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2011年1月

2011年1月29日 (土)

メラビアンの法則⑩ 裏付けとなる「表情」の研究(1)日本人の研究①

『日本経済新聞』2010年11月25日の「春秋」に和辻哲郎氏が昭和10年(1935年)の随筆『面とペルソナ』に「顔面ほど不思議なものはない。誰かのことが意識に上ると、その名前と一緒に、必ず顔が出てくる。顔の視覚的な記憶なしには、人物を思い浮かべることはできない」と書いていたとありました。視覚的な記憶に残る表情が、その人の人物評価に大きく影響することは、大哲学者でも同じだったようです。さて、今回から2回は、日本人の手になる「表情」に関する研究(実験)を紹介します。その1回目は、これまでも何回か登場いただいた佐藤綾子氏です。

『読顔力』(PHP研究所)に紹介された  著名人が見せた決定的瞬間!
「ホンネ」はすべて顔に表れる(目次52項より抜粋。別項は参考資料として別記)
1 まばたきの急増は?           困惑と、ウソの図星(クリントン元大統領)
2 表情がクルクル変わるのは    「うまくしたい」演技欲求(クリントン元大統領)
3 舌唇の舌なめずりは?       無意識の焦りのサイン(元防衛事務次官M氏)
9 口の両端だけを小さく上げる笑いは?  「社交的余裕」なのです(小泉元首相)
22 唇を固く結んだ強いアイコンタクトは?       固い決意(ゴルフの宮里藍選手)
24 相手の視線を避けるのは?         「回避欲求」(女優の浅丘ルリ子さん)
25 眼を細く開けて見つめるのは?     内心の「疑い」(小沢民主党元幹事長)
27 遠くを見つめるような視線は?          夢と希望のサイン(ワタミ渡邉社長)
37 顔の表情変化が少なくなるのは? 鈍感か不調のサイン(安倍・福田元首相)
41 表情筋すべてに力が入って目も口も大きく開く話し方は? 
                                                                    達成感(ゴルフの石川遼選手)
42 閉じていた目を急に見開くのは?  
                                         何かを思いついた「覚醒」(菅直人議員:出版時点)
51 アゴを突きだし微笑んで、上から見下ろすのは?  
                                                                優越感と支配欲求(麻生元首相)
52 頬と目のまわりと口のまわりが一緒に収縮するのは?  
                                                 正直な喜びのサイン(女優の沼尻エリカさん)
※さすがに経験豊富な佐藤綾子氏の著書です。ぜひお目通し頂きたいと思います。

『メラビアンの法則』の根拠となった実験を、日本でやってみると・・・
佐藤綾子著『「言いたいこと」が言えない人たちへ』(PHP研究所)より
「私の研究室では、もう何年もの間、次のような顔の表情研究をしています。
これは『どうぞ』『どうも』というような簡単な言葉を使って、相手がこちらの自己表現に対して好感を持つか反感を持つかを、モデルを使ってビデオに映しておき、何人かの被験者に答えを聞くのです。

その結果、①顔の表情、②声などの周辺言語(声に関係するすべての音声要素)、③言葉の3つを変数とした場合、
好意の総計(トータル・ライキング)100%=顔の表情60%+周辺言語32%+言葉8%
という答えが出ています。好意の伝わる度合いは、顔の表情によるものが大きいというわけです。
このデータはアメリカのマレービアンの採った配分とほぼ同じものです。日米ともに、顔の表情が大変大きなメッセンジャーだということがお分かりでしょう。」
※『メラビアンの法則』は好意の総計=0.55+0.38+0.07(数値の並びは、佐藤氏の実験データの順番と同じ:山本注)。

一瞬の「読顔力」はどのくらい頼れるのか。読顔には何秒かかるのか? の実験
出典は佐藤綾子著『一瞬の表情で人を見抜く法』(PHP研究所)で、実験方法と結果は以下の通り。
「まず、男女7名の大学院生をビデオに採りました。彼らには、10秒間の簡単な自己紹介をしてもらいました。名前、趣味、将来のプランの3項目を話して終わりです。この7名を分析対象として、実際のデータを社会人と大学生によって採ることにしました。
次に、このビデオの音を消して、顔の表情だけを抽出して、2秒、5秒、10秒の画像を作りました。これを男女40人の社会人に見せました。(その後の大学生男女30人ずつ合計60人の大学生で実験した結果も同じだった)
『注意力を集中して、回答用紙に記入してください』という説明をして、第一印象を上位から3項目(36項目中)あげでもらったのです。実験結果の2つの結論は、
第一は、人は2秒で相手を正確に十分読み取れる。
第二は、最初の2秒の印象は、5秒観察しても、10秒観察しても変わらない。

