航空会社のCS① スカイマークが目指す?「従業員第一主義」の実践企業例
5月31日のある研修で受講生から、「乗客に対して、こんな航空会社があるのですが、ご存知でしたか?」と、Webの文章を見せてくれました。それが、朝日新聞の『天声人語』をはじめ、新聞各紙で大きく報道されることになった、スカイマーク社の乗客向け文書『サービスコンセプト』でした。
●航空会社のトラブル対応に関して、似た事例を以前読んだ記憶があり、訪ね歩いておりましたら、ついに再会いたしました。出典は『破天荒!(※1)』ですが、記事そのものは1995年7月号のリーダース・ダイジェストに掲載されたトム・ピータース(『エクセレント・カンパニー』の著者)の『有名人の横顔』からの抜粋です。
顧客がいつも正しいとは限らない。だから、顧客より従業員が優先される
サウスウエスト航空のCEOハーブ・ケレハーは、飛行機の座席を格安料金で顧客に提供しているが、顧客よりも従業員の方を優先するときっぱり言い切る――たとえそのために顧客を失うようなことがあってもだ。だが、本当に顧客はいつも正しいとは限らないのか? 「その通り」とケレハーはぴしゃりと言う。
「それこそ上司が従業員に対して犯しやすい最大級の背信行為なのだと私は思う。顧客のほうが間違っていることもある。われわれはそういう顧客はお断りしている。手紙を書いてこう言うのだ。
『よその飛行機に乗ってください。われわれの従業員を侮辱しないでほしい』」
CSでリッツ・カールトンやディズニーと並び称されるサウスウエスト航空とは
サウスウエスト航空は1967年創業で格安航空会社(LCC)のパイオニアですが、米国の国内線であるため、多くの日本人はその存在を知りません。にもかかわらず、この会社は、有償旅客キロ数の【国際線+国内線】の世界ランキングで堂々第7位(2009年ITAT:国際航空運送協会)に位置するばかりか、クレームの少ない凄い会社なのです。
搭乗者10万人当たりのクレーム発生率が、5大航空会社より1ケタ少ない
サウスウエスト航空0・26件、ノースウェスト航空1・43件、アメリカン航空1・65件、デルタ航空1・81件、ユナイテッド航空2・25件、USエアウェイズ3・16件(2007年調査 ※2)。なお、この5社は昨年末アメリカン航空が連邦倒産法の適用を申請したことで全社が破綻し、サウスウエストの強さが際立っています。
サウスアメリカCEOに「侮辱しないでほしい」と言わせたクレーマーとは?
たびたびサウスウエストを利用するある女性は、何一つ気に入らず、搭乗後に必ず「座席指定がないのが気に入らない」「ファーストクラスがないのが…」「機内食がないのが…」「搭乗手続きが…」「飛行機の色が…」「客室乗務員のスポーティーな制服と気さくな態度が…」「ピーナッツ(同社の唯一サービス品)が…」と苦情を申し立てた。
手紙には必ず返事を書く同社は、彼女にも辛抱強く回答したが、それでも止まることなく苦情手紙は山をなした。担当者がたまりかね「処理をお願いします」とハーブ・ケレハー(CEO)に依頼すると、彼は1分もしないうちに次のような返事を書いた。
「クラバプル様、もうお乗りになれなくなって残念に思います。さようなら。ハーブ」
CEO自ら、とびきりのクレーム客に最後通牒を送る勇気はどこから・・・
「いったい何人のCEOが、日曜日の午前3時に清掃係の休憩室に来て、ドーナツを配ったり、作業服を着て飛行機を掃除し始めたりするだろうか? 従業員は自分が人間として尊敬され、大切にされ、愛されていると感じれば、外部の顧客に対しても温かい心で接するようになるはずだ」。これはケレハー氏をよく知る経営者の言葉です。
●スカイマーク社の『サービスコンセプト』も、マスコミに西久保慎一社長が語るように、その意図するところは従業員第一主義だと思われます。同じスタンスながら、その姿勢がサウスウエスト航空と異なる受け止め方をされたのは、何がしかの準備不足があったからではないでしょうか。今後のスカイマークに期待したいと思います。
※1:『破天荒!』(ケビン&ジャッキー・フライバーグ著/日経BP出版センター)
※2:『マーケティング脳VSマネジメント脳』(ル・ライズ&ローラ・ライズ著/翔泳社)
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