〈香り・におい〉と記憶の深い関係【香り・におい⑥】
人間の鼻は脳に極めて近いところにあり、約500万の受容細胞を持っています。そして、においは長時間記憶の中に蓄えられます。においと関連付ければ言葉も記憶しやすいことが、科学者によって発見されているのだそうです。今回は〈香り・におい〉と記憶の関係について、いくつかのエピソードを紹介いたします。
『失われた時を求めて』の有名なプルースト効果(※1)
マルセル・プルーストの長大な小説『失われた時を求めて』で、主人公がマドレーヌを紅茶に浸したときに立ち上る香りをきっかけに、幼年時代を鮮やかに思い出します。かつて文豪がロマンチックに描いた、香りで記憶が呼び覚まされるこの現象に、いまでは科学のメスが入れられつつあるのは前述のとおりです。
急に抑えきれない感情に襲われどうしようもなく泣けてしまった(※2)
ある女性が泊まった家で、お皿を洗っている時、急に抑えきれない感情に襲われどうしようもなく泣けてしまったそうです。その時はなぜ自分がそうなったかわからなかったのですが後で、その家の皿洗い機の洗剤のにおいが、彼女の亡くなった最愛の祖母が用いていた洗剤と同じだったことから祖母のことが思い出され感極まったのだと。
中国人が歴史や民話を伝える時の必需品は香りの壺だった(※1)
中国では、歴史や民話を伝える際、居合わせた人々に香料や芳香剤の入った壺を回しました。その後、話を伝えられた人々が、また別の誰かに伝えるとき、よく思い出すように、自分たちが話を聞いたときと同じ香りのする小壺を回すという習慣がありました。香りと記憶の結びつきは、洋の東西を問わず、昔からよく知られていたのです。
両親に目隠しをして、生まれたばかりの赤ん坊を選ばせると
ある調査で、赤ん坊が生まれたばかりの両親に目隠しをして、3人の新生児から自分の赤ん坊を選ばせたところ、父親の的中率は37%で、でたらめに選んだ33%とほぼ変わらず、母親の方は61%的中しました。【香り・におい②】で、女性の方が嗅覚が鋭いようだと書きましたが、この実験でも、それが証明された感じですね。
●なお、母乳で育っている生後一カ月以内の赤ん坊は、母親の胸を嗅ぎあてます。他の女性の母乳を与えようとすると、ほとんどの赤ん坊が顔をそむけます。これは母親のにおいが既に赤ん坊の扁桃核と大脳皮質、嗅葉に刷り込まれているためだそうです。(※3)五感の中で、もっとも生存に密接なのが嗅覚だということのようです。
※1:『感性で拓くマーケティグ』(恩蔵直人編著/丸善プラネット)
※2:『においを操る遺伝子』(山崎邦郎著/工業調査会)
※3:『「ひと目ぼれ」の秘密』(アール・ノーマン著/東京書籍)
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