つまり、初対面の相手に対して2秒で第一印象をつかみ出し、その印象は、5秒、10秒と画像を次々とコマ送りして延長しても、〈明るい〉〈まじめである〉〈たよりない〉〈元気である〉〈努力家である〉などの評価はまったく変化しなかったのです。
しかも、これらの印象は、実験サンプルとして協力してもらった7人の大学院生を丸1年間知っている私から見ても、同一評価を下す内容だったのです。」

●佐藤綾子氏は、研修シリーズ第34回の「メラビアンの法則」の初回でも紹介しましたが、日本のパフォーマンス学のパイオニアであり、非言語コミュニケーション分野での活躍は目を見張るものがあります。今回は、その佐藤綾子氏の実験・研究に焦点をあてましたが、大いに読み応えがあったのではないでしょうか。さて、最後は、今回最初に紹介したものの、その他項目(書籍中に著名人記載のない項目)一覧です。

【参考資料】 〈ホンネ〉はすべて顔に表れる 上記以外の38項目
4  横への泳ぎ目は?                             隠された自信のなさ
5  上向きの泳ぎ目は?                         過去の回想のはじまり
6  下向きの泳ぎ目は?                        「思案中です」のサイン
7  口もとだけ笑って目のまわりが動かないのは?              ウソツキ
8  アゴを上げ鼻腔をふくらませるのは?                 優越感と得意の絶頂
10 口を大きく開けた笑いは?                        愉快な気持ちの表れ
11 鼻に寄ったたてジワやよこジワは?                           嫌悪と軽蔑
12 眉間のシワは?                              口に出せない「ノー」
13 突然の目の見開きは?                     良くも悪くも驚きの表れ
14 ほんの少し眉が「ハの字」で、唇が「への字」になるのは?     深い悲しみ
15 「頬キュン・目尻デレッ」は?                               喜びと愉快さ
16 頬の筋肉だけが盛り上がるのは?                        「してやったり」
17 顔中の筋肉が垂れ下がるのは?                   「だた今、放心状態」
18 眉がほんの少しつり上がるのは?                        押し殺した怒り
19 左右の頬の筋肉が非対象に持ち上がるのは?              意地悪と悪巧み
20 目じりに「カラスの足跡」がでるのは?                          正直な嬉しさ
21 唇を小さくとがらせるのは?               幼児性か、不満の意志表示
23 相手を強く見つめるのは?                                 「説得欲求」
26 まぶたを閉じて無表情になるのは?                              しみと怒りと忍耐
28 額にシワを寄せたときは?                          こぼれ出た困惑の気持ち
29 相手と同じ方向へ視線を動かすのは?                                  好意の表れ
30 相手の目を見つめ微笑むのは?                          「親和欲求」を伝達中
31 下唇を噛むのは?                                                 悔しさと後悔
32 首を傾げるのは?                                         「疑問」の意志表示
33 アゴを引くのは?                                      「確信あり」の意志表示
34 アゴを突き出すのは?                                          「高慢チキ」の癖
35 鼻にシワを寄せた笑いは?                                           ズバリ、嘲笑
36 会議中に鼻の下をこするのは?                                           「思案中」
38 顔をパッと上気させるのは?                                シャイか怒りの露呈
39 顔が青くなるのは?                                          恐怖か怒りの反応
40 ちょっぴり目じりを下げた笑いは?                                   押し殺した快感
43 視線を外して筆記具をもてあそぶのは?        「適応動作」で欲求不満のしるし
44 目を見て小さなあいづちは?                                          同意と励まし
45 女性が「うつろな目」をして髪を指でもてあそぶのは? 「欲求不満」の見えかくれ   
46 眉間を揉むしぐさは?                              疲労と行き詰まりのサイン
47 両肩が上がった「出目金」状態は?                                       激しい恐怖
48 下まぶたがゆるんで、唇の両端を強く引いて上にあげるのは?  心からの幸福  49 コンスタントでまったく同じスマイルは?                        ゴマカシか詐欺師  
50 下からのすくい目は?                「あなたについていきます」の服従欲求

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2011年1月22日 (土)

