『なでしこジャパン』に学ぶ、6通りのコーチングスタイル①
サッカーファンの皆さん、なでしこジャパンのオリンピック出場おめでとうございます。W杯の世界チャンピオンですから、予選通過は当然といえるのかもしれませが、グランド状態が悪い上に、夏期の過密日程、選手の皆さんはさぞかし大変だったことだろうと思います。本当にお疲れ様でした。
この立て続けの快挙は、選手の頑張りもさることながら佐々木監督以下コーチ陣の卓越した指導力、そして監督・コーチから選手へ、先輩から後輩への的確なコーチングに支えられた点も大きいように思います。そこで、今回から3回、なでしこジャパンを素材として、コーチングについて考えてみることにしました。
1500年代にボキャブラリーとして登場したコーチ(coach)の意味は「馬車」
なでしこジャパンの佐々木則夫監督がW杯優勝後、「選手は僕のクライアント。僕は選手という乗客を乗せた馬車となって、目的地まで届けることに力を尽くした」と発言されました。この「馬車」こそがコーチングの原点なのです。Jリーグの監督になるには、S級ライセンス(佐々木監督は1998年取得)保持者でなければなれないそうですが、欧米式のコーチング理論を身に付けた卓越した指導者がいたからこその、快挙といえるのではないでしょうか。
〝なでしこ〟を支えた「コーチング力」をシーン別に取り上げるとどうなるか
野田総理の誕生で一段と脚光を集める松下政経塾ご出身で、コーチングの普及を目指されている本間正人氏に『入門 ビジネス・コーチング』(PHP研究所※1)があり、この中にコーチングとその周辺概念を取り上げた「コーチングの概念整理」があります。今回、なでしこジャパン活躍の背景を探るには、とてもわかりやすい例と考えましたので、
この概念「コーチングと関連手法(カウンセリング・コンサルティング・アドバイジング・ティーチング・メンタリング・マネージグ)」に沿って、山本流のコーチング論を展開してみます。
なお、コーチングと関連手法の対比がさらに分かりやすいように、『入門 ビジネス・コーチング』より【共通点】と【相違点】を転載し、理解の一助といたします。
「コーチングVSカウンセリング」この両方に共通点のあるシーンから
【共通点】聴く力が大切。質問により相手から答えを引き出す
【相違点】カウンセリングは「過去に向かってwhy」コーチングは「未来に向かってhow」
予言されていた!? ドイツ戦での丸山桂里奈選手の劇的ゴール(※2)
編集者:試合後には「山郷(のぞみ)さんと練習した形」といっていました。
丸山:「シュート練習でも紅白戦でも、右サイドからのシュートは全部山郷さんに止められていたんですよ。それで練習後に『何で止められるんですか?』って聞いたら、『わたしは桂里奈のクセとかわかっているから』って。
『でも試合では、相手のキーパーは桂里奈のことを知らないんだから、止められるとか考えずに自分のタイミングで打てば絶対に入るからね』と言ってくれました。だからこそ、迷わずに自分の感覚を信じて打てたんだと思います」。
シュートに自信を失っていた丸山選手に対し、的確なカウンセリング的コーチングをした山郷のぞみ選手のコメント(※3)。
「(ドイツ戦のゴール)あれは彼女にしか打てないシュートです。大会期間中はサブ組のシュートをよく受けていたんですが、桂里奈は独特のタイミングで打つんです。キックもインステップかインサイドか分からないような感じなので、(中略)『それは絶対に試合で通用するから』と言いました」。
ビジネス・コーチングは現場を知らないとできないといわれますが、この事例がそれを物語ってくれています。
「コーチングVSコンサルティング」この両方に共通点のあるシーンから
【共通点】相手に情報提供し、行動指針を示す
【相違点】コンサルティングは「専門分野に限定」コーチングは「普遍的な技能」
澤穂希選手「苦しいときには私の背中を見なさい!」(※4)
「優勝できたのは、中堅世代の選手たちのお陰だと思います。北京五輪のときもいいチームでしたが、あの頃に若手と呼ばれていた選手たちが成長して、凄く頼もしくなりました。宮間や大野、近賀、矢野(喬子)などが、若い世代を引っ張ってくれ、さらに私たちベテランの背中を押してくれました。彼女たちはピッチの中でも外でも、凄く頼もしい。なでしこジャパンは今までと何が変わったかと問われれば、そこだと思います」
この記事はその後に「その中堅たちは、澤に『苦しいときは私の背中を見なさい』と言われ、心身ともに逞しくなった選手たちだ。」と続きます。
●感動が大きくて、書き始めると止まらない感じです。今回は、「コーチングVSカウンセリング」を取り上げましたが、澤選手のように、後輩に自分の背中(情報)を示し、後についてくれば強くなれるのだとの〝行動指針〟を与えるコンサルティング的コーチングの出来るリーダーはそうそういません。
次回以降も、山本が感じたそれぞれのコーチングシーンを紹介してまいります。なお、毎回記載している参考文献・資料については、まとめて3回目に掲載します。
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