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2016年2月

2016年2月28日 (日)

原因の時間的先行 因果関係の向きを問う

「風が吹けば桶屋が儲かる」は本当か 『原因を推論する』より(4)
見出しのことわざは『大辞林』によれば、「何か事が起こると、めぐりめぐって意外なところに影響が及ぶことのたとえである」とされています。このたとえ話は、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』に登場し、落語でも有名になったものです。ただし、そこでは桶屋ではなく、箱屋が儲かるとなっています。

「わしが江戸にいたある年のことだったが、夏の初めから秋にかけて、やけに強い風の吹いたことがあったんですよ。で、この風から金儲けを思いついたてわけね。」
「風と金儲けねえ……。」
「で、まず箱屋を始めた。重箱、櫛箱……まあつまり、あらゆる箱を売ろうというアイデアだね。」
「よくわからねえなあ、風が吹いたから箱屋をやって儲けるのかい。」
「つまりね、風が吹けば砂ぼこりが立ちますわなあ。」
「砂ぼこりが立てば、それが人の目に入ることになる。」
「なるほど。」
「すると、目を悪くする人がたくさん出る。」
(中略)
「ねずみが大暴れして、世間の箱という箱をかじるでしょ。そこで箱を売り出せばですね、めちゃくちゃ売れるんではないかと。」
「はあ、それで売れましたか。」
「いや、さっぱり売れなかった。」 『村松友視の東海道中膝栗毛』より

現在では猫の皮が高価になり、三味線の胴には代わりに犬の皮が張られることが多くなりました。この因果関係の連鎖を成り立たせる前提は、もはや存在しません。しかし、それはともかく、この因果関係の連鎖を信じて勝負に出たこの語り手は、結局事業に失敗して巡礼に出ることになったというお話になっています。

丸山健夫氏は話を「8事象」7ステップ(→)に整理し成功確率0.8%と推定
「風が吹けば桶屋が儲かる」が想定する因果関係の連鎖は、「強風」→「大気中の砂塵増加」→「失明する人の増加」→「三味線の需要増加」→「猫の減少」→「ねずみの増加」→「桶の損傷件数増大」→「桶屋の売上増」
各ステップがそれぞれ成立する確率を、相当大きめに見て50%とします。その場合、このすべてのステップが成立するのは、2分の1の7乗となり、それは0.0078125となり成功確率は0.8%を切ってしまいます。

※:『原因を推論する』~政治分析方法論のすすめ~(久米郁男著/有斐閣)

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2016年2月25日 (木)

説明の枠組み 原因を明らかにするとはどういうことか

『原因を推論する』より(3)
アメリカの大統領選挙では背の高い候補者の方が勝つ確率が高いと、以前当ブログで書いたことがあります(*)。また、これは人から聞いた話ではあるのですが、歴代のローマ法王も当時の基準からすると圧倒的に背の高い方が就任なさってきたとのこと。あまり背の高くないブログ筆者としては気になるテーマなので取り上げました。

高身長は得か?
身体的特徴と所得の関係は、人々の関心と興味を引き付けてきました。中でも、身長と所得や出世の関係については、ずいぶん昔から関心が寄せられています。身長と労働市場での成功の関係についての実証研究には、百年近い歴史があります。1915年には、ゴウィンが身長の高い人ほど出世しているという調査結果を報告しています。

アメリカでの最近の研究は、この点について対立しています
アメリカでは、16歳時点で背が高い子どもは高校のスポーツクラブなどに参加することが多くなり、そこでコミュニケーション能力といった「人的資本」を身に付けることになる。この結果、将来の所得が高くなるという因果関係を、彼らは推論しているのです(Persico et al.2004)。

所得に関係するのはコミュニケーション能力か、それとも認知能力か
これに対して、アン・ケースとクリスティナ・パクソンは、同誌において、背の高い子どもほど高い認知能力を持っているという関係を強調し、身長が原因ではなく認知能力が真の原因であることを主張しています(Case & Paxson 2008)。ここでは、まさに身長と所得との間の「共変関係」が、真の因果関係を示しているのか、単なる偽りの相関であるのかが争われているのです。

