色彩⑥「色彩の人間活動への影響(ⅲ)」
人間が、いかに色彩に影響されるかの「洗剤の効能」に関する実験結果があります。黄色、青色、青に黄色を少しあしらった色の3つの箱に同じ洗剤を入れ、被験者(実験協力者)たちに中身が同じであることを告げずに、3週間使用してもらい評価してもらったところ、被験者の過半数の判定結果は、黄色の箱の洗剤は「強すぎる」、青い箱は「汚れがよく落ちない」、そして青に黄をあしらった箱は「よい」とか、何と「すばらしい」まであったそうです。
●私たちも、この実験のように、色彩の魔術に踊らされているのでしょうね。そのからくりに迫るべく、親しみのある「虹」のスペクトルと、メーカー各社のカラー戦略をからませて、以下に展開してみます。なお、カラー戦略にはモノトーン事例が2つ付いておりましたので、これも併せ紹介いたします。
虹は日本では7色、アメリカ・イギリスでは6色、2色とする民族も
ニュートンは、色彩を赤橙黄緑青藍紫に分類し、この7色を当時知られていた7つの惑星と、音楽の7音階になぞらえました。これは日本人が虹の色を7色と見る感覚と一緒です。ところが、アメリカ人・イギリス人は、青と藍をブルー(青)とするため6色です。そして、まだまだ世界は広いのですね。リベリア・バッサ族は、色彩を「フイ(青色系)」と「ジザ(黄色系)」の2つに分類し、ローデシアのショーナ族は、3つに分類するそうです。ですから、彼らが虹を見た時には、2つもしくは3つの色彩となります。多分メーカーのカラー戦略には乗せられない人たちでしょう。(※1)
虹の7色(可視スペクトル)に人間の情動は影響を受けている(※2・3)
赤色には精神的興奮作用がある:赤色は、生命力、再生、生存を象徴する。力と粘り強さが必要なときに、赤色に浸かるとよい。
橙色は暖かく、陽気で情緒的である:仕事やプライベートな生活の中で人の気を引きたいとき、橙色に浸かるとよい。
カラー戦略◆基本的に食欲を表す色は赤系です。レストランの基本色によく見られ、テーブルクロスも赤かオレンジが多い。衝動感を誘発するのにも良く使われます。商品ではカルビーの「かっぱえびせん」のパッケージ、キリンビバレッジの「温・野菜100」という温かい野菜ジュースなどが成功例の1つです。オレンジ系ではカゴメの野菜ジュース「野菜生活 黄の野菜」など。市販の風邪薬にもオレンジ系が目立つのは、身体を温めて元気になる、というイメージを伝えているのです。
黄色は感受性が強く、インスピレーションを湧かせる:直感を働かせたいとき、新しいアイデアやコンセプトを考え出す必要があるとき、黄色に浸かるとよい。
カラー戦略◆黄色といえば、食品ですぐに思い浮かぶのはレモン。ハウスウェルネスフーズのレモン飲料「C1000」などがヒット例です。ベストセラーになった『金持ち父さん貧乏父さん』という本の表紙では、金持ち父さんが黄色のシャツを着て、貧乏父さんがグレーのズボンをはいていたことを覚えているでしょうか。黄色はリッチ感を表現しやすい。もちろんイエローキャブのように、単に目立つから使われる場合もあります。
緑色は癒し、調和、同情を表す:人に対してより強い愛情や同情を感じ、感情移入をより深めたいとき、緑色に浸かるとよい。
カラー戦略◆緑や青緑系だと、例えばロッテのガム「キシリトール」。歯の健康によいというイメージをパッケージの色相に活用して成功しました。
青色は安らぎを与える控え目な色である:ストレスがあってリラックスしたいときには、青色に浸かるとよい。
藍色は創造性を表す:より創造性豊かになって独創的なコンセプトを探したいときには、藍色に浸かるとよい。
紫色はインスピレーションを引き出してくれる:革新的なコンセプトや発明のような、激しい変化を目指すアイデアを探しているとき、紫色に浸かるとよい。
カラー戦略◆青や青紫では、アサヒの発泡酒「アクアブルー」が目を引きます。さらに濃いブルーにして、酸素入りでパワーのある水というイメージを強調したのが、アサヒ飲料のスポーツドリンク「スーパーH2O」です。紫は赤紫系では、カゴメの野菜ジュース「野菜生活 紫の野菜」に驚かされました。
カラー戦略◆白では、ライオンの除菌・消臭グッズのシリーズ「キレイキレイ」や、血圧が高めの方に、とうたったサントリーの「胡麻麦茶」などが成功例でしょう。
黒の活用例ではサントリーの「黒烏龍茶」がインパクト十分でした。これまで食品に黒が使われるのは、ガムなどで眠気覚まし効果を訴求する場合でしたが、「黒烏龍茶」で初めて強いパワーのある健康対応というイメージを作ることができたのです。
※1:『非言語コミュニケーション』(マジョリー・F・ヴァーガス著/新潮社)
※2:『アイデアのおもちゃ箱』(マイケル・マハルコ著/ダイヤモンド社)
※3:『感性で拓くマーケティグ』(恩蔵直人著/丸善プラネット)
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