驚き  悲しみ  恐れ  嫌悪  怒り
エストニア        90    94   86    91     71     67
ドイツ            93    87   83    86     61    71
ギリシャ         93    91   80    74     77    77
香港            92    91   91    84     65    73  
イタリア        97     92   81    82     89    72 
日本            90    94    87    65     60    67  
スコットランド       98     88   86    86     79    84
スマトラ        69    78   91    70     70     70
トルコ          87    90   76    76     74    79
アメリカ          95    92   92    84     86     81 

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