純粋な青年の心が、寂れた温泉街(湯河原)を「介護都市」に変えた
神奈川県の伊豆半島のつけ根付近に湯河原があります。東海道本線の真鶴のひとつ先で熱海の手前になります。以前は名高い温泉街でしたが、いまではその面影はありません。その湯河原が「介護都市」として、中国などから視察者が多数訪れるなど注目を集めています。そこには、ある青年の街おこしの物語がありました。
青年が物件の査定で訪れた廃屋に、社会から見捨てられた老婆がいた
湯河原で不動産業を営む兄の手伝いをしていた青年は、あるとき、「あそこに、古い家があり、売りに出ているので、見に行ってくれ。あばら家だけど、その不動産価値を査定してきてほしい」と頼まれます。彼が崩れそうな古いあばら家の戸を開けて中に入ると、家の中はゴミの山。そのとき、そのゴミの山がゴソゴソと動きました。
青年は、人間が廃棄されている社会の姿に心を痛め、ある行動に出た
普通だったら、この老婆の面倒をみるのは行政の仕事で、青年には関係ないと立ち去るところですが、彼はその盲目の老婆を見て、ゴミが放置されていることよりも、人間が廃棄されている社会の姿に心を痛め、その老婆をそのまま放置せず、背負って自分のアパートに連れて帰りました。そして一緒に3カ月間生活したのです。
老婆との同居生活から、お年寄りたちのグループホームづくりを思い立つ
その間、青年が調べてみると、湯河原にはまだ大勢の年寄りが一人で暮らしていることがわかりました。年寄りのサポートがいかに難しいかを体験した彼は、この人たちを一か所に集めたお年寄りたちのグループホームをつくろうと思い立ちます。そして、大家が取り壊す予定だった20室ほどのアパートを安く借りて立ち上げたのです。
元レストランの厨房再利用で、お年寄りたちのサプライセンターを始める
商店街の元レストランだった店舗の使いみちの相談を受けた青年は、お年寄りの食事のサプライセンターを始めます。サポートは近所の主婦たち。やがて農協から、「曲がったキュウリで商品にならないから、安くあげるよ」とか、漁協から「雑魚があるけど、取りにこないか」といった話が、しょっちゅう持ち込まれるようになりました。
要介護家族から介護を開放することで、老舗旅館の再生を果たす
「客が減ったので、休業してしまったけど、なんとかあなたのセンスで経営を考えてほしい」。この老舗旅館の要請を受けた青年は、一般的な旅館・ホテル経営とは違った発想で再建します。お年寄りの介護を地元のボランティアがしっかり面倒をみることで、介護に疲れた人たちがゆったりと温泉旅行を楽しめるようにしたのでした。
※:2020 VALUE CREATOR 2013.4 今月のこの1冊シリーズ 『希望と幸せを創造する社会へ――センス・オブ・ハピネス』の著者 望月照彦多摩大教授 より
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