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2013年10月

2013年10月30日 (水)

2020年東京オリンピックのプレゼンから学ぶ プレゼンテーションの技術③

今回のプレゼンでは、トップバッターの佐藤真海さん(パラリピアン・陸上走り幅跳び)のスピーチが、海外メディアを含め高い評価を受けました。最大の功労者との称賛もあるようです。ではなぜ、佐藤さんのスピーチが聴衆の心を打ったのでしょうか。そこには、ストーリーがあったからだとの識者の指摘があります。

それぞれのスピーチにストーリーがあったのも良かった(※)
『驚異のプレゼン』という著書のある森平茂生氏は、「それぞれのスピーチにストーリーがあったのも良かった。滝川クリステルさんが、東京の治安の良さをアピールするのに『お金を落としても警察に届けられる』という例を挙げたのも、1つのストーリーです。しかもバラバラにならず、一貫性があったのが素晴らしかった。」

佐藤さんのプレゼンには、ストーリー・テリングに必要な要素が揃っていた
まず、大学在学中に骨肉腫で右脚膝下を切断し、東日本大震災で故郷が被災したという、自身の体験を語ったこと(個人的な話を如何かとの指摘もある中で)。自分自身や身近な人の話を切り口にするというのは、ストーリー・テリングでは欠かせません。どんなに有名な人や偉い人の話をするよりも説得力があるのです。

ストーリーに欠かせない悪役の登場と、数秒間の沈黙も良かった
また、‶悪役〟が登場することも重要です。佐藤選手のプレゼンでは、彼女自身の境遇や大震災が‶悪役〟としての役割を果たしています。そして、彼女は「困難の先に未来がある」「困難を乗り越える力がスポーツにある」と、状況を前向きに捉えました。ポジティブであることも、ストーリー・テリングに必要な要素です。

●森平氏は、佐藤さんが「足を切断した話をしたときに、数秒間の間を取ったのもよかった。これが意図したものだったのか、自然とそうなったのかはわかりませんが、この間に感情が表れ、聴衆が一気に引き込まれたと思います。と指摘されています。
今回の最後は、前回登場の斎藤孝氏にストーリーについて語ってもらいます。

佐藤さんの物語は、「起承転結」ならぬ「結転転結」というサンドイッチ型(※)
佐藤真海選手は、自分がこの場にいる理由を、最初に短い言葉で伝えました。それは、「東京に投票してもらうため」ではなく「スポーツによって救われたから」です。自分の役割を明確にしてから、それに沿った個人的な話をして、最後に五輪の価値という、一般論に結びつけました。

ストーリーとしては、「起承転結」ならぬ「結転転結」というサンドイッチ型になっていました。真ん中の2つの転は、脚の切断と東日本大震災です。そこからの‶回復〟が印象的に語られました。安倍首相も、首相としての話だけではなく、自分自身と五輪との関わりについて話しました(大学で始めたアーチュリーについて)。

※:「THE21」(2013年11月号)

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2013年10月27日 (日)

2020年東京オリンピックのプレゼンから学ぶ プレゼンテーションの技術②

今回のプレゼンで特徴的だったのはポイントを「3つに絞る」手法でした。これはアドバイザーだったニック・バーリー氏の持論でもあるようですが、見事にスピーチに織り込まれていました。明治大学斎藤孝教授の雑誌『THE21』/「五輪開催を射止めた『東京』のプレゼン力」でのコメントも交え解説します。

五輪招致プレゼンコンサルタントのニック・バーリー氏「3つのルール」(※1)
「私は話を3部構成にするようにと強く提唱している。伝えたいメッセージがよく聞こえるし、人間は短期的にはだいたい3つの事柄しか覚えていられないと科学的調査が示している。「3つのルール」は東京のプレゼンで徹底されていた。竹田理事長はじめ他の発表者のほとんどが、メッセージに修辞的なしかけを盛り込んでいた。」

明治大学斎藤孝教授、プレゼンでは「3の法則」を徹底して繰り返す(※2)
東京のプレゼンでも、この「3つの法則」が多用されていました。例えば、招致委員会理事長の竹田恒和氏のプレゼン。「First,which City(中略).Second,which City(中略).And finally,which City(中略)」という表現と、「A,B and C」という表現が2回の、計3回(*)も「3の法則」が使われています。強い印象が与えられる法則なのです。

