生きるために欠かせないメモとは ビジネスに欠かせないメモ術(10)
メモシリーズの最後は、生きるために必要な「メモ」についてです。今回メモシリーズを書こうと思い立ったのは、新入社員研修の時期もありましたが、もうひとつの要因に、『ぼくは物覚えが悪い』という本を読み、とても感動したからでした。とはいっても、メモに関しては最後の方に2度出てくるだけなのですが・・・。
精神医学史上に大きな足跡を残したヘンリー・モレゾン
1953年、てんかん治療のための脳手術から目覚めた27歳のヘンリー・モレゾンは、別の深刻な障害を負っていました――手術後に新しく経験した出来事をなにひとつ記憶できなかったのです。こうして重度の健忘症患者となったヘンリーは、永遠に「現在」のないなかに閉じ込められてしまいました。
しかし誰が予測したでしょう、やがてあまたの医師がこの不幸な、しかし精神医学史上に珍しい患者に注目し、彼の脳とその症例があらゆる方向から精査され、ひとつの医科学分野を根底から刷新することになろうとは。この本は、研究者として彼に40年以上寄り添った神経科学者自身が余すところなく描いた、驚きと感動の実録です。
ヘンリーの生活習慣を規則正しいものにした「メモ」
ヘンリーは夕方には、フカフカの肘掛け椅子に座ってテレビを見たり、クロスワードパズルを解いたりしました。へリック夫人(看護師資格を持った親族)が「9時半には消すこと」というメモをテレビに張り付けておいたので、ヘンリーは必ずこれを守りました。9時半から10時には自ら進んで床についたのです。
彼は両親や親せきを認識し、学校の友だち、住み暮らした家々、一家で過ごした休暇は覚えていました。学校で学んだ歴史上の出来事は思い出せたし、語彙も豊かで、歯磨き、ひげ剃り、食事など日常の細々としたことはこなせました。しかし、1977年に彼の唯一の支えだった母親が入院後に亡くなってしまいます。
2枚の「メモ」がヘンリーの心の不安を解き放ってくれていた
母親がいない理由を知らない(今日が何日か、朝食に何を食べたか、数分前に話した内容を思い出せない)ヘンリーは、彼女がいない状態に慣れるのに苦労しました。彼はよく両親はいつ会いに来てくれるのかと尋ねました。その年の暮れ研究所のあるメンバーが、彼が2つのメモを書いて財布に忍ばせているのに気づきました。
一方のメモには「父さんは死んだ」、もう一方には「母さんは老人ホームにいるけど元気だ」と記してありました。へリック夫人に促されたのか、あるいはこれらのことを聞いたときに自分で書いたのかは不明ながら、このメモがあったおかげで、彼は両親の所在がわからないという不安から逃れることができたのでした。
参考文献:『ぼくは物覚えが悪い』(スザンヌ・コーキン著/早川書房)
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