なぜ私たちはいつも時間がないと感じるのか?(後編) 美しいセオリー(2)
(前編の学部生128人に対する調査結果を踏まえて。なお太字は山本判断)
学生たちに裕福だと感じさせるだけで、本当に裕福な人々が述べているのと同じ、時間がないという感覚を持たせることができたのだ。他の方法を用いて、研究者たちは、時間の経済的価値を増大させると、時間が足りないという感覚も増大させることができることを確認した。
時間が足りないという感覚が、時間が非常に価値の高いものだという感覚の一部であるならば、この時間がないという感覚を減らす最良の方法の一つは、時間を無駄にすることだろう。実際、新しい研究によると、他者を助けるために時間を使うと、時間が足りないという感覚が減るらしい。
ホーム・デポのような会社は、従業員に、他者を助けるボランティア活動に使う時間を与えることによって、時間に追われているという感覚と燃え尽き症候群を潜在的に減らそうとしている。そして、グーグルは、従業員たちに、それがお金になるかどうかに関係なく、自分の時間の20%をペットと過ごすことに費やすように勧めている。
これらの試みのいくつかは、Gメールのように、経済的な産物を実際に生み出してもいるが、こういった試みの最大の価値は、時間が足りないという従業員達の感覚を減らすところにあるだろう。
デヴォーとフェイファー(プロフィールは前回参照)の研究は、重要な文化的トレンドを説明する役に立っている。この50年ほどで、北アメリカでは、1週間の就業時間はほぼ横ばいで、1週間のレジャーの時間はどんどん増えてきたにもかかわらず、時間が足りないとうい感覚が劇的に増加してきた。
この一見したところ逆説的な結果は、この同じ50年間に、収入も劇的に増加したことと、おおいに関係があるだろう。この因果関係は、東京やトロントのような高収入の都市では、なぜ、ナイロビやジャカルタのような都市でよりも、人々が早足で歩くのかをも説明するかもしれない。
そして、個人のレベルでは、この説明は、人生で収入が増えるとともに、どんどん時間が足りないと思われるようになることを示唆している。
本稿筆者:エリザベス・ダン(社会心理学者、ブリティッシュ・コロンビア大学)
出典:『知のトップランナー149人の美しいセオリー』(青土社)
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