(*):First,which  City(中略).Second,which  City(中略).And finally,which  City(中略)」という表現と、「A,B and C(ドービング、違法賭博、八百長行為&Delivery,Celebration、Innovation)」

最後に、「東京に投票してください(Vote for Tokyo)」と3回繰り返した
彼は招致委員会理事長という立場で、その場にいる理由は投票を呼びかけることにほかなりません。ですから、3回繰り返したのです。滝川さんも、「東京は次の項目においても第1位の評価を受けました」と3点(「公共交通機関」「街中の清潔さ」「タクシー運転手の親切さ」)をあげるかたちで、「3の法則」を活用していました。

(山本注):水野正人氏も、IOCのアドバイスに沿った改善計画を「1つ目は…、2つ目は…、そして3つ目は…」と、アピールしていました。

実は、高円宮妃久子さまのスピーチも3部構成だった(※3)
皇族にはオリンピック招致を直接的に訴えることができないという制約がある中で何をどう伝えるか、久子さまは主に3つのことを伝えられました。1つ目は、IOCの特別震災プログラムに対する感謝と称賛。2つ目は、皇室のスポーツへの理解と支援。3つ目は、IOCメンバーとの絆。一言一句に至るまで考え抜かれたスピーチでした。

※1:(9月7日)ロイター発
※2:『THE21』(2013年11月号)
※3:『プレジデント』(2013年11月4日号)

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2013年10月24日 (木)

月刊『コンピューターテレフォニー』連載最終回ご紹介

「まとめ」を1回追加しましたので今回が最終回となります。山本にとりましては、はじめての本格的な執筆で苦戦を強いられたこともありましたが、編集ご担当に助けられて何とか完結することができました。とてもよい勉強になりました。これを糧に、新しい課題に取り組み、再び掲載の機会をいただけるよう頑張ります。

人材管理のはじめの一歩 できる面接官の心得:第7回(最終回)
(前文から)利き酒をする人は、水で舌先の感覚を洗浄する。日常の食事でもこの原則は変わらない。異なる食材を口に運ぶ際は、汁物かご飯か香のものを挟むことで味覚を新鮮に保つ。しかし、短期集中的に行われる採用面接試験(新卒や新設コールセンターの採用試験など)では、感覚の切り替えが難しく印象を引きずるためミスマッチが起こりやすい。それを防ぐ処方箋を示すことで、今シリーズのまとめとする。

●米国ゲイトウッド社に「面接官12 の留意点」があります。とてもよくまとまっており、「面接官スキルアップ研修」では参考資料として使わせていただいております。その全容は下記の通りですが、山本は特に「7」以降の6項目が重要と考えており、今回の連載もその内容に沿った形で書き進めました。

米国ゲイトウッド社の面接官12 の留意点(※1)
1.面接官が話しすぎて、必要な情報が得られない
2.質問が場当たり的で、受験者すべてに共通な情報が少ししか得られない
3.職務遂行と関連のない質問をしやすい
4.受験者の緊張をほどくことができず、本音の情報を引き出せない
5.自信過剰で、軽率な判断に陥りやすい
6.人物理解の枠組みが固定的で、ステレオタイプで人を判断しやすい(一つのことをとらえて、あるいは、ある人のことだけをとらえて、この人はこういうタイプの人だと判断してしまう
7.表情、容姿、態度など、言語外の情報に左右されやすい
8.多くの応募者を一度に評価することにより、寛大化傾向、中心化傾向(当たり障りのない評価)、厳格化傾向などが現れる
9.ひとつの優れた(あるいは劣った)点で全体を評価してしましやすい「ハロー(後光)効果
10.前の応募者の質に影響を受けやすい「対比効果
11.面接の最初の1分で評価をしてしましやすい(第一印象の影響)
12.自分と似た点を持った受験者を高く評価しやすい(自己類似好感効果

●「8~12」の太字部分については2013年6月22日の『コンピューターテレフォニー』連載第3回のご紹介で、「面接官の落とし穴」として一部解説しておりますので、関心のある方はご覧ください。なお、本連載の内容は以下の通りです。
第1回 「概念のレベル」で適性を読む/第2回 「インとアウトの違い」を知る
第3回 「直感力のある面接官」を選ぶ/第4回 「地頭力質問」で“資質”を知る
第5回「日常行動」から“適性”を知る/第6回 「非言語情報」で“本音”を探る

※:月刊『コンピューターテレフォニー』(リックテレコム社)  
http://ct.callcenter-japan.com/computer_telephony/826.html

