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2015年2月22日 (日)

視線を感じると人は利他的行動を取る 利他学(4)

2人の米国の心理学者が大学生に実験室に来てもらい、独裁者ゲームに参加してもらいました。パソコンの前に座った参加者には、分配者(独裁者)かあるいは被分配者のどちらかの役割が割り振られます。分配者には、実験者から与えられる10ドルの中から、1ドル刻みで好きなだけ被分配者に分配するようにとの指示が与えられます。

4グループに分け、独裁者ゲームを行うと
分配者をパソコンの画面上に、「ホルスの目(古代エジプトのシンボル)」が2つ表示されている、同じ位置に単に文字が表示されているグループに分けます。もうひとつの条件としてヘッドホンをする、しないのグループ分けもしました。これらの4つの組み合わせにそれぞれ、20人強の分配者が割り振られました。

ホルスの目が2つあると1.5倍も気前がよくなる
さて、相手に対する分配額をそれぞれの条件で比べてみると、いちばん分配額が多かったのが、ヘッドホンなしで、目の絵がある条件でした。平均して3.79ドルが相手に分配されました。一方、ヘッドホンなしで、目の絵がない条件では平均2.45ドル。これらのあいだには、統計的に意味のある差がありました。

「目」だけのポスターには盗難を防止する力がある!
つまり、この差は偶然ではない、ということです。同じ目の絵がない条件でヘッドホンをした場合の分配額は2.32ドルであり、どうやら外界の音が聞こえているかどうかは分配額には影響しないようでした。しかし、目の絵のあることによって、分配額は増えました(この現象は、目のポスターを貼ると盗難防止に役立つことに共通する)。

なぜ目があると利他的になるのか?
この実験から、目の絵があることが利他性を高めるということが分かりました。つまり、人間には自分の方を向いている目をみると利他性が高まるという「しくみ」があるということなのです。では、なぜそのような「しくみ」があるのでしょうか。そこで考えなければいけないのが「機能」の問題です。

その鍵になるのは、「評判」ではないかと考えられている
前号で述べたように、お返しが期待できないような赤の他人への利他行動は、間接互換性によって維持されていると考えられます。そのためには、利他行動のやり手がよい評判を得ることができなければならなりません。そこで、他人の目があるときにはより利他行動をする、という「しくみ」が進化したのではないかというわけです。

参考文献:『利他学』(小田亮著/新潮社)

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