貴族の館には小型のクローゼットしかない!? 10着のワードローブ(2)
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ホームステイの初日、マダム・シックとムッシュー・シックは揃って出迎えてくれた。紅茶を飲み終えると、マダム・シックが声をかけてくれた。「夕食前にお部屋で一息つきたいでしょう。案内するわ」。この瞬間をわたしは心待ちにしていた。こんなに美しいアパルトマンだから、わたしのお部屋もさぞかし……と期待が高まった。
お部屋はとても素敵だった。シングルベッドには緑のベルベットのカバーが掛けられ、天井まで届く大きな窓の両側には草花模様のカーテンが掛かり、窓からは絵のように美しい中庭を眺めることができた。勉強にちょうどいい大きさの机もあり、小型のクローゼットもあった。
え、ちょっと待って。小型のクローゼット?
それまでは何もかも順調だったのに、突然、頭が真っ白になりそうになった。思わず、荷物で膨れ上がった大型の2つのスーツケースに目をやった。
これがクローゼットなの?
クローゼットの扉を開くとハンガ_ーがいくつか下がっているだけだった。わたしはとうとうパニックした。こんな狭いところに半年分の服を全部しまっておけというの? うそみたいだけど、どう考えてもそうにちがいなかった。
やがてすぐにわかったのだが、この家の人たちには、これくらいの小さな収納で十分だったのだ。というのも、各自10着くらいのワードローブしか持っていなかったから。ムッシュー・シックも、マダム・シックも、息子さんの、持っている服はどれも上質なものばかりだったけれど、彼らは同じ服をしょっちゅう繰り返し着ていた。
たとえば、マダム・シックの冬用のワードローブは、ウールのスカート3~4着に、カシミアのセーターが4枚、シルクのブラウスが3枚(パンツはめったに穿かなかった)。ムッシュー・シックのワードローブは、グレーのスーツ2着、紺のスーツ1着、セーター2~3枚、シャツが4枚、それにネクタイが2~3本。
最小限のワードローブで事足りる家庭は、パリではめずらしくなかった
悩んだあげく、他の家庭にホームステイしているアメリカ人の留学生にも訊いてみたところ、やはりみんなの部屋にも大きなクローゼットはなかった。ということはフランス人はクローゼットが狭いから10着のワードローブしか持っていないのだろうか? それとも10着しか必要ないから、狭いクローゼットでも十分なのだろうか?
参考文献:『フランス人は10着しか服を持たない』(ジェニファー・L・スコット著/大和書房)
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