日本では、身長自体が所得に影響している可能性は低い
なお、この身長プレミアム研究を簡潔に紹介している大竹文雄氏の『経済学的思考のセンス』には、大阪大学21世紀COEプログラムアンケート調査を利用した日本での研究結果が紹介されています。
それによれば、日本における身長プレミアムは、学歴、勤続年数、企業規模に加えて、親の学歴や育った家庭の生活水準までコントロールした上で、1cm身長が高くなることによって0.5%(統計的には本当はゼロかもしれないというレベル)時給が高くなる程度だといいます。
統計的有意性という基準に従って考えると、この調査結果は日本では、身長自体が所得に影響している可能性は低いことを示しています。

※:『原因を推論する』~政治分析方法論のすすめ~(久米郁男著/有斐閣)
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2016年2月21日 (日)

先頭打者を四球(フォアボール)で出すくらいなら打たれた方がましなのか

専門的な話を解りやすく伝える技術 『原因を推論』するより(2)
参考文献の著者によると「政治を話題として議論がなされるとき、そこには二種類の議論のなされ方がある。一つは何が正しいかをめぐる規範的な議論、もう一つは、実際にはどうなっておりなぜそうなっているかをめぐる経験的・実証的な議論」。フォアボールと安打のお話は、この二種類の議論を解りやすく伝えてくれます。

この結果に対してコメントを求められ野球評論家の広岡達朗は・・・
彼は、「先頭打者に四球を出すと、『投手が精神的に弱い』と思い、バックの守備陣やベンチの監督、選手がマイナス思考になる。勝負に出て打たれた方が全体的にはまだプラス思考になれるということだ。スポーツは精神的な面が大事だ」と話したそうです。著者は「どうやらこの分析に不満のようである」と記し次のように論じます。

「先の検証では、因果関係のメカニズム、すなわち原因が結果に影響するプロセスは、投手の心理を中心に考えられていました。しかし広岡元監督は、投手の弱気はチーム全体に影響する、という因果メカニズムを想定しています。そうであれば、次の回の攻撃にも影響が及ぶでしょう。そう考えるなら『まし』は失点で測られるだけでは不充分であり、その回表裏の得失点差などで測らなければならないかもしれない。」

規範的評価と説明
さて、先の野球の例での分析結果は、評論家のコメントと異なり、「先頭打者にヒットを打たれるよりも四球で出した方がまし」という結論を示しました。これに対して広岡元監督は、分析が想定している因果関係のメカニズムが妥当ではないのではないかという経験的・実証的な観点から疑義を呈しました。

しかし、四球を出すというのは「正しい」ことではないのに、その方がヒットよりも良い結果になるなどという主張をするのは正しくないと規範的な観点から批判する人はほとんどいないでしょう。野球では、真っ向勝負こそが正しく、卑怯な敬遠などは認めないといった極端な考えでも持たないかぎり、四球の効果を分析する際には、規範的判断はかかわってこないのです。

しかし、分析の対象が現実の政治や社会で生じている現象となると、話は少し違ってきます。現在進行形の政治や社会現象に対してわれわれは、さまざまな意見を持っています。そのため客観的であるはずの分析に、自身の規範的意見が影響を与えることがあるかもしれないのです。

※:『原因を推論する』~政治分析方法論のすすめ~(久米郁男著/有斐閣)

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2016年2月18日 (木)

先頭打者を四球(フォアボール)で出すくらいなら打たれた方がましなのか

専門的な話を解りやすく伝える技術 『原因を推論する』より(1)
前回の10回シリーズもそうなのですが、ブログを書くとき専門性の高い話(一般的には解りにくい)には知識不足も相まって苦戦します。そんな折、ある図書館で早稲田大学政経学部久米郁男教授の『原因を推論する(※)』という著書に出会いました。そこには、難しい話を解りやすく伝えるヒントが散りばめられていました。

