方言に代表される言語表現の東西比較①
先日、研修会場向かう途中、マクドナルドのスタッフから「ただ今、無料でコーヒーをお配りしております。どうぞ」と歩行中の私にカップを渡してくれましたので、ご好意に甘えさせていただきました。その直後、「マックはコーヒーで攻勢を仕掛けるらしいよ!」「ホンマ、マクドのイメージ壊れるうんとちゃうん…」と前を歩く若い二人連れの興味深い会話が耳に入りました。たちまち、近じかコールセンターの「方言矯正研修」を担当する予定のある山本は、聞き耳兎に変身したのでした。
マクドナルドの正しい略称は「マック」それとも「マクド」?
以前から言われていましたが、この議論が活発となったのは2010年ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会に出場した本田圭佑選手の発言だそうです。決勝トーナメントのパラグアイ戦の直前インタビューに、「試合で緊張したことはない。むしろ海外でマクドに行って注文する方が緊張する」と、彼はコメントしました。参考までに記しますと本田選手は石川県の星陵高校からJリーグの名古屋グランパスに入団。08年1月に渡欧(オランダ→ロシア)しましたが、出身は大阪府で、中学時代はガンバ大阪のジュニアユースに所属していました。
全国的には英語省略の「マック」、関西のみ頭3文字による「マクド」
吉本興業のタレントさんの活躍で、関西発の新語・造語は数が多いですね。古くは「ホルモン焼き(関西弁の「放るもの」から訛ったとする説が有力)」。最近では、2011年の流行語大賞のベストテン入りした「どや顔(「《「どや」は「どうだ」の意の関西方言》得意顔のこと。自らの功を誇り「どうだ」と自慢している顔。大辞泉より)」などが有名です。
●うまい語呂合わせや絶妙な省略に、センスが発揮されているのではないでしょうか。とはいえ、マクドに関しては、単に頭の3字を取っただけの省略(ケンタッキーの略称ケンタも同じ)ですので、それほど評価に値しないかも・・・。
各地の言葉に詳しい奈良大学の真田信治教授に「もともと関西の人は3拍で真ん中の音にアクセントを置く言葉を好みます。省略語にはなじみ深く安心できるこの音節がよく使われます」の指摘があるそうですが、「マクド」正にこの通りですね。
●実は、今回テーマに取り上げた東西比較は 、2010年4月3日からの『冠婚葬祭マナー研修』で、「東西(主に東京と大阪)の違いを考える」として4回連載しています。
(1)司馬遼太郎氏と山口瞳氏の東西文化論談義他
(2)大阪のおばちゃんにまつわる面白話あれこれ
(3)大阪の常識 東京の非常識、大阪・東京ゼニカネ文化論他
(4)東西によるクレーム応対の違いを具体事例・数値で解説
以上の内容でした。もし、ご関心のある方がございましたら、ぜひご覧ください。
今回のブログは、その後、研修の準備を進める中で、新たにピックアップした面白事例(この分野は材料が不足気味ながら、限られた素材にたどり着くと、面白いものが多いのです)を、今回から3回で紹介いたします。
3日後の約束に姿を現さないことがある関東出身のビジネスマン!?(※1)
さて、皆さんは「あさっての翌日」を何といいますか。西日本のほとんどは「シアサッテ」で、これが全国共通語(注)になっていますが、東日本では「ヤノアサッテ(ヤナサッテ)」で、「あさっての翌々日」が「シアサッテ」となります。このため、出身地が東西に異なる場合、日にちを特定せず「アサッテ」の言葉だけで面談を設定すると、関東出身の人が当日現れない(1日行き違う)ことがたまにあるそうです。
(注):かつてNHKの国内番組基準には「標準語」と明記されていました。しかし、「標準語」には強制的な印象を覚える人もいることから、「共通語」になりました。
●この春、社会人になったビジネスマンには、ぜひ知っておいていただきたい、東西の言語ギャップですね。ただし、関東でも東京だけは「アサッテ、シアサッテ、ヤノアサッテの順」になっていますから、さらに複雑ですね。参考までに、もう一つ東西の時間の感覚の違いを、お店までの時間(距離)の問い合わせ例でみてみましょう。
同じ距離でも、店側が応える時間は東京10分、関西20分の不思議!?(※2)
お店に予約を入れ、ある場所からの車での時間を聞くと、東京では最短の10分くらい(タクシー代にして2千円前後)と答えるところを、関西では同じ2千円前後の距離でもMAXの20分(東京の人は4千円前後の距離と錯覚する)と答えるそうです。その理由は、もし、それ以上かかると、入店時に難癖をつけられることがあるからとの、予防策とか。この辺りに文化の違いが色濃く出ているように思います。
●最後に人気の『謎解きはディナーのあとで』から東西の微妙な表現例を紹介しましょう。「殺人現場では靴をお脱ぎください」の中に次のような会話シーンがあります。
執事:「いえ、私はけっしてお嬢様を馬鹿にしたつもりは・・・」
麗子:「確かにあなたはあたしを馬鹿にしなかった。だって、あなたはあたしをアホと呼んだんですもの! 馬鹿じゃなくてアホと――だからクビよ!・・・」。
この「バカ」と「アホ」のニュアンスの違いを、次回、権威筋に語っていただきます。
※1:『ことばのとびら』(都染直也著/神戸新聞総合出版センター)
※2:『「はい」と言わない大阪人」(わかぎゑふ著/KKベストセラー)
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