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2014年7月20日 (日)

大学教授が柔軟思考で「こころを考える」 『ニューモラル』珠玉の言葉(2)

筆者は先日、千代田図書館で貸し傘を利用させていただきました。そして、最寄駅(地下鉄九段下)手前のコンビニでビニール傘を買い、早速返却に戻りました。そのような行動に駆り立てるのは、以前『ニューモラル』誌で立派な文章に出会っていたからです。今回は、よい習慣を身につけるきっかけとなった思い出深い作品の紹介です。

貸し傘を返す時(麗澤大学教授 浅野栄一郎)
ちかごろは物資が豊かになったせいか、どこでもにわか雨用の貸し傘の備えのあるのに気付きます。それも田舎の辺鄙な小駅で、土地の有志が寄付したのでしょう、そのような傘のあるのには大変助かります。私もある時、田舎の知人宅に用足しに行った時、この緊急傘の恩恵にあずかって、改めて思い付いたことがあります。

午後から降り出した天候は、夕方、列車がその駅に到着するころには本降りになっていました。困ったなあと思うものの、列車が着けば降りない訳にはいきません。

駅から知人宅までは五百メートル程ですが、この雨ではズブ濡れになります。タクシーもありません。良い思案もなしに数分間たたずんでいると、誰かが、貸し傘がありますよ、と声をかけてくれました。私ほか数人の人がドッとその方に小走りに行きますと、傘はあと数本しか残っていません。借りる人の数と傘の数を数え合わせると、私が一番最後です。

帳簿に名前を記入し、一本一本手渡してくれる駅員に、各自ていねいにおじぎして、それぞれの方向に出かけました。私も、ああ、これで良かったな、と思いながら歩き出しました。が、道々思いついたことは、あの後、借りられなかった人はどうしたんだろう、ということでした。運が悪いと言ってしまえばそれまでですが、つい先程まで私も困っていた一人であったことを思い合わすと、何とも気の毒に堪えられませんでした。

いろいろ考えながらやがて知人宅に着くや、私は挨拶もそこそこに事情を話して、その家から別の傘を借り、今、さして来た駅の貸し傘を返してきます、といいました。すると知人は驚いたと同時に大笑いをして、「傘はあした、こちらで干して返しておきます。この雨の中を返しに行かなくてもよいではないですか」と。

そこで私は「今、雨降りの中ですからこそ、傘を持たない人には、なおさら必要です。あした晴れてしまえばこの傘の必要性はなくなりますから」と言って止めるのも聞かずにまた駅に引き返しました。が、私がその傘を駅員に返したちょうどその時、次の列車が到着して、先と同様、傘を持たない数人の客がドッと殺到し、今の今、私が返したタッタ一本の傘が、再び別の人に渡されました。
私は、これでいいのだ、と自らの心の休まるのを感じました。

出典:モラロジー研究所刊『ニューモラル No.65(昭和50年1月号)』より

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