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2011年8月13日 (土)

《9つの非言語メディア》 周辺言語① 舞台芸術とパラ言語と非言語と

今回から「周辺言語」(話しことばに付随する音声上の性状と特徴)に入ります。周辺言語については研修シリーズ第38・39回のメラビアンの法則の「声の研究」で扱っていますが、改めて調べてみると、この分野に関する文献が極めて少ないことがわかりました。私がたどり着いたのはたった3冊。そのいずれも学術的なものですが、研究対象が「バーナード・ショウ」や「ミステリー」、そして、日常生活に密接な「電話の会話内容からの分析」でしたので、今回再度取り上げることにしました。

エンターテイメントの世界と関連付けられて語られることが多い周辺言語
最初は「9つの非言語メディア」を取り上げる切掛けとなったマジョリー・ヴァーカス著『非言語コミュニケーション(1987年刊)』(※1)から
「昔から俳優、コメディアン、弁論家たちは、自分たちが期待する反応を聴衆から引き出すために、さまざまな声の調子や間のとり方を周到に選ぶことの重要性に気づいていた。しかし心理学者たちが、人間のコミュニケーションの分析的研究に、この周辺言語の分野を付け加えたのはごく最近のことなのである。」

『コミュニケーション、どうする? どうなる?』(※2)より
本文中「パラ言語情報に見られる異文化間の知覚の相違」を担当したドナ・エリクソン&昇地崇明両氏の解釈。
「パラ言語表現は大きく2つのタイプがあります。1つ目は演劇でのプロの俳優や女優(もしくは声優)によって表現されるものであり、もう1つは自然な会話で一般の人によって表現されるものです。いずれの方法によって得られるパラ言語情報を観察しても、声が多様に変化することがわかります。」

『バーナード・ショウ研究』(※3)より
本文中「戯曲におけるパラ言語」――句読法の視点から――を担当した大河内俊雄氏の解釈。
写実劇の台詞は実生活の会話を模倣して案出されるもので、言語記号のほかにパラ言語、動作などの非言語記号が取込まれる。それ故、台詞の意味は、これらすべての記号体系の相互作用によって生成される。そこで、先ず、パラ言語の機能の一部を概観し、次いで、戯曲における句読法の形態と機能を明らかにするという順序で稿を進めたい。」(ちょっと難しい表現が続きますが、もう少しお付き合いください)

「パラ言語は言語を超えた内容を伝達する音声で、超分節的要素が最も考察の対象になる。超分節的要素とは声の高さ、強勢、長さ、休止など発話の音声的特徴のことである。これらの要素は様々に結合して言葉のリズムとテンポをつくり、さらに音調の型を構成する。その特性が言語体系の中で使われると語彙(ごい)的、文法的相違を示し、パラ言語体系の中で使われると感情的相違を示す。前者を『言葉の音調』、後者を『感情の音調』と呼んでもよい。」

周辺言語の理解のために、さらに2つの解釈をピックアップ
上記太字部分は周辺言語を理解するうえでの一つの解釈例です。では、他の研究者はどのように解説しているのかを、ここで比較し、理解の一助にしたいと思います。
『日本語 意味と文法の風景』(※4)で「パラ言語的意味の記述に向けて」を担当した相澤正夫氏の解釈。
「現実のコミュニケーション場面では、声に出すという音声化の過程を通して、言語的情報以外にも、発話時の話者の意図、心的態度、感情などに関するパラ言語的情報と話者の年齢、性別、生理的な状態などに関する非言語的情報とが必ず含まれている。」

『非言語コミュニケーション』にはジョージ・トレーガーが1958年に提唱した周辺言語の系統的分類が記されていますので、これを最後の資料にします。
第一分類:「声の性状的要素」=声の高低、唇の使い方、発音の仕方、リズムの取り方、共鳴、テンポなどが含まれる。
第二分類:①「発声上の特徴」=哄笑、くすくす笑い、忍び笑い、泣き声、しくしく泣き・・・。②「発声上の限定性」=声の強弱、声の高低、声の長短。③「発声上の遊離素」=「ウーン」「アー」「フンフン」「鼻を鳴らす」「舌打ち」「無言」・・・。

●ご覧いただいたように、周辺言語の解釈も微妙に異なる様ですね。まだまだ研究途上と理解して先に進むことにいたします。なお、今回紹介した『バーナード・ショウ研究』には、
バーナード・ショウの『ピグマリオン』、ニール・サイモンの『サンシャイン・ボーイズ』、トム・ストッパードの『夜も昼も』に対する記述もありますので、関心のある方にはお勧めです。
また、ジョージ・トレーガーの③「発生上の遊離素」については第73回「電話のコミュニケーション」で取り上げますので、お楽しみに。

※1:『非言語コミュニケーション』(マジョリー・F・ヴァーガス著/新潮社)
※2:『コミュニケーションどうする?どうなる?』(林博司&定延利之/ひつじ書房)
※3:『バーナード・ショウ研究』(日本バーナード・ショー研究会編/学書房)
※4:『日本語 意味と文法の風景』(山田進&菊池康人&籾山洋介編/ひつじ書房)

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