※1:『採用力のある面接』(辻 太一朗著/日本放送出版協会)

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2013年10月20日 (日)

2020年東京オリンピックのプレゼンから学ぶ プレゼンテーションの技術①

五輪招致決定の興奮からだいぶ時間が経ちましたが、今回「プレゼンテーションの技術」を取り上げるに際して、感動を呼んだあの名プレゼンを外すわけにはいきません。そこで山本なりの分析を3回に分けてご紹介いたします。最初は、各プレゼンターが1分間に何文字(邦字換算)話したかです。そこからなにか見えてくるかも…。

スピーチ順の各プレゼンター日本語仮名文字換算(山本カウントによる)
         実質スピーチ時間         仮名換算   1分間当文字数
佐藤真海さん       3分58秒    1283字前後       約323字
竹田恒和理事長     3分31秒      1183字前後       約336字
水野正人専務理事    3分26秒    1064字前後      約310字
猪瀬直樹東京都知事  3分07秒        872字前後      約280字
滝川クリステルさん    2分23秒      791字前後      約332字
太田雄貴さん        2分27秒      867字前後      約354字 
安部晋三首相       5分15秒       1598字前後      約304字

高円宮妃久子さまのゆったりした口調と、安部首相がほとんど変わらない
プレゼンターとは別のお立場で最初に登壇され、全員に温かい眼差しで語りかけられていたのが印象的だった高円宮妃久子さまは、1分間に約297字(4分28秒/1328字前後)でした。この数値は安部首相(304字)とほぼ同じです。プレゼンの映像をご覧になった方は、かなりの違いがあるように思われたのでは…。

フランス語で優雅に語りかけた滝川さんも、竹田理事長と同じペース
「おもてなし」を合掌で表現し話題を呼んだ滝川さんが、説得力のあるプレゼンをなさった竹田理事長と同じ330字台でした。実は、高円宮妃久子さまと滝川さんは、今回のプレゼンターの中では傑出して語学が堪能だったのです。その違いがゆとりを生むのでしょう。日本人同士のプレゼンでも日本語力はポイントになります。

若さをアピールした早い語り口が、次のプレゼンターを一層際立たせた!?
1分間当の文字数が一番多いのは太田さんでした。NHKのアナウンサーが1分間に話す文字数は350~400といわれています。多様な文化の人たちを相手に、母国語以外の言語でお話するのは、この辺りが限界スピードといえるかもしれません。太田さんがあえてこのレベルに挑戦したのには、ある意図があったと思われます。

低い声でゆっくり話すと権威が感じられるが、安部首相の声は必ずしも・・・
テレビで拝見すると安部首相は明るい声でテンポよく話されます。この語り口を、ゆったりとした権威あるものにするには対比効果(前の人との比較)を使うのが有効です。太田さんの高い声と早い語り口は、安部首相の声を低めに、話し方をゆったり(354字→304字)した印象を与える効果があったのではないでしょうか。

参考資料:「東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会」
http://www.huffingtonpost.jp/2013/09/07/olympic_candidate_tokyo_presentation_n_3886260.html

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2013年10月17日 (木)

夢に責任を取る勇気を(ニーチェ) 新入社員フォローアップ研修⑩

2010年に、突然『超訳 ニーチェの言葉(※)』がベストセラーに躍り出て、驚かされたことがありました。哲学が苦手な山本も一度は手にしておかなければと、図書館から借りておそるおそる開いてみると、意外に読みやすく、気に入った何箇所かをメモに残しました。その中に「夢に責任を取る勇気を」があります。そして新入社員に読んで欲しいこんな言葉も・・・。

夢に責任を取る勇気を
過失には責任を取ろうとするのに、どうして夢に責任を取ろうとしないのか。
それは自分の夢なのではないか。自分の夢はこれだと高く掲げたものではないのか。それほど弱いのか、勇気がないのか。
それは自分だけの夢ではないのか。最初から自分の夢に責任を取るつもりがないのなら、いつまでも夢をかなえられないではないか。『曙光』

誰にも一芸がある
どんな人にも一芸がある。その一芸は、その人だけのものだ。
それを早くから知っていて、充分に生かして成功する人もいる。自分の一芸、自分の本領が何であるか、わからないままの人もいる。
それを自分の力のみで見出す人もいる。世間の反応を見ながら、自分の本領が何だろうかと模索し続ける人もいる。
いずれにしても、くじけず、たくましく、果敢に挑戦を続けていけば、自分の一芸がわかってくるはずだ。『人間的な、あまりに人間的な』