メラビアンの法則⑨ 「表情」から感情を読み取る研究(3)国際(民族)比較

「木の葉ブログ」通算100回目(研修シリーズ第34回)から『メラビアンの法則』に取り組み、自分なりに勉強を進める中で、さまざまな書籍と出会い、その中で多くの言葉に啓発されました。そのうちの一つが樺旦純(かんばわたる)著『「人を見る目」の心理分析』(三笠書房)に出てきた、ドイツの詩人リルケ『書簡』よりの引用です。
「人間も多いが、顔はもっと多い。なぜなら、各々の人がまたいくつかの顔を持っているから」
前回、ダーウィンによる調査の結果、笑顔などの表現は万国共通。この仮説は、ポール・エクマン他2名の研究者によって1970年代に実証されたと書きましたが、今回は、民族により、文化の違いにより異なる「表情の情動」研究を紹介します。

映画鑑賞時、環境により日本人が3つの顔を持っていることが分かった研究
出典は福井康之著『感情の心理学』(川島書店)で、イクマンたちの各国の表情研究から。
「早稲田大学の学生とカリフォルニア大学バークレー校の学生、それぞれ25人に、ストレスを生じさせる映画と中立的な映画を見せて、ひそかにビデオカメラで顔面を映写しておき、比較したものがある。
面白いことに、被験者が1人で映画を見ているときは、日本人もアメリカ人も同じ表情をする。しかし、他人と一緒に見ているときは、日本人は、不愉快な顔は抑制され、愉快なときには誇張されるというふうに、アメリカ人との差が見られた。イクマンたちは、文化による表出の差異が、後天的な学習によって、どのようにコントロールされるのかを知るために、共通した表情との差を調べるとよくわかるといっている。」

民族間の違いと、同一民族でも居住地域で微妙な差があることを見出した研究
出典はペーター・E・ヴァル著『姿勢としぐさの心理学』(北大路書房)で、グレアム、ビティ、アガィールの研究(1975年)から。
「顔による判断が正確であるという主張は、グレアム、ビティ、アガィールによって行われた研究によって、おおむね支持されている。この研究で、イギリス、北イタリア、南イタリアの学生は、ある情動を役割演技するように求められ、彼らの演技がビデオに録画された。同じ文化圏からの他の学生群は、顔だけ、体だけ、あるいは全身のビデオ・テープからポーズをとった情動の表出を同定するように求められた。」

「結果は、特定の情動と快-不快の情動次元に関しては、顔だけによる判断は、体のみによる判断よりも有意に正確であった。一方、顔だけからの判断と、全身による判断の間には、有意差はなかった(正確度は、符号化するものが意図して演じた情動に関して得点化された)。
しかし、有意な交互作用は、これらの結果に若干の例外を示している。怒りの判断は、イギリス人に対しては、顔よりも体から判断した方が正確であり、南イタリア人では、恐れの判断は、顔よりも体から判断されたときのほうが正確であった。イギリス人の悲しみの判断は、顔あるいは体の、いずれかだけよりも、全身によって行われたときの方が正確であるという結果であった。」

表情から感情を読み取るセンスは、知的能力とは関係ないとの研究結果が・・・
出典はダニエル・ゴールマン著『EQ~こころの知能指数』(講談社)で、ハーバード大学の心理学者ロバート・ローゼンタールが行ったPONS(非言語的感受性プロフィール)というテストより。
「ローゼンタールは共感能力を調べるために、嫌悪から母性愛までさまざまな感情を表現している若い女性の表情をビデオに収録してPONS(非言語的感受性プロフィール)というテストを作った。収録されたシーンは、嫉妬して怒っている場面から許しを乞う場面へ、あるいは感謝を表している場面から相手を誘惑する場面へ、といったように連続的に変化する内容だった。」

「それぞれの描写シーンは編集され、1種類またはそれ以上の非言語的コミュニケーション手段が意図的に削除されている。例えば、あるシーンでは音を消したうえに表情以外のすべてのヒントを削ってしまい、また別のシーンでは体の動きだけが見える、というようにして、被験者がある特定の非言語的情報を手がかりにモデルの感情を推測しなければならないように作られている。このテストの結果、EQの他の要素と同じように、PONSの結果とSAT(大学進学適性試験)や知能テストとの間には明確な関連性はなかった。」

共感能力は女性が優れ、共感能力はロマンチックな人生にも役立つ!との研究
これも同じく『EQ~こころの知能指数』から。「アメリカ合衆国を含む18カ国・7千人以上を対象にテストを実施した結果、非言語的ヒントから感情を読みとる能力の高い人はそうでない人より情緒的に落ち着いており、他人から好かれ、外交的で、(あたりまえだが)感受性の強いことがわかった。全般的に、共感能力においては男性より女性の方が優れている。また、45分間テストの間に成績がだんだん向上していった人は――共感の天分に恵まれていることを示している――異性との関係もうまくいっていることがわかった。共感能力は、ロマンチックな人生にも役立つようだ。」

