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2015年7月20日 (月)

「文明」は都市と密接に結びつき、「文化」は土地と深く関連する(中略部分&前後) 2015年7月19日 木の葉ブログ500回特集「文明と文化(8)」補足資料

(前出)civilizationという言葉がラテン語のcivilis(都市民の)に由来することからも明らかなように、「文明」は当初から都市と密接に結びついていた。文明は都市の誕生とともに始まる。都市の発達が文明をもたらしたと言ってもいい。「耕す」という意味を持つ言葉から派生した「文化」が、それ故に土地と深く関連しているのと対照的である。

(中略部分)都市には多くの人が集まる。それもさまざまな土地からやってきた人々である。限られた地域内で成立する社会、たとえば農村共同体のような社会では、その成員はいずれも顔見知りの仲間である。だが都市では事情が異なる。都市を構成するのは、見知らぬ他人同士である。その他人同士の間で安定した社会を作り上げるために、明確な法や規則が定められ、諸々の設備や制度が整えられ、交際の儀礼や作法が成立する。すなわち文明の誕生である。つまり文明は、当初から限られた地域の枠を越えて拡がる性向を持っていた。普遍性への志向は文明の大きな特質なのである。

それに対して、土地に根ざした「文化」は、それを生み出した地域社会に固有のものという性格を強く持つ。文化はそれぞれの地域の風土と歴史に養われるからである。というよりも、風土的条件と歴史の積み重ねによって形成された習俗、価値観、行動様式などの総体およびその所産を「文化」と呼ぶのである。文明が横に拡がるのに対して、文化は縦につながる。
「地域文化」ということがしばしば論じられながら、「地域文明」という言い方がないのは、そのためである。同様に、地域のみならず、何らかの意味で限定された社会集団が、他の社会集団から区別された独自の価値観や行動様式をもつ時、それは「文化」となる。「若者文化」とか「企業文化」と言われるものがその例である。ここでも文化はその社会集団の枠を越えることがない。したがって、「若者文明」や「企業文明」は成り立たない。

(前出)ひとつだけ単純な例をあげるとすれば、・・・(省略)・・・それぞれの国の文化的特色が強く表れるのである。

(後略部分)文化がそれほどまで強固な固有性を保持するのは、それが人々の帰属感を強め、統合を確立し、自己確認を保証してくれるからである。ある社会、ないしは社会集団のアイディンティティは文化によって保たれる。それだけに、異なった文化の登場、あるいは介入は、しばしば自分たちの存在自体を脅かすものと受け取られる。それが車のデザイン程度のことならまだいい。ただより高度な精神的価値、たとえば宗教にかかわる問題になると、時に深刻な結果をもたらす。キャプテンクックの悲劇はまさしくその例であろう。端的に言って、この航海者は異文化に殺されたのである。
『本の遠近法』より

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