恐怖心は自分の中から生まれる
この世の中に生まれる悪の4分の3は、恐怖心から起きている。
恐怖心を持っているから、体験したことのある多くの事柄について、なおまだ苦しんでいるのだ。それどころか、まだ体験していないことにすら恐れ苦しんでいる。
しかし、恐怖心の正体というのは、実は自分の今の心のありようなのだ。もちろんそれは、自分でいかようにも変えることができる。自分自身の心なのだから。『曙光』

脱皮して生きていく
脱皮しない蛇は破滅する。
人間もまったく同じだ。古い考えの皮をいつまでもかぶっていれば、やがて内側から腐っていき、成長することなどできないどころか、死んでしまう。
常に新しく生きていくために、わたしたちは考えを新陳代謝させていかなくてはならないのだ。『曙光』

※:『超訳 ニーチェの言葉』(F・W・ニーチェ著/ディスカヴァ―・トゥエンティワン)

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2013年10月12日 (土)

公の席で批判する勇気(村上春樹氏) 新入社員フォローアップ研修⑨

この数年、ノーベル文学賞の最有力候補であり続ける村上春樹さんが今年も選から漏れました。残念に思っている多くのハルキストのためにエールを贈りたいと思い、古いスクラップ(たまたま出張先の長野のホテルで読んだもの)を取り出しました。それは、反対する人も多い中、村上氏が悩みながらも現地を訪れ、行った「エルサレム賞」受賞スピーチに関する記事です。

2009年2月17日『信濃毎日新聞』コラム「斜面」(朝日新聞「天声人語」に相当)より
自分のことをたたえる相手を、公の席で批判するのは勇気がいる。作家の村上春樹さんが、それをやった。イスラエルの最高の文学賞「エルサレム賞」を受け、授賞式でイスラエルのパレスチナ自治区ガザ攻撃を批判した。

高くて固い壁と、それにぶつかって壊れる卵――。村上さんは、小説を書くときに常に心に留めている例を持ち出し、講演している。高い壁は戦車やロケット弾、卵は犠牲になる民間の人々だとし、イスラエルとパレスチナ武装組織双方の戦闘も非難した。

さらに村上さんは言葉を継ぎ、卵は独自の心を持った私たち一人一人、壁は「制度」だと説明。この制度が、私たちを殺したり、他人を殺させたりする、と述べた。イスラエルにあてはめると、自らを守る正当な攻撃として、パレスチナ人を殺させる国家も制度なのだろう。

「違う文化の人間同士でも、心の中の大きい領域は共有しているので、どんな小説でも翻訳可能なのだと思う」。村上さんはカフカ賞に選ばれた三年前の記者会見で、こう応じていた。共同通信のインタビューには「物語は世界の共通言語」と語っている。

こんな思いがあるからこそ、イスラエル支持ともとられかねない式への出席を選んだのだろう。作品が世界の30以上の言葉に翻訳されているという村上さんだ。メッセージはイスラエルの人ばかりでなく、世界中に届いたことだろう。

●(紛争直後でもあり)賞を辞退せよとの声もありましたが、氏にはひとつの決意がありました。それは、事前に送ったスピーチ原稿に対して難色を示されるとか、一箇所でも表現を変えてほしいと言われたら、即座に受賞を断ることでした。そして、イスラエルにとっては耳の痛いこの話は、当事国の大統領が最前列に陣取る場でなされたのです。(※)

●当の村上氏は、「僕自身はとくに勇気があるとは思いません。それよりはゲストとして招かれ親切にしてもらいながら、批判的なメッセージを発しなくてはならなかったことに対して、つらい思いがありました」と。この思いを封印し、信念に従って発言することが“真の勇気なのだ”と山本は思います。来年こそはと期待したいですね。

※:『文藝春秋』(2009年4月号)「僕はなぜエルサレムに行ったのか」

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2013年10月 9日 (水)

原点に戻る勇気(ノーベル賞の益川教授) 新入社員フォローアップ研修⑧

さすが20世紀を代表する科学者だけあって、アインシュタインには多くの名言がありますが、その中に「学んだことを忘れてしまったあとに残るものこそが教育である」があります。実際には、学んだことを忘れることはないので、“悩んだときは原点に戻る”との教えと山本は受け止めています。この教えをまさに実践したかのようなノーベル賞学者がいらっしゃいます。

