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2011年4月 2日 (土)

メラビアンの法則⑲ まとめ(1)

「木の葉ブログ」の記念すべき通算100回目(2010年11月27日)よりスタートした「ノンバーバル(非言語)コミュニケーション」の『メラビアンの法則:好意の感情の総計=7%(言語)+38%(声)+55%(顔の表情)』シリーズがこんなにも長くなるとは、書き始める時点では想像もできませんでしたが、次回(20回目)で終了とします。まとめの1回目は、38%の「声」と55%の「顔の表情」についての私なりの結論です。

多くの「声」の研究から 「声から感情をある程度聞き分けることは可能」
『メラビアンの法則』に対する問題提起の一つ、「単語を表現しただけで、本当に感情が読めるのか?」については、第38回で取り上げたジョエル・R・ダヴィッツとその妻ロイス=ジーンの「アルファベット1文字の発声だけでもある程度感情が読みとれる」とした研究成果があり、また、特定の音声的感情状態(悲しみ、怒り、嫌悪、恐怖、興味、驚き、幸福)と関連する手がかりが存在することを示唆したシェアラーとオシンスキーの研究も多くの支持を得ています。以上から「声から感情をある程度聞き分けることは可能」との判断でよいと思いますが、この考え方に確信を持たせてくれた2人の盲目の方の述懐を以下に記します。

『「声」の秘密』から 「盲目の英国元内相は、声の調子で議場のすべてを察した」
イギリスのディヴィッド・ブランケット元内相は、生まれつき目が見えない。だが、公式な会議の場では、出席者の声の調子を聞くだけで細々とした情報をすべて拾っていると自分では考えている。「いわゆる『言いつくろうための沈黙』が起きたときも分かります。みんなが話し合いに満足しているかどうかも」。『「声」の秘密』(アン・カープ著/草思社)

『随筆集 春の海』より 「箏の名人は声だけで相手の顔の形や性格がわかった」
これは『春の海』などの作曲家としても知られる宮城道雄氏の語る「音の世界」です。「八卦見が手相、人相、骨相などを見て、人の性格や吉凶や運命を判断するが、声もその通りである。(中略)その声の調子によって、その人の性質なり顔の形がわかるのである。ことに性格はよく声に現れる。そして、その時の表情なども大かたは声で想像できるのである。(中略)太った人と瘠せた人の声は非常に違うし、頭のよし悪しも声をきけば、大抵わかるようである。また、同じ人でも、心に悩みがある場合は、どんなに快活な声を作っていても、すぐにわかるものである。」『随筆 春の海』(宮城道雄/埼玉福祉会)

●先に紹介したブランケット氏は生まれながらの盲目。一方の宮城道雄氏は「7歳ころから光が失われ始め、箏を習い始めた9歳のころは手でさぐりながらも、糸を見て弾いていたように私は記憶している」とのことなので、両者には明らかに物象に対する認識に違いはありますが、「声」や「音」だけを頼りに人間を観察する点においては同じでしょう。それぞれの世界で秀でた人物であるから「声の調子」で相手を判断できたともいえるでしょうが、その情報源が「音声情報」でしかないことは明白なので、「声」で感情が読めるかの問題提起に対するもう1つの回答といえそうです。

「顔の表情」の研究から 「基本的感情は表情に表れる」で間違いなさそう
●『メラビアンの法則』に対する二つ目の問題提起、「顔の表情で感情が読めるのか?」については、写真を使って感情を読み取る研究が広くなされています。代表的なものはポール・エクマンによるもの(『顔は口ほどに嘘をつく(ポール・エクマン著/河出書房新社)』に詳しい)ですが、この時に使用した写真をそのまま使った日本人の研究も、ほぼ同じ結論に至っています。また、「顔の表情から感情を読み取ることは可能」との立場に否定的な研究は、私が目を通した資料(次回の参考資料に一覧掲載)見当たりませんので、ここもマレービアン博士の説を覆す余地はないと思います。

