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2012年4月14日 (土)

動作(人体の姿勢や動きで表現されるもの)③

先日、『鉄の女の涙』でアカデミー主演女優賞を獲得したメリル・ストリーブのことに触れましたが、今回は、作品賞・監督賞・主演男優賞・衣装デザイン賞・作曲賞の5冠に輝き、日本でも上映の始まった『アーティスト』について少し書きます。フランスに初めてアカデミー賞の作品賞をもたらしたミシェル・アザナヴィシウス監督のこの作品はモノクロのサイレント映画(90年前の手法)です。

言葉がなければ観客は自分で言葉をつくる。サイレントは世界共通語!?
アザナヴィシウス監督によると、色も言葉もないサイレント映画の構想は10年ほど前からあり、この間1920~30年のサイレント作品を350本ほども観て、研究を重ねたとのこと。作品に関して監督自らが語ったところを2012年4月9日付けの『アエラ』から転載させていただくと、
「言葉がなければ観客は自分で言葉をつくる。感情的に映画に入り込めるので、映画との距離が近くなる。その効果を狙った。サイレントは世界共通語だしね」

●アザナヴィシウス監督の発言を否定するつもりはありませんが、誤解のないように補足します。ダーウィンの研究以降、笑顔は世界共通に限りなく近いとされますが、表情となると事情は変わります(この点については、本ブログの2011年1月22日と2月19日に「表情から感情を読み取る研究(国際比較)」に詳しく書いていますので、ここでは省きます)。
これが身振り手振りとなると、国や地域や民族によって全く別の受け止め方をすることもあります。したがって、アザナヴィシウス監督の発言にあるサイレントを非言語コミュニケーションと解釈しますと、必ずしも世界共通語とは言えなくなります。ごく身近な事例として、「手輪っか」でその違いを見てみましょう。

手輪っか(HAND RING)でもアメリカとアラブ諸国は相容れない関係!?(※1)
意味①:
オーケー、よい
動作:片手の親指と人差し指の先を合わせて、垂直に輪を作る 
地域:北アメリカとヨーロッパ各地
背景:紀元1世紀から、この輪のジェスチャーは承諾のサインとして知られてきた。起源は、話し手が会話中に詳細な点に言及するとき、無意識に何か小さなものをつまむように親指と人差し指の先を合わせることに由来する。こうすると輪の形ができ、意識的に使うジェスチャーも生まれました。

話と一緒に使うばかりでなく、意図的なシグナルとして使いだすと完全で、すばらしく、賛同できるものは何でも表すようになりました。
現代では一般的に「アメリカのOKサイン」といわれ、北アメリカを拠点として、社会的影響がある地球上のあらゆるところへ普及しています。しかし、多くのアラブ諸国では、脅しと猥褻(わいせつ)という2つの異なるかたちが存在するため、普及が妨げられています。

意味②:ゼロ
動作:片手の親指と人差し指の先を合わせて、垂直に輪を作る 
地域:ベルギー、フランス、チュニジア
背景:一般的な「アメリカのOKサイン」とは正反対の意味であり、この2つが一緒になる地域では誤解を招くことがあります。

意味③:お金
動作:片手の親指と人差し指の先を合わせて、垂直に輪を作る 
地域:日本
背景:硬貨を象徴している。通常はお金を要求するときに使うが、何かの値段が高いというときにも使います。

他に、輪を横向きにすると「性的侮辱」
輪を水平に構え1・2回縦に短く引いて強調すると「完全(南アメリカ)」
輪を逆さにした形(輪そのものは縦になるが、手のひらは上向きにし、自分と相手の間で数回短く前後させる)と「何を言っているのか?(イタリア)」、
輪を下向きにすると「公正(イタリア)」など。

●アメリカの「OK」のサインが、多くのアラブ諸国では、NOに通じる「ゼロ」なのですから、手輪っかのサインだけで交渉を終えたら、大変なことになりますね。対人コミュニケーションでは大きな役割を担う非言語コミュニケーションですが、契約などの場合では、行き違いをなくすためのことば(書面)が不可欠となります。

このように、言葉は責任を明確にするのに対して、非言語の方は形に残らない分だけ責任をまぬかれやすい傾向があることも確かです。ことばと非言語は、お互いに支え合ってメッセージを形づくりますが、いつもこのような関係であるとは限らないと、『しぐさと表情の心理分析』の著者は書かれていますので、気をつけたいですね。

※1:『ボディートーク』(デズモンド・モリス著/三省堂)

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