●研修シリーズ第38回の「声」の研究で、「判定者側にも、表現された感情を正確に識別する能力の個人差が認められた。最もよく当てた者の的中率は49%、最低はわずかに2%だった。」との指摘がありました。この識別能力を「声」と「表情」について語る場合は「共感力」に置き換えるのが妥当かもしれませんね。この「共感力」が男性より女性の方が優れているというのは他の研究でも一致した見解のようですが、このコミュニケーションの基本要素が、知的能力とはまったく関係ないという研究は興味深いものがあります。

●賢いとされるお医者様の研修シリーズ第39回のコミュニケーション能力不足の露呈例や、言葉の通じない弁護士先生に振り回された経験を友人知人から聞かされてきた私としては、「共感力」と知的レベルが合致しないということに、大いに納得がいった次第です。さて、今回は、国や民族、あるいは同一民族であっても居住地域により感情表出に違いがあることを取り上げましたが、テーマである『メラビアンの法則』の解釈から逸脱してもいけませんので、エクマンらが指摘した6つの基本感情について、各国共かなり高い確率で表情が読めるという調査結果を参考資料といたします。

【参考資料】 10カ国の大学生を対象にした感情識別調査
出典はランドルフ・R ・コーネリアス著『感情の科学』(誠信書房)で、「それぞれの文化で、あらかじめ示された感情を正しく識別したエクマンらの被験者のパーセント値調査」(1987年)より。単位は%。
国/地域     幸福  驚き  悲しみ  恐れ  嫌悪  怒り
エストニア        90    94   86    91     71     67
ドイツ            93    87   83    86     61    71
ギリシャ         93    91   80    74     77    77
香港            92    91   91    84     65    73  
イタリア        97     92   81    82     89    72 
日本            90    94    87    65     60    67  
スコットランド       98     88   86    86     79    84
スマトラ        69    78   91    70     70     70
トルコ          87    90   76    76     74    79
アメリカ          95    92   92    84     86     81 

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2011年1月15日 (土)

メラビアンの法則⑧ 「表情」から感情を読み取る研究(2)ゴットマン他

先駆者ポール・エクマンの次は、「声の研究」及び前回も登場したジョン・M・ゴットマンです。氏の『「感情シグナル」がわかる心理学』(ダイヤモンド社)より、表情研究の歴史を振り返り、次に、表情の読み方から「ミクロの表情」と「本物の笑いかどうかを判断する3つの手掛かり」を紹介します。その後に、笑顔にちなむ山口百恵さんと桜田淳子さんの懐かしい話題を書き添えることにいたします。

表情の研究は、チャールズ・ダーウィンが〝起源〟なのだそうです
「イギリスの博物学者チャールズ・ダーウィンが19世紀に行った調査で、ある種の感情については、世界中のどの民族も同じ表情で表現することが分かりました。ダーウィンは、宣教師など秘境に入った人たちに、現地の人々が喜びや怒りなどをどんな表情で表わすか、アンケート調査しました。地域によって違いがあれば、笑顔などの表情は文化的に形成されたものということになります。」

「調査の結果、笑顔などの表現は万国共通でした。そこからダーウィンは、ある種の表情は生まれつきのもの、生物学的に人類共通のものだと結論づけました。言い換えれば、うれしいときににっこりし、腹が立つときにふくれっ面をするのは、神経細胞ネットワークの「配線」と顔の筋肉の動きに組み込まれた反応なのです。そうした感情表現は、人間であることの一部といえます。」
※このダーウィンの仮説は、カリフォルニア大学サンフランスシコ校のポール・エクマンとウォーレス・フリーセン、メリーランド大学のキャロル・アイザードらの研究で1970年代に実証された、と、ゴットマンは同書に書いています。

深い感情は「ミクロの表情」と呼ばれ〝1秒の何分の1〟かの間にしか現れない
「深い感情を表す表情は瞬間的に現れて消えていくので、それに気づくには、ある程度の時間、相手の顔を見つめ続ける必要があります。〝1秒の何分の1〟かの間に、ちらっとかいま見える表情。心理学者が「ミクロの表情」と呼ぶ。ほんの一瞬の表情に貴重な情報が含まれています。本人が隠したがっている気持ちが、一瞬だけあらわになるのです。それほど深い意味のない表情、本人が意図的に相手に見せる表情ですら、10秒ほどしか続かないものです。思わず本音が漏れるような表情は、よほど注意して見ていないと見逃します。」

