「評判」が人に互恵的利他行動を起こさせる? 利他学(3)
私たちはしばしば、お返しができない相手に対しても利他行動を行います。前出のトラック運転手と子ども連れは初対面であり、その後も顔を合わせることはありませんでした。これを取り上げた放送局が運転手をつきとめて取材を申し込みましたが、「当然のことをしたまでだから、取材は勘弁してほしい」と言われたそうです。
情けは人のためならず
お返しが確実でなければ互恵的利他行動は成り立たないはずなのに、なぜ人はこのようなことをするのでしょうか。その答えは、「情けは人のためならず」ということわざにあると筆者。なお、このことわざは、情けをかける、つまり他人を助けることは、その人のためではなく、廻り回って自分のためになるのだ、という意味でしたね。
たしかに人間社会においては、助けてあげた相手から直接ではなく、まったく別の人から間接的にお返しがあることがあります。これを、「間接互恵性」と呼びます。
あるラジオ番組が紹介した投書があります。車でショッピングセンターに出かけたのはいいのだが、買物を終えて屋外の駐車場に戻ろうとすると、突然雨が降ってきた。
あいにく傘は持っていないが、ずぶ濡れになるのはいやなので、しばらく待っていると、ある人が傘を指し掛けてくれて、一緒に車のところまで行きましょう、と言ってくれた。その親切さに感動したので、今後は自分もそういう人を見かけたなら同じように傘を差し掛けよう、と決心した。
これはまさに間接互恵性の一例だといえます。傘を差し掛けた人は直接お返しをもらったわけではなく、傘を差し掛けられた人のお返しは第三者に向かっているのですが、このようないわば親切の輪が廻っていけば、最終的には傘を差し掛けた人に何らかのかたちで利益が戻ってくるかもしれません。
しかし、文明以前の小さな集団ならともかく、現代の文明社会にみられるような大きな集団で、そのように廻り回ってお返しがくることがありえるでしょうか。そこで注目されているのが、「評判」なのです。
進化生物学者リチャード・アレグザンダーは誰かにした利他行動に対し、たとえ本人から直接的なお返しがなくても、それを見ていた第三者によって、「あの人は親切な人だ」という評判がたてば、その後のやりとりで利他的に振舞ってもらえるだろう、ということを提唱しました。そうすれば、利他行動は十分に報われたことになります。
参考文献:『利他学』(小田亮著/新潮社)
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