“面接力”と“プレゼン力”が切り拓いた山中教授のノーベル賞への道
山中教授のノーベル賞授賞翌日(2012年10月9日)の新聞紙面は、この記事一色でしたが、中でも山本が興味深く読ませていただいたのは、『朝日新聞』朝刊社会面の「背水の大風呂敷転職」の記事でした。この日、たまたま学生向けの講演を担当させていただいておりましたので、さっそくこの記事をご披露いたしました。
ある質問に「できます」だけでなく、「やります」と答えた山中教授
「これでダメなら、研究をあきらめる決心がつく」と1999年に応募したのが、奈良先端科学技術大学院大の助教授職でした。他の応募者はみな、実績も経験もある人ばかりだったそうです。そこで「背水の陣」の山中さんは大風呂敷を広げました。「ES細胞(embryonic stem cell 万能細胞の一種)の特性を解明する」と。
選考委員だった安田国雄・前学長は、「数年後の結果が望めそうなテーマが多い中、挑戦的だった」と述べられています。そして、ある質問に対し山中さんは「できます」だけでなく、「やります」と答えたそうです。人柄とやる気で彼がベストだったとの評価とは別に、最終面接でのプレゼンテーションも選考委員を唸(うな)らせました。
2008年度ノーベル物理学賞の益川敏英氏との対談から(※)
奈良先端技術大学院大の公募に応募して、最終面接で先生方の前のプレゼンが終わったとき、選考委員長だった先生に言われた言葉が、「山中さん、あなた発表時にポインターをピッと止めていたでしょ。あれを見て、あなたはしっかりとした教育を受けていると思ったんです」だったそうです。これに関する山中氏の発言は以下の通り。
山中:科学者が成功するためには、良い実験をすることだけではなく、いかにしてその実験データをきちんと伝えられるかという、「プレゼンテーション力」にかかっている、というのが私の持論です。自分の持っているデータや研究成果を、いかにして発信するかということが大切なのです。
山中教授がアメリカでプレゼンテーションを学んだときの体験談
発言の仕方やボディランゲージのほかに言われたのは、「スライドでは聴衆から見えないような文字を使うな」とか、「文字ばかりのスライドを見せられても誰も読まないし、理解もできない」とか、「説明しないことを書くな、説明したいことだけ書け」とか、「発表の目的をはっきりさせろ」とか、当り前のことばかりでした。けれど、その当たり前のことが、できんのです。それを何度も何度も叩きこまれました。
●ES細胞発見は、余った試薬で想定外(1皿に1試薬の実験中、1皿追加し24試薬全部を投じた)を試みた助手の高橋和利氏の貢献が大きいようです。島津製作所の田中耕一氏(2002年にノーベル化学賞)にも同様の話がありました。国際語になった日本人の「もったいない」精神が、偉大な発明をもたしたことに山本は感慨を覚えます。
※『「大発見」の思考法』(山中伸弥&益川敏英共著/文藝春秋社)
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