笑顔が本物かどうかを判断する3つの手がかりとは?(上記紹介書籍より)
ヘ% 頬の筋肉があがって、目尻の「カラスの足跡」ができるところに、しわができる。
ヘ% 左右対称の笑顔。つくり笑いはゆがむことが多い。右利きの人は左側、左利きの人は右側に偏った笑顔になる。
ヘ% タイミングが合う。本物の笑顔はパッと現れ、比較的長く続き、自然に消えていく。
こういう特徴がないなら、それはたぶん写真を写すときに「はい、チーズ」と言ってつくるような、感情のこもっていない笑顔でしょう。
※顔の左右対称については、後日、さらに詳しい日本人の研究を紹介する予定です。

●つくり笑いは見破られやすいとのことですが、前回紹介した『顔は口ほどに嘘をつく』(河出書房新社)にも「私たちは、顔面の筋肉や発声器官を制御する力に乏しく、身体の筋肉や言葉を制御する力に長けている。」との記述がありました。こうしたことから、自然な笑顔を瞬時につくる表情の制御力がスターの必須条件になるのでしょうが、山口百恵さんはこれが苦手だったとのこと。そのエピソード紹介の後は、どんなアイドルにも負けない〝赤ちゃんの微笑〟をもたらす最大の要素が〝人の顔〟だとする、興味深い観察を参考資料といたします。

桜田淳子は笑顔を1秒で作れ、山口百恵は笑顔への表情変化に10秒かかった
これは、阿久悠著『夢を食った男たち』(毎日新聞社)に出てくるお話です。「桜田淳子は笑顔を1秒で作れる。山口百恵は笑顔とわかる表情に変化するまで10秒かかる。この1秒と10秒の差は、全く別個性であることの証明で、大仰に言えば、14歳の少女が踏み歩いている人生の差、背負っている運命というものの重さの差、考えている幸福感への信頼の差、思い描くサクセスの差なのであるが、それらに気がつくのはもっと後である。後楽園ホール(1972年12月6日収録の第5回決戦大会で合格となる。ただしこの回の優勝者は韓国のシルビア・リーだった:山本注)での、2分少々の応募者と審査員の接触では、とてもわからなかった。」

●このエピソードを紹介している斎藤孝著『眼力 人を見抜く「カリスマの目」が持てる本!』(三笠書房)は、「山口百恵は、笑顔を作る遅さ、暗さ(阿久悠氏の周囲にいたスタッフは〝暗めの淳子がいますよ〟と言っていたくらいだったとか)が当時のアイドル観からすれば致命的な短所であった。だが、そのクセを技に変えられたら化ける。山口百恵はそれをやってのけたのだ。化ける可能性のある人というのは、クセの強い人である。一般的な見方で考えると、短所の多い人だ。その短所を潜在的な才能と見て、何かの拍子にプラスに転じることができれば、絶対値が大きい分、大化けする。」と解説されています。

【参考資料】 赤ちゃんは人の〝顔〟を注視しており、微笑の源も人の〝顔〟
福井康之編著『人と人とのかかわりの発達心理学』(福村出版)の「人の顔への好みと微笑反応」より、生後間もない赤ちゃんに関する記述から。
「生後3週間目ごろから、人の声や笛の音などによって誘発される微笑が観察される。顔いっぱいに広がる真の微笑みらしい微笑みがよく観察されるようになるのは生後6週間前後。この真の微笑を一番よく引き起こすのは人の顔(声も一緒に提示される方がなお良い)である。(中略)

乳児の視知覚についても、多数の研究によって、次のようなことが明らかになってきている。つまり、乳児は、無地よりもパターンのあるものを、直線よりも曲線を、無彩色よりも色のある刺激を、2次元で示した物体よりも3次元の物体を、単純なパターンよりも刺激的なパターンを、顔でないものよりも顔状のものを好んでよく見ることが知られている。

それの研究結果の成果であるが、生後5日前後の新生児でも、すでにより複雑なパターンを、特に顔状のものをよく注視していることが示されている。人の顔状の模様が出生直後から好まれることは、生得的な好みであることが示唆され、(中略)これも、先に共鳴動作やスピーチへの同調動作のところで述べたような、コミュニケーションの基礎や愛着形成の基礎として重要な役割を果たしていくことが予想されて興味深い。」

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2011年1月 8日 (土)

