専門家の著書から〝理不尽な要求などへの対処法〟を学ぶ
<強要未遂容疑>娘の小学校に謝罪文要求 父親を逮捕 の記事について書いたところ、大きな反響がありました。世の中にはクレーム対応に頭を痛めている人がたくさんいることを改めて実感した次第です。そこで、以前クレーム対応研修で参考にさせていただいた文献から、理不尽な要求に対する対処法(極力原文転載を心掛けています)を4例紹介することにいたします。
「社長を出せ、上司を出せ」 理不尽な要求などへの対処①
窓口担当者は、いわばその会社の「代理人」としてそのクレームにつき一定の範囲で処理する権限を与えられているわけであるから、誰を担当者として対応させるかは企業側に決定権がある。
したがって、相手方から要求されたからといって、窓口を交代する義務はないことを理解しておくことが大切である。
このような要求に対しては、「この件に関しては担当者である私が処理を会社から任せられておりますので、私が対応させていただきます。もし、それでもご納得いただけないのであれば、これ以上お話を承ることはできません」という回答で十分である。なお、企業側で上司や他の責任部署にバトンタッチした方が良いと判断した場合は、担当者を変えることは自由である。
「自宅に来い」 理不尽な要求などへの対処②
原則として自宅を訪問する必要はないことから、「電話でまずお話を伺い、その上で原因がはっきりするならしかるべき対応を採らせていただきますので、まずはお話をお聞かせください」、「これまでのお話で十分事情は理解できましたので、社内でいったん検討させていただきます(あるいは「上司に報告させていただきます」)と回答し、要求を拒否するべきである。
しかし、一般的には相手方に身体的被害が生じたというクレームの場合は自宅を訪ねる必要があろう。このようなケースでの自宅訪問は、事故の状況や現物の状態、怪我の程度を実際に目で確認し、かつ現物を預かるためにも必要なことである。なお、自宅を訪問するケースでは、できる限り2人で訪問し、かつ過大にならない程度で見舞い品(手土産)を持参すべきであろう。
「マスコミに通報するぞ」「保健所に連絡するぞ」 理不尽な要求などへの対処③
公表や届出は、相手方のクレームとは関係なく、その必要があれば企業として当然取る措置。また、そのような必要性がない場合は、上記のような「脅し」を恐れる理由もないし、逆に「脅し」に対しては毅然(きぜん)とした態度で臨むべきである。「お客様がなさることについては、ご迷惑をおかけしている当社としてあれこれ言える立場ではございません」と回答すれば足りる。
「今から会社に行くから飛行機代を出せ」 理不尽な要求などへの対処④
相手方が企業側に何かを要求する(権利を主張する)ために支出する費用は、企業の責任(過失または欠陥)と明確に相当因果関係が認められる場合に限って認められる。法律実務上は、不法行為(製造物責任)を理由に弁護士に依頼して訴訟提起をし、その上で判決において原告の請求が認められた場合にその認められた損害賠償額の10%程度の弁護士費用が認められることが多い。
しかし、それ以前の交渉段階での交渉のための弁護士費用や相手方本人が支出した実費額は、必ずしも必要不可欠な費用とはいえず、原則として相当因果関係は認められない。
回答としては、「飛行機で来られても、会社としてそのためのご費用を支出する理由はございませんので、そのような要求には応じかねます」でかまわない。
『クレーム処理と悪質クレーマーへの対処法』(森山満著/商事法務)
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