色彩③「頭にパッと浮かぶ〝赤〟」
サービスの原点として語られる「真実の瞬間」について、コールセンター応援歌の第64回(2010年10月 2日)「コールセンターのホスピタリティ③」で書いたことがありましたが、今回のテーマに関連しますので、以下に転記します。
「この表現は、スペイン語の“La hora de la verdad”に由来するそうで、闘牛場で闘牛士がウシを仕留める(あるいは逆襲されて闘牛士が命を落とす)一瞬をいうのだそうです。それを直訳した英語表現〝Moment of truth〟も、本来は『とどめの一撃』『正念場』という意味だそうですが、英語圏のビジネスシーンでは顧客接点の重要さを表す言葉としても一般的に使われることがあるそうです。」
牛は色盲!? だとしたら闘牛士の赤いマントにはどんな意味が・・・
「昔から牛は赤いものに興奮するので、赤い服を着ていると危険だとされてきました。スペインの闘牛でも闘牛士のマントは赤です。そのマントの赤に牛が興奮して、闘牛士に向かってくると思われていたのです。
でも、実は牛は色盲と言われています。マントが赤でも、青でも、緑でも、牛にとっては何の意味もありません。動いているマントに反応しているので、どの色でも同じように向かってきます。」
赤の秘密は、牛を興奮させるためではなく、観客を興奮させるためだった!
「それでは、なぜ闘牛士のマントは赤なのでしょうか?
それは、闘牛を見ている観衆のためです。観衆が闘牛を見て、より熱狂するためにマントを赤にしているのです。赤はアドレナリンの分泌を促します。そしてアドレナリンには、感情の昂りを引き起こす作用があります。ですから、観衆は赤いマントを見て興奮し熱狂するのです。」(※1)
赤は血や炎を表すことから活発、興奮、敵意といったイメージを与える
「赤の色彩効果は歴史上も巧みに用いられている。源義経はわずか150騎で平家本陣に突入し、奇襲に成功したが、まず村中の牛に火を放ち、驚いて逃げ惑う牛たちを源氏の群れに見せかけて先陣を切らせたのだという。さらに源氏の兵士たちは紅色の鎧に鮮やかな赤地錦の直垂(ひたたれ)のいでたちで、敵方の度肝を抜いたという。ナポレオンの時代に使われていた軍服などにも、赤が多く使われた。赤には「力や勝利への衝動」といったイメージがあるからだろう。」(※2)
●闘牛士が出てきましたら、牛に絡んで義経の逸話を先に紹介しましたが、日本で赤い戦闘集団といえば、あの信長も恐れた武田の騎馬軍団が一番有名でしょう。でも、次の資料を読むと、単なる戦意高揚のためだけではない深遠な信玄の戦略が潜んでいたことがわかります。やはり、戦国時代を代表する武将は、猛勇(肖像画を見るとそんな感じもしますが…)だけではなかったのですね。
武田の騎馬隊は、よく知られるように「赤備え」の武具で身を固めていたが…
「鎧兜から、槍弓に至るまで、一切の武具を血の色に染めて戦場に出ていったのである。歴史家たちによると、赤備えの衣装は、戦闘の最中にたとえ少々の出血があっても、武具の色に紛らわせるため、心理的なひるみを覚えないというメリットがあったとされている。
だが、『赤備え』の威力はそんなことだけにとどまらない。色彩心理学を学んだ人なら、もっと詳しく赤備えの威力を説明するだろう。〝赤色〟にはもっと深い不思議な魔法が隠されているのを知っているからだ。
ビレンという色彩心理学者はいう。「青色は実際よりも見る人から遠くに見え、赤色は近くに見える効果を持つ」と。つまり、真っ赤な武田の騎馬隊を見た人は、騎馬隊がどれほど遠くにいても、すぐ目の前に迫っているような心理的な圧迫感を感じたはずなのである。」
そういえば、タイガー・ウッズも、石川遼選手の勝負服も〝赤〟でした
「プロゴルファーのタイガー・ウッズが、ツアー最終日に赤色の洋服を着るのも、多分に戦略的な理由が隠されている。赤色は、いっしょに回るメンバーに圧迫感を与えるのに有効な戦略なのだ。
赤色の利点は、まだある。赤色は相手に威圧感を与えるだけでなく、その色を身に纏った本人のやる気を高めるらしいのである。つまり、武田の騎馬隊は、赤備えであることによって、一層士気が高まった可能性があるのだ。」(※3)
●赤の威力恐るべしですね。こんな恐ろしい敵を相手に、徳川家康は三方ヶ原で戦い、よくぞ生き残りました。ところで、赤の威力は前出のナポレオンの例があるように日本だけではないようなのです。このシリーズの最初の参考文献として紹介した『非言語コミュニケーション』にNY市のグランド・セントラル駅の電話ボックスの話しがあります。従来のオリーブ色から赤色に塗り替えたところ、その後の2週間で、通話回数が何と6倍にも増えたというのです。
※1:『感性がビジネスを支配する』(小暮桂子&青木かおり著/ファーストプレス)
※2:『外見だけで好かれる技術』(樺旦純著/成美堂出版)
※3:『心理戦の勝者』(内藤詮人&伊東明著/講談社)
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