車内・機内アナウンス
昨晩、研修と打ち合わせの帰宅途上の電車の中で、こんなアナウンスがありました。
「日暮里と鶯谷の間で関係のない人が立ち入り・・・」
すると車内でクスクス、「関係ない人って」の声がどこからともなく聞こえてきました。
山本も同様に、「〝関係ない人〟…? トラブルになっているのですから、関係者でないことは明白で、単に〝人〟でいいのではないかと」、車中からFacebookに突っ込みを入れ、一日の疲れを癒やしたのでした。
おかげさまで、電車は15分後復旧、無事帰宅いたしました。
さて帰宅後、一段落してFacebookを開いて見ると、このお気楽な「突っ込み」に短時間で多くの「いいね!」と「労わりの言葉」をいただいており、驚きもし、また、感激いたしました。そこで、今回のブログは連載を急遽1回中断し、山本が研修で取り上げる、アナウンスに関するエピソードを紹介することにいたします。
その1 「この電車は回送となりますので、ご乗車できません」は正しい?(※1)
文化庁が、「この電車は回送となりますので、ご乗車できません」という表現を聞いてどのように感じるか、調査したことがあります。結果は、「敬語が正しく使われている」と答えた人が63%、「気になる」と答えた人が31%でした。正しいと思った人が多かったのですが、実はこの表現は適切ではありません。
「お(ご)○○できる」というのは、謙譲語表現である「お(ご)○○する」の可能を表す形です。謙譲語表現というのは、自分の動作をへりくだって表現し、相手に敬意を表します。この場合、乗車するのは、敬意を表すべき乗客です。その相手に謙譲表現を使ってはいけないのです。立てるべき相手の動作は、尊敬語にしなければなりません。
尊敬表現の可能形は「お(ご)○○になれる」です。したがって、このアナウンスはその否定形ですから、
「この列車は回送となりますので、ご乗車になれません」が適当な表現ということになります。
その2 フライト中のあいさつに対するANAのある機長のこだわり(※2)
ANAでは、お客様へのCS活動の一環として機長からのアナウンスを奨励していますが、アナウンスの有無は個人に任せているそうです。
英語ではユーモアを交えても、日本語ではあくまでもノーマルで特別なことを一切言わないある機長にその理由をチーフパーサーが尋ねたところ、「機長の声に慣れさせるため、驚かせないようにするためのアナウンスだから」との返事でした。
機長の本来の使命は、安全に、定刻に快適なフライトでお客様を目的地まで届けること。だから、操縦に集中したい。しかし、万が一、緊急事態に陥らないとも限らない。緊急脱出することになったら、「脱出」と機長が指示を出すことになるため、お客様にはあらかじめ機長の声を知っておいてもらった方がよい、とのご判断だそうです。
●緊急事態ともなると、人は皆、冷静ではいられません。それが飛行中の機内となればなおさらです。キャビンアテンダントの声(つまり女性の声ばかり)を聞いて過ごしていたところに、聞き慣れない声、それも男性の声が突然流れてくると、余計にただ事ではないと慌ててしまいかねません。でも、一度でも耳にしていれば、「機長の声だ」とわかってもらえます。そのためにアナウンスしているのだとの深慮からでした。
どうせ搭乗するなら、このような機長の飛行機に乗せてもらいたいものですね。
その3 拍手が起きたキャビンアテンダントのユニークな機内放送(※3)
「しばしお聞き下さい。ぜひ皆様に、安全のご案内をしたいと思います。1965年以降、自動車に乗ったことがないというお客様、シートベルトを正しく締めるには、平らな金具をバックルの中にスライドさて下さい。外すときは、バックルを持ち上げれば外れます。
また、歌にもありますように、恋人と分かれる方法は50通りもありますが、この飛行機から脱出する方法は6つしかありません。前方に出口が2つ、左右の翼の上に非常用脱出口が2つ、そして後方に出口が2つです。それぞれ出口の位置は、頭上の案内板と、通路沿いに設置された赤と白のディスコ調の照明で示されております。」
●本当に素晴らしい、パチパチパチ! ですね。ところで、このようなアナウンスを無視するお客さまもいらっしゃいます。かの有名なモハメド・アリもその一人でした。
キャビンアテンダント「離陸前ですのでシートベルトをお締めください」
アリ「私はスーパーマンだ。スーパーマンはシートベルトなど必要ないんだ!」
キャビンアテンダント「スーパーマンは飛行機なんか必要ないんですよね!」(※4)
このとっさの応対も凄いですね。以上、アナウンス特集でした。
※1:『プロアナウンサーに学ぶ 話す技術』(梅津正樹著/創元社)
※2:『空の上で本当にあった心温まる物語』(三枝理枝子著/あさ出版)
※3:『アイデアのちから』(チップ・ハース&ダン・ハース著/日経BP社)
※4:『瞬間説得 その気にさせる究極の方法』(ケヴィン・ダットン著/NHK出版)
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