東西文明の違いをヒントに大発見をした日本人 文明と文化(7)
花王のアタックについては2010年1月30日(*)に取り上げていますが、そのアタックの深~い誕生秘話が参考文献(※)に登場しますので紹介します。この製品は洗剤市場の永遠のベストセラーであると同時に、その小型パッケージはグローバルスタンダードになりました。画期的なその製品を生んだ東西文明の違いとは…。
1987年、日本から粉せっけんの大革命が起こりました。現在のようにコンパクトになって、しかもスプーン一杯ほどできれいに洗える洗剤「アタック」が新発売されたのです。ここにはアルカリセルラーゼという酵素が含まれており、それを発見したのが、当時理化学研究所主任研究員の堀越弘毅博士でした。
1968年36歳の堀越博士はフィレンツェの丘の上で天の啓示を受ける(*)
「・・・暮れかかるトスカーナ地方の秋をぼんやりと眺めていた。そこには、日本とはまったく違った、過去と現在とが融けあったようなルネッサンスの世界があった。ルネッサンスの文明は日本の文明とは明らかに異なっている。
14~15世紀といえば、日本では室町時代である。室町時代の日本人は、このようなルネッサンス文明の世界というものを、想像することさえできなかったであろう。その時ふと脳裡に閃いたものがあった。」
その閃きとは、「人の世界にはこのような環境に強く支配された異なる文明があるのだから、微生物の世界にも、きっとわれわれがまったく知らない世界、知られていない世界があるのではないか。」このようにして、堀越博士は、東西文明の違いから、当時の微生物学に欠落していた世界に気がついたのでした。
閃きを得て、いても立ってもいられなくなった堀越博士は大至急帰国し、理化学研究所周辺の和光市の土壌を採取しました。普通の肉汁培地に1%の炭酸ナトリウムを加えてアルカリ性環境にして、そこに30カ所ほどの土を少しずつ加え、37°Cで一晩培養しました。すると翌朝、すべての試験管の中で微生物が生育していました。
これまでのパスツールやコッホの常識・概念を完全に引っくり返し、アルカリ環境という世界にも生物が存在していることを、人類がはっきりと確認した瞬間でした。表の世界に対する裏の世界、西に対する東の世界、それが存在することが確認されたのでした。そして20年後に花王開発陣の快心作「アタック」が誕生したのです。
参考文献:『日本語の科学が世界を変える』(松尾義之著/筑摩書房)
※:『極限微生物と技術革新』(堀越博士の自叙伝/白日社) *:http://leaf-wrapping-lw.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/index.html
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