メラビアンの法則⑦ 「表情」から感情を読み取る研究(1)ポール・エクマン

~聴くStory~音声版はこちら

コール(コンタクト・カスタマー)センターをはじめ、電話対応がコミュニケーション手段のすべてともいえる職場でお仕事をなさっている方々には、「〝声〟から感情を読み取る研究」は、大いに参考になったと思います。さて、今回から「〝表情〟から感情を読み取る研究」に入ります。マレービアン博士55%の影響力を示しているように、この分野の研究は豊富です。その中から、『メラビアンの法則』に関わりの深いものをいくつか選んで紹介します。

●表情の研究では、顔の研究の第一人者であるポール・エクマンの著書『顔は口ほどに嘘をつく』の中から、いくつかピックアップいたしました。エクマンについての解説は、著書『顔は口ほどに嘘をつく』の翻訳者・菅靖彦氏による「訳者あとがき」から引用させていただきます。

「現在、エクマンは感情研究の世界的権威とみなされているが、彼の研究が飛躍的な発展を遂げたのは、同僚のウォリー・フリーセンとともに、顔面の筋肉の動きを測定するツール(表現記述法)を開発したことによるものだった。このツールは今、さまざまな分野に応用され、画期的な成果をもたらしているようだ。中でも、夫婦喧嘩をする夫婦の姿をビデオに収録し、このツールを使って二人の顔の表情を解析することによって、15年後の夫婦の未来を予測する、ワシントン大学のジョン・ゴットマンの研究(第37回で紹介)は有名。」

ポール・エクマンを世界的権威に押しあげた〝表情〟に関する研究とは
これについては、何回も登場しているマルコム・グラッドウェル氏がポール・エクマン氏を訪ね、この研究に対してインタビューしたものが同氏の『第1感』にありますので、そちらに解説をゆだねます。なお、『顔は口ほどに嘘をつく』に書かれた当該箇所は、参考資料として最後に転載いたしますので、興味のある方はご覧ください。

感情は顔の表情から始まる 「エクマンによれば、顔に現れる情報は心の中で起きていることを示すただの合図ではなく、ある意味で、心の中で起きていることそのものでもある。エクマンがそう考えるようになったのは、フリーセンと向かい合い、怒りや苦悩の表情を作り始めた頃のことだ。『何週間も経った頃、1日中いろんな表情を作っていると後でいやな気分になることを、どちらかがやっと認めたんだ』とフリーセンは言う。『するともう一人も、やはり気分がすぐれないことに気づいた。そこで私たちはそれまでの記録をたどってみた』。」

「彼らは過去に遡り、特定の表情を作っている間の身体の様子を観察し始めた。例えば眉の内側を上げて、頬を上げて、唇の下を下げる。エクマンはそう言って3つの表情をして見せた。『私たちが発見したのは、こうやって表情を作るだけで、自律神経系に目立った変化が現れるということだった。最初にそのことに気づいた時は驚いた。まったく予期しなかったからね。二人とも経験したんだ。ひどい気分だったよ。私たちは悲しみや苦悩の感情を生み出していたんだ。眉を上げて、上瞼を上げ、瞼を細め、唇をぎゅっと結ぶと、怒りの感情が生まれる。心拍数が10は上がる。両手が熱くなる。感情を切り離して表情だけを作ることはできないんだ。実に不愉快な話だ』。」

●この不愉快な体験に関してエクマンは、『顔は口ほどに嘘をつく』で触れています。
「故意に表情をつくることによって、感情を湧き出させるのは、あまり一般的な方法ではないだろう。けれども、わたしたちは案外ひんぱんにそのようなことをやっているのかもしれない。エドガー・アラン・ポーは『盗まれた手紙』のなかでこんなふうに書いている。
誰かがいかに賢いか、いかに愚かか、いかに善良か、いかに意地悪か、あるいは、その瞬間、何を考えているかを見出したいと思ったら、私は相手の顔の表情にできるだけ近い表情を自分で作り、心にどんな考えや気持ちが浮かんでくるかを待つ。」

●さすがに推理小説の生みの親とも称され、ボードレールにも評価されたという多彩な文豪は、19世紀前半にしてエクマンの研究を先取りしたようなことをすでに書かれているのですね。本当に敬服いたします。さて次は、エクマンの感情の変化と表情の関係をわかりやすく一覧にしたものです。その後が参考資料です。