同書は中立的に政治現象を分析する実証的・経験的な政治学の方法論を、読者にわかりやすく、身近で一般的な社会現象を題材として導入部に取り上げる工夫をされています。そして、その論点を政治学の具体的な研究テーマに当てはめさらに考察するという構成なのですが、それがとても参考になるのです。例えばこんな風に…。

「先頭打者を四球(フォアボール)で出すくらいなら打たれた方がましだ」
テレビで野球を見ていて解説者がこのような発言をするのを耳にしたことがあるかもしれません。その意味するところは、投手が弱気になって先頭打者に四球を出すような逃げのピッチングをすると、ますます弱気になって後の打者に打たれてしまい、「ましでない」結果になるからだと著者は指摘します。

逃げずに真っ向勝負して打たれた方が、「ましでない」結果になる
この通説は逃げずに真っ向勝負して打たれた方が、後の打者を抑えられる可能性が高く、結果は「まし」である。ようするに投手の精神状態が試合に影響する、ということを指摘しているのでしょう。しかしこれを実証的に検証できなければ空論になりかねません。そこで著書が取り上げたのが次の記事でした。

通説が本当なのかの検証を試みた経済学者(加藤英明神戸大学教授)
プロ野球ファンの加藤教授は、「数ある通説が本当なのか」に関心を持って分析を試み、まずは、2004年(平成16年)と2005年前半の公式戦225試合について、「先頭打者に四球を与えた回」と「〔先頭打者に〕安打(単打)を打たれた回」で、失点がどのように異なるかを調べました(2005年㋈17日付『朝日新聞』)。

検証結果は、評論家の「通説」とは逆の結果になった
分析によると、「先頭打者に四球を与えた262回中失点は100回(失点確率38.2%、平均失点0.81点)。これに対し安打(単打)を打たれた730回中失点は334回(失点確率45.8%、平均失点0.97点)で、それぞれ7.6ポイント、0.16点高かった。統計上は、先頭打者を安打で出した方が、四球で出すよりも多く失点していた」(以下次号)。

※:『原因を推論する』~政治分析方法論のすすめ~(久米郁男著/有斐閣)

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2016年2月14日 (日)

フェース・トゥ・フェースのコミュニケーションが果たす大きな役割

『Diamond Harvard Business Review』に学ぶ (December 2015)抜粋(6)
参考資料に男女のカップルを3つのタイプに分けた実証研究例があります。
1)共同作業の際に、会話することも、互いの顔を見ることもできるカップル
2)会話はできるけれど、互いの顔を見ることはできないカップル
3)会話はできないが、顔を見ながら書面の交換によって意思疎通ができるカップル

34組を上記のような3グループに分け、それぞれのカップルに共同作業をしてもらい、その成果を比較する実験を行いました。そして各カップルの事後的なTMS(トランザクティブ・メモリー・システム:他のメンバーの「誰が何を知っているのか」を知っていること)の高さを計測しました(ここでの他のメンバーはペアの相手)。

すると(1)(3)のカップルの間では、TMSにほとんど違いが出ませんでした。それに対して、(2)のカップルは、(1)や(2)のカップルと比べて、TMSが著しく落ち込みました。話すことはできても、互いの顔が見えなくなったとたんに、TMSはまったく高まらなくなったのです。

この結果が示唆することは、「顔を突き合わせてのフェース・トゥ・フェースの交流」がTMSを高めるうえで、極めて重要な要素になっているということにほかなりません。まさに「目は口ほどに物を言う」なのですね。

テキサス大学のフェース・トゥ・フェースのコミュニケーション実証研究
テキサス大学オースティン校のカイル・ルイスは、ある米大学のMBA学生261人からなる61チームが地元企業に行ったコンサルティングプロジェクトを分析対象とし、「各チームがコンサルティングプロジェクト遂行中に、どのくらいの頻度でメンバー間のコミュニケーションを取ったか」を指数化し、TMSとの関係を統計分析しました。

その結果、TMSを高められるのは、やはり直接対話によるコミュニケーションの頻度が高いチームになったのです。反対にTMSを高められなかったのは、メール・電話によるコミュニケーション頻度が高いチームでした。多くの企業で実際に行われている情報交換手段が、知識共有の阻害要因だというのですから考えさせられます。