はたして、「顔の表情」がノンバーバル・コミュニケーションを代表するだろうか?
さて、『メラビアンの法則』に対する最大の問題提起は、何といっても「顔の表情」55%をノンバーバル(非言語)コミュニケーションに置き換えられるかとの指摘でしょう。この点については、当ブログは過剰(誤)解釈の立場を貫いてきましたが、その根拠とするところを最後に書かせていただきます。
『しぐさで人の気持ちをつかむ技術』(渋谷昌三著/新講社)に「人の本音や本心は、どこに表れるのか」と題して、名著『裸のサル』で知られる動物行動学者のデズモンド・モリスの研究が紹介されています。

「モリスは、『マンウォッチング』の中で、『動作の信頼尺度』をより詳しく記している。それによると、人間の各動作は、次にあげた順番で信頼できるということらしい。
①自律神経信号:汗をかいたり、動悸が激しくなったりなどの生理的反応のこと。〝
②下肢信号:貧乏揺すりをしたり、足を組んだり・・・と意外に足の動きと感情は密接につながっている。
③体幹(胴体)信号:体を前に乗り出している、後ろに反りかえっている、背筋が伸びているなどの姿勢。④見分けられない手振り:④⑤はともに手の動きだが、モリスは、わずかな指の震えなど、より微妙な動きほど本心に近いものとしてとらえている。
⑤見分けられる手のジェスチャー
⑥表情:緊張感の伴う人間関係では、表情を押し殺してしまうことも少なくない。言葉同様、表情で相手をごまかし、けむに巻くのは、自分のペースに持っていきたい交渉や折衝の場では基本的なテクニックである。
⑦言語

●「言語(ここには声の部分も含まれると思われる)」の位置づけは、『メラビアンの法則』通りの最も影響力が低い位置づけとなっています。しかし、エクマンの『顔は口ほどに嘘をつく』(河出書房新社)にある「私たちは、顔面の筋肉や発声器官を制御する力に乏しく、身体の筋肉や言葉を制御する力に長けている。」とされる「顔の表情」が下から2番目でした。

●以上を総合して、『メラビアンの法則』で矛盾した感情を読み取る際に55%の影響力があるとされた「顔の表情」を、そのままノンバーバル(非言語)コミュニケーションに置き換えるのには、やはり無理があるように思われます。とはいえこの『法則』がこれほどまでに語り継がれてきたのは、単にノンバーバル(非言語)研究者にとって都合が良いからとの先人の指摘ばかりとはいえないように思います。次回は、『メラビアンの法則』の応用範囲について、私なりの考え方を示します。

参考資料 『メラビアンの法則』掲載内容(2010年11月27日~2011年4月9日)
第34回メラビアンの法則① 過剰解釈との問題提起
第35回メラビアンの法則② 出典と法則誕生の時代背景
第36回メラビアンの法則③ 法則に至るプロセス
第37回メラビアンの法則④ 海外著名作家作品に登場する過剰解釈例
第38回メラビアンの法則⑤ 「声」から感情を読み取る研究(1)
第39回メラビアンの法則⑥ 「声」から感情を読み取る研究(2)
第40回メラビアンの法則⑦ 「表情」から感情を読み取る研究(1)ポール・エクマン
第41回メラビアンの法則⑧ 「表情」から感情を読み取る研究(2)ゴットマン他
第42回メラビアンの法則⑨ 「表情」から感情を読み取る研究(3)国際(民族)比較①
第43回メラビアンの法則⑩ 裏付けとなる「表情」の研究(1)日本人の研究①
第44回メラビアンの法則⑪ 裏付けとなる「表情」の研究(2)日本人の研究②
第45回メラビアンの法則⑫ 「表情」から感情を読み取る研究(4)国際(民族)比較②
第46回メラビアンの法則⑬ 〝ひと目ぼれ〟の秘密 
第47回メラビアンの法則⑭ 採用(就職)面接(1)マレービアンの研究から
第48回メラビアンの法則⑮ 採用(就職)面接(2) 面接者と応募者
第49回メラビアンの法則⑯ 採用(就職)面接(3)矛盾したメッセージを読み取る
第50回メラビアンの法則⑰ 採用(就職)面接(4)面接とボディー・ランゲージ
第51回メラビアンの法則⑱ こんなにもある過剰(誤)解釈例
第52回メラビアンの法則⑲ まとめ① 第53回メラビアンの法則⑲ まとめ②

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