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2014年11月 6日 (木)

訪問先で「今ちょっと出ておりますが…」と言われたら 「察しの文化」(3)

前回に引き続き、金田一家親子の「春彦・秀穂 ニホンゴ対談」からの抜粋です。
今回のテーマは、相手が外出中に訪問して、留守番をしている人から「今ちょっと出ておりますが…」と応対されたとき、日本人だったらどのように対応すべきかというお話です。一見簡単そうで、実はとても奥行きのある内容となっています。

秀穂 それにしても、「察し」、というのは、深いですね。
春彦 芳賀綏(やすし)さんが言われたように、日本語には相手の気持ちを覗き込むことを表わす語彙が多いです。
察する、推し量る、勘ぐる、見定める、見透かす、気を廻す、見抜く、見破る、見て取る……。
一人の日本人が外出している時に、誰かが訪問してきたとします。留守をしていたものはどう言うでしょう。「今ちょっと出ておりますが、もうそろそろ帰ってまいりますから、しばらくお待ちくださいませんか」。
考えてみるとずい分不親切なものの言い方で、「ちょっと出ている」と言って、何分ぐらい出ているのかよく分からない。「そろそろ帰ってくる」「しばらくお待ちください」と言って、これまた文字の上だけからは見当がつかない。が、そのときに、「しばらくとおっしゃいますが、何分ぐらいですか」と質問するお客がいたら、それは頭の悪い軽蔑されるべき人間です。(中略)

「しばらくお待ちを」と言われたお客は、日本人ならばここで考えなければならない。中へあがって帰りを待つべきか。もう一度その辺りを散歩して再び訪問すべきか。それともはっきり諦めて、またの日を期すべきか。
秀穂 それはまた、難しそうですね。

春彦 それを決定する資料は、まず留守番の人の表情、身振りです。当惑しているか、歓迎している様子か。またその言葉の調子が急速ならば、すぐ帰ってくるだろうし、ゆっくり間延びした調子なら、帰りは遅いと見るべきか。それから、その外出している人のふだんの行状、その辺りの散らかり具合、それから時期、あらゆることを考えにいれて、自分のすべき行動を決定することが、日本人の生活でした。

●上段の太字部分は、9つあるとされる非言語メディア*に該当するところです。表情、身振り、様子は「動作」、言葉の調子は「周辺言語」「沈黙」、時期は「時間」に当てはまるでしょう。金田一春彦氏は比類なき言語学者でありながら、これらの非言語情報を読み取れなければ、察しの国の文化人とはいえないと指摘していらっしゃるのですね。
*他の非言語メディアは「人体」「目」「身体接触」「対人的空間」「色彩」。

参考文献:『『金田一家、日本語百年のひみつ』(金田一秀穂著/朝日新聞出版)

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