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2011年7月30日 (土)

沈黙③ 日本人的「沈黙」

今回は、より日本人的な観点で「沈黙」を取り上げます。医療従事者向けに書かれた『共感 心と心をつなぐ感情コミュニケーション』(※1)に、感情社会学やケア論では論ずることができない部分であり、外国にはない日本文化としての〝沈黙のコミュニケーション〟があるとの指摘がありました。まずは、その紹介から。

伝統芸能・能の世界から、日本人的な〝沈黙のコミュニケーション〟を考察
「日本には「沈黙」や「間」の中に自分の意志や感情を表現する高度な文化がある。
仮面劇の能面は、光と影と角度から微妙な感情を読み取ることを要求する。そこでは、表情変化も少なく、沈黙の中から『察する』ことや『気づく』ことを要求する。したがって人は、いわないから、黙っているから納得している、または満足しているとみると、社会生活では大きな誤解を引き起こす。そこの言葉で意思を伝えなければならない欧米文化との違いがみられる。

この沈黙とそれからくる『察する』ということを通した共感とは何か。ここに沈黙の中に潜む他者の無意識な微妙な変化を察知する高度の感性と想像力、共感能力が問われてくる。おそらくこれは若い医療職者にとって非常に困難な技能で、教育では学ぶことが難しいものに相当する。ここにプロフェショナルとしての経験と感性が重要になる。」

●医療現場の厳しさがひしひしと伝わってくるような内容ですね。なお、参考までに付記しますが、著者は最近の看護業務への外国人参入について、異文化間の感情交流にすれ違いが生ずるのでないかとの懸念を表明されていました。さて、沈黙のコミュニケ―ションの次は、これもいかにも日本的と思われる〝暖かい沈黙〟です。

世代間葛藤の原因となっている、若者の〝暖かい沈黙〟という意思表示(※2)
「若者たちが黙りこんで返事をしないというのはよくあることです。コトバを発することで相手を傷つけてはいけないと思い、彼らなりの『気づかい』で黙ってしまうのです。しかし、当然のことながら、大人たちの方はこの沈黙に当惑し、あるいは腹を立てるわけです。大人たちの『やさしさ』のルールでは、コトバは相手と一体感を持つための重要な道具です。

それなのに相手の若者が黙り込んでしまう。大人がいらだつのは当然でしょう。ここで生じているのは、〝やさしさ〟と『やさしさ』の食い違いです。ウォームなやり方とホットな付き合い方の齟齬(そご)と言ってもいいかもしれません。ただそれだけのことなのですが、実際には、家庭で学校で職場で……と各方面で生じている世代間葛藤の大きな原因になっています。」

〝団塊ジュニア〟で取り上げた内容が〝ゆとり世代〟に通じるように思われる
実は、〝暖かい沈黙〟の出典『やさしさの精神病理』(※3)は1995年刊行で、ここで取り上げられている若者とは団塊ジュニア(2011年現在37歳前後)を指していると思われます。しかし、研修講師として伺う多くの企業様が〝ゆとり世代〟に抱えている悩みに共通するように思え、あえて取り上げてみました。そして、就活セミナーも担当する講師の立場からは、受け入れる側のコーチング力不足も指摘しておきたいと思います。

〝ゆとり世代〟とのコミュニケーションに役立つコーチングの「沈黙スキル」
そのコーチングはさまざまな手法やアプローチがありますので、一概にはいえませんが、ある文献(※3)に出てくるコーチングの基本「聴く」を以下に紹介いたします。
よりよく「聴く」基本姿勢として ①フィルターを薄くする ②批判をしない ③相槌を打つ ④沈黙する ⑤体全体のコミュニケーション ⑥話を聞きやすい物理的環境 の6項目が挙げられています。④沈黙するは今回のポイントでもありますので、この部分だけさらに詳述します。そして、次回は日本人的「沈黙」となります。

「④沈黙する:多くの日本人は、2人きりのときに沈黙が入ることを嫌います。沈黙が続くと『何か話さなくては』と会話を続け、同じ質問について繰り返したり、一度話した話を別の角度から話すこともあります。
沈黙をこわがることはありません。話し手の会話を妨げないよう、あえて聞き手が『沈黙を守る』場合もあります。
1つは、『話し出すまで待つ』という沈黙。質問に対し、相手が何か話しはじめるまで、じっと信じて待ちます。相手が考えている思考を乱さないよう、追加の質問は控えます。
もう1つは『相手が話し終わるまで待つ』という沈黙。相手が質問に対して話し出したら、途中でさえぎらず最後までじっくり聴きます。『沈黙』といってもずっと黙っている、という意味ではなく、相手の話や思考の流れをさえぎらないように気をつける、という意味です。」

※1:『共感 心と心をつなぐ感情コミュニケーション』(福田正治著/へるす出版)
※2:『やさしさの精神病理』(大平健著/岩波書店)
※3:『社内コーチング導入マニュアル』(社団法人中小企業診断協会編/同友館)

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