エクマンらの研究で、基本的な感情の変化と表情の関係がわかった
出典は深田博己著『コミュニケーション心理学』の「表情の分類と判断」です。
「エクマンら(1975)は、表情から感情を判断する時、顔のどの部分の変化が判断の手がかりになるかを、基本的な感情について調べているが、次のようなことがわかった。 
①幸福:唇の上端があがってうしろに引かれ、頬があがる。
②驚き:眉が上がり、目を大きく見開く。顎が下がる。
③恐怖:眉があがり、眉と眉の間が狭い。額の横にしわができる。
④嫌悪:上唇があがり、鼻にしわが寄って、下まぶたが上に押しあげられる。
⑤怒り:眉の間にたてじわができ、目がふくらんで見える。口は強く閉じられるか、四角状に開けられる。
⑥悲しみ:唇の両端が下がり、視線も下がり気味になる。

【参考資料】 『顔は口ほどに嘘をつく』(P.86より)
「顔面の筋肉の動きから表情を解読する。ここに感情が生まれ得る最後の道がある。新しい予期せぬ道だ。わたしがそれを発見したのは、同僚のウォリー・フリーセンと一緒に、顔の動きを測定するテクニックを開発している最中だった。顔の筋肉がどのようにして顔の表情を変えるのかを知るために、わたしたちは、自分自身で体系的に顔の筋肉を動かして、それをビデオテープに収めた。

最初は1つの筋肉を動かすことから始め、6つの異なる筋肉を同時に動かして組み合わせるというところまでいった。いくつもの筋肉を同時に動かすのは、かならずしも簡単ではなかったが、何カ月もの訓練の末にその方法を会得し、1万もの異なった顔面の筋肉活動の組合せを記録した。このビデオテープを後で調べてみることによって、一つ一つの顔の表情から、どの筋肉がそれを生み出しているかを学んだ(この知識が、「FACSという測定システム=表現記述法:山本注」の基盤となった)。

私は特定の表情を作ったとき、強い感情に満たされることを発見した。どんな表情でもそうかというと、そうではなかった。万人にとって普遍的であることが確認された表情だけだった。フリーセンもそうしたことが起こるかどうか尋ねてみたところ、彼もまた、ある表情をしたときにある感情を覚えると報告した。そして、しばしばとても不快に感じたと言った。(中略)

それからの10年以上にわたって、私たちは4つの実験を行った。その中には、西洋文化に属していない西スマトラ島に住むミナンカバウ族との実験も含まれていた。私たちは特定の筋肉を動かすよう人々に指示した。すると、指示に従って顔の筋肉を動かした人たちは、生理的な変化を示し、たいていは感情を覚えると報告した。どんな顔の表情でもどのような変化を生み出したわけではなかった。私たちの初期の研究で、顔の普遍的な表現であることが見出された筋肉の動きを作りだす必要があったのだ。

脳と感情のつながりを研究している心理学者のリチャード・デベビットソンと共同で行った微笑みに焦点を当てた別の研究では、頬笑みをつくることが、楽しいときに起こる脳内変化の多くを生み出すことを発見した。どんな微笑みでもいいわけではなかった。初期の研究で発見された、心の底からの楽しみが生み出す微笑みである必要があったのだ。」

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2011年1月 1日 (土)

メラビアンの法則⑥ 「声」から感情を読み取る研究(2)

明けましておめでとうございます。本年も「木の葉ブロク」を書き連ねていくつもりでおりますので、引き続きご愛読いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
さて、前回の「声から感情を読み取る研究」は極めて学術的なものでしたので、読者が退屈してはいけないと思い、若い方にはすでに過去の人になりかけているかもしれませんが、先進国最初の女性宰相、サッチャー英国元首相の〝声〟との取り組みを参考資料として付けさせていただきました。さて、今回は同じ「声の研究」でも、私たちが日常いくらでも遭遇しそうな医師にかかわる大変興味深い内容です。

【医師事例1】アルコール依存症の患者に影響を与える「医者の声」とは
出典は前回も登場した『非言語コミュニケーション』(マジョリー・F・ヴァーガス著)の、アルコール依存症の患者と医者の関係をハーバードとマサチューセッツの学生30人に判定させた「『パラ・ランゲージ』から読み取れる信頼度研究」です。

「まずマサチューセッツ州の医者9人が、アルコール依存症の新患たちの扱いについて、自分たちの体験を論議している際の声が録音された。次いでハーバード大学とMIT(マサチューセッツ工科大学:山本注)の学生から選ばれた判定者30人に、この録音を聞かせて、医師たちの声を〈怒りと焦立ち〉〈同情と親切〉〈不安と心配〉〈実務的な冷静さと専門家意識〉の4つの尺度で評価させたのである。」

〈怒り〉と〈焦立ち〉が声に含まれる医師は患者を説得できない!
「この調査結果をざっと見るだけで、それぞれの医師の話し方や声の調子が、アルコール依存症の新患たちにしかるべき治療を受けるよう説得することの成否に影響していることが判明したのである。言い換えれば、医師が患者に話す内容より、その話し方の方がおそらく重要だということだ。」

