察するコミュニケーションと表すコミュニケーション 「察しの文化」(10)
ウィスコンシン大学・宮本百合教授の「察するコミュニケーションと表すコミュニケーション」という研究プロジェクトに偶然Webで巡り合いました。日米の非言語コミュニケーションの違いが具体的な数値で示されており、とても説得力がありますので、「察しの文化」シリーズの最終回はこれを紹介して締めくくります。
米の文化人類学者T.ホールが唱えた「ハイ(ロー)コンテクスト文化」の検証
低コンテクスト(*)文化である欧米では、直接的で明確な言葉を用いた言語的コミュニケーションが多いのに対して、高コンテクスト文化である東洋では、間接的で周辺情報などの手がかりを用いた非言語的コミュニケーションが多いことが、文化人類学者Hallらによって示唆されてきた。
*コンテクストとは言語・共通の知識・体験・価値観などを指し、文脈とも訳される。
欧米人は非言語的コミュニケーションで「表し」、日本人は「察する」
自己を表現することが重要視されている欧米では、自らの意図や感情を他者対して明確に「表す」ことが非言語コミュニケーションの主な目的であると考えられる。一方、相手や周りに自分を合わせることが重視される日本では、他者の意図や気持ちを「察する」ことが非言語コミュニケーションの主な目的と考えられる。
ウィスコンシン大学の米国人学生と京都大学の日本人学生を対象に比較調査
すると、アメリカでは送り手が自らの感情・意図を表現できる身体的媒体(表情、振る舞い、ボディランゲージなど)が他の媒体より多く用いられているのに対し、日本では身体媒体も用いられていたものの、文脈的な媒体(場の雰囲気、体感、状況観察など)がアメリカより多く用いられていた。
日本では、場の雰囲気などの文脈的媒体で送り手の必要性を察する
これを調べると、アメリカでは約90%、日本では約50%の非言語的コミュニケーションにおいて、好意・怒り・悲しみなどの明確な感情が伝達されていたのに対して、日本の約40%、アメリカの約10%の非言語的コミュニケーションが、「時間がないので急いでいる」といった、送り手の必要性が伝達された場面であった。
従来、非言語的コミュニケーションは、欧米よりも東洋において多く用いられていると示唆されてきたが、本研究の結果に基づけば、非言語的コミュニケーションのどの側面に注目するかによって、欧米人の方が東洋人よりも非言語的コミュニケーションを多く用いる場合もあることが示唆されている。
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