八木重吉と加島祥造詩集『求めない』 『幸福になるための作法45』(2)
『幸福になるための作法45(※1)』の10は八木重吉詩集から「おだやかな心」です。最初の2行が特に心に響きました。加島祥造氏のベストセラー詩集『求めない』を凝縮すると、こんなフレーズになるのかと感心した次第です。少し長いのですが、『求めない』の冒頭に掲げられた「はじめに」も、ご参考までに転載いたします。
10 おだやかな心(『八木重吉詩集』より)
ものを欲しいとおもわなければ
こんなにもおだやかなこころになれるのか
うつろのように考えておったのに
このきもちを味わってみると
ここから歩きだしてこそたしかだとおもわれる
なんとなく心のそこからはりあひのあるきもちである
加島祥造詩集『求めない』より「はじめに」(※2)
誤解しないでほしい。
「求めない」といったって/どうしても人間は「求める存在」なんだ。
それはよく承知の上での/「求めない」なんだ。
食欲性欲自己保護欲種族保存欲
みんな人間の中にあって/そこから人は求めて動く――それを
否定するんじゃないんだ、いや/肯定するんだ。
五欲を去れだの煩悩を捨てろだのと/あんなこと
嘘っぱちだ、誰にもできないことだ。
「自分自体」の求めることは/とても大切だ。ところが
「頭」だけで求めると、求めすぎる。
「体」が求めることを「頭」は押しのけて/別のものを求めるんだ。
しまいに余計なものまで求めるんだ。
じつは/それだけのことなんです、/ぼくが「求めない」というのは
求めないですむことは求めないってことなんだ。
すると/体のなかにある命が動きだす。
それは喜びにつながっている。
だけどね/意外にむずかしいんだ、だって
わたしたちは/体の願いを頭で無視するからね。
ほどよいところで止める――それがポイントだ。でも
それができなければ、ときには/もう求めない
と自分に言ってみるだけでいい。
すると、それだけでもいい気分になると分かるよ。
あらゆる生物は求めている。
命全体で求めている。
一茎の草でもね。でも、/花を咲かせた後は静かに/次の変化を待つ。
そんな草花を少しは見習いたいと、/そう思うのです。
※1:『幸福になるための作法45』中野孝次著/ポプラ社)
※2:『求めない』(加島祥造著/小学館)
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