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2015年6月28日 (日)

どうして日本はノーベル賞学者を輩出できるのだろうか  文明と文化(2)

現存する5文明(前出)に、ロシア正教文明とラテンアメリカ文明、それにあるいはアフリカ文明を加えると、いまの世界のわれわれの目的にかなっている、とハンチントンはまとめています。さて今回は、本ブログが「文明と文化」を書くきっかけになった益川教授(2008年ノーベル物理学賞受賞)にとっては珍しい「海外体験」から。

西欧文明を母国語で取り込んだ日本(下記参考文献より、極力忠実に転載)
なぜ日本人は英語で科学をしないのか? なぜ日本人は日本語で科学するのか? 
その答えは明快だ。英語で科学する必要がないからである。私たちは、十分に日本語で科学的思考ができるからである。益川敏英博士も、朝日新聞「耕論」欄において、英語入試改革に関するコメントの中で次のような意見を表明されている。

2014年11月26日付朝日新聞「耕論」欄より
「ノーベル物理学賞をもらった後、招かれて旅した中国と韓国で発見がありました。彼らは、『どうやったらノーベル賞が取れるか』を真剣に考えていた。国力にそう違いはないはずの日本が次々に取るのはなぜか、と。その答えが、日本語で最先端のところまで勉強できるからではないか、というのです。
自国語で深く考えることができるのはすごいことだ、と。
彼らは英語のテキストに頼らざるを得ない。なまじ英語ができるから、国を出ていく研究者も後を絶たない。日本語で十分間に合うこの国はアジアでは珍しい存在なんだ、と知ったのです。」(これ以降の文章は2015年6月29日の補足資料にて)

日本人は特に150年前の江戸時代末期に、集中的に必死になって西欧文明を取り入れた。概念そのものが、それまでの日本文化に存在しないものも多かった。そこで、言葉がなければ新たに言葉を作ったりしながら、学問や文化や法律などあらゆる分野について、近代としての日本語(知識)体系を作り上げてきたのである。
そのような新しい日本語を使って、現在の日本人は、創造的な科学を展開しているのだ。だから、基本的に、英語で科学をする必要がないのである。先人に感謝しても、しすぎることはないだろう。

●21世紀に入って、ほぼ毎年のようにノーベル賞を日本の科学者が受賞してきましたが、日本語で科学することが可能な環境がその助けになっていたということなのですね。自らの文化(言語)で文明(科学)の進歩に貢献できるとしたら、それは確かに文明といえるでしょう。『文明の衝突』を読んで17年、ようやくにして納得です。

参考文献:『日本語の科学が世界を変える』(松尾義之著/筑摩書房)
参考資料:『朝日新聞』2014年11月26日「耕論」

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