フェース・トゥ・フェース交流がTMSを高める可能性については、さらなる実証実験が必要で、学者のコンセンサスとまではまだいえない、というのが入山准教授(参考資料の筆者)のご理解だそうです。しかし、もしこの法則が多くの企業に当てはまるなら、それは様々な示唆を持つだろうと指摘されています。

参考文献:前出の通り。

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2016年2月11日 (木)

親しい人とのあいだに成立する「交換記憶」という概念

『Diamond Harvard Business Review』に学ぶ (December 2015)抜粋(5)
今回の参考資料にこんな実証研究例が掲載されていました。
男女ペア59組を対象とした単語の記憶再生テストの実験をしたところ、もともと恋人同士のペアは、他人同士のペアよりも多く単語の再生ができましたが、逆にカテゴリーを強制的に指定された場合は、他人同士のペアの方が単語を多く再生できたと。

なかなか興味深い実証研究ですが、この研究については『急に売れ始めるにはワケがある(※)』にさらに詳しい記述がありましたので紹介します。
1991年にこの実験をしたヴァージニア大学の心理学者タニエル・ウェグナーは、親しい人とのあいだに成立するこの現象を「交換記憶」と称しました。

おそらくもっと重要なのは、他人を通じて情報をたくわえているということ
“男女のカップル”はごく自然にこれをおこなっているらしいのです。
ウェグナー教授は数年前、少なくとも3カ月以上交際が続いている59組のペアを対象に記憶テストを実施しました。そのうち半分は元の組のまま、残る半分は見ず知らずの新しいパートナーに組み替えるという方法で、64の短文を読んでもらいました。

それぞれの文には、たとえば「ミドリは日本のメロン・リキュールだ」という具合に一つの単語に傍線が引かれています。5分後、すべての文章を読み終えた時点で、憶えていることをすべて書き出してもらいました。

案の定、互いに知っているペアのほうが、互いに知らないペアよりかなり多くの項目を記憶していました。互いによく相手を知っている場合、こういう種類の事柄については相手のほうがよく知っているという認識を基本にした暗黙の連合記憶システム――これが交換記憶――が働くのだといいます。

ウェグナー教授によれば、記憶とは、ただたんに頭の中にしまってある考えや印象、事実を指しているのではないとのこと。たとえば自分に必要な電話番号をすべて諳んじることのできる人はほとんどいませんが、そのかわり番号が書かれている場所――電話番号帳とか、自分専用の住所録とか――を憶えています。

●保険業界で生保と損保の乗り入れが実現した折、新設の保険代理店が飛躍的に業績を伸ばしたことがあります。この代理店は当初成績が上がりませんでしたが、発想を転換し生保・損保経験者をペアで営業に行かせたところ、成果につながりました。この事例は相互補完作用でしょうが、どこか交換記憶にも結びつくように思われます。

参考文献:前出の通り。
※:『急に売れ始めるにはワケがある』(マルコム・グッドウェル著/ソフトバンククリエイティブ)

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2016年2月 7日 (日)

「組織の記憶」独占型の北米が日本型・欧米型よりもダイナミックなIBM

『Diamond Harvard Business Review』に学ぶ (December 2015)抜粋(4)
IBMは北米、日本、欧州の3か所に大きなR&D(研究開発:Research and development)部門があります。そして他の大企業と違わずここで課題になるのが、R&D部門とマーケティング・営業部門との交流です。マーケティングとR&Dの交流が弱いために、企業全体として成果を上げられない事例は少なくありません。

IBMの3大拠点(北米・日本・欧州)でそれぞれ異なるTMS情報の持ち方
興味深いのは、IBMではこのR&D部門とマーケティングの交流の仕方が、3拠点で違うことです。まず欧州では、技術情報が欲しいマーケティング側が、部門の壁を破ってR&D部門に情報交換に来ます。一方日本では、逆にR&D部門の人がマーケティング・営業側に常駐して、ともに顧客に製品を売り込みにいく体制がとられています。