益川教授は、これまでの研究を白紙に戻す(証明できないとの論文を書く)決意をした
ノーベル物理学賞を受賞した益川教授は、当時考えていた4元モデルでは「CP対称性の破れ」という現象をうまく説明することができず、小林誠博士とともに試行錯誤を繰り返す日々が続きました。そんなある夜、たまたまお風呂に入っていて、「4元クォークモデルではCP対称性の破れの実験は説明できない」という論文を書こう、と決心して立ち上がりました。

その瞬間、「あ、何も4元に固執する必要はない。じゃあ6元にしたら」
うまくいかないという論文を書こうと思った瞬間に吹っ切れたのでした。そう気づくと、もう何も計算するとか、調べる必要はありませんでした。4元クォークモデルの段階でいろんなことを調べてあり、6元クォークにしたらどうなるかということはわかっていたのです。論文は5ページくらいでしたが、この着想がノーベル賞の「小林・益川理論」につながりました。

現代のアルキメデス(益川教授)は天才ではなく努力家だとする見識も
このエピソードで注目していただきたいのは、画期的なアイデアを思いついた天才性ではなく、風呂に入っているときまでこの問題を考え続けていた執念とも呼ぶべき粘り強さです。そして、それまで考え続けていた「4元モデル」を捨て、原点に戻って考えようとした勇気です。
『「考える力」の鍛え方』の著者・上田正仁氏は、このように書かれています。

ラマ教の高僧・カリアッパ師と中村天風氏のコップの理論にも共通する!?
2013年4月13日ブログに、中村天風氏が「君の心の器は既成概念で一杯であり、新しい知識を受け入れる余地はない。本当に学ぶつもりがあるのなら、そこに満ち満ちている古今東西の文献から学んだものを一度捨ててからにしなさい」と、カリアッパ師に諭されたことを書きましたが、共通するものがあるように思われます。

大学受験でも苦手な教科(英語)を捨てる勇気を発揮した益川教授
ノーベル賞授賞時話題になったのが、同教授の英語嫌いでした。このため高名な研究者でありなが渡航経験が一度もありませんでした。益川教授は大学受験の時、思い切った対策を打ちました。苦手な英語を捨てたのです。とはいっても受験科目にはあるので、英語を勉強する時間を得意な数学や理系科目に振り向け、得意科目で満点近い点を取り、英語の不足点をカバーしました。

※『僕がノーベル賞を取った本当の理由』(益川敏英著/フォーラム・A)

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2013年10月 6日 (日)

失敗を恐れぬ勇気(T・エジソン) 新入社員フォローアップ研修⑦

世界一のセールスマンといわれたフランク・ベドガーは、自分はもう一つの世界記録を持っている、それは“断られた数だ”と言っています。そうなると、世界一失敗の多かった人は、トーマス・エジソンで間違いなさそうです。今回は、幾多の失敗にもめげず、世界の発明王といわれたエジソンが、どのように失敗と向き合い、結果として成功を勝ち得たのかを見ていきます。

小学校を3年生までしか通わなかったエジソンの壮絶な少年時代(※1・2)
彼は教師に、この子は教育するに値しない、という両親あての手紙を持たされて、学校から家へ帰されました。そして、12歳で鉄道の車内の飴売り、14歳に満たぬ年齢で新聞を発行、時々は青果物の売り買いをし、電報局で通信業務に従事しました。こうした生の体験を創造のエネルギーとし、22歳で株式相場指示機を完成。4万ドルでウェスターン・ユニオン社に売り渡しました。

エジソンは電球のフィラメントの研究で何千回も失敗を繰り返した(※3)
実験しては失敗するということを繰り返していたあるとき、助手が、これだけ「失敗」を繰り返しているのに、なぜがんばれるのかと尋ねました。しかし、エジソンには質問の意味がわからなかったそうです。なぜなら、彼は失敗したと思っていなかったのです。彼は、今後考慮する必要のない素材を何千も発見したと考えていたのです。

●これに近いエピソードもあります。周囲から「失敗するに決まっている。計画を断念した方がよい」と助言されると、彼は、ゆるぎない自信と多少の驚きをもってこう答えました。「どうしてだい、私は失敗などしていないよ。うまくいかないやり方を千種類も発見したんだ」。彼の最も強力な武器は、問題解決へのポジティブで粘り強い姿勢だったのでした。(※4)

