食事だけは個人主義というのが日本の伝統であったらしい 2015年7月26・27日 木の葉ブログ500回特集「文明と文化(10)」補足資料
直系家族で育った日本人には食事の仕方に特徴があります。他の多くが集団主義傾向が強いのに対し、食事だけが個人主義だというのです。その反対に、個人主義的なアメリカ人たちの食事の仕方は、会話を楽しみながら一緒に食べ終えるという協調性がみられるというのです。このような興味深いお話を下記参考文献から。
日本人はお箸に合う料理を好む。供託される料理が、すでに食べやすい大きさに切ってあれば、大皿から取り分けることもなく、はじめから銘々のお皿に盛られる。そして箱庭のように、こまごました料理がお膳の中に収められているのが日本料理であった。幕の内弁当は、その象徴的なものであろう。
初めから多くの料理を見せてしまう日本料理のような配膳を専門家は「空間展開」とよぶ。視覚にうったえる日本料理は絵画(空間芸術)のようである。これに魯山人の食器でも使われれば、料理は目で味わうものになる。これに対して、一皿一皿、目の前にあるものから片付けていく食べ方を「時系列型(片づけ喰い)」というそうだ。
“片づけ喰い”のアメリカ人と、 “つつき散らし喰い”の日本人が連れだってバイキング・レストラン(食べ放題)に出かけた友人の話である。アメリカ人のお皿には少量、日本人のお皿にはアレもコレもと満載の料理。(反対じゃないか)と友人が思ったのは初めだけだった。アメリカ人は何回か席を立って料理をとりに行ったが、終わってみれば彼らのお皿はきれいなもの、日本人のお皿には残りものが一杯あったという。
欧米人の食事が時系列だというのは、おもに肉食のせいでもあろう。卓上でナイフとフォークを操って硬いものを食べる。あるいは大皿に盛り付けてあるものを回してもらって自分でよそう。それには時間がかかり、間ができる。そこに会話が入るのだ。一緒に食事をしている人とテンポを合わせて、同じころに食べ終える。これが個人主義の欧米人の食べ方である。
一方、間なしですすめられる食事が米食パターンの日本人の空間展開型である。共食していても食べ終わる時間はマチマチだ。お米を神聖化したために「食事中おしゃべりをしないで!」といわれ続けてきた習慣もあろうが、日本人は黙々とマイペースで食事を摂るのである。
よくいわれている「個食」や「孤食」は、いまに始まったことではないであろう。箱膳だった昔は、家族揃った食事でも、家長怖さにそれぞれが押し黙って食べる「個食」だった。共食の食卓でそれぞれ違ったものを食べるのも「個食」である。
また、家族が揃わず、食べるものもバラバラだという「個食」「孤食」を強いられる子供の食事は“子食”か。年端のいかない子供がひとりで外食(戸食)するさまはゆゆしき問題だと思う。
食事だけは個人主義というのが日本の伝統であったらしい。
「食」の文化と文明シリーズ 『箸とフォーク』(宗仕雅子著/三嶺書房)より
なお、2013年9月22日 (日)に「国が変われば食事のマナーも変わる、そして日本でも地域によってこんな違いが…」を掲載していますので、ご参考まで。
http://leaf-wrapping-lw.cocolog-nifty.com/blog/2013/09/post-214d.html
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