ブレーンストーミング(ブレスト)の評価と批判 相乗(シナジー)効果を考える(10)
批判や評価されることがなくなれば、集団は個人よりも、よりすぐれたアイデアをより多くもたらすに違いないとオズボーンは信じ、ブレストを強力に宣伝しました。「あるグループは電気製品の宣伝に45件、募金キャンペーンに56件、毛布の販売促進には124件ものアイデアを生み出した」と。しかし、早い段階からブレストの効果に疑問を投げかける人たちもいました。
オズボーンの画期的なアイデアは、ひとつだけ問題があった
集団のブレストが実際には機能しないことを最初に立証した研究は、1963年ミネソタ大学の心理学者マーヴィン・デュネットによって行われました。3M*で働く科学系研究職男性と広告分野の管理職の男性各48人を集め、単独発想と集団でのブレストをしたのです。当初デュネットは、広告分野の管理職の集団作業からより大きな成果を得るだろうと考えていました。
*:「ポストイット」「スコッチテープ」等開発の世界的な化学・電気素材メーカー。
各48人の被験者は、4人ずつ12のグループに分けられた
彼らは、あるテーマの利益と不利益はなにかといったような問題についてブレストをするように指示され、また、同じような問題について個人で考えるようにとも指示されました。そして、デュネットらの研究チームは、集団から生まれたアイデアと個人が考えたアイデアの数を比較しました。さらにアイデアの質を評価し、「実現性」について0~4の点数をつけました。
結果は非常に明快でした。24組のうち23組の人々がグループよりも個人で考えたほうがたくさんのアイデアを生み出しました。また、質の点では、個人作業で生まれたアイデアは、集団社業で生まれたアイデアと同等あるいはそれ以上でした。そして、広告分野の管理職のほうが科学系研究職よりも集団作業を得意としているという結果は出ませんでした。
4人のグループよりも6人のグループのほうがアイデアは質・量ともに低下
これ以後40年以上にもわたってさまざまな研究がつづけられてきましたが、結果は常に同じでした。そして、集団が大きくなるほどパフォーマンスは悪くなることが、研究から立証されているそうです。4人のグループよりも6人のグループのほうがアイデアは質・量ともに低下し、9人のグループではさらに低下するのだと。
例外は、きちんと管理されたオンライン上のブレスト
前提条件が満たされたオンライン上のブレストは、集団が大きいほどパフォーマンスも向上します。このことは学問的研究の分野(教授たちが離れた場所から電子機器を使って共同作業をすると、単独作業や対面での共同作業よりも有力な研究成果を得られる)でも実証されています。これは、新集団思考に貢献した電子機器を通じた共同作業の興味深いパワーなのだそうです。
参考文献:『内向型人間の時代』(スーザン・ケイン著/講談社)
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