現代文明は「自動車」を通して語られることが多い 文明と文化(8)
(「日経WagaMaga」「自動車」第4回)に平井敏彦氏の興味深い記事がありました。「自動車における文明はA地点からB地点まで、いかに早く快適に行けるかを追求して作り上げたもの。一方、文化はその区分をいかに楽しく進むかがポイント」というものです。この記事をヒントに今回は、自動車にまつわる文明・文化論です。
「文明」は都市と密接に結びつき、「文化」は土地と深く関連する(※1)
civilizationという言葉がラテン語のcivilis(都市民の)に由来することからも明らかなように、「文明」は当初から都市と密接に結びついていた。文明は都市の誕生とともに始まる。都市の発達が文明をもたらしたと言ってもいい。「耕す」という意味を持つ言葉から派生した「文化」が、それ故に土地と深く関連しているのと対照的である。
ひとつだけ単純な例をあげるとすれば、機械文明は西洋社会が生み出したものだが、文明であるが故に西欧だけに限らず、いまでは地球全体に拡まっている。その成果のひとつである自動車は、アメリカでも日本でも中国でも同じように造られ、同じような性能を示す。
だが、車体のデザインとか色彩とか、あるいは乗り心地といった感覚的価値に関する点になると、ヨーロッパのなかだけでも、ドイツ車は重厚だとか、イタリア車は軽快だといったお国柄が見られる。それぞれの国の文化的特色が強く表れるのである(中略。なお中略部分は、翌日の補足資料とします)。
BMW会長が日本車(大きなカローラと総称)に抱く嫌悪感(※2)
(BMW会長のフォン・クーエンハイムが日本車批判をしていることについて、階級を重んじるヨーロッパの高級車産業では)どうしても日本車に対する嫌悪感がむきだしになる。日本の高級車は、高級車とは名ばかりで、結局は「洗練された大きなカローラ」じゃないか。料理でいえば(マクドナルドのような)ファースト・フードに毛が生えた程度のものじゃないか。俺たちの作っている車はそれとは全然違うんだ、伝統が違うんだ、格が違うんだというのが会長(BMW会長)の言い分である。
車にも共通する海外進出と地域文化との軋轢(※3)
かつて20年ほど前に、親日的であるといわれてきたタイ(ばかりではなかったが)で日本製品の不買運動が巻き起こったことがあった。その時タイの人々の間に聞かれた次のような若い学生の意見を私は忘れられない。
「欧米の連中も、自国の製品を押しつけるが、やり方は不親切だ。買え、買えない? それじゃあしょうがない。そこまでだ。それに比べて、日本の連中は“親切”だ、購買力が不足している? では長期の割賦でいいです。それでもだめ? じゃ工場を建てましょう、そこで働いてください、給料も高く払います、それで買うことができるようになるでしょう。こうして日本製品を結局買わされ、われわれの伝統的な生活が一つひとつ壊されることになるんだ」。
※1:『本の遠近法』(高階秀爾著/新書館)
※2:『やがて哀しき外国語』(村上春樹著/講談社)
※3:『文明の中の科学』(村上陽一郎著/青土社)
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