避難所のトイレの掃除は誰がしたのか ボランティア活動の実例(3)
1995年1月17日、阪神・淡路大震災が起こりました。このときも、全国から救援活動のためにたくさんのボランティアが駆け付けてきました。後年、この年、1995年がボランティア元年といわれるようになったのです。そうしたボランティア活動の中に、とても地味な作業を黙々と受け持ってくれる人たちがいました。
パンよりも、携帯ラジオよりも、他の何よりも感謝されたのは・・・
救援活動では、火を使えないため、調理を必要としないパンを配ってくれる製パン会社もありがたがられました。携帯ラジオを配った家電会社も感謝されました。ブルドーザーやトラックも提供されました。それぞれに役に立ち、感謝されましたが、最も感謝されたのは、避難所のトイレの清掃をしてくれた企業ボランティアでした。
避難所(学校や公民館)は、何百人が24時間生活する設計になっていない
その結果もっとも惨状を呈したのがトイレです。停電しているので揚水ができないから水が出ない。ひどくなるのは当然ですが、通電しても、すでに溢れている状態を清掃するような道具もなく、仮にできたとしても誰もやりたがらない。ところが、それを黙々と清掃して回る人びとがいました。ダスキンという会社の人たちでした。
被災3市(神戸、芦屋、西宮)111避難所の約4.6万世帯、20万人の下着を洗濯
この会社は、トイレの掃除だけでなく、避難所の人びとの下着の洗濯もしてくれました。避難所では洗濯ができない。とはいえ10日も20日も経ってくると、下着だけでも着替えたくなります。ダスキンの社員たちはこの窮状を見て、自社の6つのクリーニング工場を活用して、下着の洗濯をボランティア活動として行ったのです。
トイレ掃除も下着の洗濯も、社員から自発的に発想されたもの
会社は、大事な顧客や出張所の人びとなどの関係者を助けたいという思いから、当初は食料などの救援物資を届けるなどの援助活動を始めましたが、被害のひどさを目の当たりにして戻ってきた社員たちが、顧客関係だけでなく、もっと多くの一般の被災者を助けたい、自分たちにできることがあるはずだ、と自発的に言ってきました。
崇高な創業の理念が、最も感謝されたボランティア活動を後押しした
この会社には、「自分に対しては/損と得とあらば損の道を行くこと/他人に対しては/喜びのタネまきをすること/我も他も物心共に豊かになり/生きがいのある世の中にすること」という創業理念があるのだそうです。社員からの提案は、この理念に照らしてもっともなことだと当時の千葉社長が考え、全面的な協力を表明しました。
※:『思いやりはどこから来るの?』(日本心理学会監修/高木修&武村和久編/誠心書房)
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