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2011年10月15日 (土)

「桃太郎に学ぶ、物語の紡ぎ方」③物語の登場人物と構成

あるとき、ソフトバンクの孫正義さんととても親しくしている社長に「孫さんって、どんな人ですか?」と尋ねたところ、「そうね、一緒にいて、まあ90%は彼が話しているかな。でも、その話がとにかく面白い。全部、ストーリーなんだよ」と(※3)。
このお話は、ビジネスシーンでの物語の可能性を端的に示す例ではないでしょうか。

物語のメカニズムの研究は1920年代、ロシアで始まったそうです。民族学者が100編のロシアの魔法民話を分析し、民話が31の「機能」から成り立っていることを発見しました。「機能」とは、場面(シーン)が示す「意味」のことです。(※4)

1950年代に英語に翻訳され、欧米にインパクトを与えました
この民族学者は同時に、登場人物は7人――①敵、②贈与者、③援助者、④王女とその父、⑤委任者、⑥主人公、⑦にせ主人公――に限定される、とも言っています。
この発見は50年代末に英語に翻訳され、一躍、欧米にインパクトをもたらしました。
その後、フランスの記号学者が登場人物の分類をもう少し洗練させ、6人の行為者からなる「行為者モデル」を唱えました。6人の行為者とは①主体、②対象、③敵対者、④援助者、⑤送り手、⑥受け手、です。

6人の行為者からなる「行為モデル」を「桃太郎」にあてはめると
日本の「桃太郎」を例にとれば、「主体」=桃太郎、「援助者」=イヌ、サル、キジ、「敵対者」=鬼、「対象」=宝、「送り手・受け手」=おじいさん・おばあさん、になります。行為者である「対象」が〝宝〟には違和感のある方もおられるでしょうが、専門家によると、「対象」は必ずしも人である必要はなく、「目的」とか「結末の状態」も含めたもう少し広義のもの(※5)だそうですから、問題はなさそうですね。また、一部の「桃太郎」絵本のように、お姫様を救い出し、凱旋後お嫁さんにしたとする結末の場合は、「受け手」は「主人公=桃太郎」ということにもなります。

『桃太郎』を「起承転結」に置き換えると、イヌ、サル、キジは「承・承・承」
童話作家・木村裕一によれば、(物語の)構成は、セオリーがある。簡単に言えば「起・承・承・承・転・結」だ。基本的に、今までやってきて、これが一番つくりやすい。もちろん必ずしもこれがすべてではないが、「起・承・承・承・転・結」の「承・承・承」というところが、おいしいところなのである。
まず、きっかけ(「起」は桃太郎の誕生から出発まで:山本注)がある。そしてイヌ、サル、キジ、の「繰り返し」がある。これが「承・承・承」の部分。そして、転(鬼が島に渡る:同)、結(戦闘と帰郷:同)となる。
繰り返しの中で、ちょっとずつどこかが変わるのがポイントである。(※6)
との分かりやすい解説をしておられます。

●さて、桃太郎シリーズのまとめは、ビジネスシーンでの「物語の可能性」を、そのものずばりのタイトル『事例でわかる物語マーケティング』(※7)から紹介いたします。
1.物語は興味関心を持ちやすくする:親しみやすく/自分のことのような気持ちに
2.物語は感情に訴える:感動を呼び起こす/楽しい時間を提供する
3.物語は理解のレベルを深くする:長期の記憶を/教訓発見/ゴールメージが
4.物語は潜在意識を具現化する:憧れに「形」を/イマジネーションを刺激する
5.物語は行動を誘発する:登場事物の真似を/口コミを促進/消費を活性化させる

●今年(2011年)7月に出た本に(※8)に、「物語が伝える1万2千年前の真実」という興味深いお話が載っていました。それは、オーストラリア南海岸沿いで先住民が語り継いできた物語で、そこにはタスマニア島とオーストラリア本土を隔てるバス海峡の海底地形が驚くほど正確に描写されているのだそうです(かつて陸地だったが、氷河期が終わった1万2千年前に海に沈んだ)。
物語は、このように人々の記憶を後世に伝える偉大な力も併せ持っているのですね。この稿の最後は、米国大統領よりも記憶に残った3人の少年の物語です。

片隅の記事が、同日の米大統領の予算に関する大々的記事よりも記憶された理由
ある日、予算の欠損が予想を70億ドル下回る見込みだとのトルーマン大統領の声明を大々的に報じた新聞の同じ頁の片隅に、犬の足の骨折に副え木をしてやった3人の少年の地方の記事が出ていた。一般の女性なら、トルーマンによりもずっとこの少年たちに身を置き換えるだろう。ある調査によれば、この犬の記事は44%の婦人が覚えていたのに、大統領の声明記事の方はたった8%しか覚えていなかった。(※9)

※1『桃太郎像の変容』(滑川道夫著/東京書籍)
※2『NHK歴史発見8』(NHK歴史発見取材班編/角川書店)
※3『人を動かすコーチの9つの習慣』(鈴木義幸著/講談社)
※4『「物語力」で人を動かせ』(平野日出木著/三笠書房)
※5『物語の体操』(木村英志著/朝日新聞社)
※6『きむら式 童話のつくり方』(木村裕一著/講談社)
※7『事例でわかる物語マーケティング』(山川悟著/能率協会マネジメントセンター)
※8『友達の数は何人?』ロビン・ダンバー著/インターシフト)
※9『創造力を生かす』(アレックス・オズボーン/創元社)
なお、『桃太郎』作品は著者名(敬称略)を都度記載しておりここは割愛します。

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