天才のひらめきは、奇想天外の答えに表れた。「1+1=1」なのだと
あるとき、丸めた粘土の塊を両手に持った先生が「これとこれを足すといくつになるかな?」と小学校低学年の生徒に質問しました。この時、他の子どもが「2つ」と答える中で、エジソン少年は断固「1つ」と言って譲りませんでした。「どうして1つなのか?」と問う教師に対して彼は「2つの粘土は一緒にするとひと固まりの粘土になるから」と答えたのでした。

●エジソンについては読書障害があったと伝えられていますが、片方の耳も不自由だったそうです。しかし、彼はこのハンデを、第六感を使って「心の耳」で聞く能力を発達させ克服したそうです。なお、今回参考にさせていただいた書籍は5冊ですが、そのうち2冊のタイトルに「創造力」と「思考」が入っていました。こんなところにも傾向が出るのですね。

※1:『思考は現実化する』(ナポレオン・ヒル著/きこ書房)
※2:『創造力を生かす』(アレックス・オズボーン著/創元社)
※3:『コトラーのマーケティング思考法』(P・コトラー著/東洋経済新報社)
※4:『人を動かす50の物語』(M・パーキン著/ディスカヴァ―・トゥエンティワン)
※5:『創造力のスイッチを入れろ』(ロジャー・フォン・イーク著/ダイヤモンド社)

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2013年10月 3日 (木)

困難に立ち向かう勇気(S・ジョブズ) 新入社員フォローアップ研修⑥

アップルの成長神話に陰りが見え始め、あらためて創業者であり、時代の創造者でもあったS・ジョブズの評価が見直されています。そのジョブズ氏は、30歳の誕生日直後に、自らが創業したアップルから追い出されてしまいます。シリコンバレーの寵児からの転落という最悪の事態から、再びスポットライトを浴びるまでには、幾多の困難が待ち受けていました。

マッキントッシュを発表して1年後  経営方針の違いからS・ジョブズはクビに
ジョブズ氏回想「数カ月の間は、まさしく茫然自失の状態でした。自分は前の世代の起業家たちを失望させてしまった。デビッド・パッカードとボブ・ノイス(インテルの共同創業者の一人)に会って、すべてを台無しにしたことを謝ろうとしました。わたしが失敗したことは、みなに知れわたっているのです。シリコンバレーから逃げ出すことすら考えました。」

しかし、やがて見えてきたことがあり、いちからやり直そうと決意
「そのときはわかりませんでしたが、後からみると、アップルを追い出されたことは、私の人生で最良の出来事でした。成功者であることの重圧は、初心者に戻った気安さに変わりました。何事も前ほど自信が持てなくなりましたが、それによって自由になり、人生でもっともクリエイティブな時期に入ることができたのです。」

おそろしく苦い薬でしたが、わたしという患者には必要だった
「アップルを追い出されていなければ、ピクサー(世界初のコンピューター・アニメーション映画『トイ・ストーリー』を制作)の創業者として復帰し、(その後数々の世界的ヒット商品を連発するなどの成功は)、何一つ起こらなかったと断言できます。人生には時として、レンガで頭をぶん殴られるような出来事が起こりえるのです。」

●上記は、2005年スタンフォード大学の卒業式の講演から山本が抜粋(一部前後入れ替え)したものです。困難に立ち向かい、それを乗り越えたS・ジョブズの勇気がひしひしと伝わってきます。さて、伝説の多いS・ジョブズですが、最後はきわめつきの“選択する勇気”です。彼が復帰し、最初に手掛けた大仕事は、製品ランナップの交通整理でした。

ジョブズ氏の最初の仕事は40ある製品の見直しだった。そして・・・
ジョブズ氏がアップルに復帰した時、アップルには実に40種類もの製品がありました。パソコンだけでなく、プリンターや長い時間と多額の投資で育ててきた携帯情報端末ニュートンなどもあったのです。中でもパソコンのラインナップは数多くのモデルに分散していました。これを一つずつ時間をかけ、社内ヒアリング(各事業部のプレゼン)で精査していきました。

分散していた人材を、4製品に集中させることで、アップルは甦った
ジョブズ氏が製品を選ぶ際のキーワードは「コンシュマー」「プロフェッショナル」「ポータブル」「デスクトップ」だったそうです。そして、最終的に残ったのは一般消費者またはプロフェッショナルを対象にした2種類のノートパソコンと2種類のデスクトップだけでした。旧経営陣が社運を賭けた携帯情報端末ニュートンもあっさりと切り捨てられたのです。

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