いいアイディアを生み出す方法 美しいセオリー(3)
いいアイディアを生み出すのに、人間である必要はない(太字は山本判断)
あなたが魚でもかまわない。ミクロネシアの浅い海域に、小魚を食べる大きな魚がいる。小魚は泥の中の巣穴に住んでいるが、餌を食べるときはわらわらと出てくる。大きな魚は小魚を1匹ずつ平らげようとするが、食べ始めたとたん、小魚たちはさっさと巣穴に戻ってしまう。さて、どうしたものか。
私はもう何年も授業でこの問題を出しているが、私の記憶が確かなら、大きな魚と同じ名案を考え出した学生はたった1人しかいない。(中略)
エレガントなやり方はこうだ。小魚の群れが出てきたら、一飲みにするかわりに、海底を泳いでお腹で泥をならし、逃げ込む巣穴をふさいでしまう。これで食べ放題だ。
ここから何を学べるだろうか。いいアイディアを思いつくには、ダメなアイディアは捨てることだ。秘訣は、簡単で明白だが非効率なやり方を封印して、よりよい解決法が降りてくるようにすること。これがはるか昔、突然変異と自然淘汰の何かの作用を通じて、大きな魚に起きたことなのだ。
早く食べるとか、一口を大きくするといった、当たり前の発想をこねくり回すのはやめて、プランAを捨てれば、プランBが浮かんでくる。あなたが人間なら、2つ目の解決法もうまくいかなければ、それも封印して待ってみよう。3つ目が意識下に現れ、そのまた次が現れ、やがては難攻不落の課題も解決できる。たとえその過程で、直感的に明らかな前提のほとんどを封印しなければならないとしても。
いいアイディアは、ヒト以外の生物種の進化の中にも溢れかえっている。というより、大半とは言わないまでも、多くの生物種は、うまいアイディアや策略なしには存続し続けられなかったのだ。もちろん、アイディアを生んだ文脈から原理を推論し一般化することは(一部の)ヒトが前頭前野を駆使してできるようにはいかないだろうが。
最高の頭脳を持つ者たちが何十年、何百年と挑み続けても古典的課題を解決できないのは、彼らが文化的にあまりに根深い前提に囚われていて、それを覆すことを思いつきもしないか、あるいはそもそも前提の存在にすら気づかないからだろう。だが、文化的文脈は変化する。
昨日まで当たり前に思えたことが、今日や明日には、控え目に言っても疑わしく見えてくる。遅かれ早かれ、先人と比べて決して才能に恵まれているわけではないが、根本的に間違った前提という枷を持たない誰かが、あっけなく解決法を思いつくだろう。
本稿筆者:マーセル・キンズボーン(ニュースクール大学教授:心理学) 出典:『知のトップランナー149人の美しいセオリー』(青土社)
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