福祉でまちづくり 「白神まいたけキッシュ」誕生秘話
世界遺産「白神山地」の麓に藤里町(秋田県)があります。人口3900人で高齢化率39.7%(県内第2位)だそうですが、平成の大合併では、自立を選択しました。この藤里町の社会福祉協議会の地域福祉実践が、いま全国的にも先進的な支援活動として注目されています。福祉施設が生んだ「白神まいたけキッシュ」に絡めて紹介します。
自然豊かで住人3900人の町に、引きこもり者が100人いた
秋田県社会福祉協議会が全県の市町村社協と協力して一斉に取り組んだ「地域福祉トータルケア推進事業」で、藤里町社協は平成17年からの3年間、モデル地区社協の指定を受けました。藤里町社協が掲げたサブテーマ「福祉でまちづくり」の一環で町内の引きこもり者・長期不就労者を把握するための調査で判明しました。(※)
引きこもり者のいる家庭を 断られても、否定されても訪問活動を続ける
驚愕の事実を知らされた町は、引きこもり者等のための福祉の拠点「こみっと」と、同じ敷地内にある宿泊棟「くまげら館」の事業を立ち上げます。プライバシーに対する微妙な町民感覚がある中で、担当者が個別訪問を繰り返した努力が実り、10人の若者(中には40歳も含まれる)が自立支援プログラムへの参加の運びとなりました。
「福祉の町づくり」なら地域の特産品を「白神まいたけキッシュ」に取組む
舞茸は藤里町の特産ですが加工は難しいとのこと。アクが強く、どう調理しても黒く変色する。また、タンパク質を分解する成分があり、茶碗蒸し等に入れると固まらなくなる。乾燥させると舞茸の風味がなくなり、冷凍すると舞茸独自のシャキシャキ感が失われる。そうした課題をどうにかクリアしてついにレシピが完成します。
「町民すべてが営業マン」をスローガンに1年かけて完成させる
それから1年間、関係者および町民は、事あるごとに「白神まいたけキッシュ」の試食を繰り返しました。そして、試食するたびにアンケートの記入を求められ、「白神まいたけキッシュ」の売り出しに協力していただけますか? 何しろ、「白神まいたけキッシュ」売り出しのコンセプトは「藤里町町民すべてが営業マン」だったのです。
自立支援プログラム参加者の1人に「キッシュ」どうでしたかと質問すると
「意味わかんなかったよ。なんでって言うか、その前にキッシュ自体知らないもんな。ノーマルなキッシュ食ったことないもんな。『これはまいたけキッシュです』って言うのに、普通のキッシュ食ったことないんだから。それを作る、となるとまたさっぱり分からなかった(笑)。そんなキッシュとかっておしゃれな名前のもん俺知らね(笑)」。
●このキッシュほんとに美味しいんです。機会がありましたらぜひ一度お試しください。上記のような全くの素人さんだった人たちが作っているとはとても思えません。
※:『ひきこもり 町おこしに発つ』(藤里町社会福祉協議会&秋田魁新聞社共同編集/秋田魁新聞社)
ホームページ https://www.leafwrapping.com/
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