戦略的に大規模プロジェクトを受託できているのは圧倒的に北米の拠点
対して米国では、社内の各部門を歩き回ってさまざまな情報を集め、流通させる少人数の「知のブローカーの専門職」の存在が他の2拠点と大きく異なります。彼らにR&Dやマーケティングの「誰が何を知っているか」についての情報が集約され、戦略的に大規模プロジェクトを受託できているのは、圧倒的に北米の拠点なのだそうです。

あなたの組織が目指すべきは米IBM型か、IDEO型か
IDEOのブレストは、TMS情報もSMM情報のように組織のメンバーが共有することでアイデアを創出し続けているとのことでした。極端なこの違いは何によって生ずるのでしょうか。IBMの北米型は単に一例に過ぎないのか、そのあたりがわかれば、自らが所属する「組織の記憶」の持ち方が見えてきます。

組織の大きさによる違いと割り切れない
この違いについては、組織の大きさがあるかもしれません。IDEOを2人の研究者が調査した時点のデザイナーの数は150人程度でした。しかし、前回記した3人の研究者による実験の、わずか3人というチームでも「個人に有用な情報を集約すべき」という結果は、まるまるIBMの北米型に当てはまり、数の違いではなさそうです。

それぞれの組織の性格により「組織の記憶」の持ち方は異なる!?
確かなことは、IBMほどの巨大組織や、小さな組織でも機能が分化している場合は、少数の人にあえて有用な情報を独占させて、その人に社内をぐるぐると歩き回らせるほうが、組織の記憶力を高めるうえで効果的なのかもしれません。その一方で、IDEOのように専門家集団の場合は共有化するほうが効果的なのもたしかでしょう。

参考文献:前出の通り。

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2016年2月 4日 (木)

「組織の記憶」は“全員で共有すべき”との常識を覆す実験結果

『Diamond Harvard Business Review』に学ぶ (December 2015)抜粋(3)
組織の記憶のあり方は、前回記した、組織メンバーで知識を共有する(SMM:シェアード・メンタル・モデル)に対して、組織メンバーが「他のメンバーの誰が何を知っているのか」を知っていること(TMS:トランザクティブ・メモリー・システム)があります。このように「組織の記憶」にも2通りの共有パターンがあるのです。

「組織の記憶」は全員で共有すべきか、個人が独占すべきか
2014年に蘭エラスムス大学の3人の研究者が、「組織・チームの誰がどんな情報を持っているかをメンバー全員に均等に分散させたほうがいいのか、それとも一人に集約されていたほうがいいのか」という疑問を、372人の学生を使った実験で検証し『アカデミー・オブ・マネジメント・ジャーナル』に発表しました。

3人1組の共同作業でTMS情報の集約・分散で効果測定すると
この実験では、「何を誰が知っているか(TMS情報)」を5つ用意しました。そして、あるグループでは3人のうちの一人だけに5つのTMS情報のすべてを知らせ、一方で別のグループには、メンバーの全員にそれぞれ1~2のTMS情報を提供しました(チーム全体としては5つのTMS情報がいきわたるように設計してある)。

そして、その後の各チームの共同作業のパフォーマンスを分析した結果、3人が少しずつ均等にTMS情報を持つよりも、一人が集約してTMS情報を持つチームのほうが、パフォーマンスが高くなることを確認しました。「TMS情報は全員で共有するよりも、個人が独占したほうがいい」という結果を得たのです。

情報が自分に集中すると、周囲の情報レベルを観察するようになる
組織のある特定の人が多くのTMS情報を持つと、その人はTMS情報全体を見ることができるので、その「who knows what情報」をメンバー間で交換することを重視するようになります。そして、他のメンバーから積極的に「何を知っているか」の情報を聞き出すようになり、その情報を他のメンバーに提供するようになります。

言わば「知のブローカー」の役割を担うというのです。TMS情報が一人(もしくは特定の人)に集約されているからこそ、それが効果的に行われるというのです。
この「TMS情報の少数個人による独占の効果」については、IBMの研究所における情報交換の仕組みに共通するところがあるそうで、次回その内容を紹介します。

参考文献:前出の通り。

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