相手の気持ちを察しながら「相槌」をどう使い分けるか 「察しの文化」(5)
複雑に絡む糸のような人間関係を一本一本ほぐしていくことで、日本人がどんな場合にどんな風にことばを使い分け、待遇表現を意識しているのかが見えてきます。日本語はこうした複雑な人間関係の中で、相手と自分との糸のかけ違いがないように気を配りながら会話がなされてきました。
その重要な部分は「文末の省略(文章を最後まで言わずに、最後の部分は相手に類推してもらって文章を完結するという省略の形など)」、
「話しかけの言葉(「あのう」など」、
また以下に記す「相槌の打ち方」などによるものだと言えます。
相槌の種類(一口に相槌と言っても、その意味・機能は実に多様)
(1) 受諾・・・「ええ(いいですよ)」「はい(わかりました)」
(2) 同意・・・「そうそう(おっしゃる通りですよ)」「うん(そうだね)」
(3) 誘導・・・「へえ、それで(どうなったの)(これからどうするお積りですか)」(アクセントは上昇)
(4) 疑問・・・「うーん(本当にそうでしょうか)」
(5) 助勢・・・「まったく(そうなんですよね)」
(6) 感嘆・・・「あらっ(女性)、へえっ(ほんとうですか)、うそっ(若者言葉)」
(7) 否定・・・「いやっ(違いますね)、ううん(そんなこと考えてませんよ)」
(8) 沈黙・・・間を置くことが、疑問、否定の役割を果たすことが多い。
(9) 展開・・・「それで(どうなりましたか)、それから(どうしたんですか)」(アクセントは上昇)
(10) 終結・・・「それはそれは(大変でしたね)(良かったではありませんか)」
これら多様なニュアンスを持った相槌は常に相手の気持ちを察しながら行われます。
日本語による会話では、他の言語に比べて特に相槌の回数が多いそうです。相槌を待遇関係という面で見ると、低位の者が高位の者に対して相槌を打つ回数が多いことが、テレビドラマ、小説、漫画の分析などから見てとれます。
短い言葉にさまざまな機能が込められているという点で、相槌は他者との関係がいかに交わされているかを見、他者と自己との関係をどうとらえているかを示す鍵ともなります。相手との関係が密接になればなるほど、相槌の回数も多くなるという観察もあり、興味深いところです。
※:参考文献:『世界のなかの日本型システム』(濱口惠俊編著/新曜社)
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