医師の〝自信のない声〟を、〝信頼できる声〟と聞き違えているのかも!?
「その声に〈怒り〉と〈焦立ち〉の感じが強い医師は、不首尾な結果をもたらすようであり、特にその声に怒りの感情が目立つと判定された医師たちと、彼らによる患者の説得失敗との間には、重要な相関関係が認められたのである。これに反し、その声に心配そうな感じが目立つ医師はほとんど、患者の説得に成功しているのだった。(中略)患者たちは、医師の声に現れる〈不安と心配〉を、その医師の自分たちに対する関心がより強いことを示すメッセージだと解釈するのだと、この研究グループは推論している。」

【医師事例2】誤審を訴えられる医師は、声だけで判断できる!
出典は、これも前回登場の『第1感「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』です。
「実を言うと、医者が医療事故で訴えられるかどうかは、ミスを犯す回数とほとんど関係ない。訴訟を分析したところ、腕のいい医者が何度も訴えられたり、たびたびミスしても訴えられない医者がいることがわかった。一方で、医者にミスがあっても訴えない人がかなりの数にのぼることもわかった。要するに、患者はいい加減な治療で被害を受けただけでは医者を訴えない。訴訟を起こすにはほかに『わけ』がある。」

判断材料は、患者との会話20秒(10秒×2本)の録音テープから
「心理学者のナリニ・アンバディは、レビンソンのテープ(医療について研究しているウェンディ・レビンソンは医者と患者の会話を何百件も録音した:山本注)のうち外科医と患者の会話に注目した。そして1人の外科医について2人の患者の会話を選んだ。次に会話の中から医者が話している部分を10秒ずつ選び、全部で40秒のテープを作った。そして最後にその内容をふるい分けた。単語を聞き分けるのに必要な高周波の音を会話から取り除いた。」

何と!〝威圧感のある声〟の外科医が訴えられやすかった
「あとには意味をなさないイントネーション、声の抑揚、リズムだけが残る。輪切りにした音を使って、アバンディはゴッドマン(第37回に登場した『愛する二人別れる二人』の著者:山本注)と同じような分析をした。それらの音に〈暖かさ〉〈敵意〉〈威圧感〉〈相手に対する気遣い〉といった感情を感じられるかどうか人に評価させてみた。その結果、彼女はこの評価方法だけを頼りに、訴えられた医師とそうでない医師を言い当てることができた。(中略)威圧感のある声の外科医は訴えられやすく、声が威圧的でなく患者を気遣うような感じの外科医は訴えられにくかった。」

●権威あるはずのお医者様が、その声の質で説得力に大きな違いが出たり、訴えられたりすることには驚かされました。不安を抱えている患者は、医師の〈不安と心配〉の入り混じった声を「自信」がないとは聞かず、患者への〝ペーシング〟による〝共感〟と勝手に受け止めるのでしょうか。

●アンバディの研究の基になったウェンディ・レビンソンの研究では、訴えられたことのない外科医は、訴えられたことのある外科医よりも、1人の患者につきあう時間が3分以上長かった(前者が18・3分に対して後者は15分)そうです。また、別の研究では、おしゃべりな医者ほど「患者は満足する」との報告もありました。さて、この多様な人間世界から一転して、今回の参考資料は人間の「声」が動物に通じるか?です。

【参考資料】 米国の親戚を訪ねたドイツ人はドイツ語で犬と会話できたか? 
出典は前々回紹介マジョリー・F・ヴァーガス著『非言語コミュニケーション』です。
「ドイツ系の私の母は、大きな犬を飼っている。この犬は室内犬で、しつけもよく行きとどき、言葉での命令に従うように訓練されている。

最近のことだが、ドイツから母の弟夫婦がやってきた時、母はこの夫婦への配慮から、犬に対して以外はすべてドイツ語で話していた。
たまたま母が数時間外出して、この夫婦と犬だけが家に取り残されたことがあった。この犬はジャーマン・シェパードだったのだが、これまでドイツ語だけで呼びかけられたことはなかったのである。

叔父の方はこの犬とのコミュニケーションがあまりうまくいかなかったのだが、叔母は器用な人だったので、母の抑揚、アクセント、調子、声量をそっくりまねて、ドイツ語で犬に呼び掛けた。もちろんドイツ語独特の話し方とはずれてしまって、ドイツ人には滑稽に聞こえただろうが、この犬にはみごとに通じたのである。」

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