「正しく考える方法」はどうすれば身につけられるか? 文明と文化(10-2)
日本を例にとって考えてみましょう。日本は直系家族類型です。あるいは少し前までは直系家族でした。そのため、この直系家族の考え方、メンタリティーが強く残っていて、私たちの意識を規定しています。どんなふうに規定しているかというと、一つは「自分の頭で考える」ということをしないということです。
日本社会に、いまでもあい変わらずあるかもしれない直系家族の特徴
直系家族の特徴は、自分の頭で考えなくとも、だれかほかの人が考えてくれるという点にありました。「この学校があなたに一番向いているから…」「この会社がいいから…」「この人と結婚するのが一番いいから…」と、そんなふうに、父母が人生の大事なところまで全部決めてくれ、言う通りにしていれば、それでよかったのです。
では、こうした直系家族の国では、父母はいったいだれからそうした「正しい考え方」を教えられてきたのでしょうか? お父さんの親、お母さんの親からです。つまり、先祖代々、伝えられてきたことを次世代に伝えるという形を取ってきただけで、だれも自分の頭で考えたことはなかったのです。
直系家族の国に新ビジネスは生まれにくいがプロフェッショナルは輩出
このようにして、それぞれの家の伝統(文化)を守り継承してきているため、直系家族の国は、伝統墨守のタイプが多く、突飛な考え方やとんでもない考え方というのは生まれにくいのが普通です。その代り、技を後世に伝えるようなことは得意で、ドイツならマイスター、日本なら匠ということになります。
『ロビンソン・クルーソー』は核家族類型の国でしか生まれない物語
これに対して、核家族類型の国というのは、親と子どもの関係が権威主義的ではなく、子どもは自分を守るために自分の頭で考えることを学びます。こうした核家族類型の思考法の典型がデフォーの『ロビンソン・クルーソー』です。無人島でサバイバルするため、自分の頭で考えて行動するのは核家族類型の子どもと同じ立場なのです。
「自分の頭で考えるな」と親や先生から言われ続けてきた日本人
ところが、長い間、直系家族でやってきた日本人は、この「自分の頭で考える」ということ、つまり、リスクとベネフィットを秤にかけながら短期的ではなく長期的に見て何かが一番自分にとって得になるかを考えることが苦手なのです。それは、「自分の頭で考えるな」と周囲から言われ、その方法を教えてもらっていないからです。
参考文献:『進みながら強くなる』(鹿島茂著/集英社)
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